栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【陣を取らせない】J2 第27節 栃木SC vs 東京ヴェルディ(△0-0)

f:id:y_tochi19:20201019002421j:image

はじめに

 前節山形戦はミスから失点を許し、0-1の敗戦を喫した栃木。相手を押し込んでからの遅攻の精度を欠き、4試合連続で無得点となった。今節の対戦相手は東京ヴェルディ。スタイルが両極端に尖っているチームどうしの対戦とあって、どちらがより自分たちの土俵に相手を引き込めるかがポイントになってくる一戦だ。

 

 

スターティングメンバー

f:id:y_tochi19:20201019002428p:image

栃木SC [4-4-2] 13位

 アウェイに乗り込む栃木は前節から4人変更。ウサンホは13試合ぶり、榊は14試合ぶりのスタメン起用。これまで右SBで出場することの多かった黒崎は左SBで起用された。連戦を考慮してか、エスクデロはメンバー外となっている。

 

東京ヴェルディ [4-3-3] 7位

 ホームのヴェルディも前節から4人変更。3トップの中央に入る端戸は15試合ぶりに先発。チーム得点王の小池はベンチスタートとなった。左SB福村はリーグトップの8アシストを記録している。

 

 

誘導していくプレッシング

 試合は大方の予想どおり、ボールを保持するヴェルディに対してプレッシングを仕掛ける栃木という構図で進んでいく。立ち上がりからいつものようにプレスをかけていく栃木だったが、この試合ではSHの立ち位置を見ると、あえて中央に誘導して奪い取るという狙いがあるように見えた。

 最前線の明本はGKまで寄せてサイドを限定すると、SH(⑲大島)は外側のSB(⑯福村)を切りながらCB(⑤平)へプレス。このとき中盤に下りていく端戸に対しては、CB(㉓柳)が前に出て対応するという仕組みになっていた。フィジカルで優位に立つCBが勝負することで弾き返したボールをカウンターに繋げようという狙いである。

f:id:y_tochi19:20201019002436p:image

 ハイプレス時にあえて中央にボールを呼び込む栃木だが、リスク管理は徹底されていた。アンカーの山本には榊がマンツーマンで張り付き、ボランチの2人はこぼれ球に目を光らせる。前を向かせたくない中盤3枚にボールを渡らせないことも、ハイプレスと同じくらい重要なポイントになっていたと思う。

 

 栃木の奪いどころになっていた端戸だが、上手くプレスを回避することができればテンポアップできていたヴェルディ。前半26分には、佐藤→端戸→佐藤、佐藤→藤田→福村と二連続でのレイオフからゴールに迫るヴェルディに対して、思わず田代がファールで止めてしまうシーンがあった。

f:id:y_tochi19:20201019002441p:image

 

 中央に入ってくるボールにはオートマチックに対応していた栃木だったが、CB→SBのパスには臨機応変に対応。SBが縦スライドすることもあれば、ボランチが横スライドするパターンもあり。どちらも間に合わないときはSHが猛プレスバック。いずれにしても全体の連動は欠かさずボールホルダーを自由にさせないという気概の見える守備対応だった。

f:id:y_tochi19:20201019221841p:image

 

 

ヴェルディのボール保持

 立ち上がりは栃木のプレッシングに怯んだ感のあったヴェルディだったが、徐々に慣れてくると持ち前のパスワークを披露していく。

 

 ヴェルディのボール保持で面白かったのは、左サイドと右サイドで攻め方が若干異なっていた点。井上・佐藤・福村の左サイドは細かいタッチとポジションチェンジから役割が流動的に変わるのが特徴。佐藤がWGロールでサイドに張ることもあれば、前述した前半26分のように福村がゴール前に入ってくることもあった。各選手のテクニックレベルが高いヴェルディならではの攻撃である。

 一方、右サイドはよりシンプルに縦突破を狙っていく形。快速の山下を生かせるようクレビーニョや藤田はポジションを守ることが多かった。山下が内側に絞ったときにクレビーニョがサイドを駆け上がることはあったが機会は限定的だった。なお、前半30分過ぎあたりから山下と藤田がポジションを交換していたが、攻守どちらを考慮しての采配だったのかは分からなかった。

f:id:y_tochi19:20201019221830p:image

 

 巧みなボール回しでサイドから攻めていくヴェルディに対して、栃木はブロック守備で応戦。ボールを回されてもボールホルダーへのプレッシングとカバーリングを繰り返すことで、自陣に穴を開けずに対応していく。優希はもとより、久しぶりにスタメンのウサンホも難なくこなせていた点は良かった。

 自陣でボールを絡め取れば素早くカウンターに移行する栃木。明本の身体能力を生かしたポストプレーは効いていたし、榊や両SHもヴェルディのアンカー脇を使うことは意識していたと思う。一方で、カウンターを完結できずに遅攻に移行した際のクオリティは引き続き課題であった。

 

 試合は0-0のスコアレスで折り返し。

 

 

押し込む時間は増えていくが

 スタイルこそ真逆だが、両チームとも自分たちのスタイルを前面に押し出していく姿勢は後半も変わらず。栃木がハイプレスでヴェルディを自陣に閉じ込める時間帯もあれば、サイドのコンビネーションを軸にアタッキングサードを探る時間帯もあった。

 

 栃木にとって守備から攻撃の一連の流れが理想的だったのが後半9分のシーン。自陣で田代がボールを回収して榊へ預けると、カウンター発動。晒されたヴェルディのアンカー脇を前線4人が駆け上がり、左サイドから明本がクロスを供給。西谷優希はセカンドボールを反応素早く回収し、右サイドを駆け上がってきた溝渕に大きく展開。溝渕のクロスに合わせた明本は枠にこそ持っていけなかったが、シュートで終えることができた。アラートな守備、切り替え早いカウンター、セカンドボールへの予測など、いくつかの要素が絡んだ一連の流れは、まさに栃木が今季取り組んでいるものがそのまま表れたシーンだったと言えるだろう。

 

 試合を通してある程度押し込む時間を作れた栃木だったが、遅攻の整備はまだまだなところ。選手どうしの立ち位置が決められていても、肝心の崩しの部分は選手のアイデアによる即興感が否めなかった。遅攻に悩む栃木に対して、とりあえずブロックを作ってしまえば問題ないヴェルディは、ボールホルダーへのプレッシャーよりもリトリートを優先していたように見えた。

 

 早めの交代策でペースを引き戻したヴェルディ。左WGに入った新井の仕掛けは攻撃のアクセントとなっており、新井が最終的に一対一になるように繋いでいくヴェルディのボール運びも栃木にとっては厄介だった。

f:id:y_tochi19:20201019221826p:image

 

 対する栃木も途中出場の矢野へのロングボールを軸に敵陣深くに侵入し、クリアボールはCBが弾き返すことで敵陣でのプレータイムを増やしていく。矢野は時間限定でのプレーだったが、プレッシングのキレやサイドに流れてのクロスなど徐々に状態は上がってきていることを伺わせた。

 

 最終盤にはヴェルディがカウンターからゴールに迫る回数が増えていったが、最後までゴールネットを揺らすことはできず、スコアレスで終了。勝ち点1ずつを分け合う試合となった。

 

 

最後に

 ひたすらボールを回され続けた近年に比べれば、この試合における栃木は自分たちの色を出して互角以上に戦うことができたと言えるだろう。正しいポジションを取ってボールを回したいヴェルディに対して、ポジションを取られまいと襲いかかっていく攻撃的なプレッシングは非常に効果的だった。

 攻撃面の課題は持ち越し。遅攻の向上に取り組んでいる最中ではあるが、速攻やカウンターから得点を取れていないのは痛いところである。停滞感を打破するためにもストライカーの奮起はより求められるだろう。

 次節はホームに戻っての琉球戦。勢いに乗ったときの得点力は凄まじいものではあるが、打たれ弱い側面があるのも事実。付け入る隙を逃さず、再び浮上していくきっかけにしたい一戦だ。

 

 

試合結果

栃木SC 0-0 東京ヴェルディ

得点 なし

主審 大坪博和

観客 1,842人

会場 味の素スタジアム

 

 

ハイライト動画