栃木SCのことをより考えるブログ

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【調子を示すものさし】J2 第10節 栃木SC vs ロアッソ熊本

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スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 16位

 前節新潟戦は見せ場を作れず0-2で敗れた栃木。グリスタ初開催となる今節は連敗ストップを狙う。GK藤田は今季初出場。キャプテン西谷と福森は負傷から復帰し、シャドーは谷内田と初先発の山本がコンビを組んだ。ベンチの小堀は3試合ぶりのメンバー入り。

 

ロアッソ熊本 [3-3-1-3] 11位

 昨季J3優勝を成し遂げ4年ぶりにJ2で戦う熊本。前節はこれまで無敗の東京Vに土をつけ、5試合ぶりの勝利を飾った。スタメンの変更は田辺→上村の1人のみ。ここまで左WB起用の多い竹本はトップ下で起用され、伊藤がベンチスタートとなった。

 

 

特異なシステムへの対応

 試合は立ち上がりに大きく動いた。

 キックオフの流れから栃木が右サイドを押し込むと最初のシュートでCKを獲得。谷内田のアウトスイングのボールに後ろから走り込んできた黒崎がドンピシャで合わせた。

 このとき熊本の守備はニア2人とファー1人がゾーンで守り、残り7人がマンマークでセットしている。これに対して栃木は熊本より多い8人の選手が動き出し、唯一マンマークの付いていなかった黒崎がフリーで合わせることができた。

 

 リードも束の間、その2分後には熊本が同点に追い付く。ロングボール対応でグティエレスがサイドに釣り出されると、薄くなったペナルティエリア内に入れられたクロスを竹本に合わせられた。一人釣り出されても2CBが残っているのが3バックのメリットだが、本職ではない大森が務めているというウィークポイントが現れる格好となった。

 

 序盤の打ち合いを終えると、次第に互いの思惑が見えるような展開になっていく。

 この日の熊本はシステム上の表記こそ[3-3-1-3]たが、この形のまま戦うことはなく攻守に可変するのが基本路線だった。

 3バックと河原でボール保持を安定させれば、1トップの高橋を頂点に残りの5人が2列目としてピッチ幅いっぱいにポジションを取る。初期配置がWGの坂本と杉山がサイドに主に張りつつも、一度押し込んでからはWBの上村や阿部と頻繁にレーンを入れ替えながら役割を分担していた。竹本は高橋と同じ高さに並んだり、CBからボールを引き出せる位置に下りたりと自由度の高い動きを見せていた。

 配置の複雑性はあれど、ボールサイドに人数をかけて細かい連携からサイドをこじ開けて逆サイドに展開という形は徹底していた熊本。同サイドの崩しにはサイドの2枚に加えてCBの攻撃参加や竹本も絡んでくるため栃木としては捕まえるべき相手が多い状態。特に鈴木海音と黒﨑のサイドは対応に手を焼いた。

 それでも、横へのスライドを繰り返し行い、内側に差してくるボールには厳しく対応できていた栃木。熊本のパスワークは確かに巧みだったか、真に厄介だったのは幅を取ったWGを裏に走らせるロングボールくらいだっただろうか。

 ただ、そのロングボールもジワジワと効いていたのは事実だろう。背後を気にしなければならないWBは徐々にプレスの出足が鈍くなり、全体的に構える姿勢を強めたことで重心が低下。前半の半ばからは熊本の保持を牽制しきれない時間が続くこととなった。

 

 一方、栃木の攻撃面に目を向けると、ぎこちなさは見せつつも速攻遅攻の判断はよくできていたように思う。

 とりわけ福森の存在は大きく、内側に持ち運んで大森をオーバーラップさせたり、自身は内側で3人目のボランチのようにプレーしたりと森や面矢とは異なるクオリティを披露。プレーのレパートリーが多く、攻撃の精度に課題を抱えるチームにとって貴重な戦力であることを示したように思う。

 後ろでボールを持つ時間を作れる栃木が保持で狙っていたのが、熊本のアンカー脇のスペースでシャドーが受け手になること。ハイプレスの意識が高い熊本は河原が中盤でポツンと取り残されることが多く、その周辺には広くスペースができていた。鈴木海音から谷内田を経由して左サイドへ、内側に入った福森から山本を経由して右サイドへという攻撃パターンはサイド攻略のルートとして有効だったように思う。

 ただ、前述のとおり守備が上手くいかなくなったことで重心が下がると、攻撃に転じてからの前進のハードルは高くなってくる。時間と空間を届けられない時限爆弾のようなパスが増えてしまうと前の選手は思うようにボールを収めることができない。前半終盤は熊本の圧力に押される様相が強かった。

 

 

アグレッシブ復活

 プレスのスイッチを入れ直した後半は立ち上がりから栃木が一方的に押し込む展開で進んでいく。

 大きく変わったのがWBが出ていく際のアプローチの速さと強度。前半は背後のスペースに後ろ髪を引かれるように留まってしまう場面が目立ったWBだが、ハーフタイムでの修正を経た後半はアグレッシブなプレスが復活。GKのミスを誘う矢野のプレスもチームに勢いをもたらした。

 

 後半序盤の栃木の猛攻は今季ここまでで最も主導権を握った展開だったと言えるだろう。息をつかせないハイプレスからのショートカウンター、連続で獲得したセットプレー、遅攻に転じれば谷内田や福森がボールを捌き佐藤祥や西谷は3列目から攻撃に厚みを上乗せしていく。前半とは真逆の展開で栃木が熊本陣内で過ごす時間が非常に長くなっていった。

 一方で、攻勢を強めた割には決定機もシュートも少なかったのが実際のところ。角度のないところから放った矢野のシュートや持ち運んでからの大森のミドルシュートは得点に繋げるには少々難易度が高い。谷内田がルーズボールにヘディングで合わせた場面は数少ないビッグチャンスだったが、コースを振り分けるほどの余裕がなかった。

 栃木は試合を決めるためのラストピースをベンチから登場するアタッカーに懸けるが、追加点を奪うには至らない。前半から狙いとしていた熊本のアンカー脇のスペースではトカチを入れることで前向きのベクトルを高めたかったところだが、かえってブロックを固められてしまった。その分空いたサイドからのクロス攻撃には小堀と宮崎を投入することで高さを補強していくが、最後まで熊本の粘り強いディフェンスを破ることはできなかった。

 互いに序盤に奪った1点以降はスコアは動かずに終了。栃木は連敗を2でストップ。熊本は今季初の連勝を逃す結果となった。

 

 

最後に

 やはり守備が引き締まると良い影響は攻撃にも現れてくる。後半立ち上がりにあれだけ猛攻を仕掛けられたのもアグレッシブなプレスを復活できたからである。ハーフタイムの修正がこれだけ功を奏していただけに追加点という形でチームに成功体験をもたらせればより良かったが、それは次節以降に持ち越し。まずはこの感覚を忘れず大事にしたいところだ。

 主力の離脱がチラホラと発生している状況だが、これまで出場機会の少なかった選手も含めて個々人のパフォーマンスが上がってきているのはポジティブな要素。これから始まるGWの5連戦ではチームの総合力が問われるとともに、リーグでの立ち位置を決める大事な連戦になるに違いない。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-1 ロアッソ熊本

得点 2分 黒﨑隼人(栃木)

   4分 竹本雄飛(熊本)

主審 吉田哲郎

観客 2618人

会場 栃木県グリーンスタジアム