栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【ハイラインを巡る駆け引き】J2 第28節 栃木SC vs レノファ山口FC

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-1-1] 17位

 前節は愛媛とのアウェイゲームを制して12試合ぶりの勝利をあげた栃木。長い長いトンネルを抜け出した次は約4ヶ月ぶりのホーム勝利を目指す。前節とスタメンは変えず、ベンチには三國と出場停止明けの松本が入った。

 

レノファ山口FC [3-4-2-1] 14位

 リーグ戦中断明けは岡山・群馬に2連敗を喫したが、前節は好調山形に2-1で勝利。猛攻を耐え切り、上位チームから貴重な勝ち点3を奪った。古巣対戦となる渡部はこの日も含めて全試合先発、吉満はベンチ入り、へニキはメンバー外となった。

 

 

強気の姿勢とそのリスク

 立ち上がりからわずか20秒ほどで山口の最終ラインをブレイクした畑が決定機を迎えるなど、ゴール前の局面が多くなりそうな雰囲気は試合早々から漂っていた。

 栃木がチーム全体で声を掛け合ってフォーカスしていたのが最終ラインを高く設定することとプレッシングの息を揃えること。前節に引き続き最終ラインのコンビを組んだ柳と乾が細やかなラインコントロールで最終ラインを押し上げ、そこから押し出されるように前線の選手からプレスをかけていく。全体を高くコンパクトに保てていたことで、中央にこぼれるセカンドボールへの反応は非常に早かった。

 前半4分の先制点は畑が山口の2ボランチとの球際バトルを制したところから。最終ラインがさらされた山口はジリジリと後退するしかなく、ノープレッシャーの谷内田はボールを持ち運んでから有馬に絶妙なスルーパスを送ることができた。有馬のシュートは防がれたものの、セカンドチャンスを豊田がバックヘッド。これがゴールに吸い込まれた。豊田は移籍後6試合目にして待望の初ゴール。試合の入りを課題としていた栃木にとっては貴重な2試合連続での早い先制点となった。

 

 立ち上がりの勢いのままに先制点を奪った栃木に対して、それ以降は基本的に山口がボールを握る展開で試合は進んでいく。というわけでここで山口のボール保持時の狙いを見ていく。

 山口の基本システムは[3-4-2-1]。ただし、ボールを握るとパス交換を行いながら全体的に陣形を右肩上がりにスライドする。渡部とヘナンでGK吉満を挟むように立ち位置を取り、右CBの眞鍋はほぼSBの位置に。右サイドの高い位置にはWBの川井を上げ、その分キャプテンマークを巻く池上はフリーマンの役割を与えられていた。全体的には左右でアシンメトリーになっていた。

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 陣形を敢えてズラす山口の狙いは左サイド、栃木にとって右サイドの連携を鈍らせることだった。ポゼッションのフェーズにおいて山口の最終ラインが3バックでセットすることを想定していた栃木にとっては、そのまま対面の選手にプレスをかけると、谷内田⇒眞鍋は近い距離感にあるが、畑⇒ヘナンの距離感は自然と遠くなってしまう。畑の寄せる距離が長くなれば、それに伴って黒崎のスライドする距離も遠くなる。山口のパスワークにより左右に走らされることで徐々に石川への寄せが遅れる場面が増えていった。

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 山口の1点目は石川へのプレスがなく、ノープレッシャーでボールを持たせてしまったところから。ボールを引き取った石川から最終ラインの背後に走り出す草野へロブパスが送られると、背中に当たったボールが草野の足元へ。栃木の2CBは動き出しが被ってしまい、重心の逆を突くシュートにオビも反応することができなかった。

 栃木の右サイドの連動が遅れた背景には、前半13分、15分と黒崎の裏で島屋に起点を作られたことも影響しているだろう。ヘナンからのロブパスを受けてからはそれぞれ石川のクロスや島屋自身のクロスから逆サイドの川井がシュートを放つなど、縦へのスライドに慎重になる要因はあった。

 

 ジャブを打たれたことでボールホルダーに十分な圧力がかからず、右サイドからハイラインがさらされる場面は失点後も継続。繰り返される柳と草野の駆け引きやボランチが最終ラインに吸収され気味になるなど受け身になる時間帯を何とか持ち堪えられたのは大きかった。

 一方で、この展開で防戦一方にならなかったのは攻撃陣の距離感の良さもある。全体がコンパクトになっているため出足良くセカンドボールを回収。とりわけトップ下の有馬はボールキープ力が高く、身体の強さと足元の技術で栃木の攻撃機会の確保に貢献していた。右サイドのプレス連動に解決策を施せていないなかで、そこを覆い隠すように守備の時間を減らせたことは効果的だった。

 

 

取り戻した良い守備から良い攻撃へ

守備面のところでも相手が少し形を変えてスライドの対策をしてきました。その点では前半は少しバタバタしていた部分はありましたが、後半もう一度説明をしてしっかりとコミュニケーションをとりながら対応できました。(田坂監督)

 試合後に田坂監督が言及したように、後半に入ってから明確に変わったのが右サイドの守備対応の部分。前半と比べてプレッシングに行くときよりも行かないときの判断がはっきりした印象である。特に前半決まってヘナンまで寄せていた畑が一つ動き出しを遅らせてから石川へ寄せていたところは前半と大きく異なる点だった。

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 前からプレッシングを仕掛ける場面もあったが、ヘナンに対して長い横パスやバックパスが入ったときに限られるなど寄せた回数は限定的だった。まずはツートップとSHが中央へのコースを消すことを最優先とし、石川が少し高めのポジションを取ったときは黒崎が前に出て行く。山口の右肩上がりの陣形に対して全体のプレスを整理したことで、前半苦しんだ黒崎の前後のスペースへの対応が改善した。

 

 守備対応を整理したことで流れを取り戻した栃木。後半8分、自陣でコンパクトに回収した西谷から左サイドの溝渕に開くと、中央の有馬へロブパスを入れる。有馬は左サイドにボールを持ち出してからゴール方向へ巻いたクロスを供給。ファーで合わせた黒崎のヘディングは吉満に抑えられたが、流れに乗る栃木は直後の後半9分に追加点を奪取。有馬と似たような形から谷内田がクロスを入れると今度は豊田が決め切った。ハーフタイムの修正によって得られた良い守備から良い攻撃に繋がった得点だった。

 

 栃木がツートップのプレス位置をハーフライン手前に下げたことで山口はCBがボールを持てるようになるが、中央を消され、サイドに預ければプレッシングに遭い思うように前進できない。よって、ボールを持つ余裕のある渡部から対角の石川や島屋の裏抜けを狙うようになるが栃木の横スライドが早く、また受け手の精度が伴わず決定機を作ることができない。途中出場の河野や高井もブロックの中では時間を与えられなかった。

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 飲水タイム後はロングスローから柳がワンチャンスをものにして2点差に。攻勢を強める山口に対して引き続きCBのボール保持を容認しつつ、CBがボールをリリースすれば一気に受け手を囲い込むスタンスを継続。森、矢野、大島と次々と交代カードを切り守備強度を維持していくなかでの2失点目はもったいなかったが、それ以外で目立った決定機は与えなかった。

 終盤は互いにフォーメーションを変えて1点を懸けた試合展開に。大槻を入れて[4-4-2]に変えた山口はヘナンも攻撃参加しパワープレーを仕掛けていく。一方栃木も豊田に変えて三國を投入して5バックに移行。サイドの選手がしっかり目の前の相手に寄せることでサイドからのクロスにはフタをし、3CBは放り込まれるロングボールを跳ね返した。少ない出場時間で三國も2回のクリア回数を記録した。

 試合はこのまま1点差を凌いだ栃木が3-2で勝利。3月以来のリーグ戦連勝、対山口は3季連続でのダブルとなった。

 

 

最後に

 点差が縮まってからはヒヤヒヤする終盤となったが、2失点を除けばこの日の試合展開は理想的だったのではないだろうか。自分たちの強みを押し出しつつ、それをひっくり返そうとする相手のプランに対しては現実的な対抗策で流れを取り戻す。良い守備を復活させてから得点に繋げたという成功体験も今後に向けて大きな財産になるはずである。

 3得点をあげて撃ち合いを制した結果面、それを成し遂げるプロセスを含めた内容面、さらにはゴールに絡んだ選手の顔ぶれも、全てが満足のいく会心の勝利だった。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 3-2 レノファ山口FC

得点   4分 豊田陽平(栃木)

   25分 草野侑己(山口)

   55分 豊田陽平(栃木)

   73分 柳育崇(栃木)

   86分 河野孝汰(山口)

主審 松本大

観客 1821人

会場 栃木県グリーンスタジアム