栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【歯痒さを大一番へ】J2 第25節 栃木SC vs ベガルタ仙台

スターティングメンバー

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栃木SC [3-5-2] 19位

 前節はいわきとの直接対決に敗れた栃木。いわきの球際の強さと縦への推進力に圧倒され、終始主導権を握られる試合となった。これで降格圏の21位とは1ポイント差。嫌でも下が気になる状況である。

 前節からのスタメンの変更は3人。岡崎、黒崎、根本は久々の先発となり、前節負傷した宮崎はメンバーを外れた。矢野は3試合ぶり、五十嵐は19試合ぶりのメンバー入り。戦力を入れ替えながら厳しい連戦の3試合目に挑む。

 

ベガルタ仙台 [4-4-2] 13位

 ここ5試合は1分4敗と急ブレーキの仙台。昨季も夏場に失速したが、連敗を止めるきっかけとなったアウェイ栃木戦へのイメージは良いだろうか。増加している失点をいかに抑えられるかが鍵になる。

 前節からのスタメンの変更は5人。ホヨンジュンと鎌田を出場停止で欠くなか、前節欠場した郷家・中島・松下のメンバー入りは好材料。前回対戦で決勝点を挙げた山田が最前線に入り、本職ボランチのフォギーニョが右SH起用となった。

 

 

[3-5-2]の強みを生かす

 アグレッシブな入りから前半の主導権を握ったのはホームの栃木。積極的なハイプレスと奪ってからのロングボール、ポストプレーのサイクルを機能させることで多くの時間を敵陣でプレーすることができていた。

 この日の栃木は小堀が根本と2トップ的に並ぶことが多く、西谷はややサイド寄りの立ち位置。いつもの[3-4-2-1]というよりは[3-5-2]に近かったと言えるだろう。

 [3-5-2]のメリットは、相手CB2枚に対して2トップを同数で当てることができる点だ。1トップ2シャドーで相手4バックを見るよりも、2トップvs2CBの関係性の方が寄せる側は迷いなく判断しやすい。サイドにボールを動かすことができれば、あとはそのサイドから逃がさないように全体がスライドする。SBには時間ができやすいが、あえてそこに誘導する狙いだった。

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 そうした明確な守備基準があったなかで、チームに前向きな勢いをもたらしていたのが小堀だった。普段は対面のCBとSBを同時に見なくてはならない小堀だが、この日は相手との噛み合わせからCB→SBとプレスの優先順位をつけやすかった。

 後方からはいつものように右WBが加勢するほか、西谷もサイドに出てきて対応。普段はシャドーとWBの関係性でサイドの守備を行うが、そこに西谷が加わることで小堀-黒崎間のギャップを埋める役割を担っていた。仙台のシステムに合わせた微調整により、プレスを十分に機能させることができた。

 高い位置でボールを回収する栃木は次々とチャンスの山を築いていく。前が開けたと見るや積極的にミドルシュートを放っていく小堀をはじめ、WBもアーリークロスを入れてエリア内での勝負を増やしていくなど、ゴールに向かう姿勢を存分に示すことができていた。

 

 栃木のプレスに手を焼いた仙台だが、CB岡崎の脇、WB黒崎の背後のスペースからは何度か攻撃を繰り出すことができていた。システムのミスマッチからわずかにできた時間を氣田に届けることで、ここを攻撃の起点としていた。氣田自身がスピードで抜き去ったり、郷家や中島が絡んで最後は内田がクロスを上げるなど、左サイドからの攻撃は多彩だった。

 ただ、栃木にとって大きかったのは仙台の攻撃をこのサイドに限定できたことだった。プレスを連動させてロングボールを蹴らせれば、本職CBが3枚並んだ最終ラインが強さを見せる。フォギーニョと対峙した左サイドはそもそも攻撃にさらされることがなかった。仙台の攻撃がワンサイドに偏っていたため、栃木は守備の目線を大きく変えずに済んだ。

 仙台の攻撃を想定内で受け止めていた栃木がその流れを得点に繋げたのが31分。大谷からのパスを受けた福森が左サイドを突破してCKを獲得すると、福森のCKに合わせたのは大谷。前向きの攻守を機能させて手にした理想的な先制点だった。

 

 リードを奪ってからは仙台がボールを握る展開に。GKやボランチが最終ラインに加わったり、途中からトップ下にポジションを移したフォギーニョが低い位置まで下りるなど、繋ぎの安定化を図っていく。ビルドアップに関わる人数を増やすことで、栃木のプレッシングによる試合の高速化を抑える狙いだっただろう。

 栃木としてはプレスを緩めたわけではなかったが、中盤の選手が立ち位置を入れ替えながら繋ぐ仙台に対して無理せず構えるように。[5-3-2]でブロックを形成し、その間に差し込んでくれば素早い寄せで押し出していく。それほど危険な場面は作らせることなく、1-0のリードでハーフタイムを迎えた。

 

 

自分たちの時間帯に喫した2失点

 後半は再びプレッシングの強度を引き上げて入った栃木。前半同様に強烈な圧力を仙台のボールホルダーに浴びせていくことで、高い位置で回収しショートカウンターを量産することができていた。

 仙台の2ボランチに対しては西谷と山田のIH2枚がピタリと貼り付くことで、3枚回しからの前進も簡単にはやらせなかった。おそらく後半の仙台は佐藤祥の脇のスペースに選手を置き、彼らへの縦パスの落としをボランチやSBが受けることで前進する狙いだっただろう。ボランチの列落ちは出し手を確保するための策だったと思うが、ここへも栃木の圧力は十分にかかっていた。

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 栃木が敵陣でのプレータイムを長くしていく一方で、次の得点は仙台に生まれた。58分、仙台の繋ぎに対してバイタルエリアがぽっかり空くと、ここで受けた松下のパスがこぼれてフォギーニョの足元に。一瞬の隙を突かれ同点弾を許した。

 ここで悔やまれるのは、仙台の選手の動きに釣られてブロックに歪みができてしまったこと。サイドに流れたフォギーニョに対して平松が着いていき、大谷が中央を埋めるまでは良かったが、同サイドの背後を取られたことで佐藤祥がサイドに釣られ、西谷は薄くなった最終ラインを埋めるために下がったことで、中央ががら空きになってしまった。この時点でボールホルダーに対して栃木は最終ラインのみ。事故も起こりうる状況だった。

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 それでも栃木は直後の61分に勝ち越すことに成功する。仙台の右SH郷家に対して大谷と福森で数的優位を作ると、そこからは大谷→小堀→山田→黒崎と手数をかけずに繋いでフィニッシュ。鮮やかなコンビネーションから再び一歩前に出ることができた。

 

 再びリードを奪った栃木だが、1失点目が一瞬の隙を突かれた失点だとすれば、2失点目は簡単なミスから招いた失点だった。交代で入ったばかりの高萩と吉田が自陣でのスローインからパス交換をしようとしたところで、吉田が足を滑らせてボールロスト。ここからカウンターを招いてCKを献上すると、最後は菅田に豪快に頭で叩き込まれた。

 同点に追い付かれてからはオープンな展開に。ゴール前での攻防が頻発し、ボールを保持した側が猛攻を仕掛けるやり合いの様相を呈していく。栃木は保持のクオリティではどうしても劣る分、仙台の攻撃にさらされる機会の方が多かった。

 それでも粘りの守備で何とか対応していく。岡崎や平松のシュートブロックを始め、混戦から掻き出す集中した守備でゴールを割らせなかった。86分にはキムテヒョンのヘディングがポストを叩き、そのこぼれ球を梁勇基や菅田に押し込まれかけたが、絶体絶命のピンチもGK藤田の好セーブで乗り切った。

 終盤には栃木も一定のカウンターチャンスを作ったものの決定打には至らず。二度先行しながらも二度追い付かれた試合は、最終的に勝ち点1を分け合う結果となった。これでホーム戦は3試合連続で引き分け。順位を20位に下げることとなった。

 

 

最後に

 2度のリードを生かせずに勝ち点2を落としたと見るか、それとも終盤に劣勢を強いられたなか勝ち点1を辛うじて死守したと見るか、人によって評価が分かれる試合になったように思う。

 失点するまでの充実した試合内容を見れば前者の感想を持つのは当然である。タフな環境の中でもプレスの強度は落ちることなく、狙いの攻守を体現することができていたし、得点も鮮やかだった。前節の鬱憤を発散するような強気な試合運びができていただけに、失点の印象がどうしても色濃く残ってしまうのも無理もない。

 栃木としてはこれをやり続けるしかない。失点自体は悔やまれるものであったが、トータルで見れば前向きの姿勢を貫いたナイスゲームだったように思う。これを90分、隙を見せずに完遂することで大宮との大一番を制することを願うばかりである。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 2-2 ベガルタ仙台

得点 31分 大谷尚輝(栃木)

   58分 フォギーニョ(仙台)

   61分 黒崎隼人(栃木)

   74分 菅田真啓(仙台)

主審 清水修平

観客 4587人

会場 カンセキスタジアムとちぎ