栃木SCのことをより考えるブログ

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【確かな前進を感じさせる試合運び】J2 第26節 栃木SC vs ジェフユナイテッド千葉

スターティングメンバー

栃木SC [3-4-2-1] 18位

 前節は東京Vに破れ、順位を18位に一歩後退した栃木。前節から中3日で迎える今節は過密日程を考慮し先発5人を入れ替えて臨む。途中出場の続いていた佐藤祥と西谷がボランチのコンビを組み、最終ラインにはグティエレスが先発復帰。天皇杯マリノス戦で復帰していた山本は14節琉球戦以来の出場となった。

 

ジェフユナイテッド千葉 [4-4-2] 6位

 前節は上位新潟を撃破し、プレーオフ圏に浮上した千葉。守備陣に怪我が相次ぎやむなく4バックを採用することとなったが、その間は負けがなく、ここ3試合で7ゴールをあげるなど一転して好調を維持している。好調なチーム状況を踏まえ前節からスタメンに変更はなかった。

 

 

ワンチャンスを生かす

 ともに堅い守備を持ち味としており、ボール保持にもこだわらない点で似たスタイルの両チーム。自ずと先制点が重要な意味を持つことから互いに守備に軸足を置きつつ、いかに少ないチャンスで仕留めきれるかを焦点として試合は進んでいった。

 千葉はボランチの田口と熊谷を中心に栃木のプレスをかわす器用さを見せつつも、攻撃のほとんどは前線へのロングボールだった。190cmの櫻川は言わずもがな、186cmのブワニカもしなやかなボディバランスを生かしたポストプレーは力強く、両SHはルーズボールに反応できるようかなり内側に絞ったポジションを取っていた。

 なるべくボールホルダーには自由に捌かせたくない栃木だが、むやみに追うのではなく相手を引き込みながら徐々にサイドに追い込んでいく守備はそれなりに上手くいっていたように思う。スペースが限定されてしまえば、千葉も中盤から前の繋ぎはそれほど上手くいっていなかった。

 佐藤祥と西谷のボランチコンビを採用した狙いはこのように千葉に繋がせてミスを誘うことだった。千葉はそこまでボールを保持しての攻撃は得意としていない。きっちりした守備から試合に入ることで手堅い展開の中にある一瞬の隙を窺っていく。佐藤祥はセカンドボールへ飛び込む反応と強度が抜群で、19分には回収したセカンドボールをそのままゴール前まで運ぶなど攻撃の起点にもなった。

 

 球際バトルにすこぶる強いこの日のボランチコンビだが、ボールを持たされてしまうとビルドアップの窮屈さは否めなかった。奪ってから1本2本のパスを大事にしようとする意識は高いが、谷内田・神戸のコンビと比べればどうしてもスムーズさに欠ける。ボランチのどちらかが最終ラインに下りて、厚みを作ったサイドから何度か前進を試みるものの、中央のボランチ経由が上手くいかないためサイドで詰まってしまうシーンが多く見られた。

 チームとして守備を優先した結果のためやむを得ない現象ではあるが、持たされてしまうポゼッションほどリスクは大きい。栃木のビルドアップはボランチを縦関係にすることが多いため、失った直後は1ボランチ脇が空いてしまう。植田と佐藤の間は特に空きやすく、そこに下りてくる風間に前を向かれるのは構造上の悩みどころだった。

 効果的な攻撃ができず、2トップの強さを生かした千葉の攻撃に押され徐々に重心が下がっていく栃木。千葉のロングボールとそのセカンドに備える後ろの選手と引き続き前からプレスをかけたい選手とで中盤が間延びし、前半半ば以降は完全に主導権を握られた印象だった。

 36分には被決定機。CKを新井一耀にドフリーで合わせられたヘディングシュートは、栃木にとってはまさに九死に一生を得た感覚だっただろう。千葉のボランチやファジーなポジションを取るSHに制限がかからず、千葉に得点が生まれるのも時間の問題のようにも見えた。しかし、試合を動かしたのは劣勢の栃木だった。

 鈴木とのコンビネーションで黒﨑が相手の背後を取ると、GKと最終ラインの間を通す絶妙なクロス。これにファーで頭から飛び込んでいったのは植田だった。これまでもニアでの潰れ役をいとわなかった植田だが、クロスからようやく自身に得点が生まれた。劣勢のなかワンチャンスをものにする貴重な先制点を奪い、リードしてハーフタイムを迎えた。

 

 

チャンスを演出した右サイドへの考察

 受け身になった前半の反省を踏まえ、後半は全体的にプレスのネジを締め直した栃木。最終ラインをサポートする千葉のボランチにも枚数を合わせて寄せることで時間を与えず、左右CBの鈴木・大谷も連動して内側に絞るSHを迎撃していく。

 後半はこれが上手くハマり、栃木がペースを取り戻すきっかけとなった。47分にはダブルボランチと植田で左サイドを突破しCKを獲得。一度はクリアされるも囲んで回収し二次攻撃へ移行。52分にはピッチを広く使いながらパスを繋ぎグティエレスから高い位置を取った黒﨑へロングパス。相手と入れ替わった根本が右サイドから持ち出すとニアに強烈なシュートを放った。

 一方千葉もビハインドとあって前傾姿勢を強めていく。前半は沈黙気味だった左SB秋山が積極的に背後を狙ったり、中盤に絡む見木と入れ替わるようにボランチが3列目から駆け上がってきたりと攻撃参加する人数が増加。途中出場の高木もボールを受ければ縦突破から危険なクロスを何本か供給した。71分に大島と大森を投入した栃木の交代策はサイドから押し込まれる展開を受けての早めの手当てだった。

 その交代策で強度を維持することができた栃木は78分にビッグチャンス。右サイドの連携から鈴木がオーバーラップすると、クロスに合わせたのは左シャドーの大森。シュートはGK正面に飛んだことで惜しくもネットを揺らすことはできなかったが、追加点の雰囲気は確かに漂っていた。

 先制点やこのシーンにも見られるように右サイドの連携は試合ごとに練度を高めているといえるだろう。もちろん開幕期から鈴木と黒﨑がレギュラーとしてコンビを組んでいることは大きいが、チーム全体として配置を右肩上がりにしている狙いがハマっているともいえる。グティエレスの右側にボランチを下ろして右サイドを押し上げたり、左CBに大谷を起用することで後ろの安定感を担保したうえで鈴木を上がりやすくさせる。左CBに大森を起用すれば左肩上がりも可能だが、大谷の起用による右肩上がりがハマっているのが現状である。黒﨑の好調さも見逃せないポイントである。

 

 試合はこのまま栃木が危なげなくクローズ。終盤千葉が[3-4-2-1]に切り替えてからはシステムが噛み合ったことで多少守りやすさはあったと思う。前半のリードを守りきった栃木が2試合ぶりに勝利。クリーンシートとアウェイ連勝を達成した。

 

 

最後に

 確かに追加点を決め切れれば山形戦のように磐石な試合運びとなったが、ほぼほぼ理想に近い展開で試合を完遂することができたといえるだろう。粘りの守備でピンチを凌ぎ、ネジを締め直した後半は危険なシーンを作らせなかった。追加点の可能性も大いに漂わせた。選手を多く入れ替えても一定のクオリティを発揮することができており、前半戦で苦しみながら撒いた種がようやく収穫できる段階に来たといえるだろう。

 次節からは夏のマーケットで獲得した高萩が出場可能。実績ある新8番とともに前半戦で苦杯を舐めさせられた岡山にリベンジを果たし、後半戦の巻き返しを図っていきたいところだ。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-0 ジェフユナイテッド千葉

得点 42分 植田啓太(栃木)

主審 大坪博和

観客 4914人

会場 フクダ電子アリーナ

 

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