スターティングメンバー
栃木SC [3-4-2-1] 17位
前節岡山戦は粘りの守備で勝ち点1を手にした栃木。ホーム連戦の初戦となる今節はスタメンを3人入れ替えて臨む。左WBには出場停止明けの福森が復帰し、矢野は3試合ぶり、前節デビューの髙萩は加入後初スタメンとなった。7/20に山形から加入した吉田はさっそくのベンチ入り。とちぎ国体記念ユニフォームを身にまとい、前半戦のリベンジに挑む。
レノファ山口FC [4-3-3] 16位
前節熊本戦はPKによる失点に泣き、2連敗を喫した山口。これから仙台、山形、岡山と上位との対戦が続くだけに、このシックスポインターで連敗ストップといきたいところだろう。スタメンの変更は3人。眞鍋と桑原は6試合ぶりの出場、高井は山口復帰後初スタメンとなった。
狙いと期待に応えた前半
試合前は根本と矢野が並ぶ2トップも予想されたが、蓋を開ければ普段の1トップ2シャドーを採用した栃木。髙萩は前節とは逆サイドで起用され、谷内田や福森、攻撃参加が持ち味の大森らと左サイドを構成。左サイドが前進の指揮を取り、中央の根本や矢野で仕留めるといった狙いが窺える布陣となった。
その期待に応えるように立ち上がりのうちに栃木が試合を動かす。5分、神戸からのパスを髙萩が1タッチで前方へフリック。生駒を引き付けつつ、自分の背中側を走る福森を感じながらの絶妙なスルーパスを通すと、福森は右足に持ち替えてクロスを供給。黒﨑が折り返したボールは相手守備陣のエラーによりゴール方向にこぼれ、栃木が幸先よく先制に成功した。
髙萩の巧みなパスが局面を進めたことは言うまでもないが、この場面で見逃せないのが最終ラインから駆け上がってきた大森のランニング。ボールを持つ福森には当初高木が寄せてきていたが、大森のオーバーラップに釣られたことで福森に一瞬の時間ができた。福森が利き足の右足に持ち替えたのはその間であり、オフザボールの動きで先制点に貢献したといえる場面だった。
14分には追加点。髙萩がボールをキープしてライン間の神戸へ楔を打つパス。神戸の縦パスは一度は防がれたものの、すかさず黒﨑へスルーパスを通すと、黒﨑はダイレクトでGK-DF間にグラウンダーのクロス。中央で待ち受けていた根本が無人のゴールに流し込み、早くもリードを2点に広げた。髙萩のプレーはもうワンテンポ早ければ攻め急ぎ、遅ければ持ち過ぎと判断されかねないものであり、そのどちらでもない絶妙な間が栃木に追加点をもたらす大きなアクセントになった。
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— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) 2022年7月23日
鮮やかな連携から追加点⚡️
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🎦 ゴール動画
🏆 明治安田生命J2リーグ 第28節
🆚 栃木vs山口
🔢 2-0
⌚️ 14分
⚽️ 根本 凌(栃木)#Jリーグ#栃木山口 pic.twitter.com/Jz5ocbXVXG
得点シーン以外にも序盤はチャンスを量産。7分、黒﨑のクロスに合わせた矢野のヘディングはわずかに右に外れ、8分と17分にはそれぞれカウンターから根本がGKと1vs1に持ち込むもネットを揺らせず。その後の展開を考えればどれか一つ決まっていれば試合運びは楽になったが、今季これまでよりも遥かに多くの決定機を演出することができた。
その背景にはこの日準備してきた攻撃的なプレッシングがピタリとハマったことがあげられる。栃木の基本システムは[3-4-2-1]だが、ハイプレスのタイミングを見極めている時は[3-4-1-2]のような形になっていた。
守備の基準となったのが山口のアンカー佐藤謙介の立ち位置。へその位置でチームを動かす司令塔にボールを簡単に入れさせまいとトップの根本は徹底的に佐藤をケア。よって山口のCBに寄せていくのはシャドーの役割に。矢野も髙萩も佐藤へのコースを消すように内側に立つことを意識していたため2トップのように並ぶことが多かった。
フリーになりやすい山口のSBにはWBが縦にスライドし、IHにはボランチと左右のCBが睨みをきかせる。アンカーを封じることでボールをサイドに追い出してしまえばあとは一枚ずつプレス連動していくだけであり、その反応と強度は山口の保持を苦しめるには十分だった。山口としてはダイレクトが入ればそれなりに前は向けたが、効果が現れるほど回数を稼ぐことができなかった。
パーフェクトなディフェンスに裏打ちされた2ゴールにより試合を優位に進める栃木は、ビハインドを跳ね返そうと山口がハイプレスを仕掛けてくればその背後を狙っていく。前半の半ばからはSBの背後に流れて抜け出そうとする矢野とヘナンのマッチアップが増加。体を入れて上手くファールを貰ったり、そこから得たセットプレーから押し込む時間を作ったりと、リードしたことで相手を見ながら前進する精神的余裕も見せた。
山口も佐藤謙介がアンカーの位置だけに留まるのではなくポジションを動かしながら栃木の守備基準にエラーを引き起こそうとするが、コンパクトな守備の前には不発。ただただボール支配率が高くなるのみで、栃木としては危なげなく前半45分間をやり切ってハーフタイムを迎えることができた。
ミラーゲームとズレに苦しむ
後半頭から山口が渡部と沼田を投入しシステムを[3-4-2-1]に変更すると、ここから試合内容は一変。前半とは打って変わって山口が一方的に栃木を攻め込む展開で試合は進んでいく。
栃木にとって試合を難しくさせたのは間違いなく山口がシステムを栃木に合わせるミラーゲームにしてきたことだろう。前半栃木が攻勢をかける原動力になった髙萩は右CB生駒に張り付かれ、大外から良質なクロスを供給していたWBも5バックを敷かれてしまうと簡単には敵陣に入れない。大森には攻撃参加する暇も与えられなかった。
山口は守備ではミラーゲームでマークを明確にする一方で、攻撃ではミラー状態からズレを作るのに長けていた。この辺の上手さはボール保持に慣れている山口の強みのように思える。攻撃の中心となったのが左シャドーに移った高井。大外に張っていた前半はまるでボールに触れなかったが、後半は栃木のボランチ脇を主戦場とすることで水を得た魚のようにボールに関与する回数が増加した。
栃木としては対面の大谷がもっとガツンと迎撃したいところだったが、左サイド偏重になった山口が逆サイドから沼田を絡ませてきたり、頻繁に梅木や桑原が最終ラインの背後を狙うことで大谷の動きを牽制。一度下がった重心を戻すことができず、勢いに飲み込まれたまま69分にセットプレーから失点を許した。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) 2022年7月23日
🏆 明治安田生命J2リーグ 第28節
🆚 栃木vs山口
🔢 2-1
⌚️ 69分
⚽️ 生駒 仁(山口)#Jリーグ#栃木山口 pic.twitter.com/LAmOnWemRW
劣勢に陥った時間帯は球際でも上回られてしまい、セカンドボールをほとんど収めることができない。こういう展開で試合を引き締めることができるのが西谷と佐藤祥なのだが、この日はともにベンチ外。磯村の投入は75分まで待たなければならず、遅きに逸した感は否めなかった。
ただ、磯村・大島が入ってからはそれなりに落ち着きを取り戻すことができた。なかでも大島はプレス強度やマイボールを収める力を発揮。79分に訪れた左足の決定機をものにできれば文句なしのパフォーマンスだったが、そこは次節以降に求めたいところである。
GK川田のビッグセーブも含めて最後の部分で凌ぎ切り、山口の反撃を何とか1点で抑えた栃木。前半のリベンジを見事達成し2試合ぶりの勝利。一方山口は今季二度目の3連敗となった。
最後に
ここまで前後半でガラリと流れが変わってしまうのも珍しいが、主導権を掴んだ時間帯に訪れたゴールチャンスをしっかりと逃さず仕留められたことが勝利に繋がった。苦しい時間を耐え切ることはこれまでもあったが、自分たちの時間を優位に使って試合を決定づけたのは今季初めてではないだろうか。まさに課題としていた部分であり、夏の補強によって改善が見えるのはポジティブな要素である。
一方、後半の試合運びはなかなか苦しかった。2点のリードを保っている間はボランチを最終ラインに下ろすなどしてセーフティーに後ろで回す時間を作っても良かったと思うが、自分たちからズレを作ってミラーゲームを回避する余裕がなかった。谷内田・神戸・髙萩などのボールプレーヤーがピッチ上にいながらも手当できなかった点は今後に向けての課題である。
いずれにしても、同じ勝ち点の相手とのシックスポインターとなるとまずは勝利という結果を手にした意味は非常に大きい。次節の相手徳島も消化試合数の差はあれど同じ勝ち点であり勝てば順位で追い抜くことができる。目の前の相手を撃破し連勝を達成することができれば、自ずとプレーオフ圏内も見えてくるはずだ。
試合結果・ハイライト
得点 5分 オウンゴール(栃木)
14分 根本凌(栃木)
69分 生駒仁(山口)
主審 清水修平
観客 3564人
会場 カンセキスタジアムとちぎ