スターティングメンバー
栃木SC 3-4-2-1 18位

前節はアウェイで横浜FCと対戦し、0-0のドロー。降格が決まった直後の試合となったが、気迫の守備でゴールを許さず、相手の昇格決定を阻止した。ホームで最終戦を迎える今節は6試合ぶりの勝利で有終の美を飾りたい一戦となる。
前節からのスタメンの変更は2人。玄と大島に代わって揚石と山本が入った。揚石はこれがプロ入り後リーグ戦初出場、山本は今季初先発。前日に契約満了が発表された黒﨑はメンバー外となった。
徳島ヴォルティス 3-4-2-1 8位

前節は鹿児島に1-0で勝利し、4連勝を達成。開幕当初はピッチ外の問題もあり降格圏に沈んだものの、増田監督が就任してからはV字回復。順調に勝ち点を積み上げ、今季最高の8位まで浮上した。
前節からはスタメンを1人変更。エウシーニョがメンバーから外れ、青木が2試合ぶりに先発に復帰した。前節左CBで出場した永木はこの日は右WBでの出場となった。
マッチレビュー
■持ち味を出したせめぎ合い
すでに降格が決まり、試合前の時点で最終順位も決まっている栃木だが、そうしたなかでもチーム全体が見せたプレー強度は非常に高かった。前からのプレッシングを次々と繰り出し、チーム全体が連動してボールホルダーに襲いかかっていく。消化試合には終わらせず、来季に繋がる試合をプレーで示そうとする気迫が立ち上がりからよく表れていた。
この日の栃木は中央を封鎖しサイドに追い込もうとする守備が徹底されていた。前線3人が中央へのコースを封鎖しながらサイドに追い込むことで後ろの連動を促していく。限定したサイドでWBが縦を切り、ボランチやプレスバックした前線によってボールを奪い取ることでショートカウンターに繋げる狙いだった。
8分には、前からのプレスを連動させて矢野が敵陣で奪うと、揚石→福森→山本と繋ぎ、山本が巧みなターンからドリブル突破。中央への仕掛けは相手DFに阻まれたものの、再び高い位置で回収してから二次攻撃を発動すると、福森の折り返しを山本がシュートで完結させた。
その山本は16分にも決定機を演出。相手のミスから矢野がボールを収めると、落としを受けて強引にドリブルを開始。止めに来た相手DFを間合いでかわしてシュートに持ち込んだが、惜しくもGKのビッグセーブに遭った。相手に寄せられても奪われない足元の技術とボディバランスで明らかに前線で違いを生み出せていた。
徳島のビルドアップは右WB永木が最終ラインに留まる左肩上がりが基本型。永木に対して対面の福森が寄せるのか山本が寄せるのかは流動的だったが、いずれにしても状況に応じたプレス連動に一切隙がなかった。
山本が寄せた場合はプレスが一つずつズレることになるが、石田が猛烈なスプリントで圧力をかけていたシーンは印象的だった。サイドの低い位置の選手に前を向かせず、内側につけたところに前述したとおりボランチ勢が襲いかかっていく。佐藤祥、揚石の守備強度は十分で、ポゼッション率の差ほど自由にボールを握られた感覚はなかった。

対する徳島はサイドの狭い局面をショートパスでいなす巧さはあったものの、栃木の徹底した守備を受けて、あらかじめそれを避けるようにブラウンノアに長いボールを入れることが多かった。
徳島としては仮に競り勝てなくても大きく弾かせなければ良しという狙いだっただろう。永木や児玉がセカンドボールに目を光らせつつ、中盤の底にはボールハントに秀でた鹿沼が構えている。マイボールにできれば狭いエリアでの技術の高さを生かして逆サイドに広げることで、突破力に優れる左WB高田に仕掛けさせる算段だった。
基本的にボールを握ったのは徳島だったが、栃木のプレスを受けて右奥にロングボールを入れる展開が続いていたため、このエリアを中心にセカンド争いが頻発したのが序盤の大まかな流れ。決定機にたどり着いたという意味ではホームチームに分のある序盤だったが、25分を過ぎたあたりから徐々にペースはアウェイチームに傾いていく。
きっかけは渡井の右シャドーからの解放だった。それまではボランチの鹿沼と左幅を取る高田の中間ポジションをベースにしていた渡井だったが、前半半ばから3ボランチの一角にシフト。ファジーな位置取りでボールを引き出すことで、栃木の前からのプレスは徐々にハマらなくなっていった。

徳島の3ボランチは3人ともに役割を入れ替えながら作りに関わるため、栃木としては守備の狙いがなかなか定まらなかった。前線3人が間を縮めても受け手を消し切れず、ボランチ2枚では追い切れない。栃木は両WBが高い位置を取ることから左右CBは背後のケアもしなければならず、前に出て潰しに行きにくい状況だった。
栃木のプレスが遅れてファールが増えたのがハーフタイムを迎えるまでのまさにこの時間帯。試合がぶつ切りになり、揚石とラファエルにはイエローカードが提示。ただ、ボールを握ることに重点を置いた徳島はその分エリア内に攻め込む回数が少なくなり、試合は膠着した展開に突入していた。ボールを奪えない栃木も攻め手を欠き、スコアレスで前半を終了した。
■互いに決定機を仕留め切れず
後半はギアを上げた栃木が主導権を握る展開でスタート。前からのプレスに加えて、追い込んだサイドに閉じ込める守備を改めて徹底していく。
中盤でボールを絡め取り、セカンドボールを回収できるようになると、チームの重心も上昇。51分にはハイプレスで小堀が引っ掛けたボールを山本→福森と繋ぐと、福森は左足ダイレクトでミドルシュート。その二次攻撃では石田がペナルティエリア内へ仕掛けるもノーファールの判定。54分には福島からの長いボールに抜け出した矢野がシャツを掴まれて倒されるなど、勢いそのままに攻め手を多く作ることができていた。
しかし、立ち上がりの攻勢をゴールに繋げられずにいると、この試合最大の決定機が徳島に訪れる。
57分、プレスを剥がされて右サイドに広げられるとブラウンノアのクロスはゴールポストを直撃。こぼれ球が児玉に渡り、巧みなテクニックからラストパスが渡のもとへ。しかし至近距離からの渡のシュートをGK丹野が右足先に当てるとゴールに向かうボールを福島がポストに激突しながらクリア。再びの渡のシュートは石田がライン上でブロック。再度ボールが児玉に渡ると、右足でのコントロールシュートはクロスバーの右隅を叩いた。
ポスト、クロスバーを叩く鈍い音が3回響き、GKのビッグセーブとゴールライン上でのクリアが1回ずつ。絶体絶命のピンチだったが、チーム全体で身体を投げ出してゴールマウスを守ることで一連の流れを無傷でやり切ることができた。執念のディフェンスだった。
チャンスを演出したことで再びボールをしっかりと握れるようになった徳島。これに対して栃木はあれだけのピンチを経てもなお重心は下がらず、プレスをかけ続ける前向きの姿勢は一切変わらなかった。
それだけに68分のシーンは是が非でも決め切りたかった。前からのプレスを機能させて敵陣でボールを奪うと、石田のクロスに対する相手DFのクリアが甘くなり、ボールは小堀の足元へ。冷静なトラップから落ち着いて左隅を狙い済ましたが、シュートはわずかに枠外へ逸れていった。
それ以降も流れは引き続き栃木のもとにあった。ボールを支配する徳島に対して、栃木は強烈なプレスを浴びせ続けることで思うように前進させない。この頃には徳島はブラウンノアへのロングボールで局面を裏返そうとする攻撃もなく、圧を受けてジワジワと外側に追いやられる一方だった。杉森、杉本の左サイドからは何か起こりそうな気配はあったが、やはり決定的なシーンまでは至らなかった。
それとは対照的に最終盤に会場を沸かせたのは途中出場の川名。投入直後はボールが回ってこなかったものの、88分に2枚を相手に見事な突破からシュートに持ち込むと、栃木は残り時間を託すように川名にボールを集めていく。セットプレーの流れから右サイドでも仕掛けられるところを見せるなど、最後までゴールに迫ったが、ついにネット揺らすことはできなかった。
試合は0-0のスコアレスで終了。互いに勝ち点1ずつを分け合い、2024シーズンを終えることとなった。
選手寸評
GK 27 丹野 研太
57分の被決定機では脅威の反応でゴールを許さなかった。
DF 5 大谷 尚輝
対人守備、クロス対応、左右CBの背後のカバーなど求められる守備を軒並みパーフェクトにこなした。
DF 23 福島 隼斗
矢野や小堀と繋がって背後へのボールや中央への楔のパスを効果的に差すことができていた。57分のピンチではポストに激突しながらボールを掻き出した。
DF 33 ラファエル
ブラウンノアとバチバチのマッチアップを繰り広げた。熱さが裏目に出てイエローカードを貰ったが、徐々にアジャストしていき手堅く対応した。
MF 4 佐藤 祥
相手の繋ぎに対してボランチを捕まえに行くことで前進をキャンセルさせ、ハイプレスを機能させた。連続性のあるプレスで敵陣深くまで寄せる場面もあった。
MF 7 石田 凌太郎
前半から鋭いプレスを浴びせ、後半にはさらにギアを上げてエリア内に攻め込むなど前への姿勢を強く押し出した。57分の被決定機ではゴールライン上でのクリアで間一髪失点を免れた。
MF 30 福森 健太
相手に強く寄せられても慌てずロストしない安定感があった。カットインやクロスなどアタッキングサードでのプレー精度はなかなか上がらなかった。
MF 44 揚石 琉生
待望のリーグ戦デビュー。持ち前の展開力や守備強度は発揮できていたが、プレースピードについていけない場面もあった。プロ1年目に掴んだこの感覚を来季以降に活かしてほしい。
FW 29 矢野 貴章
スイッチを入れて前からのプレスを牽引した。ロングボールは相手に対応されたが、ならばとファールを貰いにいく巧みさも見せた。
FW 38 小堀 空
プレスの出足や背後への動き出しが鋭く、ライン間に下りて受けるタイミングも絶妙だった。68分には相手のミスから絶好機が訪れたが、シュートは枠左へ逸れていった。
FW 45 山本 桜大
16分の決定機はGKのビッグセーブに阻まれたものの、相手を剥がす強引なドリブル突破で違いを見せていた。左足にはテーピングをぐるぐる巻きにしていたが、その影響を微塵も感じさせなかった。
MF 6 大森 渚生
前節に引き続きボランチ起用。ボールサイドに圧縮して自らボールを奪い切るなど要所を締めて終盤の攻勢に繋げた。
FW 18 川名 連介
15分程度のプレータイムながらキレのあるドリブルで特大のインパクトを残した。
FW 19 大島 康樹
トップの位置に入り、ダイナミックな背後や横への動き出しで起点を作った。
MF 10 森 俊貴
深くクリーンなタックルで相手の攻撃を塞き止めた。
DF 40 高嶋 修也
1stプレーで相手のボールホルダーにガツンと当たる厳しい守備を見せた。
最後に
非常に強度の高い好ゲームだったといえるだろう。ともすれば監督交代後は昇格チーム並みの勝ち点を獲得してきた徳島だが、清水戦、横浜FC戦と同様に一歩も引けを取らない試合を展開することができた。力のあるチームにこれだけ肉薄することができるのは、やはり粘りの守備を取り戻したことでロースコアを維持できるからに違いない。今のチームには少し前のように簡単に失点してしまうようなイメージは浮かばない。攻撃面では課題を残すこととなったが、小林監督が就任してからの半年間でようやく栃木はあるべき姿に戻ることができたといえるだろう。
11月13日、小林監督の2025シーズンの続投が発表された。途中就任とはいえ降格を回避できなかった監督の続投リリースに対してこれだけポジティブな声が多いのは個人的にあまり見たことがない。考えられるのはただひとつ、小林監督の率いた半年間がチームを間違いなく前に進めたことをサポーターが感じ取っていること、だろう。
来季は戦いの場をJ3にいったん移すことになるが、栃木が示すべきはこの試合で見せた姿勢である。小林監督のもと来季はスタートダッシュを切り、1年でJ2に復帰することを祈りたい。
試合結果・ハイライト
2024.11.10 14:00K.O.
栃木SC 0-0 徳島ヴォルティス
得点 なし
主審 榎本 一慶
観客 5899人
会場 カンセキスタジアムとちぎ