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【右肩上がりな締めくくり】J2 第29節 栃木SC vs 愛媛FC(〇1-0)

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はじめに

 前節は琉球相手に4発快勝。榊、森はともに2ゴールを決め、黒崎は圧巻の3アシストを記録した。今節の対戦相手は愛媛FC。現在4連敗中、その間14失点など守備面で問題を抱えている。栃木としては、東京V戦、琉球戦で得た良い感触を同系統の愛媛にも発揮したい一戦となる。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 11位

 アウェイの栃木は前節から2人変更。ボランチには西谷優希が出場停止から復帰、右SHには山本が3試合ぶりのスタメンとなった。ベンチには大﨑、平岡が外れてエスクデロが入った。

 

愛媛FC [4-1-4-1] 22位

 ホームの愛媛は前節から7人変更。攻撃的なポジションが本職の森谷はアンカーで起用され、中盤底からのゲームメイクが期待される。ベンチには前野、横谷、山瀬などのベテラン勢が入った。

 

 

自分たちの土俵に持ち込んだ栃木

 東京V、琉球と自陣から丁寧に繋いでくるチームに対して激しくプレスをかけることで好感触を得た栃木。この試合でも前からどんどん圧力をかけていき、回収したボールをシンプルに前線に入れていくことで敵陣でのプレータイムを増やしていく。

 前半8分には、田代の入れたロングボールのセカンドボールを回収し黒崎がクロスを供給。跳ね返りを逆サイドの溝渕が再びエリア内に入れていくと、こぼれ球に反応した榊がシュート。ゴールライン上でクリアされるも早々に決定機を作った。

 続く前半9分にも、田代のロングボールからセカンドボールを回収し溝渕がクロスを入れるシーンを作るなど、中央に起点を作り、サイドに開いてのクロス攻撃からチャンスを演出していった。

 

 対する愛媛は、栃木の攻撃パターンに対応するように[4-1-4-1]システムを採用。DF4人とMF4人の間にアンカー森谷を配置し中央に厚みを持たせることで、栃木の中央突破とセカンドボール回収を牽制。5バックで最終ラインを固めるよりも、まずは栃木の攻撃のスタート地点となる中央で後手に回らないようにとの意図が窺えた。全体の極端なコンパクトさもここでの勝敗を相当意識していたものと考えられる。

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 序盤はリスクを考慮してか、ロングボールの多い愛媛だったが、徐々にGKを交えたビルドアップを始めると、それに合わせて栃木もハイプレスを開始していく。

 栃木のハイプレスはGKまで襲いかかっていくお馴染みの超攻撃的スタイル。縦関係の2トップはそれぞれGKとアンカーの森谷を担当し、SH(山本)はCB(池田)、SB(黒崎)はSB(三原)を見る。この試合では明本がCB山﨑を消しながらGKに迫ることが多く、ボールサイドが限定される分、右肩上がりでプレスをかけることが多かった。このとき、ボランチの岩間は長沼をケアし、柳は前に出て相手をチェックする役割となっていた。

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 ハイプレスに対してロングボールで回避する愛媛。セカンドボールを上手く拾えた前半12分には藤本がシュートまで至っているものの、全体を通して見ればなかなか上手くいかなかった印象である。ラインコントロールを慎重に行う栃木のCBをひっくり返すシーンはほとんどなく、前向きに弾き返されることでかえってカウンターを受ける場面が散見。

 それならと、自陣からの繋ぎを試みるも栃木のハイプレスを手を焼くシーンは多かった。明本の猛プレスを受けるGK岡本が左SB三原へのパスがズレてそのままタッチラインを割るシーンも二度あった。

 

 右肩上がりのハイプレスで愛媛の左サイドに圧力をかける栃木だったが、攻撃に転じてからも同サイドを起点に仕掛けていった。

 前半34分には、オビのゴールキックから明本が競り、セカンドボールを拾われるもハイプレスを開始。ボール処理に時間のかかった三原に素早く3人で囲い込むことでボールを奪い取ると、そのまま明本がシュートを放った。

 ロングボールのセカンドボールを掌握し、相手を押し込むことによってSBが高い位置に進出する回数も増えた栃木。手前サイドの黒崎vs三原の勝負は、ボールを持って前を向いた位置、クロスに至る過程と精度を考えれば、黒崎がサイドを制圧したといえるパフォーマンスだった。

 

 前半アディショナルタイムには、西谷優希のインスイングのCKに田代がドンピシャで合わせるもGK正面。ハイプレスとセカンドボールからペースを握った栃木はセットプレーに期待を残して前半終了。スコアレスで折り返しとなった。

 

 

愛媛の変化に対応した後半

 後半8分に試合は動いた。自陣左サイドからの栃木のFK。いつものとおり前方に蹴り出すようにGKオビがボールサイドにセットすると、同サイドにライナー性のボールを供給。相手の背後を突いた森が胸トラップで収め、右足シュート。出し手と受け手の関係性で一瞬の隙を見逃さなかった栃木が先制点をあげることに成功した。

 

 ビハインドとなった愛媛は前節得点を決めている有田を投入。ハーフタイムに投入した前野が前半狙われていた左サイドに安定感をもたらすと、最前線の有田はポストプレーで貢献。後半15分には、栃木のハイプレスを上手く交わしながら中央に数的優位を作ると、逆サイドの前野が持ち運んでクロス。徐々にボールを前に進めるヒントを見出していく印象の愛媛だった。

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 同点に追い付きたい愛媛はCB池田に変えてボランチに横谷を投入。最終ラインを一枚削って中央を厚くすることで攻撃に舵を取っていく。

 下りてくる前線の選手のポストプレーを起点とした攻撃パターン自体は変わらなかった愛媛。ただ、出し手となる後ろの選手の配置が流動的になったことで、徐々に栃木はプレッシングがかかりにくくなっているように見えた。

 例えば後半25分のシーン。愛媛の最終ラインが全体的に右寄りになり、左SBの位置に擬似的に森谷が移動。栃木は右SH山本がその森谷を牽制するポジションを取っていたが、空いたボランチ脇に下りてくる有田に縦パスを通され、最終的にあわやPKという危険なシーンを作られた。

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 一列目のプレスを剥がされることが増えた栃木。我慢の時間帯にはなったが、前の選手が帰陣してブロックを形成するスピード感も非常に早かった。横幅をとって広く攻める愛媛に対して、栃木も素早くボールサイドにスライドし、寄せとカバーリングから愛媛の攻撃を封殺していった。途中交代を交えながらも守備に穴を空けない連動性は落ちることはなかった。

 

 終盤には、栃木は前線4人が愛媛の最終ラインに睨みをきかせることで、ボールの出どころを押さえる守備を完遂。前傾姿勢の愛媛はWGが最終ラインのサポートに下りる動きを見せなかったため、栃木としては中央を閉じる守備で対応可能。無理に縦パスを差し込まれてもボランチのエリアで回収できる算段だった。

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 押し込んでからもテンポの上がらなかった愛媛は栃木のゴールネットを揺らすことができず。試合は1-0で終了。栃木は2連勝を飾り、愛媛は今季最長の5連敗となった。

 

 

最後に

 振り返ってみれば得点シーンを除いて栃木の決定機はそれほど多くなかったように思う。もちろんそれ自体は大きな課題ではあるが、一発の飛び道具、セットプレーから一瞬の隙で決勝点をマークし、堅い守備で店じまいする姿勢はまさに試合巧者だったといえる。相性の良くない愛媛を相手にしても、自分たちのスタイルを曲げずに愚直に貫いた結果の勝利。右肩上がりに調子を上げていった今回の5連戦の締めくくりとしては十分満足できる結果である。

 次節の対戦相手はヴァンフォーレ甲府。今節スーパーアシストを決めたオビはマリノスに復帰、そして明本は離脱の可能性が高いなど、不安要素は拭えないが、上位相手にぜひとも初の3連勝を達成できるよう期待したい。

 

 

試合結果

栃木SC 1-0 愛媛FC

得点 53分 森俊貴(栃木)

主審 井上知大

観客 1,571人

会場 ニンジニアスタジアム

 

 

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