栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【勝利パターンの確立なるか】J2 第24節 栃木SC vs モンテディオ山形

スターティングメンバー

f:id:y_tochi19:20220702213544p:image

栃木SC [3-5-2] 18位

 前節岩手戦は約70分を10人で戦い、何とか勝ち点1をもぎ取った栃木。グティエレスを出場停止で欠く今節は6試合ぶりの勝利を目指す。前節からの変更は2人。最終ラインには大森が入り、前節右WBで先発した森は左IH起用となった。古巣対戦となる小野寺はベンチ入り。

 

モンテディオ山形 [4-2-1-3] 8位

 ここ4試合勝ちなしで調子を落としている山形。チーム得点王の藤本や前回対戦でゴールを決めたデラトーレら前線に負傷者が続出しており、前節は本職サイドのチアゴアウベスをトップ起用するなどやりくりに苦労している印象。6/27に鳥栖から加入した藤原には即戦力としての期待が懸かる。

 

 

布陣変更でコントロール

 電光石火の先制点だった。

 立ち上がりのロングボール攻防から敵陣でスローインを得ると、左から右にボールを繋ぎ最後は黒﨑がミドルシュート。思い切りよく放ったシュートは密集の中を抜けていき相手DFの足に当たってゴールネットに吸い込まれた。「シュートを打てるところでパスをしてしまったり、プレーの選択が違ったんじゃないかという後悔のある試合があったので、そこは意識を変えていました(黒﨑)」と語るように、積極的に振り切ったことが功を奏した。

 先制シーンにもあるように、この日も栃木はペナルティエリア外からのシュートの意識が非常に高かった。カウンターに移行して直後の矢野のミドルシュートや相手スローインを引っかけた流れから根本のカーブをかけたシュート。大分戦の鮮烈ゴールから始まったシュートへの積極性は栃木の攻撃力を一段階高いレベルに引き上げたといっても過言ではないだろう。天皇杯で鮮やかなプロ初ゴールを決めた神戸も前節はミドルシュートを3本記録した。

 これだけカウンターが機能していたのも新システム[3-5-2]から繰り出すプレッシングがハマっていたことが背景としてあるだろう。山形との噛み合わせの違いから栃木の中盤3枚はSBとボランチを見なくてはならず守備の役割は非常に多くなるが、彼らのハードワークに加え、CB鈴木・大森の中盤の隙間を埋める迎撃が効いた。

 栃木の右サイドを例にあげる。谷内田がSB川井に寄せると、アンカーの神戸はボランチの小西へプレス連動。このときライン間のトップ下河合は瞬間的にマークが外れることになるが、縦パスに合わせてCB鈴木がガツンと迎撃することで河合に前を向く余裕を与えなかった。SB半田とボランチ國分が内外を入れ替えるなどポジションにより流動性のある山形の右サイドに対しても対応はアラートだった。執拗に背後を突いてくる岩手と違い、山形は足元への要求が多く、常に前向きに守備を行えたことがペースを掴むことに繋がった。

 支配率が30%を下回るほどボールを握る時間は少なかったが、守備がハマっていたためそれほど問題ではなかった。山形もCBの迎撃を封じようとチアゴアウベスが内側に入ってきたり、小西が列を上げてハーフスペースに侵入してくる工夫は見せたが、コンパクトに守る栃木のブロックの中では十分に息をさせてもらえなかった。

 前半の半ば以降はボール保持を強めた山形にペースを握られかけた印象だったが、あえて[5-4-1]にセットして試合のテンポをトーンダウンさせたと見ることもできる。それまでのハイプレス基調の[3-5-2]は綻びがなく十分機能していたと思うが、中盤の過負荷はやはり気になる要素だっただろう。それからは重心を一つ落としてじっくり相手を見ることで、縦パスをスイッチに加速したい山形にスペースを与えなかった。

 ただ、[5-4-1]で構えたときに前線で根本が孤立してしまい、攻撃機会を確保できなかったのは改善点。少し受け身になり過ぎた。40分頃には再び[3-5-2]に戻して中盤のスライドとCB迎撃の意識を高めたことで落ち着いたように、ちょうどいい塩梅の模索はこれから取り組むべき課題だろう。

 ハイプレス基調の[3-5-2]はマークがはっきりするという意味では効果的だが、その分外された時のリスクも大きかった。前半終盤に許したチアゴアウベスのシュート2本は危険なシチュエーションだったが、何とか凌いでリードのままハーフタイムを迎えた。

 

 

中盤入れ替えで強度をキープ

 後半も基本的には山形がボールを握り、プレスと撤退守備を使い分ける栃木が時折カウンターを繰り出す展開で進んでいく。

 後半の山形はどちらかといえば前半以上に自陣ポゼッションを大事にしていただろう。繋ぎながら栃木のプレスを引き出すことでより前進の効果を研ぎ澄ませているような印象を受けた。山形としては栃木にプレスに出てきてもらった方が縦パスを差しやすい。一方で、栃木もCBの迎撃からリズムを掴んだ前半の経験があることから引き続き厳しく対応していく。CB鈴木のイエローカードは両者の引けを取らない姿勢を現したシーンだった。

 

 栃木は60分に谷内田と神戸に代えて佐藤祥と西谷を投入。この交代から明確に[5-4-1]に変更し、ブロック守備へと軸足をシフトしていく。前半もそうだったが、案の定1トップにすると前線での収まりは難しくなる。山形の2CB野田と山崎はともに対人能力が高く、大分戦、岩手戦でハイパフォーマンスを見せた根本も簡単には収めさせてもらえなかった。

 [5-4-1]に変更した直後は栃木にとって最もピンチの時間帯だった。黒﨑の後逸を発端に右サイドを攻め込まれたシーンは、ゴールライン上で大森と福森が決死のブロックでクリア。川田がボールを前にこぼしてしまったエラーも含めてミスが続いたにも関わらず失点せずに済んだのは、絶対に割らせないというボールへの執念と多少の運が味方したからだろう。

 

 大島と植田を両サイドに投入してからはフレッシュな中盤4枚で横幅を完全にカバー。あまりWBを縦にスライドさせず、4人の中盤で根気強く横スライドを繰り返すことで山形の縦パスを入れるコースをことごとく消していった。思えば過負荷な3枚中盤からスタートし、途中4枚でのペースダウンも混じえつつ、後半は選手を入れ替えて強度を維持させる、先手先手の交代策は試合運びを優位にする上でどれも効果的だった。

 そして81分に交代選手が結果を残す。ハーフスペースに差し込まれた縦パスを鈴木がカットすると、持ち運んで右サイドの大島へ。大島のライン間を通すクロスに中央で植田が潰れると、ファーに詰めていた西谷が体で押し込んだ。喉から手が出るほど欲しかった追加点だった。

 その後はCB小野寺を投入するなどして最後まで粘り強く対応。危なげなく締めくくりクリーンシートを達成。6試合ぶりに勝利を飾り、降格圏との勝ち点差を5に広げた。

 

 

最後に

 システムと交代策を巧みに操り、クリーンシートと今季初となる複数得点差での勝利を達成。ホームで悔しい敗戦を喫した山形に雪辱を果たす会心の勝利といえるだろう。この日山形に駆け付けたサポーターの力強い声援に後押しされたチームは、一皮むけた頼もしいパフォーマンスを見せてくれた。守備だけでなく攻撃面でもすでに大きな存在となっているグティエレスを欠いたなかでなし得た意義は大きいだろう。

 これで順位は17位に浮上。まだまだ安心できる順位と勝ち点ではないが、ひとまず中位への挑戦権は手に入れた。中3日で迎える次節はその中位で待つ東京ヴェルディが相手。結果で差を見せ付けられた第2節のリベンジといきたいところだ。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 2-0 モンテディオ山形

得点   2分 黒﨑隼人(栃木)

   81分 西谷優希(栃木)

主審 榎本一慶

観客 6431人

会場 NDソフトスタジアム山形

 

前回対戦のレビュー