栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【まずまずの立て直し】J2 第9節 栃木SC vs レノファ山口FC

スターティングメンバー

栃木SC [3-5-2] 15位

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 前節千葉戦はクラブワーストとなる8失点で大敗。プレスがハマらず自分たちからバランスを崩すと、あれよあれよと失点を重ねてしまった。3連戦の最終戦となる今節はリバウンドメンタリティで臨む一戦となる。前節からのスタメンの変更は2人。宮崎と青島が外れ、矢野と南野が2試合ぶりに先発に復帰した。

 

レノファ山口FC [4-4-2] 10位

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 今季から志垣監督が就任した山口はここまで3勝2分3敗とまずまずの出だし。前節は終盤のPK2本で逆転負けを喫しており、アウェイとはいえ仕切り直しを図りたい試合となる。前節からは先発を5人変更。ここまでフルタイム出場のCB平瀬はメンバー外となり、代わって指揮官とともにFC大阪から加入した板倉が初先発となった。

 

 

マッチレビュー

■不十分ながらも見えた攻守の狙い

 前節からは中3日。8失点の大敗から切り替えるにはあまりに短いインターバルとなったが、むしろ考え過ぎずに試合に臨めるのは悪くないことだろう。緩んだネジを締め直して臨む試合となった。

 立ち上がりの主導権を握ったのはアウェイの山口。キックオフの勢いそのままにCKを獲得すると、そこからセットプレーやクロスを量産していく。深い位置まで押し込めばボール扱いに長ける池上や前、アグレッシブに動き回る野寄が中心となり、主に右サイドから攻撃を演出。栃木は開始から自陣に張り付けにされる苦しい立ち上がりとなった。

 梅木の負傷によって試合が一旦落ち着くと、そこからはボールを握る山口とプレスをかける栃木の構図が明確に。山口は左SB新保を上げる左肩上がりのビルドアップを敢行するが、栃木は連動してプレスをかけることができていた。

 前からの守備で効いていたのが矢野のファーストDF。右SB前を加えて3バック気味に回す山口に対してCB間を切るように板倉へ寄せていく。これにより山口の保持を栃木の左サイドに誘導すると、全体が連動してボールサイドにアプローチ。空中戦に強い梅木が前にいるため保持にこだわらないスタンスだっただろうが、蹴らせて回収する場面を何度か作ることができていた。

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 ただ、上記したように山口のこのサイドにはボールを握ることに秀でた選手が何人かいる。彼らが上手く栃木の中盤を引き出すことでスペースを作るとそこに2トップのどちらかが顔を出すなど、全体が連動して栃木のプレスの隙間を使おうという狙いが窺えた。

 山口としては仮に2トップが抑えられたとしてもマンツーマン要素の強い栃木のCBを動かせれば、綻びを突けるという算段だったのだろう。開いた大島-神戸間に若月や梅木が顔を出し、前者はターン、後者は周りの味方を生かして藤谷の背後を突くという形は何度も見られた。

 

 一方の栃木。回数こそ限られたものの、準備してきた攻撃の形を示すことができていた。起点となったのは大外に張ったWB。神戸の配球によって時間とスペースを確保すると、石田は奥田と、大森は大島と繋がることでボールを前へ進めていく。楔のパスや背後へのボールを前線につけ、再びWBが関わることでサイドに厚みを作る狙いだった。

 このとき重要なのはIHがしっかりと背後へのアクションを行うこと。栃木はWBが高い位置に張り出す訳ではないため、彼らが斜めに動き出してサイドの奥を取らなければWBが手詰まりになってしまう。IHがサイドを取れればWB→IHのパスコースのほか、空いた中央に顔を出す奥田へのパスコースを作ることができる。

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 その意味で大島と南野のIH勢の動き出しは回数・質ともにもの足りなく感じた。どうしても足元で受けようとする傾向が強く、そうすると奥田へのコースは見えてこない。IH自身もその場に留まってしまえば簡単に相手に捕まってしまう。栃木は前線にパスをつけても彼ら3人のところでロストするシーンが多かった。

 よって栃木は攻撃に移行してもなかなかゴール前までボールを運ぶことができなかった。痺れを切らしたWBが早めにクロスを入れても中の準備が整っていなければ矢野の高さを生かすことはできない。少ない攻撃機会をフィニッシュに繋げられず、前半シュート0本でハーフタイムを迎えた。

 

■連戦の影響は色濃く

 後半立ち上がりも前半同様山口に押し込まれる展開でスタート。しかし、58分に右からの攻撃でロングスローを得ると、その流れで得たFKから神戸のミドルシュートでこの日最初のシュートを記録。再びロングスローを得るなど、この試合初めて山口を押し込む時間を作ることができた。

 ただ、決定機の数では山口の方に分があっただろう。66分にはCKのセカンドチャンスから若月に抜け出され、GK丹野もかわされたが、大森がシュートを身体に当て、石田が無人のゴール前でクリア。72分にはCKをニアで触られ、中央で板倉に頭で合わせられるもシュートはわずかに左に外れた。セットプレーから押し込む栃木とは裏腹に山口も前半以上にゴールの匂いは漂っていた。

 神戸の左右への散らしからそれなりにボールを持てた栃木だが、後半はIHの動き出しの少なさがより顕著だったように思う。 3連戦の最終戦の影響は間違いなくあっただろう。IHが山口のDFラインの手前に留まってしまい、前線にスペースを作り出すどころか受け手にもなれず。前と後ろが分断し、ロングボール以外の選択肢はないような状況だった。

 連戦の影響は守備面にも現れ、特にWBは両サイドとも明らかに疲労が目立っていた。新保の突破に手を焼いた石田は満身創痍の状態で、ここを交代したくても唯一の選択肢である大谷はラファエルの負傷によりすでにCBとして出場。途中投入の小堀と大谷で石田の前後を挟んで何とか守備強度を維持していた終盤だった。

 そのなかで大谷が安定したパフォーマンスを見せていた点は朗報だろう。山口の途中出場したシルビオジュニオールには厳しい迎撃で自由を与えず、石田の背後に抜け出した新保や河野には横ズレでフタをする。ラファエルの状況が不透明なことを踏まえれば非常に頼もしいプレーぶりだった。

 試合は最後まで均衡破れずスコアレスで終了。互いに勝ち点1ずつを分け合い、両者ともに連敗を阻止する結果となった。

 

 

選手寸評

GK 27 丹野 研太
27分には背後に抜け出したFW若月との1vs1を好セーブ。ヒヤリとするシーンもあったが、全体的には安定したパフォーマンスだった。

DF 2 平松 航
待ち受けるだけでなく前に出て受け手を迎撃したほか、最後の局面ではしっかりと身体を張れていた。8失点から立て直した。

DF 17 藤谷 匠
梅木とはハイボールを競り合い、若月とはアジリティで勝負した。ボールの持ち運びやインナーラップなど攻撃面での働きも見せた。

DF 33 ラファエル
純粋なCBとしての役割を担い、梅木と迫力ある空中戦を演じた。怪我の具合が気になるところ。

MF 6 大森 渚生
背後に抜ける大島へのロングパスやギャップに顔を出す奥田への楔パスなど、低い位置で配球に専念した。66分にはGKがかわされるピンチの場面で身体を投げ出してゴールマウスを守った。深い時間に入ってからも満身創痍の身体を動かし最後の場面で踏ん張った。

MF 7 石田 凌太郎
豊富な運動量で右サイドを攻守に上下動した。クロスやセットプレー、ロングスローなど石田からゴール前に入れる機会が多いためアシストで貢献したい。終盤は新保に振り切られる場面が増えたが最後まで走りきった。

MF 19 大島 康樹
矢野が上手くサイドを限定してくれるため狙いを定めて強度あるプレスをかけることができた。守備から攻撃に移行した局面でのプレー精度を上げたい。

MF 24 神戸 康輔
ボールを左右へよく散らせていた。両サイドからクロスを量産できたのは神戸の貢献が大きい。

MF 42 南野 遥海
新保の対応に追われ自陣深くに押し込まれたため、攻撃面で良さを出せなかった。

FW 15 奥田 晃也
普段よりトラップが大きくなり、相手に狙われる場面が多かった。宮崎のスルーパスに抜け出した78分のシーンはシュートを枠に収めたかった。

FW 29 矢野 貴章
ファーストDFとしてサイドを限定する寄せ方が絶妙。全体が繋がりをもってプレスをかけるには不可欠な選手である。

FW 32 宮崎 鴻
ボールの落下地点に入ったときの勝率は高く、しっかり味方へ落とすことができていた。相手の背後に抜け出した後半ATのシーンはボールが足元に収まらず、シュートに持ち込めなかった。

DF 5 大谷 尚輝
山口の途中投入されたシルビオジュニオールに厳しく対応した。ラファエルの負傷具合によっては次節先発の可能性も。

MF 22 青島 太一
攻守によく顔を出した。80分には狭いスペースで巧みにコントロールし、小堀のミドルシュートをお膳立てした。

FW 38 小堀 空
80分にはスローインの流れから惜しい左足シュートを放った。後半反撃する中で小堀の投入によってさらにギアが上がったような印象だった。

 

 

最後に

 惨敗した前節を考えれば勝ち点1をクリーンシートで掴んだことは決して悪くない結果のように思う。試合を通して守備の時間が長くなるなか、最後まで集中を切らさず粘りのディフェンスを発揮し、今季2度目のクリーンシートに漕ぎ着くことができた。8失点からの一歩目としてはそれなりの手応えを掴むことができたといえるだろう。

 一旦だが、まずは守備を立て直すことができた。次はここ2試合無得点の攻撃面である。連戦の影響で湿った印象の攻撃陣だったが、一週間のインターバルを経て迎えるダービーマッチとなれば昂るものは少なからずあるだろう。北関東のライバルを蹴落とし、再び中位を覗く位置につけたい。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 0-0 レノファ山口FC
得点 なし
主審  田中 玲匡
観客 3452人
会場 カンセキスタジアムとちぎ