栃木SCのことをより考えるブログ

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【勝負を決める強かさ】J2 第14節 栃木SC vs 藤枝MYFC

スターティングメンバー

栃木SC 3-4-1-2 18位

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 前節清水戦は1-4で敗戦。スコア上は大量失点での完敗となったが、中盤の構成を今季初めてダブルボランチにしたことで攻守において手応えを掴めた試合だった。前節からの変更は6人。石田と大森が出場停止となった両WBには小堀と森が先発。GK川田は今季初出場、イスマイラは今季初先発、平松と矢野は4試合ぶりの先発となった。ベンチの川名はリーグ戦初のメンバー入り。

 

藤枝MYFC 3-4-2-1 14位

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 水戸戦、群馬戦と土壇場での逆転勝利で順位を14位まで上げた藤枝。開幕からしばらくは深刻な得点力不足に悩まされたが、ここ2試合は5ゴールをマークし、藤枝らしい攻撃的なスタイルが戻ってきた印象だ。前線のアンデルソンは水戸戦、矢村は群馬戦で2ゴールを記録。古巣対戦となる久富は3試合連続でメンバー外となった。

 

 

マッチレビュー

■3-4-1-2における攻守の課題

 GW連戦の最終戦は勝ち点2差で迎える下位直接対決。中2日での試合とあって両チームともメンバーを大幅に入れ替えて臨む試合となった。

 前節から中盤の構成を変えた栃木はこの日もダブルボランチを採用。奥田と神戸が中盤で横並びになり、最終ラインからボールをピックする役割を担う。藤枝は前線3枚がプレスをかけてきたが、ボランチが前がかりに連動することは少なく、栃木がボールを保持する難易度はそれほど高くなかった。

 このとき両WBは高い位置に進出してサイドで幅を取る。前節は4-4-2を相手にしたことでSHとSBの中間ポジションを取っていたが、この日はミラー要素が強い相手とあって主体的にサイドの高さを決めることができていた。

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 よって自分たちの保持で相手の重心を押し下げられる栃木だが、そこからの前進には相当苦労していた印象だった。気になったのは前線3枚の動き出しが少なかったこと。背後を狙うランニングや縦関係を入れ替えるなど相手を惑わせる動きが少なく、ボールを前につけることができない。ロングボールも相手に捕まっている状態では十分に競ることができず、特にウエンデルに弾かれて中盤勢に回収されるシーンが非常に多かった。

 清水戦では宮崎と大島が背後へのランニングを繰り返したことで南野も狭いスペースで息が出来たが、この日はそれとは対照的。中央での起点作りに苦戦したためボールは自ずとサイドへ預けることとなり、WBが単独でやり切らなければならない状況が多々あった。逆足サイドに配置された森は縦を切られるとカットインせざるを得ず、そこからのクロスは相手も受け手とボールを同一視野に入れられるため難なく対応されたシーンが目立った。

 

 後方でボールを持てたのは藤枝も同じ。藤枝もビルドアップの起点となったのは3バックとダブルボランチ。西矢が左に下りることでウエンデルを前に押し出し、左重心の攻撃を繰り出していく。

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 個人的に藤枝は予想していたよりも繋ぎに固執しないチームだった。ダイレクト要素の強い攻撃も多く、長いボールやカウンターでスイッチが入ると後ろから選手が湧き出してくる。前線3人が下りながら起点を作っていた点では栃木と対照的だったと言えるだろう。一方でそこからゴール前にどう入っていくかという局面で手詰まりを起こすことが多く、攻撃面での課題を窺わせる状況になっていた。

 

 栃木にとって前半最大のチャンスは13分。カウンターから奥田のスルーパスにイスマイラが抜け出してシュートを放ったシーンだが、これは藤枝の左重心のビルドアップを上手く咎めることができたシーンだったと言えるだろう。藤枝がCBを押し上げることはあらかじめ分析されており、栃木は小堀が自分のマーク(榎本)を捨てて前に出ていく。強気の守備が功を奏したシーンだった。

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 ただ、栃木が効果的なチャンスを作り出せたのはこのカウンター1本のみ。やはり3-4-1-2ではプレスの枚数が少なくなりがちで、藤枝の繋ぎを制限できない場面が多かった。自陣からの繋ぎでの課題は前記したとおり。前半半ばからWBに入った際のボランチとCBのサポートを厚くすることで閉じ込められる場面は減ったが、そこからサイドを変えるのみでやはり中央で起点を作れたシーンは少なかった。

 互いに自分たちのターンでボールを握ることは出来るもののゴール前に効果的に入れることは出来ず。栃木はサイドからのクロスに終始したためエリア内でのアテンプトを増やせず、セカンドボール回収では藤枝に上回られた印象でハーフタイムを迎えた。

 

■一時的な劣勢下で失点を許す

 後半も概ね前半と同じ展開で進んでいく。多少変化が見えた部分で言えば、藤枝の右CB中川に対して中盤から奥田が寄せるようなったこと。ウエンデルに比べて攻撃参加は控えめではあったが、ファーストDFを決めることで前線プレスを連動させやすくする狙いだっただろう。前節は神戸を左ボランチに移して任せた役割をこの日は奥田が担っていた。

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 自分たちのポゼッションでは前半同様にWBへのサポートを増やして逆サイドに逃がしていく攻撃がメイン。左→右の流れから小堀が攻撃参加する形が多く、52分にはロングカウンターから強烈なミドルシュートを放つなど少しずつ栃木に流れが傾いていった。

 対する藤枝は前半よりも前進における矢村の負担が大きくなったように見えた。中盤のギャップに顔を出したり、背後へのランニングでロングボールを引き出したりと栃木にとって嫌な動きを繰り返していく。一方でアンデルソンと朝倉のシャドー勢は保持を安定させる繋ぎへの関わりが増えたため、攻撃の迫力は多少目減り。よって後半半ばまではやや栃木ペースで進んでいった印象だった。

 栃木は66分に宮崎、青島を投入して前線を補填。直後の67分には左サイドでの細かい連携から青島がバイタルエリアに侵入するもシュートは打ち切れず。続く69分にはイスマイラのプレスバックでボールを奪い、ピッチ幅を広く使って相手を押し込むと、森のクロスに反応した宮崎がわずかにオフサイドに掛かるなど着実に攻撃の圧力を増やすことができていた。

 しかし、栃木ペースになりつつあるなか潮目が変わったのが70分ごろ。選手交代によって左WBに移ったシマブクがフィニッシャー役となってカットインから惜しいシュートを2本放つと、押し込んだ流れから敵陣でFKを獲得。このFKを西矢がゴール左隅に決め切った。

 栃木にとって悔やまれるのは、一時的に押し込まれた局面でボールを弾き返して陣地を回復することができなかったこと。前で収めるなりサイドで時間を作るなり出来ていれば、青島が自陣でボールコントロールを誤ってFKを献上することもなかっただろう。

 そして、もう一つはFKに対する守備ラインが相手のフェイントによって押し下げられてしまったことである。右足のキッカーが先にボールを跨いだことで守備ラインが歪むとGK川田はボールの軌道を捉えることができず、死角から突然現れるボールに対応し切れなかった。

 終盤栃木はイスマイラ、小堀に変えて大島、川名を投入。ロングボールを量産することでパワープレーを仕掛けていくが、藤枝の集中した守備を前に起点を作ることができない。もっともパワープレーを仕掛けるまでに長身選手がベンチに次々と下がっていく采配には試合運びの観点で疑問符が付くが、過密日程による連戦を考えればやむを得ないところなのだろう。

 試合は1点を守りきった藤枝が勝利。栃木はこれで8試合勝ちなしの4連敗で順位を19位まで下げることとなった。

 

 

選手寸評

GK 1 川田 修平
今季初出場となったが、全体的にプレーは安定していた。失点シーンは味方のラインが下がったことで死角からボールが現れる不運な面もあった。

DF 2 平松 航
左右への散らしや前線へのフィードなど平松が戻ってきたことで後ろからの配球のレパートリーが増えた。

DF 17 藤谷 匠
小堀を前に押し出したことで相手2枚を見る場面も少なくなかったが、機動力を生かして上手く対応した。

DF 33 ラファエル
クロスに対して高さと強さを発揮した。

MF 10 森 俊貴
序盤に相手2枚を抜いて左足でクロスを上げたがそれ以降は縦を切られた。切り込んでのクロスはもう少し高い位置でないと相手に簡単に跳ね返されてしまう。

MF 15 奥田 晃也
ショートカウンターからイスマイラへ絶妙な浮き球パスを送ったプレーは奥田の真骨頂。中盤起用でボールに触れる機会が増え、多くの場面で技術の高さを発揮している。

MF 24 神戸 康輔
サイドへの散らしやサイド攻撃のサポート役を卒なくこなせている。縦への選択肢を増やせれば相手にとって脅威になる。

MF 38 小堀 空
慣れない右WBで及第点以上のプレーを見せた。アジリティに優れる選手ではないため相手を剥がすプレーはなかったが、カウンターから一つ右足でらしいミドルシュートを放った。

MF 42 南野 遥海
相手に囲まれることが多く、あまり前を向けなかった。

FW 9 イスマイラ
プレスバックで相手のボランチを引っ掛けるなど守備面の貢献も大きかった。

FW 29 矢野 貴章
ウエンデルになかなか起点を作らせてもらえなかった。16分には小堀からのクロスにバイシクルで合わせてみせた。

MF 22 青島 太一
投入直後に巧みな仕掛けからペナルティエリア内に侵入したがシュートは振り切れず。失点のきっかけとなるFKを与えてしまった。

FW 32 宮崎 鴻
相手の集中した守備を前に起点を作ることが出来なかった。

FW 19 大島 康樹
大島自身はどうしようもないが、終盤ロングボールのターゲットになってしまった。

FW 18 川名 連介
リーグ戦初出場。初めのうちはビハインド時の攻撃的WBとして出場を重ねそう。

 

 

最後に

 藤枝の試合運びこそ栃木に最も求められる勝ち点を得るための強かさだろう。自分たちでボールを握って相手を動かす時間を作りつつ、耐えるべきところは耐え、最低限ロースコアゲームに持ち込んで、隙を突く一刺しで最後は逃げ切る。試合自体は概ね五分五分の展開で進んでいったが、要所を押さえた藤枝が勝負を持っていった。

 清水戦、藤枝戦と内容に改善は見えるが掴んだ勝ち点はゼロ。結果が付いてこないという現状はチームビルディングの面でも致命的である。次節の対戦相手である徳島は序盤こそ色々あったもののここ4試合で3勝と復調しており、状況はこの日対戦した藤枝と重なる。残留圏に縋り付くためにももう落とせない。まずは連敗を止める勝ち点を積むことで自信を取り戻したい。

 

 

試合結果・ハイライト

2024.5.6 14:00K.O.
栃木SC 0-1 藤枝MYFC
得点 76分 西矢 健人(藤枝)
主審 松澤 慶和
観客 5166人
会場 カンセキスタジアムとちぎ