栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【現状打破のためのもう一押しを】J2 第5節 栃木SC vs いわてグルージャ盛岡

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スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 17位

 前節大宮戦はトカチの直接FK弾で追い付き連敗を2で止めた栃木。開幕戦以来の勝利を目指して今節は岩手へ乗り込む。スタメンの変更は1人。谷内田に変わって小堀が2試合ぶりに先発に戻り、小野寺・大島・五十嵐に変わって黒崎・三國・宮崎がベンチに入った。

 

いわてグルージャ盛岡 [3-4-2-1] 8位

 J2初挑戦となる岩手はこの試合がホーム開幕戦。これまでは静岡県を拠点にアウェイゲームを4試合戦いそのうち2勝あげるなど、序盤のJ2リーグで存在感を示している。監督、選手にコロナ感染が相次いでおり、この日は中三川コーチが指揮を執ることとなった。

 

 

風下を逆手に取る

 試合前日まで続いた降雪の影響もあり、かなりぬかるんだピッチで戦うこととなった両チーム。ピッチの各所に水溜まりがあるためロングボールで回避しようにも、上空は強い風が吹いているというどこを取っても難しい環境のなか試合は行われた。

 よって、とにかくリスクをかけずに敵陣にロングボールを送り込んでいくのがこの試合における両チームのスタンスだった。ボールを回収したら後ろで繋ぐことはせず素早く敵陣へ供給していく。かなり割り切った戦い方ではあったが、もっともこの両チームはロングボールを多用するスタイルに馴染みがあるだけあって、選手の顔ぶれとのミスマッチはそれほどないように見えた。

 ともにロングボールを入れるなかで大きく影響したのがピッチの左から右に抜けていく強風。前半風上に立った岩手の蹴り出すボールは風に乗って栃木の最終ラインの背後まで届くことが多く、一方で栃木の蹴り出すボールは岩手最終ラインの手前に落ちることが多かった。

 後ろ向きの対応を強いられることを考えれば風下の栃木に分が悪いと考えるのが一般的だが、クリア対応やその後のセカンドボール争いを見る限り栃木は風下であることを逆手に上手く戦っていたように思う。

 飛距離の出にくいロングボールに対して瀬沼を筆頭とした3トップはどの選手もターゲットとして相手を背負うことができる。簡単に相手にクリアさせずに近場にボールを落とすことで、中盤のボランチ2人がセカンド争いに力を発揮しやすい環境になっていた。窮屈になったらタッチラインに逃げるという岩手DF陣の選択も栃木が流れを継続させる要因になっただろう。

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 岩手は栃木の最終ラインの背後を狙っていくが、栃木はCBを中心に予測を光らせて対応。左に右に流れて抜け出そうとするモレラトにも鈴木海音や大森が上手くスペースを消して対応していた。岩手DF陣が十分にクリアできていない一方で、栃木はボールに先に触り大きく蹴り返すことができていたため主戦場が自陣ゴール前にならずに済んだ。

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 栃木の先制点は、岩手のロングボールが風で流れてGK川田が蹴り出したところから。瀬沼が競り勝って落としたボールを小堀が粘ってトカチに預けると、最後はトカチのシュートが減速し瀬沼が押し込んだ。ここまで最も長い時間組んでいる3トップが良い関係性からゴールを奪い切った。

 

 ここから栃木が完全に流れを掌握したわけではないが、それなりに岩手に対して攻守にメリハリあるプレーを行うことができていた。瀬沼がスペースに流れていけば小堀がトップの位置に入ってきたり、ロングボールに対して瀬沼がポストプレーを行えば前にはシャドー、後ろにはボランチをセットで用意することでセカンドボールの回収率を高めたりと、攻撃に厚みを加えていく。

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 守備では岩手のスペースを突いてからのサイド攻略に対して素早く寄せていきクロス供給を未然に防ぐなど、危ない場面はほとんど作らせなかった。35分、ロングボールを受けたモレラトが栃木の縦を切る守備にズルズルと後ろに下がっていったシーンは栃木の守備の充実を表していたという意味で印象的だった。

 

 

粘ったものの逃げ切れず

 奪ったら繋がずにロングボールを入れていくスタイルは後半も継続。岩手は後半入ったブレンネルにボールを集めて前線にタメを作りながら、周りの選手の押し上げを促していく。ブレンネルの下りる動きに合わせてシャドーの縦への動き出しだったり、同じく後半WBに入ったビスマルクの攻撃参加だったりと、明らかにブレンネルを投入した効果はチームに現れていた。ブレンネルへの対応は本職DFではない大森はやむなしとしても、ここまで強さを見せつけてきたグティエレスも手を焼いていたのは衝撃だった。

 栃木も後半は自分たちのロングボールへの配置を微調整。瀬沼とトカチが相手最終ラインと駆け引きするようにポジションを取り、小堀がライン間に残ってロングボールのターゲットになる形が増えていった。小堀は競り合う相手が自ずと岩手のボランチになるため勝率は悪くなかったように思う。近場にはボランチがセカンドボール回収に備えるほか、小堀自身がサイドに展開するなど、トップ下に小堀を置いたときの攻撃パターンは今後のオプションになるだろうか。

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 73分には矢野と谷内田を投入。フィジカル全開のような試合で谷内田がどう生きるかは注目だったが、相手の寄せに対してキレのあるドリブル突破や守備強度は十分だった。前節大宮戦ではボールを持ちすぎる場面も目立ったが、この日は割り切った戦い方ということもありシンプルに味方を生かすシーンも多かった。

 終盤には両WBを入れ替えて逃げ切り体制に変更。1点リードの終盤かつ難しいピッチコンディションとなれば現実的な選択といえるが、結果的に最終盤に同点弾を許すこととなった。88分、岩手のCKを跳ね返した流れでサイドを変えられると、逆サイドからのクロスに中央で牟田のヘディングを許して失点。栃木はゴール前に多くの人数をかけつつも、クロスに競ることができたのは岩手の選手2人に挟まれた鈴木海音のみと、ピンポイントで難しい対応を強いられてしまった。

 

 後半アディショナルタイムには谷内田のCKに合わせた矢野のヘディングがバーを叩くなど最後まで追加点を狙ったが、1-1で終了。栃木は4試合勝ちなし、岩手はホーム開幕戦で土壇場で勝ち点を拾うこととなった。

 

 

最後に

 試合終盤に勝ち点2を失う格好となった栃木。監督、選手が口々に語ったように終盤の失点を悔やむよりも追加点を奪えなかったことを課題として捉えるべきだろう。少なくとも前半には二度追加点を奪う大きなチャンスはあった。ゴール前へ侵入する機会を量産できるチームではないので、数少ないチャンスをものにできるかが現状を打破できるかの大きなポイントになるに違いない。

 開幕5試合を終了して現時点の勝ち点は5ポイント。J1昇格を掲げるチームとしては物足りないかもしれないが、プレシーズンのアクシデントを考えればまずまずのスタートと言えるのではないだろうか。開幕から1ヶ月が経ち、ここからはもうワンランク上がっていくため内容と結果の両方にこだわっていきたいところである。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-1 いわてグルージャ盛岡

得点 28分 瀬沼優司(栃木)

   88分 牟田雄祐(岩手)

主審 榎本一慶

観客 1572人

会場 北上総合運動公園北上陸上競技場