栃木SCのことをより考えるブログ

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【一貫性がもたらした勝利】J2 第17節 栃木SC vs 水戸ホーリーホック(〇2-1)

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 11位

 前節北九州戦は2-2のドロー。上位相手に善戦したが勝ち切ることはできなかった。中3日で迎える今節はスタメンを4人変更。夏に加入したGKオビは初先発。ダービーに燃えているであろうアカデミー出身選手の多くがスタメンとなった。

 

水戸ホーリーホック [4-4-2] 15位

 前節は敵地で徳島に勝利。ホームに戻っての今節は今季初の連勝を目指す試合となる。スタメンの変更は6人。ゴールゲッターの山口と中山はともにベンチスタート。GK牲川は9試合ぶりの先発となった。

 

 

栃木のプレッシングを利用した水戸

 前節は北九州をあと一歩というところまで追い詰めた栃木。その北九州にも見られたことだったが、今節戦った水戸も栃木の積極的なプレッシングを利用しながらボールを前進させようという狙いが窺えた。

 

 水戸のフォーメーションは栃木と同じ[4-4-2]。同じ形を採用する北九州は、そこから全体を動かして[3-1-4-2]にすることで、栃木のブロック間に選手を置き、守備を曖昧にさせようというアプローチだったが、水戸はある程度元の形を維持しながらビルドアップしていた。

 同じ[4-4-2]どうしのミラーゲームになれば栃木にとってプレッシングを発動させやすい。したがって、次々と前線の選手から連動して相手を捕まえにいくが、水戸にとっては栃木のプレッシングを誘い出すこと自体が一つの狙いだったように見えた。水戸はSHが内側に絞ったり、引いて受ける動きを見せることで栃木のSBを誘い出し、2トップの片方がその背後のスペースに流れることで起点を作っていった。この役割は主に瀬川の背後に流れる山谷が担当しており、CB田代を釣り出した上でのクロス供給は一連の流れとして準備していたように見えた(栃木の寄せが早く、実際にクロスを上げる場面は少なかったが)。

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 同サイドに密集しピットブルのポストプレーや両SHを起点にして栃木のプレッシングを掻い潜ってから、逆サイドに展開するというシーンも何度かあった。特に右サイドから左サイドにボールを送り、左SB乾のオーバーラップを促す形は顕著で、左サイドに至るまでの過程は異なるものの、サイドチェンジから押し込む形そのものは前節北九州に通じるところがあった。

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 自陣からのビルドアップやロングボールのいずれにしても、栃木のプレッシングを利用してのミドルゾーン攻略はここ数試合の対戦相手にはよく見られている部分。好調を支えている武器ではあるが、プレスをひっくり返されての失点も見られるだけに、どれだけ修正しつつ、覆い隠せるほどの尖った武器にしていけるかは今後見ていきたいところである。

 

 

シンプルさの徹底

 先にビハインドを背負った栃木だったが、その後は水戸のビルドアップやロングボールにも落ち着いて対応していく。とりわけ失点の要因になった水戸のロングボールに対しては、CBを中心にボールの出どころとタイミングを把握しながら素早く反応できていた。ボランチの佐藤も豊富な運動量をベースに相手FWを挟み込むことでカウンターの目を摘んでいく。一方、ボランチの相方の岩間はセカンドボールをそのままフィニッシュに繋げることが多かった。前節もそうだったが、ボランチの役割がはっきりしていることでポジショニングやプレーがスムーズになっていることはポジティブな要素である。

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 ロングボール→密集してセカンドボールを回収→細かいパスワークで中央orサイド突破。栃木の攻撃の仕組みは非常にシンプルたが、シンプルだからこそ選手は思考をクリアにでき、考えすぎることなくプレーできる。プレー判断が早くなることで強度の高さを維持する栃木は、時計の針が進むにつれて徐々に敵陣に押し込む回数が増えていく。

 後半22分の田代の同点弾もセカンドボール回収の意識の高さ、シンプルなクロス攻撃が功を奏した得点だった。黒崎のクロスが一度弾かれた時には田代は既にファーサイドにポジショニング。ニアで潰れたのは水戸の選手だったもののファーで押し込む形は、奇しくも昨季最終戦の千葉戦で、残留を手繰り寄せる自身のゴールを思い出させるシーンであった。

 

 

GKオビと栃木SCの親和性

 この試合がプロデビュー戦のオビだったが、セービングやハイボールへの対応は非常に安定しており、見ている側もヒヤヒヤする場面はほぼなかったのではないかと思う。世代別代表で日の丸を背負っているだけあって、そのポテンシャルは確かである。

 オビのプレースタイルで他のGKから抜きん出ているのは、長距離で高精度なパントキックを蹴れることだろう。ひと蹴りで相手GKとDFラインの間に正確に落とすことのできるキック精度はオビの強みであり、前線にターゲットを据える栃木にとって攻撃の出発点になれる意義は大きい。

 実際に逆転弾もオビの正確なキックに柳が競り勝ったところを起点に、全員が高い位置を取り続けたことで生まれている。ボール保持の有無を問わず敵陣でプレーすることが重要なストーミングスタイルの栃木にとって、ロングキックを売りとするオビのもたらすものは間違いなくチームにとってプラスである。

 

 短時間で大仕事を成し遂げた柳の逆転弾で勝利した栃木。北関東ダービー2勝目をあげると同時に、難敵水戸に対して6年ぶりの勝利をおさめた。

 

 

最後に

 5連戦の3戦目、中3日での試合と体力面で厳しい試合になったが、最後まで運動量が落ちることなく、特に終盤は水戸を圧倒できたといえる内容だった。序盤こそプレッシングを誘い出されたときの弱みは見せたものの、その後のディテールを詰めた守備対応や弱みを補って余りあるプレー強度、そして尽きないハードワークが、最後に逆転弾として結果に表れた。ここまで一貫して取り組んでいるスタイルに自信を持っているからこそ最後まで続けることができたといえるだろう。新戦力がもたらしたプラスアルファも今後に向けて明るい材料である。

 

 次節はホームでの徳島ヴォルティス戦。兄弟対決に注目が集まるが、上位相手に食らいつけるかを占う試金石となる試合でもある。対極に近いスタイルを志向する両チームなだけに、いかに自分たちの土俵に引きずり込めるかがポイントになりそうだ。

 

 

試合結果

栃木SC 2-1 水戸ホーリーホック

得点 20’ピットブル(水戸)、67’田代雅也(栃木)、90+4’柳育崇(栃木)

主審 窪田陽輔

観客 2,001人

会場 ケーズデンキスタジアム水戸

 

 

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