はじめに
前節大宮戦はスコアレスドローに終わった栃木。3試合連続でノーゴールとなり、得点力不足の課題は明白である。今節ホームに迎えるのは山形。前節は琉球に3-0で勝利し「山岸ショック」を結果で振り払った。栃木にとっては前半戦のリベンジを果たしたい一戦だ。
スターティングメンバー
栃木SC [4-4-2] 11位
ホームの栃木は前節から2人変更。FW明本は出場停止明け、左SH大島は5試合ぶりの先発となった。ベンチには負傷から復帰した大﨑が第9節新潟戦以来のメンバー入り。瀬川にとっては古巣対戦となる。
モンテディオ山形 [4-4-2] 13位
アウェイの山形は快勝した前節と同じメンバーを起用。今回のウインドーで獲得した藤嶋と前川は揃って初のベンチ入り。岡崎にとっては2年前まで所属した古巣との対戦となる。
攻撃ルートの整理
ここ最近はゴール前での決定力を欠き、それが結果に直結してしまっている栃木。守備面では何とか最小失点に抑える試合が続いているだけに、攻撃面の奮起が求められる。攻撃に転じた際に相手ゴールにどう迫っていくかが注目されるなか、試合を通じて多かったのは「中央→サイド→中央」の順に攻めるという原点回帰の窺えるボール運びだった。
立ち上がりから繰り返し見られたのが、左サイドから中央のエスクデロやボランチを経由して右SBの溝渕に届けるという形。ボールを貰った溝渕はそのまま一対一を仕掛けたり、周囲の味方との連携でサイドを攻略したりと、クロスで終わる意識は非常に高かった。山形の右SH加藤は下がっての対応を強いられたことで、時には5バックにも見える構えとなっていた。
「中央→サイド→中央」の初手、中央での起点づくりでは、攻撃時にトップ下になるエスクデロがハイパフォーマンスを披露。後方から入るロングボールや鋭い縦パスに対して、トラップのテクニックと相手を背負ってボールを隠す体の使い方はさすがである。最前線で相手の最終ラインを押し下げる明本との関係性も良好であり、収めたボールを自らサイドチェンジするなど状態の良さが窺えた。
相手ブロックの内側に起点を作ることができれば次の局面に移行できていた栃木だったが、山形も入ってくるボールには厳しく対応。間で受けようとする攻撃陣へのマークはタイトであり、とりわけ明本を取り囲む守備対応は徹底されていた。
もちろん、栃木もやみくもに縦パスを入れるわけではなく、選手の立ち位置で相手ブロックを広げようという意図は見えた。SHは内側に絞って、SBはサイドの高い位置に。後方はCBとボランチの4人がパスの出し手となる、オーソドックスな[4-4-2]からの可変である。
SBのポジションで相手SHに外側を意識させ、ブロックの空いた隙間に顔を出すアタッカーが受け手になる仕組みなのだが、効果的にボールを入れることができたかと言えば微妙なところ。
理由として相手の寄せの速さ、個人の技術などの事情があると思うが、個人的に気になったのはCBとボランチの関係性。後ろでボールを回す時にボランチがCBをサポートする距離感が近く、山形の2トップにとっては一人で複数の選手に対応しやすい状況となっていた。後方での人数の利を活かせなければ縦パスの精度も低下してしまう。プレスを受けて苦しい状態のCBが準備できていない前線にロングボールを入れてしまったり、後方での繋ぎのミスから決定的なカウンターを招くシーンが何度かあった。
ハイプレスの収支
一方、山形のボール回しはしたたかだった。序盤こそ栃木のハイプレスに対してロングボールを選択していたが、時間の経過とともにその回数も減少。ボランチの岡崎、中村が効果的にボールサイドに顔を出すことでビルドアップを停滞させず、トップ下の南や両SHはブロックの隙間でパスの受け手となった。サイドを駆け上がるSBとの関係も良く、この試合唯一の得点シーンも、右SB山田のアーリークロスから栃木のミスを誘発したものだった。
【#アウェイ栃木戦】
— モンテディオ山形広報/Montedio Yamagata (@monte_prstaff) 2020年10月15日
29分、山田拓巳選手のフィードから相手選手のパスミスをヴィニシウス・アラウージョ選手がボールを拾い、そのままシュートまで持ち込み先制点を挙げる!
2試合連続ゴール!
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ビハインドとなった栃木はプレス強度を高めていくが、山形からボールを取り上げることができない。とりわけハイプレス時に相手ボランチを捕まえ切れない課題は前節同様だった。2トップが縦関係になることで一方のボランチを見る選手が不在に。相手に判断する余裕を与えないハイプレスの結果、最も危険な相手ボランチをフリーにさせてしまう点は皮肉であった。
それでも栃木としては、ハイプレスの流れから決定機を作ることができれば、収支はプラスという勘定なのだろう。交わされてしまったら素早く帰陣すれば良いというスタンス。被カウンター時はエスクデロもゴール前まで帰陣し、山形に手数をかけさせて遅らせる守備ができていた。
前半の焼き直しとなった後半
後半も前半と同じような展開で進んでいく。エスクデロのポストプレーから周りの上がりを促し、獲得したセットプレーからゴールに迫っていく栃木。プレッシングも連動しており、後半17分には明本の鋭い寄せから相手のミスを誘うと、エスクデロが相手2枚をドリブルで出し抜き、最後は明本がクロスを供給。直前に投入された矢野には合わせられなかったものの、守備から攻撃へのイメージは良かったと思う。
対する山形もボールをテンポよく回しながら栃木のハイプレスを交わしていく。前述したようにフリーになるボランチやブロックの合間で受ける二列目など、空いた選手を見極めて動かすボール回しは巧みだった。奪いどころの定められない栃木は自陣に押し込まれることでセカンドボールも回収できず、一方的にボールを回されるという我慢の時間帯もあった。
終盤にかけて栃木は大﨑、榊、ウサンホを次々とピッチイン。CB柳も最前線に上げてパワープレーを仕掛けていったが、5バックで守備を固める山形を最後まで破ることはできなかった。
試合は0-1で終了。栃木はノーゴールでの4試合勝ちなし。山形はクリーンシートで連勝を飾った。
最後に
得点力不足は継続。ただ、どうやってゴールに迫っていくか、チームとして殻を破っていこうという気概の見える試合だったように思う。攻撃ルートは整理され、選手の特性に合わせたボール回しの一端も垣間見えた。
今は頭のなかで整理できていてもピッチで表現するのに十分なトレーニングを積めていない点が大きな課題になっているのではないかと思う。チームとして我慢の時期を迎えているが、今後に向けて引き出しを増やしている最中なのも事実。ここを抜け出した先に期待しつつ、今はじっくりチームの奮闘を見守りたい。
試合結果
得点 29分 ヴィニシウス・アラウージョ(山形)
主審 柿沼 亨
観客 1,583人
会場 栃木県グリーンスタジアム