栃木SCのことをより考えるブログ

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【最後の大きな試練】J2 第37節 栃木SC vs ジェフユナイテッド千葉

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 14位

 前節山形戦は後半の失点が重くのしかかり1-2で敗れた栃木。順位は維持したものの残留争いから一歩抜け出すことはできなかった。中2日で迎える今節はスタメンを4人変更。直近でベンチ入りしていたジュニーニョ、山本、松本が先発入りし、契約上出場できない溝渕に代わって左SBには大島が入った。

 

ジェフユナイテッド千葉 [3-4-2-1] 9位

 前節山口戦はスコアレスドローに終わったが、ここ7試合負けなしと好調をキープしている千葉。その要因は安定した守備であり、ここまで31失点はリーグで2番目に少ない。クリーンシートも15回達成するなど尹晶煥監督らしい堅いチームとなっている。登録メンバー18人は変わらず、先発も高橋→岡野の1人のみの変更となった。

 

 

素早く攻め切りたい栃木

 前節から中2日と試合間隔が短いことから先発メンバーを大きく入れ替えた栃木。前節を約60分のプレータイムで退いた豊田は連戦を見据えたコンディション調整の意味合いがあると思っていただけに、メンバーから外れたのは意外だった。代わってこの日最前線で畑とコンビを組んだのは豊田とはタイプの異なるジュニーニョ。田坂監督がアライバルインタビューで「機動力を重視した」と話したように、前線の高さで勝負するのではなく、千葉の堅いブロックが完成するまでにとにかく早く攻め切ってしまおうというプランが色濃く見えた人選だった。

 よってこの日はマイボールを間髪入れずに敵陣へ放り込むことが多かった。普段からボール保持にはこだわらない栃木だが、この日のダイレクト志向はかなり際立っていたように思う。

 ダイレクトで送り込む先は千葉のWB裏のスペース。5バックが出来上がる前に、WBが攻撃参加したことで薄くなったサイドの奥に起点を作りにいく。前節に引き続き畑はサイドに顔を出す動き出しやボールキープの質は高く、上手く鈴木大輔を出し抜くことができていた。

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 ただ、流れた畑へのサポートやそこから内側に入り込んでいくための崩しは大きな課題。サイドを取り切ったはいいものの、そこから先がなかなか見えてこなかった。3連勝を達成した時期は右サイドで細かく繋ぎ、相手を引き寄せたところで西谷が逆サイドに開く。そこから谷内田や溝渕がクロスを上げることで豊田らの高さを生かすことができていたが、ここ数試合はその辺りも希薄に感じられる。

 千葉は鈴木が抜かれてもCB新井が素早くカバーリング。栃木の攻撃を遅らせている間に鈴木が中央にポジションを取り直すことで守備を再構築できていた。体勢が整った中を割っていくには谷内田や松本の力がより必要となるが、彼らもほとんど目立つことはなかった。

 

 

不十分な殴り合い

 ロングボールを櫻川に当ててそのセカンドボールをクロスに繋げていくというのが基本路線の千葉。サイド攻略の場面では岡野や鈴木も攻撃参加し、崩しが窮屈になったら逆サイドに開いて攻撃を作り直す。栃木もそれに対してSBが縦を切りつつ、素早くスライドし直して千葉の攻撃を牽制していく。

 セカンドボール争いも含めて球際にガツガツ寄せていく両チームとあってファールで試合が止まる回数は非常に多かった。試合がぶつ切りになることでともに流れを引き寄せるほど攻撃の時間を確保することができない。

 ただ、飲水タイムの前後から千葉はボランチの熊谷が最終ラインをサポートすることで自分たちの時間を作れるように。CB間のどこに下りるかは状況によって変えつつ、一つサイドに出たCBはSBのように攻撃参加することが多かった。

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 それでも、千葉はここ最近戦った山形や町田と比べれば相手を押し込めるほどビルドアップに長けているわけではない。栃木のプレッシングに対してパスがズレてしまったり、GK新井の処理がおぼつかなくなってしまったりと不安定なところも見られた。ときおりハーフスペースの船山や見木に縦パスを入れる場面もあったが、ここから攻撃が加速するようなこともなかった。

 それだけに栃木にはプレッシングから流れを引き寄せられるチャンスはあったのだが、この日はプレスの連動性を欠いていた。ジュニーニョが単独でプレスしてしまったり、前線の動きにSBがついていけなかったり。31分には、大島のプレス強度に見かねた田坂監督が激を入れている様子が中継にも残っている。チーム全体の息が十分に揃わず、タイミングにズレが生じてしまったことで出足も遅れてファールで止まる時間が長い試合となってしまった。

 千葉のビルドアップが不安定ならば、栃木のプレッシングも不十分。ただ、ゴール前を守る守備は堅牢な両チーム。相手を脅かすほどの圧をかけられないままスコアレスでハーフタイムを迎えた。

 

 

セットプレーの一発に泣く

 後半も前半と同じような展開で試合は進んでいく。栃木は連戦で休ませていた矢野と西谷を起用して攻守の強度アップを図る。

 立ち上がりこそセットプレーの流れから矢野がヘディングで合わせる場面や中盤でのインターセプトからカウンターに持ち込む場面を作っていくが、千葉もロングボールを多用することで押し込まれ過ぎないように適宜重心を上げていく。

 後半栃木が苦しめられたのが、千葉が陣地を挽回するように蹴り出していくロングボールのこぼれ球をなかなか手中に収められなかったことである。千葉は前半のように櫻川を目掛けて供給することもあれば、見木をターゲットにしてセカンド争いに櫻川がフィジカルを生かして絡んでいく形もあった。フレッシュな選手を入れたことで積極的に前から行こうとする栃木に対して、長い球足のボールを入れていくことで中盤に生じたスペースを千葉が有効に使えていた印象だった。

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 プレッシングやセカンドボールの奪い合いによって生じるファールで、増えていくセットプレー。ともにハーフラインからのFKではほとんどGKに蹴らせ、敵陣深くに入り込んでからのスローインはロングスローを選択するなど、とにかくゴール前に送り込む回数は多かった。西谷のFKにファーサイドで乾が折り返すように放ったシュートはGKに阻まれたが、ゾーンディフェンスの外側を使うという意味では効果的だったと思う。

 しかし、あの手この手で試みるセットプレーから均衡を破ったのはアウェイチームだった。ロングスローを一度は防いだものの二次攻撃で被弾。最後の局面では矢野が相手2人と競るような形になり鈴木のヘディングを許してしまった。

 

 終盤に先手を取られたことで即座に柳を上げてパワープレーを敢行する栃木。三國も絡むセットプレーで攻勢を強めていったが、残されたわずかな時間ではゴールを破ることはできなかった。

 試合は0-1で終了。勝利した千葉は負けなしを8に伸ばした一方で、栃木は4試合勝ちなしとなった。

 

 

最後に

 過密日程の影響もあったと思うが、攻守になかなかピリッとしない試合だった。プレッシングでハメきった前節はシュートを重ねることができたが、ロングボールで回避されてしまった今節は自陣からのカウンターも不発。サイドを取り切ってから内側に入り込んでいくイメージが見えず、頼みのセットプレーも相手を脅かすには至らなかった。それでもこういう展開でゼロに抑えられていたのが栃木の強みだったのだが、千葉にお株を奪われての敗戦は手痛いものがある。

 これで4試合勝ちなし。残留争いのポールポジションにいるのは変わらないが、その貯金はほとんどなくなったと思う。ただ、残留争いの構図と残り試合数を考えれば、次の一勝をあげれば一気に視界は開けてくる。この最後の大きな試練を乗り越えて、自ら残留を手繰り寄せられることに期待したい。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 0-1 ジェフユナイテッド千葉

得点 86分 鈴木大輔(千葉)

主審 松本大

観客 3051人

会場 栃木県グリーンスタジアム