スターティングメンバー
栃木SC [3-4-2-1] 19位
前節長崎戦は攻撃の形を作れたもののゴール前の精度を欠きスコアレスドローに終わった栃木。開幕からいまだ勝利がなく早くも正念場を迎えている。
今節は根本に代えて最前線に宮崎を起用。長崎戦の終盤に迎えた決定機のように、今最も得点の匂いがする選手である。ベンチには大分戦の負傷から復帰した大谷が名を連ねた。
大宮アルディージャ [4-4-2] 10位
ここまで2勝2敗とまずまずのスタートを切った大宮。前節は降格組の磐田に対して後半アディショナルタイムに先制点を奪い勝利。クリーンシートも記録し調子は上々といったところだ。
スタメンの変更は1人。出場停止明けの浦上が最終ラインに入り、前節先発の新里はベンチスタートに。頂点には前節決勝点のアンジェロッティが入り、甲府から復帰の石川は今季初のメンバー入りとなった。
徹底したシンプルさ
ゴール前で手数をかけてしまった前節長崎戦の反省を踏まえ、シンプルに戦うことが強調された試合だった。
この日も2トップ気味に起用された前線を生かすようにロングボール主体で戦い、サイドで前を向ければ時間をかけずにクロスを入れていく。迷いなくボールを入れていくことで大宮守備陣に準備する間を与えない守備対応を強いることができていた。
41分のシーンはその典型的な例だ。宮崎がセカンドボールを収めると、矢野を経由して黒﨑へ素早く展開。黒﨑はセカンドボールに備えて内側に立ち位置を取っていたため茂木に寄せられたものの、間髪入れずにクロスを上げたことで宮崎はマークを外すことができた。バー直撃のビッグチャンスだった。
クロスを上げる前段としてサイド攻略もスムーズに行うことができていた。大宮の[4-4-2]とのシステムのミスマッチを踏まえ、左右CBの福島・大森が大宮の2トップ脇から崩しに関わっていく。右サイドでは福島の上がりに加えて西谷や神戸も顔を出すことで、前節と比べて矢野はゴール前の仕事に集中できる時間が多かった印象である。後方が同数になるリスクを許容しながら攻撃を繰り出せていたため、クロスの機会を多く作ることができた。
対する大宮も前線をシンプルに生かす徹底度合では栃木に引けを取らないものがあった。
大宮の攻撃の特徴は2トップと両SHの4人が近い距離感でプレーすること。前からプレスをかけたい栃木を牽制するようにサイドの奥にボールを送り込み、跳ね返されても同サイドに閉じ込めることで自分たちのターンを継続させる。
サイドに流れてボールを引き出すアンジェロッティは体幹が強く、先に体を当てることでボールを収める巧みさがあった。岡崎にとっては今季ここまでで最も苦戦した相手だっただろうか。
大宮の前線4人は近い距離感でプレーするとはいえ立ち位置が被ることはなく、バランス良く攻撃を繰り出していた。アンジェロッティの存在に目が行ってしまうが、実際に手を焼いたのは逆足に配置された両SH。とりわけ左SHの高柳は内側にポジションをとることで最終ラインからボールを引き出し、グイグイと仕掛けてくる推進力があった。すかさず福島が迎撃に行くものの入れ替わられてしまうシーンも目立った。
前半の半ば頃は大宮の攻撃に対して受けに回ってしまい、また簡単なボールロストから押し込まれる場面が増えたが、ギリギリのところでなんとか持ち堪えられたのは大きかった。特に最後の局面で体を張る大森のシュートブロックは流れを明け渡さない価値ある奮闘だった。植田のロングシュートも劣勢を打破しようという強い意思の感じられるプレーだった。
ここから少しずつ流れを取り戻すと、34分には神戸のミドルシュートからCKを獲得。36分にはそのCKの流れから西谷のダイレクトボレーで大宮ゴールを脅かすと、続く38分には森のボール奪取から始まったカウンターから宮崎の左足フィニッシュ。そして、41分には上記したクロスバー直撃の宮崎のヘディングシュートと立て続けにチャンスを作っていく。
シンプルにクロスを入れること、シュートを打てるときに打つことで攻撃のテンポを落とさず、守備ではハイプレスを機能させ、最後の局面では体を張ってやらせない。いくつか大宮にチャンスは作られたものの、狙いどおりの試合運びができた前半だった。
劣勢を跳ね返した同点弾
後半立ち上がりは、大宮が柴山を一時的に利き足の左サイドに置くことで縦に速い奇襲的な攻撃を見せた一方で、栃木は右サイドから立て続けにクロスを供給し、両者ともにゴール前の局面を増やしていく。ともに集中した守備で難なく凌いでいくと、膠着を破るべく先に交代カードを切ったのはアウェイチームだった。
58分、大宮は室井と泉澤を投入すると、この交代を機に、室井を走らせる徹底した裏狙いを実行。ボランチ小島のタイミングをズラしたロブパスや正対した状態から仕掛けると見せかけてスルーパスを送る泉澤など、栃木としてはボールの出どころを徐々に抑えられなくなっていく。福島の負傷はその矢先の出来事だった。
大宮の交代直後には栃木も根本を入れることで長身選手3人を頂点に並べる奇策を講じていくが、ターゲットが分散したことでかえってセカンドボールに照準を合わせることができない。
こうして攻守に歯車が噛み合わないなかで迎えた70分、ついに大宮に先制点を許すこととなった。CKの二次攻撃の流れからマークが曖昧なまま前残りしていた袴田にファーで折り返され、最後はアンジェロッティに押し込まれてしまった。
【ゴールシーン】
— 大宮アルディージャ (@Ardija_Official) 2023年3月19日
3/19・栃木戦
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ビハインドになってからも栃木にとって苦しい展開は続いていく。リードしたことで守備強度が高まる大宮に対し、なかなか攻撃の形を作ることができない。73分にピッチインした高萩も中盤に下がってボールに絡むものの、ボール保持で有効打を打つことはできなかった。
それだけに79分にあげた同点弾は、試合の流れとは関係ないところから生み出した貴重な得点だった。
室井のプレスを受け、苦し紛れにGK藤田が前線に長いボールを供給すると、ボールは大宮の選手(岡庭)のもとへ。その岡庭に対して森が素早く寄せて奪い切ると、そのままボールを持ち運び30メートル超はあろう距離から右足を強振。目の覚めるようなミドルシュートを突き刺し、同点に追い付くことに成功した。
【3/19大宮戦】
— 栃木SC|Tochigi SC (@tochigisc) 2023年3月19日
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79分 #森俊貴 選手の豪快なミドルシュート⚽️🔥🔥🔥
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そして、81分には勢いそのままに逆転弾が生まれる。
大谷のロングボールに根本が抜け出して中央へ折り返すと、栗本のバックパスが小さくなったのを見逃さなかった高萩がボールへアプローチ。GKとのディフレクションも含め、気持ちで押し込んだ得点だった。
【3/19大宮戦】
— 栃木SC|Tochigi SC (@tochigisc) 2023年3月19日
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PICK UP🎥
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81分 #髙萩洋次郎 選手の逆転ゴール⚽️🔥🔥🔥
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リードするや、すぐさま佐藤祥と福森を投入。フレッシュな選手で守備強度の維持を図ると、[5-4-1]の割り切ったブロックで入ってくるボールを着実に絡め取っていく。奪ったボールはリスクをかけずに前線に残る根本に託すことでセーフティーに時計の針を進めると、最後は大宮の袴田を上げるパワープレーにも耐え切りゲームセット。
終盤の追い上げで一気に逆転した栃木は5試合目にして今季初勝利をあげることに成功した。
最後に
狙いどおりに進められた前半から一転、後半は終始劣勢を強いられる苦しい展開だった。失点は時間帯もやられ方もメンタル的に気落ちしかねないシチュエーションであったが、プレスの足を止めずに諦めないプレーを貫けたからこそ逆転まで持ち込むことができた。今後も直面するであろう劣勢時も体を突き動かす原動力にできるような貴重な成功体験を得ることができた。
チームとしてこれから取り組んでいきたいのは前半の戦い方だ。シンプルながらも攻撃を機能させることができたのは、相手の嫌がるポイントを押さえ、それを徹底できたからである。この試合を今季の基準としてより高いレベルに引き上げていきたいところだ。
試合結果・ハイライト
得点 70分 アンジェロッティ(大宮)
79分 森俊貴(栃木)
81分 高萩洋次郎(栃木)
主審 佐藤誠和
観客 6038人
会場 カンセキスタジアムとちぎ