栃木SCのことをより考えるブログ

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【守備の時間を減らす取組が必要】J2 第3節 栃木SC vs 大分トリニータ

スターティングメンバー

栃木SC [3-4-2-1] 18位

 前節仙台戦は終了間際の失点で敗れた栃木。前半は主導権を握ったものの、仙台の戦術的な交代策と修正に後手を踏んだ後半は防戦一方を強いられる苦しい試合だった。アウェイ連戦となる今節は初勝利を目指す。

 これまで2試合は同じメンバーを起用してきたが、今節は先発を1人変更。左シャドーに今季初出場となるジュニーニョが入り、森は左WBに。ベンチには新加入の山田が初めて名を連ね、レンタル元との対戦となる福森はメンバーから外れた。

 

大分トリニータ [3-4-2-1] 3位

 徳島、東京Vに連勝し、開幕3連勝がかかる大分。このオフは主力の放出が目立ったが、J2J3で実績のある選手を獲得する堅実的な補強を見せた。ここまでは序盤のリーグ戦を引っ張る存在になっている。

 先発の変更は1人。開幕から左CBで出場していたデルランがメンバーを外れ、香川が今季初出場。屋敷と保田はともにU-20日本代表の活動によりチームから離脱している。

 

 

大分の可変に翻弄

 改めて試合映像を振り返って気付いたのは、意外にも大分がロングボールを積極的に使用していたことだ。ボール支配率やパス本数の差から繋ぎ倒された感覚があったが、ボールを前に進める手段として大分はロングボールを有効活用していた。

 大分のロングボールが効いていた要因として、栃木がチーム全体で息を合わせた守備を行えていなかったことが大きいように思う。ハイプレスをかけるならかける、撤退するなら引いてブロックを構える、のどちらとも取れない中途半端さがあった。

 前線にジュニーニョを起用したことで散発的に相手を追い込むことはあったが、試合を通してロングボールを蹴られると間延びした中盤でセカンドボールを回収できないという場面が多かった。前線で競り合う伊佐の能力の高さに岡崎も苦戦しており、プレスをかけたことでかえって大分にとって前進しやすい格好になっていた。

 大分はロングボールをより有効にするためにあえて後ろで回して栃木を引き出す術にも長けていた。栃木は1トップ2シャドーがそのまま大分の3バックに寄せていくのだが、大分はボランチの下りる動きやGK西川の最終ライン化によって栃木の前線守備を乱していく。根本が対面の上夷をケアするだけでは最終ライン化した選手をフリーにさせてしまい、この形を作ればいつでも状況をリセットできる大分は焦ることなく試合を進めていた印象だった。

 

 栃木の生命線であるハイプレスをより押し出していくなら相手の4枚回しに対してボランチが列を上げるかサイドを一つ前に出すのは必須事項。しかし大分もそうはさせまいと栃木の痛いところを突くような可変で手を打ってきた。

 大分の基本布陣は[3-4-2-1]だが、保持時はWBが最前線で幅を取るWGの役割を担い、反対にシャドーは中盤をサポートするような立ち位置を取ることが多かった。

 こうなると栃木としてはWBがピン留めされてしまうためサイドを押し上げにくく、またボランチ周辺には大分の選手が集まるため寄せが追い付かなくなる。福島と大谷もロングボールを警戒してか迎撃する回数は少なかった。大分はそうした細かいズレを作って前進していくのが非常に上手かった。

 

 栃木としてはプレスが効かないにしてもマイボールの時間を確保できれば良かったが、とにかくこの日も攻撃の精度が低く単調だった。何とかセカンドボールを拾えたとしても、回収したあとの1本目2本目のパスが繋がらず簡単にボールを明け渡してしまう。大分の守備への切り替えの早さも考慮しなければならないが、もう少し繋ぎの精度を上げなければ攻撃にならないのが正直なところである。

 結局のところ、栃木が攻撃の機会を作れたのは最前線の根本がポストプレーで孤軍奮闘し何とかボールを収められたときだけだった。西谷が右のハーフスペースを駆け上がりボールを引き出しつつ、中盤では高萩がボールを捌くといったシーンもわずか。18分に見られた、佐藤が最終ラインに下りて福島を押し上げるシーンのように大分にズレを生み出させる仕掛けがもう少しあれば、落ち着いてボールを持つこともできたのかもしれない。

 

 

2トップがチームに与える影響

 後半は前半同様に大分がズレとロングボールを活用しながら攻撃を組み立て、栃木は奪ってからの精度に苦しむ展開が続いていく。大分は右CBのペレイラや両ボランチが持ち場を離れての攻撃参加を増やしたことからも攻撃の比重を高めたといえるだろう。

 右CBを上げるパターンは前節仙台も行っていた形である。全体を右肩上がりにセットすることで栃木の一列目の守備隊形を広げさせ、右からボールを繋いでいき最終的には左サイドに送り届ける。大分の左サイドには個で仕掛けられる藤本がいることがこれの肝になっている。後半早い時間に梅崎に変えて町田を投入してきたことからも左シャドーにはビルドアップの出口になるという明確な役割が与えられていた。

 

 後半の栃木のトピックスとしては、今季初めて根本と宮崎がピッチに揃い踏みしたことだ。根本が右シャドーで起用されていたため明確な2トップという訳ではなかったが、現状を踏まえてこれまでとは明らかに異なる手を打ってきたというところだろう。

 確かに競り合いの部分では高さが増したことからサイドで勝負できるようになった根本が競り勝つ場面は増えた。しかし、全体として相手に与える脅威という意味ではあまりインパクトを残すことはできなかった。前線にツインタワーを揃えたことで、どちらかといえば高さに頼るよう単調な戦いに終始してしまった印象である。攻撃に変化を加えられる高萩が退いた影響も多分にあるだろう。

 実際に後半の半ば以降は大分に攻め込まれる時間が長くなっていった。2トップにしたから攻められたというよりは、2トップのキャラクターに頼り過ぎたことで攻撃が立ち行かなくなり相対的に守備の時間が増えたという方が正しいだろう。前線からのプレスはスイッチが入らず、自分の周辺を多くの選手が出入りする佐藤西谷のボランチ勢もさすがに疲労の色が隠せなくなってくる。流れを変えようにも前半大谷が負傷した影響で交代カードを切れないのは痛手だった。

 

 決勝点となる高畑のFKはお見事だった。初めからゴールを狙うというよりは、触らなくてもゴール方向に向かうような軌道にボールを乗せることを意識したコースだった。藤田もあと一歩後ろにポジションを取れば弾けたかもしれないが、キック精度を褒めるしかないだろう。栃木にとっては終盤に差し掛かる頃に喫した痛恨の失点だった。

 リードを奪った大分はロングボールの比重を高めつつセーフティーに時計の針を進め、このまま0-1で終了。大分は開幕3連勝。栃木は未勝利が続くこととなった。

 

 

最後に

 大分の隙を見せない戦いに為す術なく敗れたと言っていいだろう。どんなに苦戦を強いられる試合でも少なからずペースを握る時間はあるものだが、この試合ではそのような時間はなかった。スコア以上に差が見えた完敗だった。

 厳しいスタートを切った以上、この現実を受け止め、すみやかに軌道修正を図っていかなければならない。守備は計算できる。毎試合失点が続いているのはあまりにも守備の時間が長いからだ。例えば、相手のプレスに応じてボランチの下りる動きで最終ラインの枚数調整を行うなど、攻撃の時間を確保するトライは積極的に行う必要があるように思う。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 0-1 大分トリニータ

得点 81分 高畑奎汰(大分)

主審 大坪博和

観客 11747人

会場 レゾナックドーム大分