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【中位進出への踏ん張りどころ】J2 第25節 栃木SC vs 東京ヴェルディ

スターティングメンバー

栃木SC [3-4-2-1] 17位

 前節は山形に勝利し、6試合ぶりの白星を上げた栃木。課題の得点力にも改善が見えてきただけに、前半戦のリベンジを達成して反転攻勢を強めたいところだ。前節からの変更は1人。根本に代わって植田が入ったことで、システムは[3-5-2]ではなく[3-4-2-1]スタートとなった。

 

東京ヴェルディ [4-3-3] 11位

 城福監督体制になってから公式戦は3勝1敗。天皇杯では強豪川崎を撃破するアップセットを成し遂げ、新体制の好調を印象付けた。中2日で迎える今節は8人を変更。インドネシア代表のアルハンがデビューを飾るなどここまで出場機会の少なかった選手が先発に多く名を連ねた。

 

 

前節を踏まえての対策と改善

 立ち上がりの最初のプレーから抜け出そうとするアルハンと体を入れてそれを阻止する福森とで小競り合いが起きたように、ヴェルディはとにかく栃木の最終ラインの背後を狙う意識が高かった。前節山形戦で栃木が守備をカッチリ締め切れた要因の一つに足元に要求するビルドアップに対して前向きにアタックできたことが挙げられるが、まずはその前への意識を逆手に突こうという狙いだろう。

 栃木がアグレッシブな守備を行えているかどうかは、左右のCB鈴木・大森が目の前の相手を迎撃できているかで測ることができる。この日のヴェルディとの噛み合わせを考えれば、鈴木は左IH西谷、大森は右IH井出を主に担当。7分の大森の対応はファールとなったが、ボールを受けに下りた相手に前を向かせないことが彼らの役割だった。

 ヴェルディの裏抜けへのトライは仮に繋がらなくても栃木の守備の矢印を前に向かせないことが最大の目的だったように思う。ジャブを打ち続けることで、テクニカルな中盤の選手たちが得意とするライン間のスペースが広がれば、そこからチャンスを作れるからである。

 アルハンがタッチライン際から内側に潜り込むようにして裏を狙ったり、宮本の攻撃参加の後ろで井出がフリーになったりと、栃木の前向きの守備意識を削ぐようなアプローチを繰り返した。河村の鋭い動き出しには大谷と隣のCBも着いていかざるを得なかった。

 ここまで書くと、ヴェルディの裏を狙う攻撃に栃木が苦戦したように聞こえるが、[5-4-1]での撤退を選んだこの日の守備ブロックは非常にソリッドだった。コンパクトなブロックの中から崩されるシーンはなく、裏抜けする選手にもボールを収めさせない(出し手の精度に助かった部分も大きいが)。38分にアルハンのクロスから小池に合わせられるまでは被シュートを0本に抑える堅調さだった。

 

 攻撃面では、奪ってからの最初の1本2本のパスを丁寧に繋ぐことで簡単にボールロストする場面はなかった。コンビを組んで久しくなった谷内田と神戸のボランチは阿吽の呼吸で縦関係になったり横に並んだりして最終ラインと協力しながらボールを落ち着かせることができていた。受ける一方になってしまった山形戦の反省を踏まえて、立ち上がりから相当意識していたように思う。

 ヴェルディの守備の形はIH井出がトップの河村と並ぶ[4-4-2]。攻撃時に最前線で幅を取る小池とアルハンは中盤4枚の一員になるのだが、特にアルハンは隣の加藤と初期位置が遠いことから、間にポジションを取る栃木の選手に気を取られてしまうことが多かった。よって、栃木は時間の与えられた左サイドから前進を始めることが多く、福森に対して宮本が釣られた裏を上手く使うことができていた。

 左サイドを起点にしたローテーションによる細かいパス交換や相手を十分に引き付けてからの逆サイド展開など、ビルドアップの局面では今季取り組んでいるものを発揮できていた栃木。ただ、肝心のアタッキングサードでシュートを枠内に飛ばせなかったり、クロスに反応する選手がいなかったりとゴール前の迫力さに欠いた。2トップではないため矢野にかかる期待と負荷は高まるが、連戦の影響からか動きが重く、シャドーの森や植田とも呼吸が合わなかった。

 

 上記したヴェルディにファーストシュートを許した時間帯は疲労の溜まる前半終盤であり、栃木はブロック内での寄せが多少甘くなっていた時間帯だった。アンカー加藤やIHの西谷・井出に時間を与えてしまい、左右に揺さぶられてしまう場面がしばしば。アルハンの左足クロスは精度が高く、SB宮本もボランチのようにプレーしたかと思えばサイドをオーバーラップしてきたりと、栃木は左サイドから何度かヒヤッとさせられた。

 それでもピンチと呼べるシーンはなし。栃木としても課題がないわけではないが、「前半を失点ゼロで抑えたことが大事だった。」と城福監督に言わしめる守備の堅実さで、スコアレスでハーフタイムを迎えた。

 

 

決定力を欠き一発を決められる

 ハーフタイムに森田・新井、59分には佐藤凌我など後半に入ってからレギュラー組を続々と投入するヴェルディ。とりわけ一人で仕掛けも仕上げもハイレベルでこなす新井が入った左サイドはボールの回りが速くなり、栃木も黒﨑だけでなく複数人での対応を強いられた。

 栃木は後半もビルドアップを丁寧に行っていくなかで、前半との違いは右サイドを押し上げる意識が強くなったことだろうか。ボランチのどちらかが大森と大谷の間に下りることで、鈴木・黒﨑は一つ高い位置を取りやすくなった。ヴェルディの左サイドを押し下げる狙いもあったかもしれない。

 これがフィニッシュまで繋がったのが74分のシーン。途中出場の佐藤祥が右CBの位置に下りて黒﨑を押し上げると、その黒﨑からこちらも途中出場の大島がハーフスペースを抜け出してボールを受ける。右サイドから2つ切り替えしてマイナスのパスを送ると、最後はゴール前に入ってきた佐藤祥のシュートが相手に当たってCKになった。そのCKからは大島がヘディングをドンピシャで合わせたが、シュートはわずかに右に逸れた。

 ビルドアップによる崩しはロジックなものであり、体力面での厳しさが見えてきた時間帯だっただけに何とかネットを揺らしたいところだったが、ここでも決定機を決めきれなかった。すると、直後に試合の均衡が破れた。

 76分、栃木のクリアを回収した森田が縦パスを河村につけると、落としを受けた佐藤凌我が左に持ち出してシュート。GK川田の左手をすり抜けてゴールに吸い込まれた。森田のアウトサイドでちょこんと出したパス、河村の1タッチでの落とし、佐藤凌我の持ち出しと逆足によるシュートのどれもが栃木守備陣のタイミングをズラしたといえるだろう。

 

 終盤の失点により後がなくなった栃木はトカチを投入して猛攻をかける。敵陣に人数をかけてサイドからボールを進めていくが、ここでもあと少し決定力が足りなかった。82分、トカチのスルーパスに抜け出した根本のニアを狙うシュート。88分、黒﨑のアーリークロスにゴール前に飛び込んで合わせた根本のシュート。ゴールへの迫力は感じさせたが、最後のところで譲らないヴェルディの守備も光った。

 追加点よりもゲームクローズを優先するヴェルディを相手に最後まで栃木はゴールを揺らせず。栃木は5試合ぶりの黒星。一方ヴェルディは3か月ぶりの連勝を飾った。

 

 

最後に

 耐えに耐えて勝ち点を得てきた岩手戦や山形戦と比べれば、攻守においてやりたいことはやれた分、評価が難しい試合になってしまった。

 決定力の課題が再び浮き彫りになった格好だが、後半戦のベースになりつつある2トップを試合中に試せなかったのは心残り。ベンチには根本を除くと瀬沼も宮崎も小堀もおらず、2トップにしたくてもできない事情があるかもしれない。矢野も疲労の色は否めず、夏のマーケットも登録開始をあと少し待たなければならないことから、今が踏ん張りどころだろう。何とか離されずに食らいつきながら、再び中位進出を狙っていきたい。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 0-1 東京ヴェルディ

得点 76分 佐藤凌我(東京V)

観客 2085人

会場 カンセキスタジアムとちぎ

 

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