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【蒔いた種が実を結び大きく花開く】J2 第42節 栃木SC vs ジェフユナイテッド千葉(〇1-0)

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 21位

 ここ3戦を2勝1分で乗り切り、何とか最終節まで残留の可能性を残すことができた栃木。19位町田、20位鹿児島との勝ち点差は3、得失点差では栃木に分があるため、栃木のJ2残留条件は『千葉に勝利し、町田と鹿児島のいずれかが負けること』。全てが決まる大一番は前節とスタメンに変更なし。メンバー外の選手、クラブスタッフもスタジアムに駆けつけ、チーム一丸となって逆転残留を目指す。

 

ジェフユナイテッド千葉 [4-4-2] 16位

 J2降格以降、最低の成績でシーズンを終えることとなった千葉。クラブのレジェンド、佐藤勇人の現役ラストゲームとなる今節は、来季加入が内定している見木友哉(関東学院大学)をスタメンに抜擢。佐藤勇人の双子の弟、佐藤寿人もベンチ入りし、兄弟揃っての試合出場が期待される。

 

前半

スライドの限界を探る

 栃木がJ2に残留するためには他会場の結果も大きく影響してくるが、前提条件としてまずは確実に勝利を上げることが必要となってくる。言うまでもなく勝つためには相手よりも多くゴールを決める必要があり、良い守備から良い攻撃への移行を徹底する栃木にとってどのタイミングで攻撃の比重を高めるか、というところは大きなテーマとなっていた。そのなかで前半はリスクを冒さずに失点ゼロで抑える、あわよくばセットプレーなどからリードを奪い、良い形で後半に繋げていこうというプランだっただろう。

 

 栃木のセットディフェンスは、2トップがハーフウェーライン付近で千葉CHを隠しつつサイドに誘導したところをSHが縦スライドでプレッシャーをかけるいつもの形。比較的後ろからボールを繋ぎたい千葉に対して、前から圧力を高めることでボールを奪いショートカウンターを発動させることが理想である。これに対して千葉は、前半5分頃からCH小島を最終ラインに落としビルドアップの安定化を図った。

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 千葉のボール保持からの攻撃で最も多かったのは小島の下りる動きをスイッチに始まる右サイドの連動。最終ラインが3バック化したことでCB新井に対して大﨑がプレッシャーをかけるようになると、SB米倉には瀬川が、背後のスペースでビルドアップの出口になろうとするSH見木には古波津がスライドする。これにより生まれる中央のスペースを2トップの船山やクレーべが下がりながら活用しようとすれば、CBが前に出て迎撃することでバイタルエリアでは前を向かせない守備で対応した。

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 一方左サイドでの攻撃はSH為田とSB下平が5レーンを意識し、常に2人が斜めになるような位置関係を取っていた。前述の小島の最終ラインに下りる動きがある時は下平がサイドに張り出し、為田はハーフスペースへ。為田が大外レーンでボールを持ち仕掛ける際は下平が後方をサポートしつつ、機を見てハーフスペースを突撃する場面も見られた。

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 全体の連動したスライドをベースに千葉の保持攻撃に対応した栃木だったが、特に多くのスライドを要していた栃木の左サイドは時折ズレが生じ突破を許す場面も見られた。左SH見木がカットインしてシュートに至ったシーンがその代表だが、GK川田を中心にシャットアウト。全体的にはコンパクトな守備を組む栃木に対して中央に割っていけない千葉という構図で試合は推移していった。

 

 千葉の攻撃で気になったのはCBが攻撃のスイッチを入れるタイミングの悪さ。縦パスや大外への対格フィードを入れるのは主にエベルトの役割だったが、CH小島が最終ラインに下り中盤の密度が下がっているにも関わらず、厳しいマークに付かれている船山などに縦パスを入れて迎撃されたり、前線が準備できていないなかクレーべへロングボールを供給しセカンドボールを栃木に回収されるシーンが何度か見られた。3バック時は右CBになる新井もプレッシャーがなくドリブルで持ち上がる余裕があったにも関わらずロングボールを供給してしまう場面もあった。

 

 固い守備と攻撃への素早い切り替えで、ボールを持たずとも試合をある程度コントロールした栃木だったが、前半放ったシュートは1本のみ。ボールを前に運べてもペナルティエリアには入れない展開が続き前半終了。スコアレスで試合は折り返し。

 

後半

流れの傾いたワンチャンスを仕留める

 前半同様に小島の下りる動きを起点に攻撃を組み立てる千葉。後半7分、新井のフィードを引いて受けたクレーべが田代に倒されファールとなったことで得たFKでは、米倉がゴール前フリーで合わせるもシュートは枠の外。後半10分、乾が弾き返そうとしたハイボールが後方に逸れると、ペナルティエリア内で船山が瀬川のハンドを誘うもPKのジャッジはなし。対する栃木も右サイドの浜下を中心にエリア外からのシュートが増え、互いに相手ゴールに迫る回数が徐々に増えていった。

 

 後半18分には、最終ラインからのフィードを船山が落とすと、それに反応したクレーべがミドルシュート。シュートコースを予測していたというGK川田の好セーブもあり、千葉にとってこの日最大の決定機を凌ぐと、流れは栃木に傾いていった。

 ロングスローやクロスなどからゴール前に侵入できるようになったことで徐々に全体のラインも高くなり、攻勢をかけていた後半20分過ぎの時間帯。栃木は榊に変えて大黒を投入した直後のプレーで決勝点が生まれる。

 ロングスロー⇒CK⇒ロングスローと続き、弾かれたセカンドボールを拾った枝村がサイドに預けると久富がクロスを供給。低いクロスボールをニアに走り込んだ大﨑がファーに上手く流し、フリーで待っていた田代がヘディングで合わせて栃木が先制。「セットプレーのあとで前に残っていればチャンスが来るだろう」。自身の強みと嗅覚、そしてチームとして難しい試合展開の中、数少ないシュートチャンスでどのように点を取っていくか、共有されていたものが結実した瞬間であった。

 

 先制後の栃木は長らく守備で耐える展開が続くこととなる。攻守に多くのスプリントと豊富な運動量を見せていたSB瀬川は負傷により交代。終盤戦はメンバーを外れることも多かった大黒は自身のタスクを理解し、それまで出場していた榊さながらの守備への意識の高さを見せた。前節長崎戦の後半は守備一辺倒になったことで苦しい時間を過ごす時間が長くなったが、それを教訓にした今節は終盤に入ってからも前線からプレッシャーをかける足を止めず、最後まで攻守に攻撃的な姿勢を貫いた。

 

 後半40分を過ぎると千葉は最終ラインも栃木陣内に入り、クレーべらへのロングボールやクロスを量産していく。これに対して栃木は中ではCB田代を中心に弾き返し、外ではボールを供給する出し手にFWやSHがプレッシャーをかけ続けた。後半アディショナルタイムにはCKからのピンチを凌ぐと、試合はそのまま終了のホイッスル。ワンチャンスを仕留め切った栃木が1-0で勝利、そして数分後に鹿児島敗戦の報を受けたチームは大逆転でのJ2残留が決まった。

 

最後に

 リーグ戦ラスト4試合で勝ち点10を積み上げ大逆転でのJ2残留を決めた栃木。奇跡という言葉は簡単に使いたくないが、ここまでドラマチックな逆転劇は筆者自身あまり聞いたことがないし、日数が経った今、周りの人の反応も相まってようやく実感しているところである。

 ターニングポイントとなったのは間違いなく第33節鹿児島戦である。鹿児島に勝利して以降は5試合勝ちなしと苦しい時期もあったが、良い意味で攻守に割り切ったスタイルを徹底した結果、最終盤に入ってようやく実を結び、そして最後に大きく花開いた。

 シーズン当初からやろうとしていたスタイル、そして目標はこんなものではなかったと思う。しかし、今シーズンを客観的に反省し、問題点を見極めた上で来季以降に繋げていくことこそが、クラブの地盤を固め今後の飛躍の礎にしていくための必要な経験値となっていくだろう。勝ち負けだけでなく成長を見守っていくのもサポーターの一つの楽しみなのである。

 

試合結果

J2 第42節 栃木SC 1-0 ジェフユナイテッド千葉

得点 71’ 田代 雅也(栃木)

主審 谷本 涼

観客 13,358人

会場 フクダ電子アリーナ

 

前節のレビュー(V・ファーレン長崎戦)

 

前回対戦のレビュー