栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【8失点大敗に思うこと】J2 第8節 栃木SC vs ジェフユナイテッド千葉

スターティングメンバー

栃木SC [3-5-2] 11位

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 前節長崎戦は終了間際に南野の得点で追い付きドロー。土壇場で勝ち点1を掴む貴重な引き分けとなった。その長崎戦から中3日で迎える今節はスタメンを3人変更。小堀、南野、矢野に代わり、青島、奥田、宮崎が入った。青島と宮崎は初先発。イスマイラは3試合ぶりのベンチ入りとなった。

 

ジェフユナイテッド千葉 [4-2-3-1] 16位

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 優勝候補と目されながらここまで2勝1分4敗の勝ち点7に留まっている千葉。前節熊本戦はJ2最年少得点を更新されるPK被弾で敗れ、4試合勝ちなしとなった。前節からのスタメンの変更は2人。ともに古巣対決の藤田とメンデスが先発に復帰し、栃木県出身の田中が右SHに入った。

 

 

雑感

 こういう試合はどのようにまとめれば良いか分からない。こんな大敗からポジティブな要素を取り上げてもショックを和らげる方法にはならないし、現実から目を背けたところで大敗の事実は変わらない。試合の大枠から逸れてしまえば、備忘録として続けてきたこのブログの存在意義がないし、誰かの機嫌を取るための文章を残しておくつもりはない。

 一方で、一喜一憂の「一憂」に振りすぎる必要もないと思っている。もちろん8失点は栃木がJリーグに昇格した2009年以降で最多失点である。当然褒められた試合ではない。ただ、このチームは甲府、横浜、大分を僅差で振り切ったチームでもある。それだけにそうした試合との決定的な違いであったり、チームの狙いと実際のピッチ上に現れた現象を整理することは、試合を単なる結果ではなく成長過程として捉える上で意味のあることだと思う。今後の教訓という立派なものではなく、ただただ記録として雑感ベースで記しておきたい。

 

 前置きが長くなったが、試合を通して栃木は千葉の繋ぎに対してかなり強めにプレッシャーをかけようとしていた。前半の3失点を受けて後半ラファエルが相手のトップ下横山へのマークを強めたことがクローズアップされているが、これは前半から見られたもの。ボールを握る千葉に対して基本的に前から人に当てていくスタンスだった。

 しかし、盤面を見ると、システム的にプレスの人数が足りていないことは明らかだった。千葉はビルドアップ時自陣に6人をかけるのが基本形。これに対して栃木は2トップと3MFの5人で対抗するのたが、相手を背中で消して人数差を解消しようとしても、千葉はGK藤田が加わることで常に数的優位を維持していた。6人対5人の構図に横山とラファエルが加わっても同様だった。

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 栃木の失点のほとんどはこうした盤面の数的不利を埋められないまま、与えたスペースから喫したものだった。

 1失点目と6失点目は右CB(ラファエル、大谷)が前に出て守備をしたことで孤立した石田のサイドから崩されたもの。1失点目は椿を走らせる長いボールに石田が振り切られてしまい、6失点目は大谷が前に出たことで中央に絞った石田がボールサイドの日高に寄せ切れなかった。

 2~4失点目は中盤のスペースに下りた小森のポストプレーを平松が潰すことができず、逆サイドへの展開を許したことで喫したもの。栃木はIHがSBに寄せ、アンカーの神戸もポジションを離れて相手に寄せるため中央ががら空きになることが多く、出来たスペースに対する最終ラインからの迎撃も間に合っていない状況だった。

 前述したとおり、栃木はどんなに強くプレスをかけてもGK藤田で枚数を調整されてしまえばボールを奪うことはできない。次第にIHの横ズレによって中盤にスペースが出来始め、本来使われてはいけないバイタルエリアを容易に明け渡すことになっていく。右CBの迎撃のみでそこを埋めるのは至難の業で、そうした全体の守備の歪みから失点を重ねることとなってしまった。

 システムの噛み合わせの悪さはこれまで書いてきたとおりだが、これでも全体をコンパクトに保てていればまだ違った。前線プレスの行く行かないのメリハリをきっちりつけてサイドを限定できれば、後ろの選手も狙いを定めることができる。前と後ろが呼応することでようやくコンパクトな守備を体現できるし、そこで初めて強度あるプレスを生み出すことができる。

 その意味でこの日の栃木は前線プレスが数的不利でハマらないまま中途半端に寄せ続けてしまい、最終ラインも高さ設定があやふやなままスペースを明け渡し続けた。そこへの明確な修正も見られなかった。個々はハードワークしていたが、組織として戦えていなかったため、個のクオリティに長ける千葉の組織力に為す術なく圧倒されてしまった。ある意味必然の大敗だった。

 

 個人的には今の栃木の5-3-2はかなり難易度が高いシステムだと思っている。前からプレスをかけていくには人数が足りないし、人数を合わせるには中盤から前線に人を費やし、最終ラインから中盤に人を押し出す必要がある。5-4-1や4-4-2以上に自分たちの形を崩すことが前提にあるシステムは相当な練度がないと厳しい。若いチームならなおさらである。

 だからと言って今すぐこのシステムを止めてほしい訳ではない。守備では5バック+3MFで中央をしっかり閉じ、攻撃では大外レーン専任のWBがいて、中央には2トップ2IHがいる。良いとこ取りのシステムのように思うし、これがハマった試合では力のあるチームとも十分張り合うことができている。それだけにシステム的に振れ幅が大きくなることはあらかじめ踏まえておかなければならない。今シーズンは後ろに張り付くだけのチームから脱却するための過渡期と捉え、辛抱強く見守っていく必要があるように思う。

 

 

選手寸評

GK 27 丹野 研太
ほとんどの失点がGKノーチャンス。ゴール前の相手選手に渡った時点でほぼ決まっていた。

DF 2 平松 航
これまでで最も精細を欠いた。ボールを受けに下りる小森を潰せず何度も起点を作られ、CKからの2失点も平松がマークを振り切られたところからだった。

DF 17 藤谷 匠
最終ラインの選手のなかでは比較的安定したプレーを見せていたが、崩壊したDFラインを束ねることは出来なかった。

DF 33 ラファエル
千葉の浮いた中盤(主に横山)を捕まえ切れなかった。自分のマークがいないときは両脇の平松や石田をもう少し押し出したい。

MF 6 大森 渚生
守備に走らされ、ハーフラインを跨いでプレーしたシーンは数える程度だった。

MF 7 石田 凌太郎
守備時はラファエルが前に出るため右サイドで孤立し、再三ロングボールで背後を狙われた。31分のロングカウンターの場面で低いクロスを選択したプレーは判断ミスだったように思う。

MF 19 大島 康樹
終始守備に走らされた。26分のミドルシュートはこの日最大の決定機だった。

MF 22 青島 太一
カウンターに移行する局面で相手の素早い潰しに遭った。ハーフタイムでピッチを退く悔しいリーグ初先発となった。

MF 24 神戸 康輔
両脇のスペースを使われ、前後左右に守備に追われた。チームに落ち着く時間をもたらすことが出来ず、ハーフタイムに交代となった。

FW 15 奥田 晃也
柔らかいボールタッチはこの日も健在。良い攻撃を構築できた際は必ず奥田が関わっていた。後半は奥田のもとまでボールが届かなかった。

FW 32 宮崎 鴻
自身を目掛けたロングボールなら千葉のCB勢を相手にほぼほぼ勝利することはできていたが、スペースへのボールはアジリティで後手を踏んだ。

MF 14 土肥 航大
ベンチ入りが続いていたが、ようやくリーグ戦初出場。ボールを持ったときの空中を使うアイデアやスムーズな配球は神戸以上。ただ、DF能力はまだまだな印象。

FW 42 南野 遥海
積極的にボールに関わり土肥とともに中盤でゲームメイクした。本職ではないIHでのプレーとなったが、ボールを持てばシュートを第一に窺うFWの嗅覚も見せた。

DF 5 大谷 尚輝
右CBでの起用となったが、相手を捕まえにいくのか、最終ラインにステイするのかの判断が曖昧だった。

FW 9 イスマイラ
ロングボールに競るというよりは足元で受けて捌くプレーの方が多かった。88分の当てずっぽうなミドルシュートはいただけない。

FW 38 小堀 空
前線守備でハードワークしたが、局面での見せ場はなかった。

 

 

試合結果・ハイライト

2024.4.3 19:00K.O.
栃木SC 0-8 ジェフユナイテッド千葉
得点   3分 小森 飛絢(千葉)
   35分 鈴木 大輔(千葉)
   43分 椿 直起(千葉)
   50分 高橋 壱晟(千葉)
   56分 鈴木 大輔(千葉)
   59分 ドゥドゥ(千葉)
   75分 ドゥドゥ(千葉)
   76分 岡庭 愁人(千葉)
主審 御厨 貴文
観客 5603人
会場 フクダ電子アリーナ