栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【悔やむべきは先制後の試合運び】J2 第7節 栃木SC vs ザスパクサツ群馬

スターティングメンバー

栃木SC [3-4-2-1] 20位

 ミッドウィークの磐田戦に敗れ、順位を20位まで落とした栃木。9日間の準備期間でビルドアップとハイプレスに再び取り組んできたが、内容は厳しいものだった。

 そこから中3日で迎える今節のダービーマッチはスタメンを3人入れ替え。今季初めてベンチスタートとなった黒﨑に代わり、右WBには福島が負傷から復帰。前線には植田が2試合ぶり、根本が3試合ぶりに先発となった。

 

ザスパクサツ群馬 [4-4-2] 10位

 開幕2試合は無得点だったものの、ここ最近は得点を重ねており強敵清水にも3発快勝を飾った群馬。栃木と同じ中3日で今節を迎えるが、好調なチーム状況で戦えることは好材料だろう。

 スタメンの変更は1人。武に代わって最前線には平松が開幕戦以来の先発。ベンチには前節メンバー外だった細貝、北川、川本が名を連ねた。

 

 

群馬の秩序立ったスタイル

 昨季の試合でも感じたことだが、大槻監督が就任してからの群馬は選手の配置にこだわったサッカーをする印象の強いチームである。セカンドボール争いの連発や陣形を崩すことは極力避け、なるべく自分たちのコントロールのもと試合を進める。非常に秩序を大事にしているチームといえるだろう。

 具体的には、ベースとなる[4-4-2]からボールを保持したときには[3-2-5]に形を変え、パスを出し入れすることで丁寧にビルドアップするのが特徴だ。ボールを失いそうになれば最終ラインに下げて、時にはGKも交えて相手のプレスを牽制する。やり直しも含めて慎重にボールを動かすスタイルは、ロングボールを多用し縦に速い栃木とはある意味真逆のスタイルと言えるかもしれない。

 よって栃木としては秩序に重きを置く群馬に対して、どれだけ無秩序な状況を突きつけることができるかがこの試合の鍵となる。

 栃木のスタイルを考えれば、最も効果的に思えるのがハイプレスなのだが、これは群馬も分かった上で入念に対策をしてきた。栃木の[3-4-2-1]ハイプレスは群馬の[3-2-5]とマッチアップするため相性自体は悪くないが、寄せるタイミングが少しでも遅れたり、中盤で前向きの選手を作られてしまうと、一気にひっくり返されてしまうリスクを内包しているとも言える。群馬はこのシチュエーションを作り出すのが巧みだった。

 キーになっていたのが群馬の前線5人の立ち位置。右ワイドに右SB岡本、左ワイドに左SH川上が張ることで栃木の最終ラインを固定すると、ハーフスペースの佐藤亮と長倉が前線から離れて縦パスの受け手になる。その落としをボランチが前を向いて受けることで、群馬は中盤で視野を確保することができていた。これにより栃木は最終ラインがさらされる状況を頻繁に作られてしまった。

 栃木としては左右CBの大谷と大森がマッチアップするのだが、長倉らにタイミングよくボールを受けられワンタッチでリリースされてしまうと、どうしてもアプローチは遅れてしまう。後ろには平松が岡崎と駆け引きしており、前に出過ぎてしまえばそのスペースを使われるリスクもある。

 ボランチ勢も相手ボランチを睨みながら自分の脇に下りてくる選手に対応するのは難しく、全体的に群馬のボール回しに対して後手を踏む展開となってしまった。

 それでも前半を通して決定的なチャンスはほとんど作らせず、堅い守備ブロックで押し返すシーンは何度もあった。実際に迎えたピンチは左サイドを突破されてのクロスを佐藤にゴール前で合わされた34分のシーンくらい。ボールを握られながらも想定内で試合を進めることができたといえるだろう。

 

 ただ、一方でこれだけボールを握られてしまえば、当然自分たちの攻撃で力を発揮するのは難しくなってくる。全体を押し上げる時間を確保できないため根本が前線に孤立してしまい、セカンドボールの回収もままならない。

 ボールを握れればCBの攻撃参加を起点に群馬の一列目を越えることはできていたが、そこからは上手く前進ルートを見出すことができない。福島が後ろからつつかれてロストしたシーンはその代表例である。

 序盤に大島がクロスを2本上げたように、ピッチ幅を広く使い、相手の目線を変えながらもう少しシンプルにサイド使えれば良かったように思う。4バックの相手には左右に揺さぶることで陣形を広げさせるのが定石だが、同サイドに固執した攻撃で逃げ場を失いボールロストしてしまうのはもったいなかった。

 前半記録したシュート数は1本。ボールを握られながらもある程度は想定内で守れた一方で、攻撃を構築できない歯痒い展開で試合はハーフタイムを迎えた。

 

 

前向きのベクトルで退場も吹き飛ばしたが

 後半開始から栃木は大谷に代えて黒﨑を投入。黒﨑はいつもどおり右ワイドに入り、福島は右CBにスライド。前半大谷が苦戦した長倉への対応にさっそく手を打っていく。

 立ち上がりの48分には、黒﨑が自らプレスのスイッチを入れて猛烈に寄せることで、プレス強度を一段階引き上げると、負けじと群馬も黒﨑の背後を狙うことでプレスを牽制。ただ、前半と比べれば右CBに入った福島の対応は素早く、右サイドの守備が整理されたことで全体のベクトルが前に向いた後半立ち上がりだった。

 矢野と福森の投入は立ち上がりの勢いをさらに高めるものとして納得できる交代策だった。矢野のプレス強度は周知のとおり。福森を左ワイドに置き、森を一列前に押し出すことで、左サイドでも前向きのベクトルを作り出していく。それだけにチームとして「さぁここから!」という時間帯に神戸に2枚目のイエローカードが提示されたのは痛恨だった。

 一人少なくなってからの栃木は佐藤祥を投入し、ポジションを一列上げたばかりの森に最前線と中盤の役割を兼務させることで全体の運動量を確保。とりわけ森の存在は、攻撃時は矢野と並んでボールを収められることで全体の上がりを可能にしつつ、守備になればWBでの守備経験を生かして堅く守れるため、一人少ない状況において助かる存在だった。

 すると、迎えた69分に栃木が先制に成功する。GK藤田からのロングボールを矢野が競ると、佐藤祥、森、西谷がセカンド勝負をものにして右サイドの黒﨑へ展開。ボールを受けた黒﨑がアーリー気味にクロスを入れると、ボールはファーに流れ、逆サイドから飛び込んできた福森が見事なダイビングヘッドを決めてみせた。福森は移籍2年目で待望の初ゴール、チームとして今季初の先制点をあげることに成功した。

 

 一人少ない状況での先制点は非常に価値のあるものだったが、同時に試合運びを難しくさせたのも事実だろう。ビハインドを負った群馬が圧力を強めてきたことで、栃木は攻めの選択肢を取りづらくなっていく。

 終盤のキーマンになった群馬の左SH山中の仕掛けは素晴らしいものだった。昨季SBでプレーしていたときはそれほど怖さは感じなかったが、この試合においては抜群の秘密兵器ぶりだった。同点弾と逆転弾を演出するMOM級の活躍だったといえる。

 ただ、よくよく考えればリードをしてからの栃木は黒﨑が自陣に張り付く時間が長く、簡単に仕掛けさせてしまった感は否めなかった。0-0のときのように前から行く姿勢を残しつつ、もう少しボール回しを規制をかけたかったところである。群馬が3バックによるビルドアップを止めて左SB中塩の攻撃参加を解禁したことは考慮しなければならないが、最終的に戦術山中になっていたことを考えれば、もう少しやりようはあったはずである。

 

 試合はこのまま1-2で終了。終盤群馬に逆転を許した栃木は2連敗、群馬は2連勝と明暗分かれる結果となった。

 

 

最後に

 群馬にホームで逆転負けを喫する屈辱的な敗戦となった。

 神戸の退場がチームに大きな影響を与えたことは言うまでもないが、時崎監督が話していたとおりそれ自体が逆転を招く引き金になったとは思えない。ゴール前に人は足りており、局面を切り取れば群馬は少ない人数でゴールを完結させている。

 問題は先制後の試合運びである。今季初めて先制点を奪い、さらには一人少ないというイレギュラーな状況が同時に訪れたことは確かに試合を難しくさせたが、先制したことによってそれまで出来ていたことが出来なくなってしまうのはあまりにもったいない。ダービーマッチだからこそ強気に戦い抜いてほしかったのがこの試合で抱いた正直な感想である。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-2 ザスパクサツ群馬

得点 69分 福森健太(栃木)

   77分 佐藤亮(群馬)

   87分 風間宏希(群馬)

主審 川俣秀

観客 4473人

会場 カンセキスタジアムとちぎ