スターティングメンバー
栃木SC [3-5-2] 19位
前節は終了間際の得点で大分に引き分けた栃木。4戦勝ちなしで下位直接対決と正念場を迎えるが、水曜日に行われた天皇杯横浜FM戦勝利の勢いを生かしたいところだ。前節からの変更は4人。代表活動を終えた鈴木海音は仙台戦以来のメンバー入り、根本は加入後初先発となった。
いわてグルージャ盛岡 [3-4-2-1] 21位
前節徳島戦は虎の子の一点を守り切り、いよいよ残留圏内まで迫ってきた岩手。アビスパ福岡との天皇杯3回戦には敗れたが、ここ4試合負けなしで好調を維持している。前節得点をあげた小松に代わりボランチには石井が、左シャドーには奥山が入り、5連戦の最終戦に臨む。
[3-5-2]で準備してきた狙い
前節大分戦の途中からや天皇杯で採用した2トップシステムでスタートした栃木。得点力不足にあえぐチームにおいて少しでもストライカーの数を増やし、中盤にはミドルシュートをもっている3枚を据えた後半戦のベースになりつつある布陣で試合に入った。
5バックで守る岩手に対して栃木が狙いとしていたのは岩手の3CBを動かすこと。彼らを一人でも持ち場から離れさせることができれば、栃木の2トップは残された2CBと同数で勝負することができる。競り合いに強い根本と矢野なら十分勝算の見込みはあり、そのシチュエーションを作るためのビルドアップに栃木は取り組んでいるように見えた。
このとき大事になるのが、2トップ以外の選手が攻撃参加することで相手CBの注意を引くことである。その意味で19分に見せた攻撃は上手くいったように思う。左サイドからのスローインを根本が落とすと植田は右IHの谷内田へパス。それまで谷内田に厳しく寄せていた田平は縦を切るのみに留まり、右ワイドの森に開いてからは谷内田に加えて後方から鈴木海音も駆け上がってくることで分厚い攻撃を作ることができた。クロスはブロックされたが、このとき根本と矢野はそれぞれ牟田と蓮川と1対1の関係になっていた。
栃木はIHが岩手のボランチ脇で良い状態で受けることで、CBを釣り出すシーンが何度かあった。とりわけ右の谷内田はボールを引き出すのが上手く、オーバーラップする鈴木海音やワイドの位置から内側に入ってくる森との連携により右サイドから崩していける可能性はそれなりにあったように思う。ワイドに黒﨑ではなくて森を起用した点もそのような攻撃を念頭に置いていたからだろう。
しかし、試行回数を思うように確保することはできず。自分たちの攻撃を繰り出す以上に岩手のアバウトな攻撃に手を焼いた。
岩手の攻撃はとにかくシンプルに栃木の背後にロングボールを入れること。ボールを失っても再びそこへ送り込み、栃木DFに難しい対応を強いさせるものだった。ベクトルは常に前を向き、まさに昨季までの栃木を見ているようだった。最前線のモレラトは小柄ながら体の使い方が上手く、奥山のオフザボールの動きには迫力があった。
重心を押し下げられてしまう栃木は陣地挽回に苦戦。3CBに加えてボランチのプレスバックも揃った岩手の守備を相手に根本も矢野もボールを収めることができない。ワイドに逃げようにも対面のWBが素早くアプローチしてくるため、ボールの落ち着かせどころを見つけられない状態だった。そうして守備に回る時間が増えるなか、飲水タイム明けの一瞬の隙から抜け出された奥山をグティエレスが倒してしまうと、これがレッドカードの対象に。決定機阻止の判定で一発退場となり、残り70分近くを10人で戦うこととなった。
10人での対応力
植田に代えて大森を投入することで後ろの守備の形は変えなかった栃木。そのなかで興味深かったのが矢野の役割。攻撃時はターゲットとして根本とともに最前線を担いつつ、守備になればボランチと同じラインまで下がって中盤を形成する。[5-2-2(攻撃時)]と[5-3-1(守備時)]を使い分ける調整弁となった矢野は、さながら一人二役を担った。
案の定、岩手がボールを握る時間が増えていくなかで、ある程度守備に割り切れる整理ができたのは大きかったように思う。始めからラインを高く設定せずに構えることで岩手の攻撃を引き込みつつ、狭いブロックのなかで絡め取る。CB中央に入った大谷は下りて受けようとするモレラトを自由を与えず、奥山・桐の両シャドーもスペースを消されたことで思うようにプレーエリアを確保できていない印象だった。
自陣でボールを回収すれば素早くカウンターへ移行する。収めるだけでなく、そのまま強引に持ち込めてしまう根本の力強さはさることながら、守備をこなした後に前線で味方を押し上げるボールキープや巧みなポストプレーからファールを貰う矢野のプレーはさすがの一言だった。防戦一方にならなかったのは2トップの獅子奮迅の活躍があったからである。
あまりのハードタスクをこなす矢野のプレーに対してハーフタイムに呟いたのが下のツイート。結局この役割をフルタイムでやり切ってしまうのだから矢野様々である。
10人になってからの貴章さんがとんでもなくタスク過多になってるからどうにかして先手を取りたい。そしたらもう優希だったり佐藤を投入して守り勝とう。
— YOSHIKI (@ts_gooners) 2022年6月26日
後半に入ってからも自陣に押し込められながら虎視眈々とカウンターを狙う展開で進んでいく。岩手の攻撃にかける比重が高くなればなるほど、ボランチの位置から谷内田がWB裏のスペースを取りに行ったり、矢野がサイドのオープンスペースを駆け上がっていったりとカウンターの可能性をうかがっていく。そして、56分に栃木が均衡を破ることに成功する。
カウンターを封じられてから素早い守備への切り替えで相手ボールホルダーに襲いかかっていったのはWB福森。ボールがこぼれると、根本が少ないタッチで強引に右足を振り抜いた。30メートル以上はあろうかという距離から放たれたシュートに岩手GKは反応できず、一人少ない栃木が試合を先に動かした。
【6/26岩手戦】
— 栃木SC|Tochigi SC (@tochigisc) 2022年6月26日
6月26日にホームで行われましたいわてグルージャ盛岡戦のハイライト動画を公式YouTubeチャンネルにアップしました。
こちらから▶︎https://t.co/i2c5qYh7jz
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PICK UP🎥
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56分 #根本凌 のゴールシーン⚽️🔥
📱LIVE中継・見逃し配信は #DAZN でhttps://t.co/Zv2KmUkpsR#栃木SC pic.twitter.com/ZHuPJ1Go0g
一発一発が重いジャブ
2トップのポストプレーや谷内田の高精度キックから繰り出されるセットプレー、神戸のミドルシュートなど得点したことで勢いが出てきた栃木。守ってはブレンネルに前を向かせない粘りの守備対応で、後半半ばを迎えるまでは攻守ともに一人少ないことを感じさせないプレーぶりだった。
しかし、時間とともに押し返す力が減っていったのも事実。岩手が右サイドに小野田と和田を投入して攻撃のギアを入れた71分を皮切りに、それ以降は完全に押し込まれた。途中投入の2人に加えて加々美や中村充孝らが絡んだ右サイドは簡単にボールは失わず、細かい連携から栃木の守備を翻弄しつつ、機を見てブレンネルの体の強さを生かしてペナルティエリア内に入ってくる。長い時間10人で戦ってきた栃木にとって終盤になって繰り出される攻撃は一発一発が重いジャブだった。
押し込まれた終盤の時間帯はさすがの矢野も中盤の一角としてゴール前を埋めざるを得ず、それによって孤立した根本もなかなか前線で時間を作ることができなかった。根本が左サイドまで守備のサポートに回るほどであり、ギリギリのところをやり過ごしていたが、83分、ついに耐え切れず失点。前回対戦に続き牟田に同点弾を献上した。
🆚 #栃木SC#牟田雄祐 選手の得点シーン💥
— いわてグルージャ盛岡【公式】 (@IwateGrulla) 2022年6月26日
見逃し配信は #DAZN で✨
https://t.co/Sl42cT0gCs#いわてグルージャ盛岡 #一岩#グルージャ#GRULLA#サッカー @DAZN_JPN pic.twitter.com/uXGOF7FpGr
それ以降も決壊寸前まで追い込まれたものの、何とか最後まで耐え凌いだ栃木。シュートブロックも含めて全員が最後まで体を張り、ブレンネルの決定的なシュートもGK川田が立ちはだかった。群馬戦、大分戦に続いてこれで3試合連続でのドロー決着となった。
最後に
6月のナイトゲームとは思えないほど暑く湿った気候のなか、早々の退場で70分近くを10人で戦い切った結果の勝ち点1。先制したとはいえ、これだけ前に後ろに踏ん張ったチームを責めることはできないだろう。順位の近い直接対決で結果を出すことはできなかったが、相手に勢いに乗らせる結果を許さなかったことは最低限のノルマ達成である。
気になるのは2試合連続でグティエレスがウィークを突かれている点。この試合ではスピード勝負に敗れ、大分戦ではマンマークを遂行し切れなかった。もちろん彼だけの責任と言うつもりはないが、チームとしてどうカバーし合っていくかは再考しなければならないように思う。より一つ堅固な守備を手に入れるためには乗り越えなければならないポイントになるだろう。
試合結果・ハイライト
得点 56分 根本凌(栃木)
83分 牟田雄祐 (岩手)
主審 佐藤誠和
観客 3497人
会場 カンセキスタジアムとちぎ