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【アフリカ王者を苦しめた小国の意地】FIFA World Cup 2026 グループC モロッコ vs ハイチ

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はじめに

 今回は、『JAPAN ANALYZING FESTIVAL ’26』という企画でマッチレビューを書かせていただいております。

 この企画は、ワールドカップのグループステージ全72試合を様々な立場の方がそれぞれの視点で分析して楽しみましょうというもので、錚々たる面々が名を連ねたイベントとなっています。

 普段栃木SCとアーセナルを応援している身としてはあまり馴染みのない国どうしの試合ですが、さっそくいつもの調子で振り返っていきましょう。

 

 

スターティングメンバー

モロッコ 4-2-3-1 グループC 2位

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 初戦はブラジルと引き分け(△1-1)、2戦目はスコットランドに勝利(〇1-0)したモロッコ。得失点差で首位に立つブラジルを上回ってグループステージを突破するには点差をつけての勝利が求められる。スコットランド戦からのメンバーの変更は4人。サラーエディンは初先発、エルカービ、アムラバト、ハルハルの3人は今大会初出場となった。サイバリには3試合連続ゴールの期待がかかる。

 

ハイチ 4-4-2 グループC 4位

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 スコットランド(●0-1)、ブラジル(●0-3)に連敗し、グループステージ敗退が決まったハイチ。1974年西ドイツ大会以来、52年ぶりに本大会出場を果たした爪痕を初ゴールとともに残したい一戦となる。ブラジル戦からのメンバーの変更は2人。初戦から2試合とも先発していたピエロがベンチスタートとなり、イシドールが2試合ぶり、ジョゼフが今大会初先発となった。

 

 

マッチレビュー

▼意欲的な姿勢と衝撃の一振り

 強豪国の仲間入りを果たしつつあるモロッコとそれに立ち向かう小国ハイチ。下馬評ではアフリカ王者に軍配が上がる対戦カードだったが、思いもよらぬ展開で試合は進んでいくこととなる。

 10分、最終ラインのアデからのロングボールを右サイドでカシミールが収めると、外側を駆け上がったデュヴェルヌへ。縦突破からの低いクロスにジョゼフが詰め、これがGKに当たりゴールネットに吸い込まれた。記録はオウンゴールとなったが、これがハイチ代表にとって記念すべき今大会初ゴールとなった。

 ゴールシーンに焦点を当てれば、モロッコの左SBサラーエディンの対応はやや軽かったと言わざるを得ない。ロングボールの落下点の目測を誤りカシミールにボールを収められ、次のシーンでは判断ミスによりデュヴェルヌにサイドを切り裂かれた。ミスが二つ重なると失点リスクは急激に高まってしまう。初先発のサラーエディンにとっては苦いシーンとなってしまった。

 ハイチ目線からすれば早い時間帯での先制点は理想的とはいえ、そうなることも妥当な展開だったといえるだろう。モロッコの繋ぎに対して立ち上がりから奇襲をかけるようにハイプレスを浴びせ、それを掻い潜られたとしても自陣で粘り強く足を動かし、攻撃に転じればモロッコの攻撃的なSBの背後を狙って長いボールを送り込んでいく。前へ前へという意欲的な姿勢が生んだ先制点だった。

 早々に出鼻をくじかれたモロッコは丁寧なポゼッションからの前進で仕切り直しを図っていく。繋ぎ出しはハキミとディアスの並んだ右サイドから。自由にポジションを動かしてボールに関わる彼らがサイドを不在とすればトップのエルカービが右奥に流れていく。ハイチの左SBエクスペリエンスに対して迷いを生じさせるようフックを打ちつつ、右サイドを起点として入り込んでいく形は多く見られた。

 22分には、ディアスとの関係性からハキミが右サイドを内側から追い越すと、折り返しにダイレクトで合わせたのはサイバリ。エルカービに連なるようにマイナスの位置に顔を出すことでセカンドストライカーとしてプレーするのがこの日のサイバリの役割だった。

 時間の経過とともにモロッコが攻勢を強める展開はハイドレーションブレイク明けも変わらず。序盤は右サイドからのアタックに偏っていたものの、ブレイク明けは右サイドで作った時間を逆サイドに持っていくことで左サイドからも仕掛けるシーンが増加。ライン間でディアスがボールを引き出し、エルカヌースの仕掛けや外側を駆け上がったサラーエディンのクロスからゴール前でのチャンスを増やしていく。

 このモメンタムを握った時間帯にモロッコは同点弾をゲット。ハルハル→ハキミ→ディアス→エルカヌースと右サイドから中央を経由して左サイドへ広げていくと、エルカヌースからのクロスのこぼれ球に詰めたのはSBのハキミ。それまで何度も繰り返していた前進の形からようやくゴールネットを揺らすことに成功した。

 ただ、同点弾も束の間、その4分後にハイチが衝撃の一発を突き刺すことに。右サイドでクロスのこぼれ球を回収すると、ボールを受けたイシドールが右足を強振。約30mの距離から豪快な一発をネットに突き刺し、再びハイチが一歩前に出ることに成功した。堅守モロッコにとっては今大会に限らず、アフリカ予選を含めて初の複数失点となった。

 しかし、主導権を握るのは依然としてモロッコ。アディショナルタイムに入る直前にハキミの折り返しをサイバリがマイナスの位置からダイレクトで合わせると、ゴール左隅に吸い込まれ、試合は再び振り出しに。互いに2点ずつを奪い合う乱打戦でハーフタイムを迎えた。

 

 

▼ボールを支配して試合をコントロール

 後半は再びモロッコがボールを握る展開でスタート。ポジションチェンジを繰り返しながら幅と奥行きを使い分けることでピッチを広く支配していく。3枚気味で回すモロッコの最終ラインに対して人を当てるのかサイドを限定するのか守備の方針が定まらないハイチはただただ走らされる展開に。自由自在にボールを動かすモロッコが試合を優勢に進めていく。

 モロッコが徹底して繰り返していたのはCB-SB間から背後へ抜け出すランニング。前半に引き続きトップのエルカービは右サイドに流れ、トップ下のサイバリは臨機応変に両サイドに顔を出すことでハイチのCBを引き出していく。ブロックを引き伸ばしたことでフリーになるディアスを含め、モロッコの勝ち越しは時間の問題といった様相だった。

 劣勢のハイチは苦し紛れに蹴り出したロングボールを前線で起点にできるかが生命線だった。ジョゼフ、イシドール、カシミールらターゲットがそれぞれ孤立しながらボールを収めなければ陣地回復もできない。それでも状況的に厳しかったとはいえ、フィジカルに優れた彼らのポストプレーはそれなりに期待感の持てそうな雰囲気が漂っていた。

 60分過ぎには、モロッコの繋ぎのミスを誘いカウンターを演出。ベルガルドが中央から強引に単騎突破を繰り出したり、3枚回しに対してミドルゾーンからSHを押し出す守備でショートカウンターを発動し、ペナルティエリア付近でプロヴィデンスが倒されるなど、ロングボール以外の流れからも攻撃の芽を生み出せるようになっていった。

 ハイドレーションブレイク明け、両チームとも3枚替えを施して迎えた終盤戦。他会場のスコアを受けて主力を下げたモロッコだったが、引き続きボールを支配すると、78分にCKから途中出場のラヒミが勝ち越し点をゲット。モロッコがようやくこの試合初めてリードを奪うことに成功する。

 ビハインドになったハイチはここからハイプレスを再開。最後に爪痕を残してやろうと言わんばかりの圧力でモロッコのボール保持に襲いかかっていく。

 しかし、主力組が下がっても組織力で上回るのはモロッコ。正確なパスワークでプレスをいなしていくことで、オープンになっていくピッチ上で空いているスペースを選び取りながら着実にゴールに迫っていく。

 89分には左サイドでマッチアップしていたラヒミがタッチライン際でボールを残して折り返すと、逆サイドからゴール前に詰めていたのは途中出場のヤシン。冷静に枠内に流し込むことで4点目を奪うと、ハイチはここで万事休す。

  最終スコアは4-2。予想外の打ち合いで幕を下ろしたグループステージ最終戦は苦しみながらもアフリカ王者の貫禄を見せたモロッコが2点差をつけて勝利し、ブラジルに続く2位で決勝トーナメント進出を決めた。

 

 

最後に

 二度のリードを許しながらも最終的には逆転勝利を収めたモロッコ。思い描いていた試合展開とはならなかったものの、焦ることなくボールを支配し、着実に逆転まで持ち込んだ試合運びは流石の一言である。とりわけ主力組がピッチを去ったあとも主導権を握り続け、途中出場の2人で試合を決定付けたのはお見事。今大会随一の組織力を見せつける試合になったといえるだろう。

 この試合でも敗れ、結果的に3戦全敗となったハイチ。世界との実力差を痛感させられる結果に終わったものの、最終戦で見せた意地は混迷を極めるハイチ国民にとって大きな勇気を与えたことに違いない。今大会をもって退任することとなったが、リモート監督として小国を導いたミニェ監督の功績は計り知れない。

 賛否両論はあるものの、こうした小国の意地が見られたのも48ヵ国出場という今大会のフォーマットがあったからこそ。モロッコの洗練された強さとハイチの不屈の魂。単なる勝敗を超えた両者のプライドが激突したこの90分間は、やはりワールドカップという舞台が特別であることを、改めて見る者全てに教えてくれたといえるだろう。

 

 

試合結果・ハイライト

2026.6.25 7:00K.O.

FIFA World Cup 2026 グループC 第3節

モロッコ 4-2 ハイチ

得点 10分 オウンゴール(ハイチ)

   39分 アクラフ ハキミ(モロッコ)

   43分 ウィルソン イシドール(ハイチ)

   45+1分 イスマエル サイバリ(モロッコ)

   78分 ソフィアン ラヒミ(モロッコ)

   89分 ジェシム ヤシン(モロッコ)

主審 ダニー マッケリー

観客 68239人

会場 アトランタ・スタジアム