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【終盤戦に臨む準備は整った】J2 第32節 栃木SC vs ブラウブリッツ秋田

スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 16位

 前節は上位新潟に敗れ、2連敗となった栃木。良い守備からカウンターを量産するも決め切れず、逆に新潟に決定力の高さを見せつけられた。今節はスタメンを2人入れ替え。大谷が外れた最終ラインにはグティエレス、最前線には宮崎が入り、矢野は左シャドーでの起用となった。佐藤祥は5試合ぶりのベンチ入り。

 

ブラウブリッツ秋田 [4-4-2] 15位

 吉田監督をはじめ複数の選手・関係者がコロナ陽性により不在の秋田。厳しい台所事情だが、前節岩手戦は粘り強い戦いで勝ち点3をもぎ取った。臼井ヘッドコーチが引き続き指揮を執る今節はスタメンを2人変更。CB千田、FW中村がメンバー外となり、それぞれ小柳、井上が起用された。

 

 

秋田を封じ込めた2つのポイント

 秋田は対戦相手からすれば攻守の出方が非常に読みやすいチームである。ハイプレスをかけ続けて相手のミスを誘い、奪ってからは前線のフィジカルの強さを生かして縦に素早く攻める。ある意味栃木サポーターにはお馴染みのスタイルである。前節のように良い守備から良い攻撃へのサイクルを作りたい栃木としては、秋田の強度の高さに後手を踏まないことと同時に、あえて真っ向から勝負に挑まないことが大事になる。

 その意味で栃木はこの2つのポイントを試合終了までパーフェクトに押さえることができた。秋田の特徴を踏まえた対策が功を奏したといえるだろう。

 その一つが最終ラインの細やかなラインコントロールだ。秋田がロングボールに軸足を置いているのは周知の事実だが、初めから重心を下げてしまえば簡単に押し込まれてしまう。イエローカードを貰った大森の迎撃にも見られたように、あくまでも守備は前向きに行わなければならない。そのなかで入れられたロングボールに対してはタイミングよくバックステップを踏むことで前へ跳ね返すための助走距離を確保。ここのラインコントロールを絶妙に行えたことがセカンドボールの掌握に繋がった。

 セカンドボールを収めればたちまち秋田はカウンタープレスをかけてくるのだが、そこへの対応も万全。飛距離のある対角のボールをWBへ届けることで秋田の強烈な圧縮守備を回避していく。プレスを牽制してからは3枚の最終ラインによる数的優位を生かして保持を落ち着かせる。まさに[4-4-2]に対する教科書どおりの対応であり、徹底した秋田対策だった。

 秋田側の守備にもいくらか問題はあった。栃木のWBに渡ってからのスライドは確かに速いのだが、サイドでの閉じ込めが不十分。栃木としては最終ラインやボランチが常に呼吸できる状態だったため、ボール保持に苦しむことはなかった。

 子気味よくボールを捌ける栃木はサイドから多彩な攻撃を演出。4分には早くも先制点を生むことに。キーとなったのはアーリークロス。前節も多く見られたため初めは新潟戦仕様かと思ったが、どうやら一つの攻撃パターンとして仕込んでいるようである。一度サイドの奥を取ってからのリターンをダイレクトで上げるため、守備側としてはタイミングを計り切れない。谷内田のクロスに相手を出し抜いて合わせた宮崎がネットを揺らし、幸先よく先制することに成功した。

 

 最終ラインの数的優位と大外フリーのWBによるシステムのミスマッチを生かしつつ、アーリークロスからの流れを仕留めたのが2点目。オーバーヘッドの派手が目立ったが、そこに至るまでの過程は準備してきた秋田対策と新たに取り入れた攻撃手段のハイブリッドによるもの。そこにペナルティエリア内での決定力の高さを上乗せできたシーンだった。

 

 2点ビハインドとなった秋田はここから反撃を強めていく。ロングボールを右サイドに集中して送ることで栃木の左サイド(大森、福森)とのフィジカル勝負から徐々に押し込む機会が増加。武や小暮でラインを押し下げ、その手前を2ボランチや本職ボランチの藤山、トップ下井上が関わることで右サイド攻撃の比重を増やしていくのだが、スモールフィールドでの前進となるためミスも増加。まともにシュートまで至る場面を作れなかった。

 セーフティーリードを得たことでプレッシングのペースを多少落とした栃木だが、保持時の安定感はそれまで同様。3枚の最終ラインに対して秋田がSH片上げで寄せてくれば、ボランチが最終ラインに下りたり、プレスのコースに入ることで秋田の勢いを牽制。ボランチのサポートが適切だったため守備に回る時間を多くせずに済んだ。

 そして44分には3ゴール目をゲット。プレッシングを起点に奪ったCKから宮崎がこの日2点目となるゴールを頭で決めた。前半だけで3得点を上げたのは2009年にJリーグに参入してから初めてのこと。圧倒的な試合運びで前半のうちに試合を決定づけた栃木だった。

 

 

まるで横綱相撲のよう

 後半栃木は無理をしない戦いにシフト。プレス強度はそのままにロングボールの出し手から精度を奪いつつ、セカンドボールを回収すれば前線のターゲット目掛けて蹴り出す。選手交代により前への圧力を足す秋田に対して、あくまで守備に軸足を置きつつ、前で起点を作れれば一気にカウンターへ移行するというスタンスだった。

 よって、カウンターの局面になれば待ってましたとばかりに後ろからワッと選手が湧き出し、ボールホルダーを追い越していく。59分には宮崎のポストプレーを起点に大島・神戸・黒﨑の3人がゴール前まで侵入。黒﨑のシュートは惜しくも枠を外れたが、3人で素早くカウンターを完結させた場面だった。60分には宮崎のシュート、70分には矢野が敵陣深くまでのドリブル突破で陣地を回復。自陣にどっしり構えることで、カウンターに力を蓄えているような印象さえあった。

 秋田は小暮に変わって普光院を投入してからはそれまで沈黙していた左サイドからの攻撃を強めていくが、すかさず栃木も森を投入。運動量を補填することで秋田に一切の隙も与えない。

 宮崎に変えて根本が最前線に入ってからは、それまでのロングボール偏重というよりは前半のようにミスマッチを生かしたボール保持が増加。トップの人選と時間の経過により戦い方を柔軟に使い分けられるのは今の栃木の強みだろう。

 リードしている時の終盤はおおよそ守勢に回るものだが、防戦一方にならないよう時計の針を進める繋ぎには進歩が感じられた。88分ごろに見せたボランチを噛ませながらしっかり幅を取り、GKも交えてプレスをいなしていく繋ぎには熟れてきた感すら見える。久々出場の佐藤祥がその中心にあったことも見逃せない。

 後半秋田が記録したシュートは0本。圧力を強める秋田を尻目に磐石な試合運びを見せた栃木が3-0で完勝を飾った。

 

 

最後に

 言うことなしの会心の勝利である。今季2回目の先発起用を2ゴールという結果で応えてみせた宮崎をはじめ、秋田にも負けない球際の強さや展開をコントロールする試合巧者ぶりは圧巻だった。良い流れを生かせないどうにも煮え切らない試合が多かったなか、自分たちの準備してきた対策や積み上げ、そして新たな攻撃から勝利を奪えたことは大きな自信になるだろう。

 リーグ戦は残すところあと10試合。最終盤に戦う町田・水戸を除けば、ここからしばらくは前半戦勝利できなかった相手との対戦となる。そしてその初戦が良い試合をしながらも悔しい負け方を喫した長崎である。前回対戦からの成長を示すことでぜひリベンジを果たしたいところだ。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 3-0 ブラウブリッツ秋田

得点   4分 宮崎鴻(栃木)

   24分 矢野貴章(栃木)

   44分 宮崎鴻(栃木)

主審 高山啓義

観客 1762人

会場 ソユースタジアム

 

 

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