栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【殻を破れるか】J2 第9節 栃木SC vs アルビレックス新潟

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スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 14位

 前節は金沢に敗れ5試合ぶりの黒星となった栃木。今節はスタメン5人を入れ替えて仕切り直しを図る。開幕から固定されていたボランチには前節ハーフタイムからの出場で存在感を見せた植田を起用。面矢も初先発を飾り、シャドーには初めてトカチとジュニーニョが同時起用された。

 

アルビレックス新潟 [4-2-3-1] 7位

 今季ヘッドコーチから昇格した松橋新監督のもと丁寧に繋ぐスタイルを継続している新潟。前線には昨季アシスト王の高木や好調谷口が入り、ベンチには本間や伊藤など豪華アタッカー陣が控える。アレクサンドレゲデスは加入後初のメンバー入りとなった。

 

 

一手先を見る新潟

 前節金沢戦は攻守にミスが多く、特に後半は発展途上のボール保持を試される苦しい戦いを強いられた栃木。この日の相手はボールを握る新潟とあって栃木のスタイルが生きやすいかに見えたが、その強みが覆い隠されるようにほとんどの時間で新潟の巧みなビルドアップに振り回されてしまった。

 先制点に繋がる崩しもそうである。新潟が右サイドからダイレクトを交えて前進していくのに対して、栃木の選手はプレスが間に合わず後追いになる場面が多々。最初のCKを沈められた格好だが、これだけサイドを何度も破られてCKを献上してしまえば失点を避けるのは難しいだろう。 

 

 その後も基本的に新潟がボールを握る展開で進んでいく。新潟はパスを繋ぎながら栃木の選手の出方を探りつつ、そのなかで瞬間的に空いた選手を見つけて前進していくクオリティが非常に高かった。チーム全体で同じ絵を描けている証拠だろう。

 例えば、前への圧力を高めようと植田がボランチの高に寄せるともれなくトップ下の高木が中盤にできたスペースに下りてくる。このとき高木に対して栃木は大森を当てて前進を阻害することを狙っていたが、新潟はそれを踏まえた上でもう一手を高精度で繰り出せるチームであった。

 3分には、高木に入ったタイミングでボランチの高が動き直して高木からボールを引き取り前を向いた状態で右サイドの松田へ展開。20分には、栃木のプレス連動に合わせて、後ろでボールを持っていた舞行龍がグティエレスの脇に流れる谷口にロングボールを入れたりと、瞬間的に栃木の守備の届かないところに一歩先回りすることで、栃木としては捕まえきれない場面が多かった。

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組み立て方は悪くない

 攻撃面に目を向ければ回数こそ少なかったものの、栃木のビルドアップの考え方はそれほど悪くなかったと思う。

 今季栃木が取り組んでいるビルドアップは3CBの前にボランチ1人をアンカーとして配置し、そこにもう1人のボランチが前線とのリンクマンとして絡んでくるもの。この役割を入れ替えながらプレーすることの多い西谷佐藤のコンビに比べて、この日の組み合わせでは植田がアンカーに、佐藤祥がリンクマンになることが多かった。

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 このときキーマンになっていたのが佐藤祥。新潟が前線4人で枚数を合わせてプレスをかけようとすれば、佐藤祥が植田の横にスっと下りてきて自身がビルドアップの出口になる。また、佐藤祥が下りて囮になることで鈴木海音に持ち運ぶためのルートを提供したりと、前進のための手段がよく設計されていた。ゴールキックを繋いでリスタートしていたのもビルドアップに手応えを感じていたからではないだろうか。

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 ただ、そこからがなかなか上手くいかない。サイドに進出してからはCBの攻撃参加も交えながらクロスを入れていくのだが、味方に届く前にニアで跳ね返されてしまうシーンが散見。この日は高さのあるターゲットが少なかったことから低めのクロスを狙っていたのかもしれないが、引っかかってカウンターを招いてしまうのはもったいなかった。

 前進の過程でのズレやミスが多く、最終局面ではクロスに精度を伴わせることができず、自分たちの攻撃をやり切れないでいると、徐々に重心は低くなっていく。プレスに行きたい前線と押し上げられないバックラインとの間にはスペースが生じやすくなっていた。

 それでも最後の局面では凌げていただけに前半をゼロで凌げていればまずまずと振り返ることはできただろうか。新潟が1点をリードしてハーフタイムを迎える。

 

 

噛み合っている?

 後半栃木はシステムを変更。面矢・ジュニーニョに代えて磯村・谷内田を投入し、新潟と同じ[4-2-3-1]にシフト。試合後に磯村がコメントしたように交代の意図は中盤の枚数を相手に合わせること。これにより判断のスピードを上げ、プレスをスムーズに行うことだった。

 実際にフォーメーションを変更してしばらくは良い位置でのボール奪取から攻撃に移行することができていた。攻撃のタクトを振るうトカチは、近くの味方を使いながら同サイドを突破できそうならシュートも視野に積極的に仕掛けていく。縦を切られたとしても中盤を経由して右サイドに届けることで、黒崎らが攻撃参加するための時間を提供することができていた。

 

 ただ、中盤の枚数を合わせたとはいえ、厳密には完全に噛み合っていないのが[4-2-3-1]どうしのマッチアップの特徴である。栃木はトップ下の植田をボランチ高に当て、島田に対しては矢野と近くのボランチが受け渡しながら対応するようにしていたが、どうしてもプレスで前がかりになると島田や島田からパスを受ける選手への対応が遅れてしまう。矢野や磯村にイエローが提示されたのはそこを無理やり埋めようとしたからである。

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 67分にはトカチに代えて五十嵐を投入。それまで右サイドにボールを移してからの攻撃が効いていたことから、そこを強化する交代策だったと思うが、思ったほどの効果は生まれなかったように見えた。

 考えられる理由として、黒崎と五十嵐がともに右サイドのタッチライン際でのプレーを好んでいたため、2人が連携して突破するような形を作れなかったこと。

 そして、もう一つは左で作って右に届ける作業がトカチの交代によりできなくなってしまったこと。トカチには一人で相手を引きつける存在感があり、彼にマークが集中することで逆サイドはフリーになりやすくなるのだが、交代後に左に移った谷内田はサイドに閉じ込められてしまった。それでも五十嵐には単騎で縦に突き抜ける突破力があるため、それなりにサイドを切り込むことはできたが、左サイドをフリに使えればより効果はあっただろう。

 

 75分に新潟に追加点を許すと、栃木はすかさず宮崎を投入するが大きく流れを変えるには至らない。かえってオープン気味になった展開から本間や三戸のカウンターを招いたり、焦りからファールが増えてしまったりと攻撃機会を確保することができなかった。

 終盤に向かうにつれて、新潟が時計の針を進めるようなボール保持を強めていきそのまま0-2で終了。栃木は2連敗、新潟は2連勝と明暗別れる結果になった。

 

 

最後に

 立ち上がりの失点が全てだろう。複数得点へのハードルが高い栃木にとっては、千葉戦や水戸戦のように一発にかけるチャンスを早々に失った代償は大きかった。今季ここまでクリーンシートが少ないこと、ゴールに向かっていく精度が上がらないこと、新潟のように洗練されたチームを相手にして今季これまでの課題を誤魔化して打ち破るのはなかなかに厳しい。

 それでも、難しい展開のなかでロングボールに逃げずにビルドアップから立ち向かっていこうという姿勢は良かったと思う。実際にサイドに進出するまでの過程はこれまで取り組んできたものを発揮できていた。ただ、そこまで運ぶ手順を示して共有することが監督の仕事だとすれば、アタッキングサードの局面では与えられた時間と空間の中で選手は個のクオリティを魅せなくてはならない。この殻をいかに突き破っていけるかで今季のリーグの立ち位置は自ずと決まってくるだろう。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 0-2 アルビレックス新潟

得点   6分 イッペイシノヅカ(新潟)

   75分 谷口海斗(新潟)

主審 長峯滉希

観客 11328人

会場 デンカビッグスワンスタジアム