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【わずかな差が大きなポイント差に】J2 第10節 栃木SC vs ヴァンフォーレ甲府

スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 18位

 前節は苦しみながらも山形に競り勝ち、今季2勝目を飾った栃木。最前線の根本が今季初得点を含む2ゴールを挙げ、守備では怪我人が続出するなか山形の反撃を1失点に抑えた。

 スタメンは前節から2人入れ替え。山形戦で負傷した岡崎と森に代わって最終ラインに平松、右WBに黒﨑が入り、それ以外は同じメンバーとなった。ベンチにはコンディション不良により欠場していた矢野と高萩が復帰。高嶋はプロ入り初のメンバー入りを果たした。

 

ヴァンフォーレ甲府 [4-2-3-1] 7位

 4連勝のあとの2連敗で順位を7位まで下げた甲府。連敗中は仙台に3失点、長崎には逆転負けと不安定な試合が続いた。何としてでもホームで連敗ストップし、3連戦の最後を勝利で締め括りたいところだろう。

 スタメンの変更は2人。最終ラインの三浦と蓮川に代わって、小林とマンシャが2試合ぶりに先発となった。長期離脱から前節復帰した林田は2試合連続での先発となる。

 

 

守備の出来が展開に直結

 強度の高い守備と奪ってから縦に早い攻撃で立ち上がりの主導権を掴んだのは栃木。試合の入りにプレス出力を最大まで引き上げて、強気な姿勢を押し出していくのは今季の栃木の大きな特徴である。もちろんこれをずっとという訳にはいかないので時間限定の奇襲的な手法ではあるが、中3日で移動もあったデーゲームということを考えれば、予想以上に押し込むことができたといえるだろう。

 守備では根本を筆頭に前線からのハイプレスが機能していた。甲府が少しでもボールを下げればハイプレスを発動し、3トップはCBを追い越してGKまで寄せていく。岡崎の不在により心配された最終ラインもボランチと協力して挟み込むことでウタカの動きを制限するなどして、全体的に早めに攻撃の芽を摘むことができていた。

 守備の出来は攻撃にも反映され、押し込んだ展開から甲府のシステムとのミスマッチを上手く突くことができていた。この日も好調だったのは左サイド。山田は相手に捕まらない立ち位置を取るのが巧みで、9分には前節を彷彿とさせる根本へのスルーパスを披露。縦に早い攻撃が難しいと見るや、タメを作り保持にシフトすることで、福森と大森の攻撃参加を促すこともできていた。押し込んだ福森の手前から大森がクロスを入れていくなど、この3人の連携は試合ごとに良くなってきている印象だ。

 

 ただ、序盤の勢いを得点に結び付けられずにいると、15分以降は甲府が盛り返す展開に。急造守備陣の影響は大きかったか、最終ラインを押し上げられなくなり、徐々にライン間を突かれる機会が増えていく。甲府が準備してきたビルドアップはSBに時間を作って2列目へ斜めにパスを打ち込むものだった。

 甲府は自陣でボールを繋ぐときはCB間にGKを挟んで3枚回しにすることが多かったのだが、両側に立つCBはそれほど広がらず近い距離感にポジションを取っていた。加えてボランチもCBをサポートできる位置を取り続けたことで、栃木の3トップは中央に収縮されるような格好になっていた。それによりSBにわずかに時間を与えられると、2列目へ斜めにパスを差し込んでいく仕組みだった。

 主な受け手となったのは左SHの長谷川。甲府の司令塔であり攻撃のキーマンである。栃木としてはここは必ず抑えておきたいところだったが、ウタカと三平の2トップに圧されてか、最終ラインが重かったのは前述の通り。平松と西谷の間で何度も長谷川に前を向かれてしまった。

 それからはオーバーラップした小林や、逆サイドの須貝、前方のウタカや三平へスルーパスを送るなど状況に応じた攻撃を展開。試合半ごろにこのエリアで激しいセカンドボール争いが勃発したのも攻守の入れ替わる最重要ポイントだったからである。西谷が持ち前の守備範囲の広さと出足の早さでカバーしようと奮闘したが、分の悪い勝負ではファールを取られるシーンも少なくなかった。

 前半最大のピンチは42分。このシーンでは平松が連動して長谷川に寄せることができていたのだが、その背後を三平に突かれた。福島が中央から引き出され、戻ってきた平松もマークを確定できず。栃木の右サイドの守備がハマっていないのを象徴していたシーンといえるだろう。

 甲府に流れを持っていかれてからの栃木は攻撃でも停滞感の否めない内容に。ダイレクトや幅を使うプレーは少なく、3バックとボランチ2枚のボールタッチ数が増える消極的なポゼッションが目立った。甲府とのシステムの噛み合わせを踏まえ、後ろからのビルドアップにこだわり過ぎたようにも見えた。山田、安田も同テンポの繋ぎにアクセントを加えるような働きはできなかった。

 

 

采配でテコ入れを図るも…

 ハーフタイムの交代で矢野と神戸を投入した栃木。前半の反省を踏まえ、ゴール前によりダイレクトに迫る機会を確保する狙いだっただろう。山田、安田はボール保持に精度をもたらすことはできるが、エリア内での迫力がもの足りない。矢野を入れてそこを補いつつ、その分神戸に保持のクオリティを求めるものだった。

 後半序盤はその狙いどおりに試合を進めることができていた。ロングボールを矢野が背後へそらし、その落としを根本が収めて、トップ下の山田がそのフォローをする。3人の距離感は近く、上手くセカンドボールを拾いながらゴールに向かう攻撃を繰り出すことができていた。

 前線3人の関係性に加え、効果的にビルドアップに関わる神戸の存在もあり、中央で起点を作れるようになると、左右への揺さぶりからサイドを活用するシーンも増加。黒﨑、福森が積極的にクロスを入れていき、後ろから左右CBも加勢する。福森がボールを持てるため大森は攻撃参加しやすく、前半に比べれば右CB平松も前線に顔を出せる機会が増えてきた。

 攻め込んだ後半立ち上がりはゴールに迫るチャンスを作り出すことはできていたが、肝心のゴール前でのシュートシーンはわずか。53分、56分と山田がカウンターから敵陣深くまでドリブルで運んだシーンが続いたが、最後のパス精度が伴わず先に待つ選手に届けることができなかった。

 そうしてやり切れない攻撃に終始すると、次第に甲府に盛り返される展開になるのは前半同様。甲府は途中交代から宮崎、三浦を投入して左サイドを補填すると、彼らの機動力を生かした突破から流れを引き戻していく。

 とはいえ、栃木も守備の集中力は高く、課題だったクロス対応も堅調。甲府に決定機を作らせず、試合は1点勝負が濃厚となる終盤に差し掛かったちょうどそのタイミングだった。78分、CKから佐藤祥のマークを振り切り頭で合わせたのはウタカ。ここまでウタカを自由にさせなかったが、ワンチャンスを押し込まれた。

 

 その後は大島、小堀らを投入してフレッシュな選手で同点を目指していくが、甲府の時計の針を進めるセーフティーなパス回しにボールを奪うことができず。ウタカ、長谷川を下げて5バック化しつつ、1トップに入った松本孝平がボールホルダーを追いかけ回す甲府の終盤の試合運びは見事だった。

 試合は1-0で甲府が勝利。栃木は3試合ぶりの敗戦、甲府は連敗を止める3試合ぶりの勝利となった。

 

 

最後に

 甲府にはウタカがいて、栃木には決定機を決め切れるストライカーがいなかった、それだけの差だったように思う。ただ、そのわずかな差が勝ち点3の違いを生んでいることも事実である。今の栃木において得点の期待が最も高いのは前後半の立ち上がりだろう。士気を高めフレッシュな状態で試合に入り、その勢いで相手を押し切り得点を奪い切る。押し込んでいる時間帯こそ1本のパス、1本のクロスにこだわっていきたい。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 0-1 ヴァンフォーレ甲府

得点 78分 ピーター ウタカ(甲府

主審 柿沼亨

観客 6143人

会場 JIT リサイクルインク スタジアム