栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【チームづくりの難しさ】J2 第6節 栃木SC vs ジュビロ磐田

スターティングメンバー

栃木SC 18位 [3-4-2-1]

 前節5試合目にしてようやく初勝利をあげた栃木。大宮に先制点を献上する苦しい展開だったが、森と高萩が立て続けに得点を奪い劇的な逆転勝利を飾った。

 前節からのスタメンの変更は3人。これまでシャドー起用だった矢野が最前線に入り、シャドーには森と大島を起用。最終ラインには負傷した福島に代わり大谷が入った。

 

ジュビロ磐田 17位 [4-2-3-1]

 開幕から5試合で1勝と苦しいスタートを切った磐田。リーグとルヴァンカップを並行して戦っており、この試合が9連戦の2試合目となる。

 前節からはスタメンを2人入れ替え。代表活動によりチームを離脱している鈴木海音に代わって、最終ラインには出場停止明けの中川が先発。ジャーメインは今季初めてメンバーを外れ、ドゥドゥが左SHに入った。

 

 

準備期間で再び取り組んだこと

 中3日の過密日程で戦う磐田に対して栃木は中9日と試合間隔に大きな差があった両者。

 栃木としては手応えを掴んだここ2試合を踏まえつつも、この準備期間でプレシーズンから取り組んできたハイプレスとビルドアップに再び重きを置いたトレーニングを行ってきたのだろう。人選や試合の入りは前節大宮戦とは違う雰囲気の窺えるものだった。

 一つはハイプレスの強度。この日の栃木はプレスの強度が高く、最前線の矢野はCBを追い越してGKまで、右シャドーの大島はCBリカルドグラッサまで寄せるシーンがしばしばあった。一方で左シャドーの森は対面の右SB鈴木を見ることが多く、全体的に右肩上がりのようなプレス構造になっていた。

 左右のバランスにどのような狙いがあったか正直読み取れなかったが、少なくとも前節大宮戦のように前への勢いが乏しい状況を避けたかったのは確かだろう。大宮戦は[5-2-3]の3トップがプレスをかけず並んで構える時間があまりに長かった。それを解消するため右からの圧力を高め、最も負荷の高い右WBには黒﨑の豊富な運動量を期待したものだったが、実際のところそれが仇になってしまうことが多かった。

 開始早々の2分、黒﨑のプレスに対して松原がドゥドゥとのパス交換からサイドを突破すると、サイド深くまで運んでクロスを供給。ニアで合わせた後藤のシュートは枠を外れたものの、これを皮切りに磐田は栃木の右肩上がりの背後を徹底して狙うようになっていった。

 広いスペースで1vs1になれば攻撃側のメリットは大きい。ドゥドゥと大谷の1vs1のほか、中盤に下りるドゥドゥに大谷が食い付けば後藤と岡崎の1vs1を作ることができる。

 そうしてサイドの攻防で主導権を握った磐田は先制点を得るまでにそれほど時間はかからなかった。16分、リカルドグラッサからスペースに走るドゥドゥへボールを送ると内側の金子へ。金子の折り返しにニアで後藤が潰れると、最後は中央に詰めていた松本がゴールへ押し込んだ。

 栃木としては広いスペースを簡単に使われたのに加え、大谷がドゥドゥを、神戸が金子を、岡崎が後藤を止め切ることができなかったのも痛恨だった。

 

 大宮戦との違いは最終ラインからのビルドアップにも見ることができたが、こちらも出来はなかなか厳しいものがあった。

 磐田は守備時に後藤と金子が横並びになるため、栃木は最終ラインでフリーの選手を1人作ることができる。その選手がボールを前に運ぶことで相手SHを引き付けることができれば、次にパスを受けるWBは前進する余裕が生まれるのだが、ピッチ上でその通り上手くいったシーンはごくわずかだった。

 磐田の2トップのスライドでCBがサイドに閉じ込められてしまったり、WBがSHの視野内に留まってしまったり、さらにはパスの正確さやトラップの技術など選手個々によるエラーなど、全体的なチグハグさは否めなかった。

 逆に回数は少なかったが、上手く相手陣内に入り込めたシーンでは、漏れなく左右CBの持ち運びが攻撃の起点となっていた。

 40分、左サイドでの組み立てから神戸が大谷へサイドチェンジ。パスを受けた大谷が後藤の脇から持ち運ぶと、右サイドの細かいパスワークから矢野のポストプレーを活用し、最後は森がミドルシュートを放った。43分にも、大森の持ち運びを起点に得たCKから西谷のポスト直撃が生まれている。

 ただ、前半を通してみれば相手ゴールを脅かしたシーンはほぼ皆無。攻守に課題の残った前半は0-1でハーフタイムを迎えた。

 

 

流れを掻き消された痛恨被弾

 思うように前進できなかった前半の反省を踏まえ、後半はシンプルな攻撃を増やしていく。ワイドの黒﨑や福森はボールを受ければ相手を抜き切らずにクロスを上げていくことでゴール前にボールを送り込む機会が増加。左右CBも可能な限り最終ラインからボールを持ち運んでWBに時間とスペースを与えることで、クロスまでの過程もスムーズになっていたように見えた。

 磐田が後藤のポストプレーで陣地を回復しようとすれば、岡崎が厳しく寄せることで反撃の芽を摘んでいく。攻守に要所を押さえられるようになると、全体の矢印が前を向いたことでハイプレスも復活。磐田の右SB鈴木のイエローカードも矢野の二度追いから端を発したものだった。

 磐田に追加点を許す65分までは栃木が完全にペースを握ることができていた。そして攻勢を強めることができたこの時間帯に同点弾を奪えなかったことが全てだろう。磐田の追加点は栃木陣内に久々にボールを進めたワンチャンスを仕留めたものだった。

 

 2点のリードを奪った磐田はここからカウンター路線にシフト。前がかりになる栃木に対して、少ない人数でカウンターを完結させていく。

 69分にはペナルティエリアに侵入した後藤のシュート、直後には金子のスルーからドゥドゥとGKと1vs1になったシーン、続く71分には後藤の裏への抜け出し。いずれも一点もののシーンであり、GK藤田の好守がなければこれ以上の失点も覚悟しなければならなかっただろう。

 後半攻勢を強めた一方で気になったのは交代カードがことごとくハマらなかったこと。ロングボールとクロス攻撃に手応えを感じた時間帯に投入された根本と佐藤は良い流れを加速できず、投入直後に被弾。高萩と植田もミスが多く、被カウンターのきっかけを作ってしまう。今季初出場となった五十嵐も見せ場を作るにはプレータイムが短すぎた。

 交代選手が後半序盤の流れに乗れず、時間とともに前半のようなチグハグさが生じてくると、プレスでも徐々に前後が分断するように。前はどんどんボールを奪いに行く一方で、後ろはカウンターを気にしてラインを上げきれない。チームがバラバラの状態では技術レベルの高い相手からボールを取り上げるのは難しく、セーフティーなパスワークで時計の針を進める磐田を最後まで脅かすことはできなかった。

 試合はこのまま0-2で終了。尻すぼみの後半を過ごした栃木は今季初の複数失点による敗戦となった。

 

 

最後に

 準備期間を確保できたことがかえって裏目に出てしまった試合といえるだろう。長崎戦、大宮戦も褒められた内容ではなかったが、多少現実路線に舵を切って勝ち点を積んできたこと考えれば、その流れを自ら途絶えさせてしまった印象の強い試合になってしまった。

 収穫を強いてあげるとすれば、後半序盤の試合運びだ。丁寧に後ろから繋ぎ、WBに時間を与えることでその後のクロス攻撃に精度をもたらすことができた。攻勢を強めるべく2トップ気味にしてから希薄になってしまったのは残念だったが、前向きに続けていきたいポイントである。

 次節は今季最初の北関東ダービー、ホームに群馬を迎える。群馬はこの試合と同日にアウェイで清水に3発快勝しており、ダービーに向けて調子は上向きである。栃木としては序盤の大一番として自分たちの価値を示したいところだ。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 0-2 ジュビロ磐田

得点 16分 松本昌也(磐田)

   65分 松原后(磐田)

主審 吉田哲朗

観客 5868人

会場 ヤマハスタジアム