栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【ドラマチックに前進】J2 第6節 栃木SC vs ジェフユナイテッド千葉

f:id:y_tochi19:20220328003006p:plain

スターティングメンバー

f:id:y_tochi19:20220328003013p:plain

栃木SC [3-4-2-1] 17位

 前節岩手戦は終盤に同点弾を許し、手痛いドローとなった栃木。4試合勝ちなしとなり、そろそろ浮上のきっかけを掴みたいところだ。U-21日本代表選出で離脱の鈴木海音に変わって右CBには小野寺が、前線には小堀に変わって谷内田が先発となった。面矢とジュニーニョは今季初のベンチ入り。

 

ジェフユナイテッド千葉 [3-4-2-1] 9位

 前節は相手の倍以上のシュートを放つも1点に泣いた千葉。リーグ屈指の守備力は今年も維持できており、勝ち切るためには攻撃陣の奮起が求められる。田口と風間が開幕戦以来のスタメンとなり、流れを掴んだ前節の後半仕様のメンバーでアウェイゲームに臨む。

 

 

要所を抑えた現実的なプラン

 これまでの対戦成績はともに5勝10分5敗、ここ最近は決着がついても1-0と均衡した展開がお馴染みになっているこのカード。ジリジリとした1点勝負が予想されたなか、そんなこれまでの傾向を覆すように谷内田が目の覚めるループシュートを突き刺した。開始2分、栃木が幸先よく先制に成功した。

 

 その後は基本的に千葉がボールを保持し、栃木がプレッシングとブロック守備を使い分ける展開で進んでいく。

 栃木がプレスをかけるかどうか基準としていたのが相手の攻撃のキーマンとなる田口の立ち位置。[3-4-2-1]どうしのミラーゲームとなるため田口を担当するのは西谷の役割だったが、田口が最終ラインに下りてポゼッションに関与する際はそこまで着いていかず、ある程度ボールを持たせることを許容しているようだった。

 ショートカウンターの可能性を一つ減らしてしまう選択肢ではあったが、おそらくこれは今週準備してきたものだろう。千葉の攻撃で厄介なのがテクニックと得点力を兼ね備えたシャドーに前を向かれること。特に左シャドーの見木は田口の下りる動きに合わせて西谷の裏のスペースを常にうかがっており、千葉はここにパスを差し込むことで攻撃のスピードアップを狙っていた。栃木の守備はそこへ先手を打つものだった。

f:id:y_tochi19:20220328003017p:plain

 

 千葉目線で言えば、マッチアップ状態からの栃木のハイプレスをいなすには田口を最終ラインに落とせばよいが、問題はそこからどうゴール前に入っていくかだった。

 瀬沼に対して田口と新井一耀で2vs1を作ってボール保持を安定させても、そこから前の選手にはしっかりマークがついている。鈴木大輔の持ち上がりや田口の下りる動きを起点とした左サイドのローテーションなどからWBを押し上げてサイドから攻めようという意図は見えたが、ブロックの外側でボールを回す時間が非常に長かった。栃木としては内側に入ってきたときの受け手を気にすればよく、ボールを回させているという精神的余裕はあったと思う。

f:id:y_tochi19:20220328003022p:plain

 サイドから上手く前進しても最終的にゴール前には櫻川しかいないという場面も目立った。田口の下りる動きに然り、右シャドーの風間のボールサイドへの関与に然り、どうしてもビルドアップが手厚くなる分、ゴール前の怖さは半減といった状態。クロスは右サイドから数本あったが、窮屈な状態から上げる風間や西久保のクロスが櫻川の頭を捉えることはなかった。

 

 栃木の攻撃は速攻がメイン。17分には、右サイドからのスローインの流れから素早くサイドを変えてトカチがミドルシュート。22分には、プレッシングでボールを奪った谷内田がドリブル前進し森へ預けると、低いクロスに瀬沼が飛び込んでいく。36分には、自陣で回収したボールをトカチが右サイドへ展開し、森の低いクロスに谷内田がシュート。ボール支配率とは相反するように攻撃回数を増やしていき、積極的に2点目を狙っていった。

 速攻が目立った要因には速攻以外に効果的な攻撃を作れなかった側面もあると思う。栃木は千葉ほど陣形を変えるビルドアップには長けておらず、初出場の小野寺も不得手な部分。攻め上がりのキーマンとなる鈴木海音もこの日は不在で、大森の押し上げをサポートする福森も負傷退場していたことから、無理して繋ぐよりもシンプルにロングカウンターに勝機を見出す方が収支はプラスと考えたのではないだろうか。早い時間の先制点もそれを後押しし、現実的な戦い方で試合を進めていった。

 

 

防戦一方の膠着から劇的展開へ

 後半の千葉は比較的右のハーフスペースを効果的に使う回数が多くなった。何か大きな変化があったというよりは、田口のいるサイドに逆サイドのシャドーも絡んだ密集状態を作る意識が高くなり、それが右サイドで多く行われたというところだろう。トカチが田口を見るべきか鈴木大輔を見るべきか中途半端な位置取りになることで佐藤との間が開き、そこを通されて風間や見木に前を向かれることが増えていった。

f:id:y_tochi19:20220328003027p:plain

 選手交代も経ながら攻勢を強める千葉に対して、栃木は[5-4]のブロックで応戦。とりわけグティエレスのパフォーマンスレベルは高く、相手のロングボールをただ弾き返すのではなく胸でコントロールして味方へ預けたり、自ら縦パスを通したりと攻守に存在感のあるプレーを披露。61分にトカチがGKと1vs1となったシーンもグティエレスのリスタートからだった。

 後ろの安定感が光っていただけにもう少しカウンターの精度を高めたかったのは正直なところ。敵陣に運んでいく過程でのミスで攻撃機会を逸してしまうと自ずと守備のターンが長くなってしまう。流れを変えるべく投入された矢野と小堀も低調な流れに巻き込まれてしまった印象だった。

 

 先に書いたように千葉の攻撃はどちらかといえば右サイド偏重。人数をかけて右から前進していき左大外の福満に渡ったところで1vs1やクロスなどゴールへのアクションを仕掛けていく。途中から左CBに回った鈴木大輔はサイドを駆け上がってホルダーに時間を与えるなどほとんど役割はSBのようだった。左WBに秋山が入るとさらに千葉の左サイドからの攻撃は圧力を増していった。

 千葉の波状攻撃を耐えていた栃木だが、88分についに陥落。秋山の低いクロスに合わせたチャンミンギュのシュートはGK川田が防いだものの、こぼれ球に対して櫻川がいち早く反応。防戦一方でカウンターに出ていくパワーの残っていない栃木にとっては重すぎる一発だった。

 

 前節と全く同じ時間の失点にドロー決着もよぎったが、ピッチで戦う選手は誰一人諦めていなかった。少ないチャンスに懸けて前へボールを送り込んでいくと、93分に試合は再び動いた。この日何度も投げていた面矢のロングスローをニアで小堀がそらすと、ファーで待っていたのはここまでハイパフォーマンスを見せていたグティエレス。栃木が終了間際の勝ち越し弾でそのまま試合を決めてみせた。

 栃木は開幕戦以来となる勝利で今季2勝目。千葉は北関東勢に連敗となり、順位も一歩後退となった。

 

 

最後に

 前節からの文脈を考えれば、この試合での理想は1-0で守りきっての勝利による課題克服だったと思うが、何はともあれ勝利がもたらすポジティブな雰囲気はチームに良い影響を与えるだろう。防戦一方だった苦しい展開も勝利に繋げられれば必要な我慢だったと捉えることができる。もちろんそのような展開は避けられれば良いが、新しいチームは色々なものを経験していくことも大事だと思う。

 今のところ課題が生じてはそれを払拭して前進するというプロセスを経てここまで来られている。星を五分に戻したチームがまたもう一歩前に出ていけるかどうかはミッドウィークに控える北関東ダービーにかかっていると言えるだろう。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 2-1 ジェフユナイテッド千葉

得点   2分 谷内田哲平(栃木)

   88分 櫻川ソロモン(千葉)

   93分 カルロス グティエレス(栃木)

主審 池内明彦

観客 3162人

会場 カンセキスタジアムとちぎ