栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【微妙なさじ加減】J2 第36節 栃木SC vs モンテディオ山形

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 14位

 前節町田戦はシュート2本に抑えられる苦しい展開もスコアレスドローで勝ち点1を獲得した栃木。残留を争うチームが思うように勝ち点を積めてないだけにここで一つ抜け出したいところ。スタメンの変更は1名。怪我で前節を回避した畑がトップ下に復帰し、有馬はメンバー外に。森は3試合ぶりのメンバー入りとなった。

 

モンテディオ山形 [4-4-2] 6位

 前節は終了間際の加藤のゴールで群馬に勝利した山形。中位以下のチーム相手に3連勝を達成し、昇格に向けて一縷の望みを繋いだ。前節からはCBを変更。負傷離脱した野田に代わって熊本が7試合ぶりに先発となった。元栃木の岡崎は凱旋ならず。

 

 

畑への依存度の高さが分ける展開

 試合は概ね山形がボールを握り、栃木がカウンターを窺う展開で進んでいく。ここ3試合はかなり割り切った戦いで勝ち点を積んできた栃木だったが、この日はホームゲームということもあり、最終ラインを高く保ち前からのプレッシングを敢行。2トップは横並びで構えるのでなく、どちらか片方が最終ラインにプレッシャーをかけられるよう縦関係を維持できていた。トップ下の位置から豊田を追い越して相手CBにアプローチするなど畑も怪我明けを感じさせないパフォーマンスだった。

 一方山形はまずは栃木のコンパクトさを破壊しにかかる。立ち上がりからタッチライン際に張ったSHに球足の長いボールを入れたり、最終ラインをブレイクするようなボールを多用。山形のサイドアタッカーはボールを受けると積極的に仕掛けてくるため、黒崎や溝渕は1vs1を強いられる機会が多かった。

 SHが張ること自体は前節町田と同じではあるが、山形の最大の特徴は張ったSHの内側を多くの選手が流動的に絡んでいくことだった。右サイドなら半田や藤田、左サイドなら山田拓巳が入り込んでくる。トップ下の山田康太はフリーマンとして両サイドに関与。栃木はプレスバックも含めてマークを受け渡し合えていたが、初手で樺山や中原に長いボールを入れられるとどうしても重心を下げざるを得なかった。

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 ただ、栃木にとってこの形でサイドから押し下げられることは想定内。両SHの重心が低くなることを踏まえたうえで、この試合では谷内田ではなくトップ下の畑がカウンターの鍵になった。

 例えば5分には、自陣右サイドで黒崎がボールを引っ掛けるとボールは柳から畑へ。畑は右サイドに流れてキープし、後ろから駆け上がってきた黒崎へパス。ボールを受けた黒崎は周囲からの寄せがなく、プレーに迷いが生じるほど前方が一気に開けた状態だった。22分に畑がロングシュートを放ったシーンも矢野が自陣で山田拓巳からボールを回収したところから。いずれも山形がサイドに人数をかけて攻め込むため空いてくる背後を活用したものだった。

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 とはいえ、栃木はカウンターの場面での畑への依存度がかなり高く、畑がボールを持ち運べなければ攻撃に窮することが多かった。SHも低い位置から攻撃を開始するため攻撃に厚みを作るまでに時間がかかってしまう。加えて、敵陣での繋ぎのパスがズレてしまったり、豊田らが合わせられるクロスが上がらなかったりと攻撃精度もいま一つ。何度か訪れるカウンターチャンスで相手を脅かすには至らず攻撃が淡白なものになってしまった。

 攻撃の時間を確保できず守備に走らされることで少しずつ運動量が落ちてくると山形はボールを支配した攻撃を強めていく。とりわけ右サイドはレーンを使い分けて押し込んでくる攻撃が厄介だった。これまで大外を主戦場にしていたSH中原がハーフスペースでボールを引き出すこともあれば、コンビネーションでSBの半田が内側からゴール前に顔を出すシーンもある。どちらかといえば左SBの山田拓巳がボールの前進に合わせてポジションを上げていくのに対して、半田はあらかじめ高いポジションを取っていた。カウンターの局面で谷内田がそれほど目立てなかったのは半田の攻撃的な立ち位置によるところが大きいだろう。

 内側を上手く使えるようになった山形はボランチの南を残してそれ以前はかなり流動的に動いていく。栃木としてはプレスがハマりそうな場面でも藤田や山田康太に局面でのプラス1を作られてしまい、飲水タイム以降はボール回収からカウンターを打てた回数はわずかだった。それでもゴール前の集中は切らさず、GKオビの好セーブも含めて終盤のピンチを阻止。前半だけでシュートを10本打たれる苦しい展開となるも懸命の守備でハーフタイムを迎えた。

 

 

チャンスは作れていたけど

 後半入ってすぐにビハインドを背負うこととなった栃木。前からのプレッシングに回帰しようとしたところを裏返されての失点は痛恨だったが、その勢いを維持して直後に追い付くことができたのは大きかった。相手をサイドに追い込んだ矢野と豊田のプレッシングや、藤田のミスを誘って最後はチャンスをお膳立てした畑など前線の守備の頑張りが得点に結び付いたのはポジティブな要素。試合翌日に誕生日を迎える谷内田はこれが10代最後の得点となった。

 同点に追い付いてからも栃木の勢いは継続。この日の栃木には同点で良しとしない前向きな雰囲気があった。55分には自陣ゴール前でボールを回収するとボールを持ち出した黒崎が右サイドを単独突破。一人で70メートル近くを持ち運び、ゴール前の畑へラストパス。畑のシュートは大きく枠を外れたが、自陣からのロングカウンターに矢野や豊田も並走するなど、ここ数試合では見られなかった分厚いカウンターだった。自陣にセットし直す選手に対して、田坂監督が両拳を上げてプレーを賞賛していたのは印象的だった。

 そのカウンター直後に栃木は豊田と谷内田を下げて森とジュニーニョを投入。プレッシングとカウンターの強度をより高め、マイボールの局面での迫力を増すことに期待した采配だろう。山形のSB裏が空きやすいことを考えれば、ドリブルの推進力を武器とする森にとっては輝ける構図になっていた。

 山形のバックラインにサイドへ揺さぶる余裕を与えず、またキーマンの山田康太を西谷が徹底したマークで抑え込めていただけに、栃木が勝ち筋を見出すにはこの時間帯でもう一つ二つ加点する必要があった。前述の畑のシュートや敵陣でビルドアップを引っ掛けて放ったジュニーニョのシュート、ロングカウンターでは森が力強く持ち運ぶなどゴール前に到達する機会は多かったものの、最後のクオリティが足りなかった。後半山形がシュート3本で2点を決めていることを考えれば悔やまれるところだろう。

 再び失点を許した栃木は松本と山本を投入して運動量を補填。森のポスト直撃のループシュートは山本が守備で粘って黒崎に預けた流れから。松本も内側に入り込むマルティノスに絡んで収めさせないなど守備からリズムを作った。

 三國を入れて柳を前線に移してからもチャンスを何度か作ることはできたがゴールを脅かすには至らず。敵陣でのラストパスが合わなかったり、GK藤嶋が好セーブを見せるなど粘りを見せる山形ディフェンスを最後まで破ることはできなかった。スコアは1-2で終了。栃木は4試合ぶりの敗戦、山形は昇格に望みを繋ぐ4連勝を達成した。

 

 

最後に

 山形の特徴的なビルドアップに対して特に前半は苦しむこととなったが、後半はプレッシングのオンオフを上手く使い分け、カウンターにも迫力をもたらすことができた。攻撃にトレーニングを割いてきた成果の一端が見られたといえる。それだけに感触の悪くない展開で勝ち点を掴めなかったことが悔やまれる。ここ最近戦った磐田やアウェイゲームでは割り切って試合展開を受け入れたことで勝ち点を得てきたことを踏まえれば、ここの微妙なさじ加減は残留を決めるまで付き合っていかないといけないところだろう。

 次節は中2日で千葉戦。アウェイゲームでの戦績も含めて近年はお得意様の印象はあるが、今の千葉はひと味違う強さを備えている。過密日程での試合となるためコンディションの良い選手が優先されるだろう。固定化しつつある今の序列をひっくり返す突き上げに期待したい。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-2 モンテディオ山形

得点 46分 藤田息吹(山形)

   48分 谷内田哲平(栃木)

   72分 ヴィニシウス・アラウージョ(山形)

主審 榎本一慶

観客 3713人

会場 栃木県グリーンスタジアム