スターティングメンバー
栃木SC [3-4-2-1] 19位
前節は上位の東京ヴェルディに0-2で敗れた栃木。後半セットプレーから先制を許すと、1点を追う終盤にミスから追加点を献上した。ここ3試合は連続で複数失点が続いており、守備の改善は急務である。
前節からはスタメンを5人入れ替え。前節メンバーを外れた岡崎がCBに入り、福島は一列前の右WBにスライド。シャドーの大島は9試合ぶり、高萩は10試合ぶりの先発となった。矢野貴章は前節に引き続きメンバー外となった。
ジェフユナイテッド千葉 [4-4-2] 13位
前節は好調清水に対して終盤の得点で劇的勝利を挙げ、今季初の連勝を飾った千葉。序盤は8試合勝ちなしと苦しんだが、ここに来て浮上の兆しを見せている。
前節からのスタメンの変更は一人。最前線の小森は負傷から復帰後初の先発となり、それまでトップ下に入っていた風間は右SHでの起用となった。守備の安定感は今季も健在で、鈴木・新井のCBコンビはここまでともにフルタイム出場を続けている。
前線の消極性が尾を引く
ここ最近の失点の多さを踏まえてか、この日の栃木は守備に軸足を置いた人選・戦い方をチョイスしたように見えた。岡崎の右には大谷を起用することで本職CBを二枚並べ、福島を普段よりも一列前にスライド。前線守備においても今一度中央を閉じて外回しにしてからプレスをかけることを意識して試合に入った様子だった。
このプラン自体は決して悪いものではなかったように思う。千葉の力のある2トップに対して3バックの守備力を強化して対抗するのは理にかなっているし、フレッシュな選手で守備原則を再び徹底させるのも理解できる。
立ち上がりの前半2分には、前線の3人で中央を切り、パス先に困った千葉のCB新井が右SB西久保につけると、福森が出足良く奪い去り、さっそくCKを獲得。バックパスに対して全体のスイッチが入った良いシーンだったが、これを最後にしばらくの間、栃木の前線プレスは沈黙することとなった。
要因を一つに絞ることはできないが、少なくとも2シャドーのパフォーマンスが芳しくなかったのは誰の目から見ても明らかだろう。自らプレスのスイッチを入れること、根本の入れたスイッチに合わせること、このどちらも全くできていなかった。相手ボランチを消すことに尾を引かれ、肝心の前に向かう姿勢は見る影もなかった。
インサイドに入ってくる風間や日高の存在が気になり、プレスに踏み切れなかったというエクスキューズはあるだろう。対戦相手からすれば栃木のボランチ脇に入ってボールを引き出すのは栃木攻略の常套手段であり、対する栃木としてはそこをシャドーが埋めるのか、後ろの選手に任せるのかは、その時々で判断が必要になる部分である。ただ、いずれにしてもそこから押し返したときにはそのまま矢印を前に向け、相手ボールホルダーに襲いかかっていかなければならないのだが、そうした気迫のある寄せは見られなかった。
そうした栃木の消極的な姿勢によって、千葉の最終ラインはほとんどフリーでボールを持てるように。栃木はここから簡単にロングボールを入れられると、最終ラインの背後を容易に取られ、次々と決定機を作られていく。
小林監督のコメントによれば千葉は立ち上がりから最終ラインの背後を取ることをプランとして準備していたようである。小森が立て続けにビッグチャンスを演出したように、栃木の消極的な姿勢が千葉の狙いを助ける格好になってしまった。
千葉が右サイドの手前から左サイドの奥目掛けてロングボールを集めていたのは一つの狙いだろう。守備時に5バック化する栃木の最終ラインのうち右から3人(福島、大谷、岡崎)に対して2トップと左SH椿をぶつける。ノープレッシャーの後方からは正確なボールが供給されるため、数的同数でも優位な状態で競り合いに臨むことができた。こちらサイドを選択したのは、最終ラインを押し下げることで空いた中盤のスペースから見木にミドルシュートを打たせる狙いもあったからだろう。
栃木としては前からプレスがかからず、ズルズルと最終ラインが下がってしまうと、カウンターを繰り出すにしても難易度が高くなってしまう。シャドーの守備貢献の少なさが攻撃面に表れるのなら多少目は瞑れたかもしれないが、そんなこともなかった。期待できるのは福森までボールを送り届けられたときくらい。中盤でコントロールしてほしい神戸もらしくないミスが多く、試合勘不足の否めないパフォーマンスだった。
大谷が見木のミドルシュートを顔面に受けて少し試合が止まった後、30分過ぎくらいからは前向きのプレスが多少改善されたように見えた。プレスをかけない前線に痺れを切らしたWBが無理やり前に出たようにも見えるプレスだったが、それまでの沈黙を考えればいくらかマシになっていたと言えるだろうか。それでも普段の水準にはおよそ及ばないレベルであり、不甲斐ない出来に終始した45分間だった。
押し返す兆しは見せたが
後半の序盤に山田を投入してからはそれなりに普段どおりの栃木に戻ることができた。山田はボールを受けた最初のプレーで相手DF二枚の間を割る積極的な仕掛けからCKを獲得。守備ではCBを越えてGKまで寄せていくなど前線からチームを牽引していく。それに相乗するように根本も前半以上にはっきりとプレスをかけられるようになった。
67分に西谷、小堀を投入すると、その勢いは加速。西谷は投入直後に前向きのプレスから勢い余ってファールした場面があったが、前半そのように寄せ切るシーンはどれだけあっただろうか。組織としてようやく機能したことを現すシーンだった。
押し返す兆しが見えた一方で、その流れに乗れなかった場面がそこそこあったのも事実。59分はその象徴的なシーンで、大森の迎撃により前向きになりかけたところを大島が一つ後ろに下げてしまったことで、パスを受けた神戸は相手に囲まれてしまった。すでにマーカーのついていた神戸は言わば時限爆弾のようなパスを受けた状況だった。ギャップ受けに長ける大島にはターンして前を向くトライを見せてほしかったところである。
また、左右CBの上がりが以前より希薄になっているのも気がかりな点だ。千葉戦だけでなくここ数試合において福島や大森の攻撃参加からチャンスを演出した場面は少ない。栃木の調子が良いときは彼らの上がりによって前向きのベクトルをさらに高めていけるのだが、どうにも物足りなかった印象である。
一方千葉はロングボールによる一発抜け出しは封じられたものの、今度は見木を中心にサイド攻略から栃木ゴールに迫っていくことに軸足をシフト。主に左サイドに下りることで大島のプレスを乱しつつ、前に押し出した日高やサイドに張る椿とともに攻勢を強めていく。
それでもスコアは動かないまま時間は進んでいくと、迎えた77分にホームチームが均衡を破る。
見返してみると、このシーンは栃木の前線プレスが機能した結果、相手GKに蹴らせたところから一連の流れが始まっている。この時点で栃木としては狙いの守備ができていた。それだけにロングボールに対してアラートに準備しておかなければならない最終ラインでミスが立て続けに生じたことは何とも痛恨だった。
そのなかでも気になったのが岡崎のクロスに対するポジショニングである。おそらく考えられるのは、サイドに釣り出された大森が万が一抜かれたときのカバーだろう。ただ、それによって本来最も埋めるべき中央のエリアを西谷に任せることになってしまった。ミスというよりは不運な状況下で、小森との勝負に敗れたと言えるだろう。
#5月21日#第17節 #栃木SC 戦
— ジェフユナイテッド市原・千葉(公式) (@jef_united) 2023年5月21日
ゴールシーンをPLAYBACK🎥
9試合ぶりにHEROのGOAL✨
前節HEROの#米倉恒貴 選手からの高速クロスを#小森飛絢 選手がニアへ滑り込み
ヘッドで自身6点目のGOAAAL‼️
DAZN視聴はこちら💁♀️https://t.co/JtKiOqCnM1 #jefunited #jleague #WINBYALL @hiirokomori86 pic.twitter.com/0u1VKVYruB
終盤栃木は宮崎を投入して前線に高さを集めるが反撃むなしく。最後まで福森はゴールを狙う姿勢を見せたが、ネットを揺らすことはできなかった。終盤の決勝点により敗れた栃木はアウェイ未勝利を継続することとなった。
最後に
結果的に1失点で済んだものの、前半の決定機を踏まえれば3失点で敗れていたとしても不思議ではなかっただろう。連戦を考慮してフレッシュなメンバーを起用した格好だったが、かえってチーム内での温度差を感じる試合となってしまった。寄せる、戦う、スプリントするのは今やどのチームだって当たり前に行っていること。それを泥臭く徹底することで何とかしがみついてきたのが栃木の良さであり、強みなのだが、そこが薄れてきているのが現状だ。
今週チームはトレーニングでこの危機感をはっきりと共有したという記事を読んだ。この試合が目の色を変えるターニングポイントになることを願うばかりである。
試合結果・ハイライト
栃木SC 0-1 ジェフユナイテッド千葉
得点 77分 小森緋絢(千葉)
主審 先立圭吾
観客 6533人
会場 フクダ電子アリーナ