栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【粘りの戦いで連敗ストップ】J2 第24節 栃木SC vs ファジアーノ岡山

スターティングメンバー

栃木SC 3-4-2-1 19位

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 仙台戦、山形戦と東北アウェイ2連戦で2連敗を喫した栃木。3週間ぶりのホームゲームで悪い流れを断ち切り、良いイメージで中断期間を迎えたいところだ。前節からのスタメンの変更は1人。出場停止の神戸に代わって青島が今季2度目の先発入り。G大阪から加入した坂がさっそくベンチ入りを果たし、土肥も約3ヶ月ぶりのメンバー入りとなった。

 

ファジアーノ岡山 3-4-2-1 4位

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 前節は順位表ですぐ上につける仙台を2-0で撃破し、4位に浮上した岡山。ここ4試合で3勝目となり、安定した戦いで順調に勝ち点を積み上げている印象である。前節からのスタメンの変更は輪笠・ルカオ→藤田・早川の2人。いわきから加入した嵯峨がベンチに入り、古巣対戦の柳育崇も同じくベンチスタートとなった。

 

 

マッチレビュー

■組織的な守備を得点に結び付ける

 前回対戦は2月25日の開幕戦。前体制の初陣となった試合だったが、終始岡山に力の差を見せつけられ、3失点で完敗を喫した。そこから低迷し、結果が奮わずに現体制に移行したことは周知のとおり。栃木にとっては今季の出鼻をくじかれた開幕戦のリベンジをかけた一戦となった。

 試合は両チームとも長いボールによる縦に早い攻撃が中心。栃木はターゲットの宮崎を目掛けて、岡山は岩渕が左右CBの背後に流れて長いボールを引き出していく。

 よって、中盤では激しいセカンドボール争いが繰り広げられ、保持側が頻繁に入れ替わる展開に。立ち上がりこそ岡山に背後を取られ、セットプレーからチャンスを作られたが、丹野のファインセーブや森のゴールライン上でのクリアで序盤の失点を回避。大きなピンチを2つ凌ぐと、次第に主導権はホームチームに傾いていった。

 流れを引き寄せるきっかけとなったのは、前線からの組織立ったハイプレス。前節は山形の巧みな繋ぎにプレスを剥がされたが、この日は全体が繋がり、コンパクトを維持して圧力をかけることができていた。前線が寄せていけば最終ラインをしっかり押し上げ、ロングボールを蹴り込む瞬間にラインを下げて前向きで弾き返す。地上戦ではパスの出しどころを次々と狭めていき、中盤で攻撃の芽を摘み取っていく。ゾーンの網にかけるような組織的な守備を見せることができていた。

 18分のシーンは良い守備から良い攻撃に繋がった、まさに理想的な流れだった。シャドーの早川がボールを受けに下りたところに森が寄せていき、内側へ預けたところに森が再度アプローチ。狭いエリアでボールを絡め取ると、右サイドに広げて最後は福島のクロスに宮崎が頭で合わせた。

 このシーンにも見られたように栃木は左サイドの守備がよく機能していた。岡山は早川と柳貴博の前後を入れ替えて早川を浮かせようとしていたが、栃木は森とラファエルがマークを分担し、それを許さない。ラファエルの迎撃がファールの判定となる場面もあったが、軒並みハイプレスで塞き止めることができていた。

 中盤勢のパフォーマンスで言えば、青島の予測とボール奪取はここ最近の中盤に不足していた強度の高さを感じられるものだった。ここで入れ替わられるとマズイという場面ですかさず登場し、ボールを奪い切れば自らカウンターのスイッチを入れていく。

 チーム全体が締まった守備対応を連続するなかで、先制点に繋がるカウンターを発動したのも青島だった。平松が球際バトルを制し、青島のもとにボールが渡ると、そこから約50mをドリブル突破。ゴール前まで持ち運んだ青島からラストパスを受けた南野のシュートは相手DFに阻まれたが、そのこぼれを青島がボレーで叩き込んだ。自ら発動したカウンターを自ら仕上げてみせた先制点だった。

 しかし、リードも束の間、2分後には同点に追い付かれてしまう。サイド対応では川名が相手の切り返しに後手を踏み、ゴール前では相手のランニングにボランチ勢が釣られてしまった。バイタルエリアでフリーの早川に対して奥田の踵を返した寄せも一歩間に合わなかった。

 その後は同点に追い付いた岡山ペース。無理に繋いだことでプレスに苦しんだ反省からか、序盤のようにロングボールの比重を高めて背後への狙いを見せていく。一方栃木は宮崎が競り勝ったあとの距離感が遠く、攻撃が単発化。セカンドボールを回収する岡山にボールを支配された前半終盤だった。

 栃木は先制した次のプレーで南野がミドルシュートを放つなど、勢いのままに畳み掛けそうな雰囲気を見せたが、同点弾に打ち消され、逆に岡山の猛攻を受ける展開に。前半は互いに1点を取り合い、1-1でハーフタイムを迎えた。

 

 

■坂の投入で流れを引き寄せる

 後半も一進一退の展開で進んでいく。後半立ち上がりの栃木によく見られたのが後ろでの繋ぎから左→右とボールを動かし、右サイドから前進していく形。奥田が相手FWの背中で受けることで中央を閉めさせ、フリーになった福島からボールを前へ運んでいく。川名との右サイド攻撃やライン間に顔を出した宮崎に縦パスをつけるなど、福島の攻撃性能を生かしたビルドアップができていた。

 一方岡山も背後を狙う前段として中盤での起点作りを工夫。2ボランチの距離感を近くすることで栃木の守備陣を引き付けた背後を狙っていく。2ボランチで繋げない場合は、右サイドは早川、左サイドは鈴木や岩渕が絡むことで人数を確保。左シャドーの田中はどちらかと言えば右サイドに流れながら背後を窺うことが多かった。

 どちらのペースとも言えない展開で進んでいくなか、立ち上がりの時間帯を終えると、岡山に決定機が訪れる。

 59分、阿部のクリアに反応した岩渕が背後に抜け出すと、ペナルティエリア外により手を使えないGK丹野と接触。ボールは無人ゴールマウスの手前にこぼれ、これをラファエルが間一髪でクリアした。続く61分には木村の右からのクロスを田中に合わせられるもGK丹野のファインセーブ。64分には前傾姿勢になった背後をカウンターで突かれたが福島・ラファエルの対応でこれも間一髪凌いだ。

 栃木としてはこの時間を何とか耐えきったのが大きかった。一つのピンチを皮切りにガタガタっと崩れてしまうのが今季の栃木の悪癖であり、上記のピンチはいずれも一点ものだった。この劣勢に手を打つべくベンチでは坂を投入する準備が進められていたが、何とかゼロに凌げだことで坂のピッチインが間に合い、それとともに状況を落ち着かせることができた。

 その坂、最終ラインでボールを持ったときの落ち着きや盤面を整える時間の使い方はさすが経験のある選手だなという印象だった。この日は右CBとして起用されたが、DFリーダーとして平松のポジションも定位置ではないことを印象付けるプレーぶりであった。

 坂を投入してからの栃木はこれまでとは異なるビルドアップを敢行。後ろで繋ぎながら右CBを押し上げるのは福島が入ったときと同様だったが、福島がサイドを駆け上がるのに対して、坂は内側からボランチ脇に上がるような列移動だった。中盤3枚にして左からのボールを引き取りやすくしつつ、右サイドをより押し上げようという狙いだっただろう。矢野、小堀を投入してからは右からの攻撃がより有効になった印象だった。

 試合は終盤に進むに連れて栃木が敵陣に押し込んでいく展開に。矢野が最前線からハイプレスのスイッチを入れて前線プレスを活性化させ、ロングボールを蹴らせれば中盤でセカンドボールを回収する。中盤を抜けられても最終ラインからの迎撃はタイトで、全員の守備意識が最後まで途切れなかった。森と青島は足をつって80分に交代、福島も何度も曲げ伸ばしするほどのハードワークだった。

 試合はこのまま1-1で終了。主導権は五分五分かやや栃木寄りで進みながらも、決定機の数では岡山が上回った試合は、両チームにとって痛み分けとなるドローとなった。

 

 

選手寸評

GK 27 丹野 研太
ビッグセーブ連発。決定的なピンチを何度も身体に当てて凌いだ。丹野の活躍なくして勝ち点は得られなかっただろう。

DF 2 平松 航
長いボールに対して高さと機動力を生かして卒なく対応した。DFリーダーとして周りを統率するラインコントロールもばっちりだった。

DF 23 福島 隼斗
大外を駆け上がり、川名とともにサイドアタックを敢行。低い位置では前方に鋭い縦パスを差し込む配球力を発揮した。

DF 33 ラファエル
長いボールへの対応はパーフェクト。宮崎に差し込む縦パスや川名への対角フィードなど攻撃の起点にもなった。

MF 10 森 俊貴
普段とは逆のサイドでプレーした影響もあり、少し窮屈な印象だった。対面の柳貴博が高めに取るため、攻撃に切り替わった際にポジションを上げ切れなかった。

MF 15 奥田 晃也
相方が青島だったため普段は神戸が担う舵取り役を務めた。中盤で相手のプレスの矢印をズラしたり、シャドーを引き付けて左右CBを浮かせたりと攻撃にアクセントをつけた。

MF 18 川名 連介
久々に右サイドで起用され、福島とともに素早いサイド攻撃を展開した。失点シーンの守備対応は軽かった。

MF 22 青島 太一
ピッチを所狭しと動き回り、予測を生かしたインターセプトと球際での強度の高さを発揮。ボランチが久しぶりとは思えない貢献ぶりだった。記念すべきJ初ゴールは青島らしい推進力を生かした会心の一発だった。

FW 19 大島 康樹
宮崎と近いポジションを取り、中央とWBを繋ぐ中継地点としてプレー。50分には自身のもとにボールがこぼれてきたが、左足シュートはミートできなかった。

FW 32 宮崎 鴻
この日も安定したポストプレーの強さを発揮。味方への落としと自らターンしての持ち出しを使い分けるプレー判断も良かった。先制シーンでは相手2枚を引き付けたことで青島がフリーで運べるコースを作った。

FW 42 南野 遥海
チームとして右からの攻撃の比重が高かったが、南野が効果的に絡めたシーンは少なかった。

DF 13 坂 圭祐
右CBとして途中出場したが、攻撃時はボランチの横でビルドアップに加わったり、内側から相手を追い越して背後を取るなど、福島とは異なる攻撃参加を披露した。

FW 38 小堀 空
前節同様に終盤訪れたチャンスを枠に飛ばすことができず。チャンスに顔を出せている証拠なので続けていきたい。

FW 29 矢野 貴章
最前線に入り、前からのプレスを活性化させた。あれだけGKに向かってスプリントする姿を見たら後ろはプレスの足を止められないだろう。

MF 6 大森 渚生
終盤は右からの攻撃が中心となったため、大森自身の見せ場は少なかった。

MF 14 土肥 航大
3ヶ月ぶりのリーグ戦出場。後半ATに左足からクロスを上げて小堀のボレーを演出した。貴重な中盤のレフティーとして状態を上げていきたい。

 

 

最後に

 非常に締まった好ゲームだったと思う。決定機を多く作られながらもゴール前では身体を張ったディフェンスで最小失点に抑え、最低限勝ち点1を死守する粘りの戦いを見せることができた。今季これまで13敗を喫しているのに対して引き分けが5回に留まっている現状を考えれば、勝ち点1を積めた意味は大きいだろう。得失点差のアドバンテージを見込めない今季はこうして勝ち点を積み上げることが何よりも大事なことである。

 ここから3週間の中断期間に入ることになるが、突き詰めていかなければならないことは多岐に渡る。現状は内容の良化を勝ち点に反映し切れておらず、4月を最後に降格圏から脱出できていない。残された試合数は決して多くないだけに、中断明けからはギアをさらに引き上げ、結果にシビアに戦っていきたい。

 

 

試合結果・ハイライト

2024.7.14 19:00K.O.
栃木SC 1-1 ファジアーノ岡山
得点 32分 青島 太一(栃木)
   34分 早川 隼平(岡山)
主審 山下 良美
観客 6211人
会場 カンセキスタジアムとちぎ