栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【90分をいかにマネジメントするか】J2 第16節 栃木SC vs ギラヴァンツ北九州(△2-2)

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 7位

 前節甲府戦は1-0で勝利。粘り強い戦いで相手を寄せ付けず、順位は今季最高の7位に浮上した。中2日の今節はエスクデロに変えて矢野貴章をスタメン起用。リーグ最小失点を誇る自慢の守備陣で攻撃力のある北九州を抑えたいところ。

 

ギラヴァンツ北九州 [4-4-2] 2位

 2試合連続で逆転勝利し、気付けば目下9連勝中。リーグ最多得点を記録しており、本当に昇格組なのかと疑うほどの力強さを見せている。スタメンは変更せず、絶好調のメンバーで10連勝を目指す。

 

 

可変への対応

 最小失点の栃木と最多得点の北九州。ここまで取り組んでいることが順調に結果に表れている両チームにとって、早いうちに相手を自分たちの土俵に引きずり込みたいという思惑は多分にあったと思う。いかに自分たちのリズムで試合を進められるかが大きなポイントになるが、その意味で前半はホームチームがうまくペースを掴む展開となった。

 

 試合の大半は北九州がボールを動かし、それに対して栃木がプレッシャーをかけるという構図で進んでいく。

 北九州のビルドアップで特徴的なのは、ボランチの加藤が最終ラインの左側に下りてきてボールの配給役になること。流れのなかで中央や右側に下りることもあったが、ほとんどが左側だった。SBは高い位置を取り、SHが内側に絞る。左SHの椿は元々加藤がいたエリアに入ってくることもあり、各ポジションで栃木とのズレを作るように可変していた。

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 最終ラインに下りる加藤に対して栃木は右SHの大島がプレッシングを担当。周りの選手はそれに連動して次々とボールサイドの相手を捕まえていく。少ないタッチ数でのパス回しが得意な北九州の選手たちにとっても、栃木の右サイドのプレッシングの連動性はとても厄介だったと思う。北九州にとって左サイドでは前を向くことができないため、ビルドアップは自ずと右サイドから前進していくことが多くなっていった。

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栃木の左サイドvs北九州の右サイド

 栃木は前からプレッシングに行く時も、構えてブロックを敷く時も、まず優先するのは攻撃の舵取り役になる相手ボランチを消すことである。そのため2トップは基本的に縦関係になることが多く、北九州が右サイドからビルドアップしようとする際、CB岡村に対しては左SHの森がプレスをかけることが多かった。

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 栃木は左サイドでも連動して相手を捕まえていくが、右サイドと異なっていたのが北九州の右SH新垣のランニングがあったこと。瀬川の背後に抜けていく新垣に対して優希がスライドして対応すると、中央がぽっかり空いてしまう。このスペースにディサロが下りたり、SB福森がそのまま斜めに入り込んだりと、前進の起点にしているように見えた。

 逆サイドの永田にボールを送ることで栃木のラインを押し下げ、上がってきたボランチの加藤に預ける。ここまで来れば、あとは残り30メートルをどう攻略しようかという局面であり、そこまでの設計は綿密に準備してきたことが窺える北九州のビルドアップだった。

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 ただミドルサードを突破されても、栃木の守備への切り替えは非常に早かった。2トップやSHは自陣深くまでプレスバックを怠らず、北九州の攻撃を遅らせればすぐに[4-4-2]ブロックを完成させる。

 横への素早いスライドをきっかけにして生まれたのが先制点のシーン。サイドチェンジを受けた永田が縦に出そうとしたパスを溝渕がカットすると、中央の矢野へ。ショートカウンターを発動し、最後はセカンドボールをコントロールした西谷優希が強引にミドルシュートをゴールネットに沈めた。

 

 豊富な運動量と素早い切り替えをモットーとする両チーム。得点が動いてからは激しく、スピーディーな展開がより色濃くなっていく。徐々に北九州のボールを持つ時間が増えていったが、栃木は全体が連動してスライドを繰り返し、縦パスに対してはCBを中心に跳ね返すことでチャンスらしいチャンスを与えなかった。

 

 北九州のシュートをわずか1本に抑えて前半終了。1-0で試合は折り返し。

 

 

構える栃木への対抗策

 後半立ち上がりのうちに追加点をあげた栃木。前節千葉戦も長身選手へのロングボールに苦しんでいた北九州だったが、矢野へのロングボールから得たスローインを明本が個人技で決めきった。明本の突破がPK判定とならなかった直後のシーンも似たような形からであり、北九州にとっては一つの弱点を見せる格好となった。

 

 2点ビハインドになった北九州は積極的な交代策で手を打つ。とりわけここまで攻撃面で良さを出せていなかったディサロをスパッと変えられる小林監督の判断の早さはさすがである。変わって投入された鈴木が攻撃のキーマンになったという点でも名采配であった。

 

 この交代を機にビルドアップのテンポが段々と上がっていく北九州。ゴール前を固める栃木に対してピッチ幅を広く使って左右に揺さぶりながら、時折ブロックの間を縫う縦パスからチャンスを窺う。コンパクトさを保つ栃木だが、下りてワンタッチで捌く町野やSHの対応に手を焼き、徐々にスライドが間に合わなくなっていく。

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 そんななか北九州の1点目はシンプルな形から生まれる。左SB永田がサイドを上がり切る前にクロスを供給。長身の鈴木がポストプレーで落とすと、町野が右足で決めきった。それまでの流れとはあまり関連性のないプレーだったと思うが、栃木にとってはジャブを打たれ続けたことが一つ一つの寄せの甘さに繋がったと言えるかもしれない。

 

 勢いづく北九州はそのまま同点弾もゲット。ピッチを広く使ったサイドチェンジが起点になったという意味ではこちらは狙いの形からといえる。栃木にとっては目線の変わったタイミングでダイレクトプレーを連続でされてしまえば、マークし続けるのも難しいだろう。

 

 北九州の猛攻に対して交代カードを切りながら何とか耐え凌ぐ栃木。終盤には溝渕が負傷するなど満身創痍の状態のなか、最後までロングカウンターやセットプレーから勝ち越し点を狙っていったが、ゴールネットは揺らせず。2-2のドローで試合は終了した。

 

 

最後に

 栃木にとっては2点のリードを追い付かれてのドローとなったが、自分たちの掲げるスタイルが上位相手にも十分通用することを証明する試合となったといえるだろう。2点を先行するまでの試合運びは圧倒的であり、好調北九州が苦しむほどであった。

 悔やむべきは2失点の失い方。後半半ばからFWのプレス位置を下げること自体は、それまでのフルスロットルさを踏まえればやむを得ないと思うが、最後の部分で凌ぎ切れないと手にしかけた勝ち点がこぼれていってしまう。ちなみに、ここまで5回の引き分けのうちスコアレスの2試合を除くと、残り3試合は全て追い付かれてのドローとなっている。ベースができてきた今だからこそ、先行逃げ切りを磐石にするための5バックに本格的に着手するのも一つの解決策かもしれない。

 

 課題も見えたが、総じてみれば収穫の多い試合だったと言えるだろう。組織としてのクオリティの高さを見せることができていたし、絶好調のチームを足止めすることができた。良いイメージを継続させることで、次節難敵水戸にリベンジを果たせるよう期待したい。

 

 

試合結果

栃木SC 2-2 ギラヴァンツ北九州

得点 30’西谷優希(栃木)、50’明本考浩(栃木)、74’町野修斗(北九州)、82’鈴木国友(北九州)

主審 大坪博和

観客 1,158人

会場 栃木県グリーンスタジアム

 

 

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