栃木SCのことをより考えるブログ

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【内容の充実を結果につなげる】J2 第28節 栃木SC vs ヴァンフォーレ甲府

スターティングメンバー

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栃木SC [3-5-2] 19位

 仙台戦、大宮戦、清水戦とドローゲームが続いている栃木。課題だった後半に押し込む時間を作れており、いかにチャンスを得点に結び付けられるかが鍵になる。

 前節からのスタメンの変更は2人。ここまで全試合に出場している根本が出場停止となり、代わって前線には大島が入った。大島は天皇杯広島戦、リーグ戦では第17節千葉戦以来のスタメンとなる。前節脳震とうの疑いで途中交代となった大谷はベンチスタートとなり、左CBには大森が入った。

 

ヴァンフォーレ甲府 [4-2-3-1] 4位

 前々節は群馬に敗れたものの、前節は長谷川元希の2ゴールで徳島を退けた甲府。昇格戦線をキープし、自動昇格圏と2ポイント差の4位に肉薄している。

 それだけに今週リリースされた須貝の移籍は大きな痛手。前節はすでに欠場していたとはいえ、キャプテンの離脱がチームに与える影響は大きいだろう。それに加えて今節はGKにもアクシデントがあった模様。大卒2年目のGK山内はこの試合がプロデビュー戦となった。

 

 

出し手と受け手を制圧

 甲府ホームで戦った前回対戦は0-1の敗戦。開幕からレギュラーを張ってきた岡崎が負傷離脱し、平松が今季初先発を飾ったのがこのカードだった。このときの最終ラインの並びは左から大森-福島-平松。甲府の強力FW陣に立ち向かうには急造感がどうしても否めず、最終ラインを押し上げられずに劣勢な時間の多い試合だった。

 しかし、それからしばらく経ち平松が主軸となって迎えたこの試合では、甲府の攻撃に対してしっかりと受けて立つことができていた。ウタカへの長いボールには平松が力強く弾き返していく。前残りする甲府の前線に応じて人数を調整することでチャレンジ&カバーを機能させ、セカンドボールには中盤が鋭く目を光らせることで、後ろは非常に安定感があった。

 そうした後ろの安定を支えに栃木は前線から積極的にハイプレスをかけていく。2トップが横並びで相手CBへ寄せるのはここ最近と同様だが、変化が見られたのが中盤の構成。これまでは2トップの後ろに西谷と山田が並び、佐藤祥がアンカーを務める逆三角形だったが、この日は山田を頂点に西谷と佐藤祥が底で並ぶ正三角形にセットすることが多かった。

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 清水戦では乾、大宮戦では柴山に使われたようにアンカー1枚の泣きどころは両脇に広がるスペースである。さすがの佐藤祥でもこれを一人では埋めきれず、この日は2ボランチにすることでそのスペースをあらかじめ埋めておく狙いだっただろう。背後を狙うなど甲府が栃木の陣形を引き伸ばすアプローチをしてこなかったため、コンパクトを保てた栃木は中盤での攻防で優位に立つことができた。

 西谷が中盤の底に入りながらも、チーム全体で相手ボランチを消すことができたのも大きかった。山田がトップ下の位置から左右にスライドして相手ボランチを捕まえつつ、2トップは上下の動きでボランチへのパスコースを遮断。西谷が前に出てくるのは彼らが見切れない場合のみ。IH2枚をピタリと付けるのではなく、チーム全体で相手ボランチを囲い込むイメージだった。

 これを嫌がって甲府ボランチを最終ラインに下ろせば、栃木は山田が前に出てきて3トップ気味に寄せることで甲府の繋ぎを外回しに追いやる。その外ではWBが高い位置から規制をかけていき、堪らず前線に放り込めば平松が強さを発揮するのは前述のとおり。こうして出し手と受け手を完全に抑えることができた。

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 試合の主導権を掌握した栃木はサイド攻撃を中心に甲府ゴールへ迫っていく。とりわけ大森が入った左サイドからは流動的な攻撃を何度も見せることができていた。山田は相手のブロックの隙間に顔を出してボールを引き出し、福森は1vs1になれば積極的に仕掛けてクロスを供給。タイミング良くそこに加わっていく大森を交えた左サイドのユニットは攻撃パターンが多彩だった。

 先制点に繋がったのも左サイドからの攻撃だった。福森と大森の関係性から相手のファールを誘うと、FKのキッカーは大森。このFKはファーに流れたものの、その流れで得たCKから大森の鋭いボールに大島が点で合わせてみせた。左サイドの充実を最後は伏兵大島が仕上げて、栃木が良い流れのまま先制することに成功した。

 

 一方甲府は前進に苦戦した序盤の反省を踏まえて、飲水タイム以降はGKやボランチのビルドアップに関わる回数を増やしていく。後ろでボールを落ち着かせられるようになると、右SB関口が後方から高い位置に進出する機会が増加。それに伴ってウタカとの距離が近くなったジェトゥリオが前を向くことが増えていった。

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 ジェトゥリオや長谷川は前を向いてからのシュートの意識は高かったものの、そのほとんどがペナルティエリア外からのもので、シュート本数に比してGK藤田が慌てるようなシーンはほとんどなかった。前半はこのまま栃木が1点をリードしてハーフタイムを迎えた。

 

 

一進一退のなかで得点を積み上げる

 甲府はハーフタイムに武富とジェトゥリオに替えて三平と鳥海を投入。トップ下に三平が入り、長谷川を左SHにスライドさせて後半を迎えた。

 この交代策によって甲府はある程度持ち直すことができたと言えるだろう。新たな顔触れとなった2列目は栃木のボランチ周辺のスペースを主戦場とし、縦パスを引き出す役割を徹底。彼らがボールを受けてターンできればすぐさまウタカや三平の裏抜けを狙うなど、栃木の迎撃守備を逆手に取るような攻撃を増やしていった。

 一方栃木もロングボールとそのセカンドボール回収からの攻撃は健在。50分にはこぼれ球に反応した小堀が左サイドからクロスを上げると、ペナルティエリア内に入ってきた黒﨑の折り返しは味方には合わず。55分には西谷がセカンドボールを回収し、小堀が中央突破から左サイドの福森にパスを送るもわずかに足元には合わず。57分には福森のインターセプトからロングカウンターを発動し、最後は小堀のフワリとしたパスに大島がダイレクトボレーで合わせた。先制点に至るCK獲得もそうだったが、小堀はほとんどのチャンスシーンに絡み、作り出すことができていた。

 互いに速攻をやり合う一進一退の展開ながらも、自分たちの保持から攻撃を作れるようになったという点ではやや甲府が盛り返したと言えるだろう。前半のように保持をベースとして左サイドのコンビネーションで崩すなどの攻撃が減った栃木は自陣で過ごす時間が増えた印象だった。GK藤田がゴールキックに時間をかけていたのもそうしたチームの焦りを落ち着かせる狙いがあったのだろうか。

 したがって背中から大量のブーイングを受けた藤田だったが、自身のロングキックを起点に追加点を奪うことに成功する。60分、藤田の長距離キックのセカンドボールにいち早く反応した山田がスルーパスを送ると、ペナルティエリア内で大島がGK山内に倒されてPKを獲得。これを大島が決めてリードを2点に突き放した。

 飲水タイム以降は互いに交代カードを切りながらも、徐々に2点を追いかける甲府が攻勢を強めていく。栃木は押し込まれた展開で重心を上げるべく一つ二つ繋ぐというよりは、リスクを追わずに2トップへ長いボールを送ることが多かった。全体が間延び傾向になったことで、宮崎を投入して中盤の機動力を高めた甲府に対して遅れてのアプローチが目立つように。長谷川の際どいFKから1点を返されれば分からない雰囲気だったが、課題のセットプレーも徹底したマンツーマンで耐えきった。

 押し込まれて盛り返せない展開にあって、終盤に投入したイスマイラと吉田は大きな仕事を成し遂げたと言えるだろう。得点を挙げたイスマイラは言わずもがな、個人的にここまで吉田を引っ張ることができた采配は地味に大きかったように思う。

 吉田サイドでマッチアップするのは鳥海と関口になるのだが、大きくポジションを動かして攻める鳥海はカウンター局面で守備位置にはおらず、終盤になると前がかりな立ち位置が顕著に。前半から上下動を繰り返した関口とフレッシュな吉田では当然アジリティに大きな差がある。これを結果に結びつけたのが後半ATのダメ押し弾だった。

 

 残り時間も危なげなく過ごした栃木がこのまま3-0で勝利。2か月ぶりのホーム戦勝利は降格圏との勝ち点差を引き離す貴重な勝ち点3となった。

 

 

最後に

 これ以上言うことない完勝である。

 試合前は根本の不在を不安視する声も多かったが、そのポジションに入った大島とイスマイラがそれぞれ結果で応えてみせた。とりわけ大島は代役と言わせないハイパフォーマンスを発揮。万能ゆえにこれまで様々なポジションで起用されてきたが、自らの力で再びFWとして結果を残せたことに長く見てきた人は喜びもひとしおだろう。

 3得点を挙げた攻撃面はさることながら、甲府の強力攻撃陣をゼロで抑えた守備面も間違いなく今後の自信になるはずだ。ウタカに対して強気に立ち向かった平松を中心に、最後まで身体を張って隙を見せない守備は非常に堅かった。安定した守備があったからこそ、序盤の主導権を握り、要所要所で得点を積み重ねることができたと言えるだろう。攻守で躍動したこの好感触を手に天皇杯福岡戦、そして群馬とのダービーマッチに向かっていきたい。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 3-0 ヴァンフォーレ甲府

得点 38分 大島康樹(栃木)

   63分 大島康樹(栃木)

   90+2分 イスマイラ(栃木)

主審 野堀桂佑

観客 4561人

会場 カンセキスタジアムとちぎ