
スターティングメンバー
栃木SC(J3)3-4-2-1 EAST-A 10位

プレーオフラウンド第1戦は小林伸二監督率いる長野と対戦し、スコアレスで迎えたPK戦で敗戦。同カテゴリーの相手に不甲斐ない内容で敗れ、39-40位決定戦へ回ることとなった。第1戦からのスタメンの変更は2人。大曽根に代わって左WBに川名、吉野に代わって杉森がシャドーに入り、永井はボランチでの起用となった。ベンチには負傷から復帰した鈴木が第3節仙台戦以来のメンバー入りとなった。
ギラヴァンツ北九州(J3)3-4-2-1 WEST-B 10位

地域リーグラウンドでは4勝14敗(PK負け3試合)で勝ち点15と、40チーム全体で最も少ない勝ち点に終わった北九州。昨オフに最終ラインを中心に主力選手が多く退団し、その穴を埋めきれないまま開幕6連敗を喫すると、その後も復調の兆しを見せることはできなかった。プレーオフラウンド第1戦はアウェイで讃岐に1-3で敗戦。最下位フィニッシュを避けるべく、この日はスタメン5人を入れ替えて運命の第2戦に臨む。
マッチレビュー
▼一進一退の展開で先手を許す
プレーオフラウンド第2戦は地域リーグラウンドの勝ち点で上回った栃木のホーム開催。ある意味注目の集まるシチュエーションとなったが、目の前の試合に集中し、最後こそはサポーターに勝利を届けたい一戦となる。
立ち上がりから試合の主導権を握ったのは北九州。前からプレスをかけたい栃木に対して、裏返すようにロングボールを供給していく。立ち上がりの蹴り合いの時間が過ぎてもなお北九州はロングボールを多用しており、この日はあまり繋ぎに拘らないスタンスを見せていた。
ロングボールの供給先としては川名の背後を狙うことが多かった。右サイドの奥を取ってからは逆シャドーの平原やボランチの岡野も加わって狭い距離感での崩しにトライしていく。そこから左サイドに広げて吉長がクロスを入れたり、右サイドを崩してマイナスの折り返しを平原がシュートしたりと、両サイドが繋がって攻撃をやり切ることができていた。
対する栃木も序盤はロングボールを多用していくが、なかなか前線で起点を作ることができなかった。
一つは後ろの選手のキック精度が安定しなかったこと。前で構える近藤のもとにボールが行かず、他の選手のところで簡単に弾き返されてしまったり、後ろ向きのセカンド争いで相手に上回られてしまうシーンが目立った。
トランジションの局面で瞬間的にボランチが前を向けたシーンがあったものの、高い技術と正確な判断が求められる状況では精度を伴わせることができず。何度か左サイドからのロングスローで仕切り直しを図るチャンスはあったが、そこからロングカウンターを発動されてしまうなど、序盤は北九州のペースで進んでいった。
栃木が落ち着けるようになったのは20分を過ぎたころ。後ろからの繋ぎで川名と杉森が上手くサイドの内側と外側を使い分け、左サイドの高い位置で起点を作れるように。近い距離感でのパス交換からサイドを突破したり、スペースを陥れたりと彼らの個のクオリティと関係性で攻撃をやり切る場面が増えていく。
ボランチの片方が最終ラインに下りて4枚回しにしたり、左肩上がりのビルドアップを敢行したりと、ミラーゲームにズレを作れるようになったのもこの時間帯だった。後ろでズレを作ることができれば、前が動き出すタイミングを後ろはじっくりと見極めることができる。この時間帯からようやく効果的な縦パスが入り出した。
印象的だったのが33分のシーン。左肩上がりのビルドアップで柳からのパスを中間ポジションで永井が引き出し、左サイドの川名へ展開。川名が内側に切り返して逆サイドの中野へ鋭いサイドチェンジを通すと、中野の狙い澄ましたミドルシュートでゴールマウスを脅かすことができた。惜しくもGKのセーブに阻まれたものの、左肩上がりによって出し手と受け手に時間ができ、シュートまで繋げることができたシーンだった。
時間の経過とともに北九州のロングボールに上手く対応していた栃木だったが、39分に一瞬の隙を突かれてしまう。ロングボールを川名のサイドではなく、このシーンでは阿部のサイドで起点を作られると、複数人が絡んだダイレクトの崩しで右サイドを突破され、最後はゴール前で足を投げ出した渡邉にゴールを献上した。北九州らしいテクニカルな崩しと泥臭いフィニッシュワークだった。
ズレを作るビルドアップでボールを握り相手を左右に揺さぶることができていたものの、背後の動き出しが弱く、思うようにブロックの内側に入り込んでいけなかった栃木。前半はこのまま0-1で終了し、北九州が1点をリードしてハーフタイムを迎えた。
▼再現性のある攻撃で逆転に繋げる
後半、栃木は4枚回しや左肩上がりのビルドアップを継続しつつ、背後への動き出しを強化。右サイドは中野がボールを触りに中盤まで下りる一方で阿部は高い位置を取る回数が増加。左サイドは杉森の下りる動きに合わせて永井が3列目から背後に抜け出すなど、手前と奥を意識した攻撃を増やしていく。
前進のステップとして中野が後ろからのビルドアップを引き取る役割を担っていたため、その後の展開として左サイドに広げる流れが非常に多かった。前半よりも中野のポジションが低く、左サイドに広げる流れもスムーズだったことから、おそらくハーフタイムに共有した部分かもしれない。
よって、次のフェーズで焦点となったのが自ずと仕掛ける回数が増えた川名のパフォーマンス。1vs1さえ作れれば高い確率で相手を剥がせる川名だが、クロス精度は課題としているところ。51分には利き足の右足で上げたクロスが誰もいない方向に飛んでしまうなどやや不安定なところを見せたが、迎えた60分に同点弾を生み出すことに成功する。
堤が加わった4枚回しから攻撃を開始し、中野を経由して左サイドの川名へ。何度も繰り返していた形から川名がフリーでボールを受けると、左足で上げたクロスにヘディングで合わせたのは近藤。点と点で合わせるような質の高い攻撃で栃木が同点に追い付くことに成功した。
このシーン、地味ながら良い役割を果たしていたのが3列目から前線に顔を出していた永井。杉森とスイッチするようにシャドーの位置に入ると、相手の右WBを引き付けることで川名をオープンな状態にすることができた。川名の高精度クロスをお膳立てしていたのがボランチの永井だった。
対する北九州はロングボールからなかなか起点を作ることができず。可能性があるとすればトランジションや球際を制した局面くらい。60分台には右ワイドに流れた平松の仕掛けから何度かチャンスを作り出していたが、前線の3人それぞれに訪れたシュートチャンスはいずれもミートすることができなかった。
その後は一進一退の展開。69分には栃木がロングカウンターを発動し、左サイドに回った中野のクロスに最後は阿部がゴール前で反応したが、DFの決死のブロックによりネットを揺らすことはできず。76分には北九州の左WB吉長の放ったシュートがポストを直撃。81分には中盤の潰し合いを制した栃木が押し込み、最後は左CB田畑のミドルシュートはGK杉本の好セーブに阻まれた。
時間の経過とともに攻守が切り替わる局面での球際バトルが激しくなっていったが、途中からピッチに入った屋宜や食野は上手く試合に入ることができていた。テクニカルな部分を持ち味とする彼らが攻撃にアクセントを加えられたのも落ち着いてボールを保持できる仕組みをそれまでに整理できていたからだろう。
後半を終了してスコアは1-1。90分で決着をつけることはできなかったが、交代選手が存在感を見せた栃木が着実に北九州の勢いを徐々に削いでいくことができていた。
延長戦に突入してからも栃木優勢の流れは変わらず。中盤でボールを受ける食野が前の動きを見逃さないように積極的に縦パスを差し込んでいく。食野が中盤で起点を作れるようになったことで、屋宜と永井の両シャドーはよりアタッキングサードでの仕事に専念できるようになっていった。
これが結実したのが97分。サイドからボールを受けた食野が縦パスを入れると、ライン間でボールを受けたのは右CBの田端。ボールサイドのCBの攻撃参加によりブロックの内側に入り込むと、屋宜の深い位置からの折り返しをダイレクトで押し込んだのは永井だった。栃木が延長前半に試合をひっくり返すことに成功した。
栃木は残り時間、柳に代えて木邨、田畑に代えて吉野を投入することで守備を補強。対する北九州はシステムを4-4-2に変更し、前に人数を割くことで積極的に同点弾を狙っていく。
しかし、依然としてペースを握っていたのは栃木だった。107分には、近藤とのパス交換でペナルティエリア内に潜り込んだ鈴木がシュートを放つもGKセーブ。積極性の目立つ屋宜は延長後半だけで4本も際どいシュートで北九州のゴールを脅かした。
120分が終了して、スコアは2-1。ホームの栃木が延長戦で試合をひっくり返し、最終戦を勝利で飾ることに成功した。
最後に
40チーム中39位。この試合の結果だけを見て手放しに喜ぶことはできないが、ひとまずラストゲームを勝って終われたことに胸を撫で下ろしているサポーターも多いだろう。自分たちで招いたシチュエーションとはいえ、現状を真摯に受け止め、この試合に勝つことだけを念頭に一週間取り組んできたトレーニングの成果を結果で示すことができた。ある意味通常のリーグ戦と似たような(もしくはそれ以上の)プレッシャーがかかった状況をこうして経験できたクラブは少ないはずだ。これも一つの収穫として捉え、百年構想リーグで浮き彫りになった数多くの課題とともにしっかり検証することで、夏からの本シーズンで昇格に値するチームに生まれ変われるよう願ってやまない。
試合結果・ハイライト
2026.6.7 14:00K.O.
J2・J3百年構想リーグ プレーオフラウンド 第2戦
栃木SC 2-1 ギラヴァンツ北九州
得点 39分 渡邉 颯太(北九州)
60分 近藤 慶一(栃木)
97分 永井 大士(栃木)
主審 石丸 秀平
観客 2179人
会場 カンセキスタジアムとちぎ