栃木SCのことをより考えるブログ

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【固定化から見えるチームの現在地】J2 第14節 栃木SC vs ブラウブリッツ秋田

スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 15位

 前節は金沢に4発大勝した栃木。得点をあげた4選手はいずれも今季初得点で、守備ではGK川田を中心にクリーンシートを達成する会心の勝利だった。

 中3日で迎える今節はGW3連戦の最終戦。前節の良いイメージを継続するようにスタメンの変更はせず。ベンチには負傷から復帰した岡崎と大谷が入り、黒﨑は今季初めてメンバーを外れた。

 

ブラウブリッツ秋田 [4-4-2] 10位

 前節はアウェイで仙台と2-2のドロー。連敗を2試合でストップしたが、終了間際の失点で勝ち星を逃す悔しいドローだった。

 前節からのスタメンの変更は2人。前節右SHスタートだった才藤を左SBに移し、左SHには三上を起用する前節の後半仕様の組み合わせにしてきた。古巣対戦となる畑潤基はベンチスタート。

 

 

セカンドボールを拾った次の展開

 得点力が決して高くなく、守備に自信を持つ両チームだからこそ先制点の持つ意味は大きかったが、立ち上がりにミスから失点すると、その後は主導権を握られてしまった。秋田の土俵から逃れることができずに前半45分間を過ごしてしまった。

 試合の入りは悪くなかった。前線へ送ったロングボールのセカンドボールにボランチ勢が素早く反応し、回収後はサイドへ展開する。栃木の狙いはいわき戦と同様に、球際勝負にはしっかりと身を投じ、ボールを収めれば秋田の選手のいない逆サイドを活用することだった。奪ったボールを大事にすることで縦の速さにプラス‪α‬を付け加える。最終ラインでのボール回しもその一環のプレーだった。

 

 気を取り直して再び秋田とのバトルに臨む栃木だが、セカンドボールの回収数では互角に渡り合うことができていた。とりわけ西谷は連戦と思わせない動きでセカンドボールを掌握し左右に散らせていたが、栃木の問題はその次のプレーだった。徹底して縦へ入れる秋田と比べて、栃木はプレー精度が低く小さなミスが多かった。これが両チームの前半の出来を決定付けるポイントだったように思う。

 29分に見られた2つのプレーは前半の栃木を象徴するプレーだった。自陣右サイドからのスローインを根本がポストプレーで収めると、山田を経由して左サイドの福森へ。福森はそのまま持ち運び根本の足元へとパスを入れたが、裏に抜け出すアクションを起こしていた根本とは意図が合わなかった。そのクリアをマイボールにした次の展開も大森のロングボールが相手に引っかかり、ショートカウンターを招いてしまった。

 確かに秋田の寄せは鋭く早かった。ボランチからサイドに展開するボールに対しては素早くSBが縦を切ることで栃木の幅を使う攻撃を未然に防いでいく。栃木は主に矢野のいる右サイドにロングボールを集めて左サイドに展開することが多かったが、その分大森と福森のミスが目立ってしまった。もう少し最終ラインが深みを取るなどして一人一人の距離感を遠くし、ボールホルダーに時間を与えられればよかったが、秋田のプレスを真っ向に受けた格好になってしまった。

 秋田は前述のとおり回収したボールを徹底して栃木の背後へ入れてきた。自分たちが体勢を整えて収めるというよりは、栃木の選手がもたついている間に狭いエリアに数的優位を作ってフィジカルで持ち出してしまおうというものであった。栃木のクリアを不十分にさせ、サイドに逃げればロングスローを送り込む。青木と梶谷を筆頭に、SHや逆SBまでなだれ込んでくる攻撃には分厚さがあった。

 栃木はそんな秋田の圧力に対して平松を中心に凌いでいくが、どうしても福島や大森はフィジカル的な分の悪さからファールで止めてしまうシーンがしばしば。秋田の前線の体の使い方は巧みだったが、栃木の守備も簡単にファールを与え過ぎていた印象である。

 そうして秋田はセットプレーを手にすると、ゆっくりと時間と人数をかけてセットする。会場の盛り上がりも含めて、さも最終盤のパワープレーのような雰囲気を作り出す秋田の攻撃は一発一発が重かった。簡単なミスやボールロストから次の瞬間には秋田の波状攻撃を受けるため、栃木としては自分たちの流れを作りにくい。ロングスローのたびに根本や矢野が自陣ゴール前まで戻らなくてはならないのも押し上げを難しくする要因の一つだった。

 それでも1失点に抑えられたこと自体は悪くなかったと言えるだろう。シュートまで辿りつかない重苦しい展開だったが、清水戦のようにズルズルと連続失点しなかったことで、なんとか後半に繋ぐことができた前半だった。

 

 

ミスが尾を引き反撃及ばず

 後半立ち上がりのペースを握ったのもホームチーム。栃木が根本や矢野へのロングボールから敵陣に押し込んだと思いきや、そのクリアを青木が収めることでたちまちマイボールの展開にしていく。ファールを受ければハーフライン付近からゴール前に放り込むことで攻撃回数を次々と増やしていった。

 その流れを切らさないまま秋田が立ち上がりの55分に追加点を奪うことに成功する。栃木が相手陣内でスローインを入れると、これが味方に繋がらずに逆サイドから秋田のカウンターに。根本のプレスバックで何とか速攻は封じたものの、サポートに入った藤山に対する安田のチャージがファールの判定となった。このPKを青木に決められ、早くも2点のビハインドに。1失点目に続き、またしてもミスから秋田に得点を献上してしまった。

 

 後半の栃木は立ち上がりこそロングボール中心に直線的な攻撃を見せたが、時間の経過とともに徐々に地上戦にシフト。最終ラインからしっかりボールを繋ぎ、秋田とのシステムのミスマッチを生かしてサイドから組み立てていく。サイドに素早く蓋を閉めてくる秋田の寄せに対しても、WBが早めにロングボールをリリースすることで逃れつつ、同時に角度をつけたボールを入れることができていた。

 ボールを握って左右に揺さぶることで前半よりもサイドの選手に時間が与えられるようになると、それを得点に繋げたのが左サイド。福森が1vs1からCKを獲得すると、このタイミングで途中出場した大谷が山田のCKに合わせ、ファーストタッチでゴールネットを揺らした。大谷は栃木加入後初得点となった。

 

 岡崎・大谷が入ってからも栃木は最終ラインを中心にボールを握って相手を左右に揺さぶる攻撃を継続。最終ラインの守備が補強されたことで簡単には押し込まれにくくなり、かえってその安定感がボール保持にも現れていた印象だった。左サイドでは一列前に入った大森が縦に仕掛けてクロスを入れたり、右サイドではCB平松が前線に顔を出すことでWB福島をより攻撃に専念させることができた。

 後半最大の決定機は76分。セカンドボールを争いから少しずつ前進すると大森がクロスを供給。そのボールが流れて今度は右サイドから平松がクロス。これをペナルティエリア内で宮崎が折り返すと、相手のクリアに反応した佐藤が右足を強振したが、強烈なミドルシュートは相手の身体を張ったブロックに阻まれた。

 終盤栃木は高萩を投入し前線にクオリティを足していくが、秋田の畑潤基を中心としたボールキープを前に思うように攻撃を組み立てることができない。懐深くにボールを置いて突き進む畑のドリブルは栃木時代によく見せていたもの。フィジカルを押し出せるSHとして栃木にとっては厄介な役割を果たしていた。

 試合はこのまま1-2で終了。栃木のパワープレーを5バックで抑えた秋田が4試合ぶりに勝利。栃木はアウェイ未勝利が継続することとなった。

 

 

最後に

 勝敗に関わる決定的な場面から通常の試合運びまでミスが多くもったいない試合だった。頻発したセカンドボール争いには十分参戦できていただけに、身体的な疲労よりも、ちょっとした細部のコントロールや判断面で連戦を固定化してきたデメリットが表れていたように思う。

 ただ、一方で選手の組み合わせをある程度固めたからこそ、連戦を通して好パフォーマンスを見せた機会が多かったのも事実である。試行錯誤した昨季の序盤を思えば、選手の入れ替わりを最小限に留めたメリットをようやく発揮し始めたところと言えるだろう。序盤戦を終え、これから迎える中盤戦では、現状結果を残している組み合わせに割って入るような起爆剤が現れることに期待したい。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-2 ブラウブリッツ秋田

得点   7分 三上陽輔(秋田)

   55分 青木翔大(秋田)

   63分 大谷尚輝(栃木)

主審 吉田哲朗

観客 3455人

会場 ソユースタジアム