スターティングメンバー
栃木SC [3-4-2-1] 11位
前節は終了間際の勝ち越し点で開幕戦以来の勝利を飾った栃木。中3日で迎える今節は今季初の連勝を狙う一戦となる。スタメンの変更は4人。前節負傷した福森に変わって黒崎がスタメンに入り、前線3トップは総入れ替えとなった。山本は4試合ぶりのベンチ入り。
水戸ホーリーホック [4-4-2] 14位
開幕から4試合勝ちなしと出だしに躓いたものの、ここ2試合は連勝と復調気味の水戸。ここまで9得点はリーグ4位、9失点はリーグワースト5位と今季も撃ち合い上等な印象である。前回の水曜開催ではスタメンを全員入れ替える大胆な采配を見せたが、連勝中とあって2人の変更にとどまった。
攻撃のイマジネーションの差
10年ぶりの王者を目指す栃木と昨季タイトルの座を群馬に譲った水戸の対戦となった今季最初の北関東ダービー。互いの意地とプライドをかけた一戦はともにハイラインを設定し、最終ラインには積極的にプレスをかけていく激しい展開で幕を開けた。
立ち上がりは栃木のペース。ロングボールを水戸の最終ラインの背後に送り込み苦し紛れのクリアを中盤で跳ね返すことで敵陣でプレーする時間を増やしていく。2試合連続の先発となった小野寺はボールを持てれば同じレーンの小堀に鋭い縦パスを差し込んだり、同サイドの黒崎に預けてから内側を駆け上がるなど、千葉戦と比べれば攻撃面のアクションを相当意識しているようだった。
序盤のロングボール攻防が終わると徐々に水戸がボールを持つ展開になっていく。水戸がボールを落ち着いて持てた理由は2つ。1つは栃木のプレスに対して常にプラス1枚を確保できたこと。CBに対して栃木のシャドーが寄せてきても近くのSBにボールを逃がすことができ、SBも低めの位置取りでWBからプレスを受けないようにしていた。
もう1つは、栃木がプレスを仕掛けたときにボランチの周辺でアタッカー陣がボールを引き出すことができたこと。水戸は両SHが内側に絞り気味で、2トップも縦関係になることが多く、とりわけ木下はボールを収めるスキルが非常に高かった。低い位置でのビルドアップで栃木を引き出し、ボランチ付近で前向きの選手を作れれば攻撃を一気に加速できる。これが水戸の狙いだった。
水戸は時折ロングボールを混じえて栃木の陣形を引き伸ばしながらこのエリアを巧みに活用。前半のアタッキングサイドは中央エリアが40%ほどを占めており、いかに中央突破を狙っていたかが分かるスタッツであった。
一方栃木も中央に起点は作らせまいと絞るSHには主にボランチが対応。これによりボランチが最前線まで寄せることが少なくなり、自陣に構えて要所を抑えるスタンスにシフトしていく。
このとき悩みどころだったのが、水戸のSHが絞ったポジションからWBの裏を取るように外に出ていく動き出しへの対応。ボランチがそのままついて行ってしまえば中央を開けてしまうし、CBが外に釣り出されてしまえば残ったCBが水戸の2トップと同数になってしまう。よりリスクの少ない方として前者を選択していた栃木だったが、斜めに差し込まれるボールに対して相当に手を焼くこととなった。
水戸の攻撃ターンが長かったのは巧みなビルドアップや守備への切り替えが早かったことはもちろんだが、栃木の攻撃精度が伴わなかったことも大きい。
例えば15分や43分の自陣からのビルドアップでは、パスのテンポが遅く水戸のプレスから逃げるだけになってしまい、最終的にグティエレスの前線につけるパスがミスに終わっている。困ったときのカウンターもジュニーニョが単騎で突っ込んで阻止されてしまうなどなかなか上手くいかない。千葉戦ほど何もできなかったわけではないが、攻め筋を見い出せず水戸を慌てさせる場面がほとんどない前半となってしまった。
苦しみながらも先行逃げ切り
後半早々の被カウンターのピンチをGK川田のシュートストップで間一髪凌ぐと、55分に栃木が試合を動かす。左からのジュニーニョのCKを滞空時間の長いジャンプで矢野が合わせて先制に成功。少ないチャンスを生かした値千金の得点であり、CKを得るきっかけとなった大森のロングシュートも最終的にゴールに結びついたという意味では大きな仕事となった。
【3/30水戸戦】
— 栃木SC公式 / Tochigi SC (@tochigisc) 2022年3月30日
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PICK UP🎥
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55分 #矢野貴章 のゴールシーン⚽️🔥
ドンピシャのヘディングゴール‼️

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リードを得たことで攻守にメリハリの出てきた栃木。ボールは依然水戸が支配するものの、ジュニーニョや変わって入った谷内田が出足の良いプレッシングで水戸の攻撃を牽制。自陣で構えては入ってくるボールを跳ね返す集中した守備で水戸の攻撃をシャットアウトしていく。
凌いでいたなかで少し気になったのが、プレスをかけたい前の選手と構えて守りたい後ろの選手の間に意識のズレが見えたこと。
瀬沼の入った右サイドはコーチングスタッフ側だったこともあり、手綱を握った後ろの選手の指示によってバランス良くプレーできていたが、とりわけトカチが入ってからは左サイドにスペースが生じやすくなっていた。トカチと同時に入った面矢がスペースを埋めようと数歩前に出ればその背後を椿がスプリントして強襲してくる。最終ラインを押し上げられずにライン間にスパスパと縦パスを通される回数も時間とともに増えていった。
終盤は完全に水戸の独壇場だったが、栃木が決壊しなかったのはGK川田を中心とした守備陣のパフォーマンスがハイレベルだったからである。
75分には、グティエレスのクリアが相手に当たり高井にこぼれると、カットインからのシュートを川田が横っ飛びでセーブ。83分には、椿が左サイドを抉ってからのクロスを小野寺がクリア。89分には、左サイドからカットインした黒石の高井へのスルーパスを面矢が体を先に入れて川田がキャッチ。前がかりになる水戸に攻撃を前にカウンターチャンスすら訪れない苦しい時間が続いたが全員で体を張ってゴールマウスを守った。
5分間のアディショナルタイムも栃木が耐え切りこのまま1-0で試合終了。苦しみながらも逃げ切った栃木が今季初の連勝、水戸は連勝が2でストップした。
最後に
一瞬の隙を突き、その後は虎の子の一点を守りきって勝ち点3を得たわけだが、課題も多く見えた試合だった。カウンター局面でのプレー精度はこの日ももの足りず、プレッシングを剥がすビルドアップは水戸とのレベルの差を痛感させられた。たとえ結果が逆に転んでいたとしても不思議ではなかっただろう。
それでも攻め手を見出しにくい難しい試合展開のなかで、それぞれが今やれる最大限のプレーを発揮していたのは事実である。流れとは関係なしにチャンスになりうるセットプレーからは2試合連発。ビッグセーブを連発した川田はまさにマンオブザマッチ級の活躍だった。
ダービーマッチでの勝利はただの一勝以上に価値あるもの。ただ、それだけに結果のみを拡大解釈してはいけないだろう。勝ったからこそポジティブに課題を見つめ直せる好循環は大事にしていきたいところである。
試合結果・ハイライト
得点 55分 矢野貴章(栃木)
主審 鶴岡将樹
観客 2198人