スターティングメンバー
栃木SC [4-4-2] 19位
前節ヴェルディ戦は2点のビハインドを追い付く粘りを見せた栃木。勝ちなしは継続となったが栃木らしさを発揮する意地を見せた。中3日で迎える今節は良い感触を続けるべくスタメンに変更はなし。ベンチは小野寺、菊池が外れ、ともに古巣対戦の乾、吉田が入った。
ザスパクサツ群馬 [4-4-2] 16位
監督交代や選手の新型コロナウイルス感染など難しい状況にある群馬だが、ここ最近の成績は上々。よりシンプルなサッカーに切り替えてからは結果が付いてきたことで、チームに一体感が生まれている印象である。中2日で迎える今節は4人をターンオーバーして臨む。
立ち上がりの悪癖再び
またしても立ち上がりに失点を許してしまった。どれだけクロスやシュートの本数、決定機を作り出しても、前節同様序盤の緩さから決勝点を奪われてしまえば課題が改善したとは言えない。前節はその後の2得点でオブラートに包まれた感があったが、粘り強く守る群馬はそこを見逃してくれなかった。
栃木の守備に生じている問題は最終ラインを強気に設定できていないことだ。一発でラインをひっくり返されるロングボールや相手のスピードあるアタッカーを警戒し、始めから後ろに重くなってしまう。DF個人にとってセーフティなのはもちろん前向きにボールを跳ね返すことである。背後のスペースを消しつつ前方向にチャレンジできれば、その局面では自分たちのゴールからボールを遠ざけることができる。ただ、それは栃木スタイルにおいて優先的に求められるものではない。
失点は両サイドからのクロスやバイタルエリアでの被シュートが続くなかで、スクランブルの状況から生じた。上に示した図は最初のクロスが入る手前のシーンを表したものである。DFラインに下りた岩上が右SB小島に預けたタイミングで栃木は溝渕がプレスをかけている。吉永についていく佐藤のカバーリングも十分。ただ、このとき下がって受ける北川にはプレッシャーがかかっていなかった。ライン間で前を向いた北川は右の吉永へ展開。吉永のクロスは逆サイドに流れていくことになるが、右に左に振られる一連の流れから失点を喫することとなった。
この場面、起点を作る北川に寄せるべきは最も近い三國だったが、寄せて奪いに行くには少し距離があり、かつ青木の存在も気になる。よって、前に出られず北川をフリーにさせてしまうのだが、そもそも全体がコンパクトであれば三國もチャレンジできたし、西谷も横から寄せられたかもしれない。広がったライン間で前を向かれて失点のきっかけを与えてしまうという前節と全く同じ構図からビハインドを背負うこととなった。
鍵はボランチ
最終ラインとボランチの距離感については前述のとおりだが、ボランチと前4人の距離感は前節と比べると改善しているように見えた。特に前からプレスをかけたときに西谷と佐藤の両ボランチが前線に連動して相手を捕らえるシーンは多かった。序盤に目立った進に対する西谷の寄せもファールにはなってしまったが、相手に入れ替わられない強度を伴ったものだった。
守備面では改善が見られた一方で、乏しかったのが攻撃に転じたときの最初のパスの精度。かねてからの悩みではあるが、もう少しボランチがキープをして時間を作りたい。おそらく良い奪い方をしたときは瞬間的にフリーになるSHに前を向かせる決まりがあるとは思うが、とにかく最初のパスが雑だった。自身がフリーにも関わらずノージャッジでアバウトなボールを入れてしまうのはさすがにもったいない。33分には佐藤のプレーに対して田坂監督が檄を飛ばしているのが中継を通して聞こえてきた。
その後は多少ボールを大事にするように。ボールを回収したボランチが落ち着いてサイドへ開けるようになると、クロスに繋げるシーンも増加。36分には相手GKキックをカットした黒崎のクロスがファーに流れるも森は届かず。40分には西谷のクロス、45分には黒崎のクロスにそれぞれ豊田が合わせるもシュートを枠に飛ばすことはできなかった。矢野が起点を作るためにサイドに流れても中央に豊田がスタンバイしているのは相手にとって嫌だろう。右サイドに攻撃が偏ったとはいえ、強みである高さをあと少しで生かせそうな雰囲気は漂っていた。
意識レベルで変わるもの、変わらないもの
ともにハーフタイムに選手交代を行った後半は栃木のビッグチャンスから始まった。46分、群馬のクリアを敵陣で跳ね返すと豊田がキープ。大武を背負った状態で裏に抜け出した矢野へヒールパスで預けるが、小島の対応にあい、シュートまでは至らなかった。これまで矢野と豊田の同時起用は何度かあったが、上手く呼吸が合ったのはこれが初めてかもしれない。
後半は前半見られた弱気なライン設定は概ね改善。特に下がってボールを受けに行こうというトップの選手に対するCBの食い付きは、攻撃的な守備として機能していた。
群馬は最終ラインでボールを動かしてプレッシングから距離を取りつつ、栃木が最大限寄せてきたところで長いボールを供給するようにしていたが、そこへの対応もボランチを中心に卒なく遂行。途中出場の松本が相手ボールを後ろからつついたり、相手より早くSB裏を埋めることができたりと、地味ながら要所を締められたのは全体の距離感が良くなったから。それぞれが守備アクションを整理できたことでようやく手堅い対応を見せられるようになった。
ただ、攻撃面はどうだろうか。前半に比べて重心が前傾になったことで押し込む機会は増加。前半はともに群馬を下回っていた支配率やパス数が最終的にイーブンに近づいたのは、それぞれのスタッツにこだわらない栃木が攻撃回数を確保できたことの表れだろう。にも関わらず、攻撃がクロスのみで単調過ぎるのはもったいない。そもそものクロス攻撃が悪いというよりは、バリエーションに乏しかった印象である。クロスやセットプレーの回数は現時点で十分確保できている。縦に早い攻撃が上手くいかないのであれば、クロスやその手前のサイド攻略の質をもう一、二段階引き上げる必要がある。
終盤の群馬はほとんど無理をしなかった。セカンドボール回収や球際バトル、栃木のミスから起点を作れれば一気に全体を押し上げる。北川に変わって光永が入ったことで逃げ切り体制に入ってからは、よりゴール前が堅固になった。
試合は0-1で終了。虎の子を一点を守り切った群馬が今季初の連勝で14位に浮上。栃木は11試合勝ちなしで降格圏内から抜け出せず、宿敵群馬に痛恨の勝ち点3を与えてしまった。
最後に
北関東ダービーであると同時に残留争い直接対決ということで紛れもなく勝利必至の試合だったが、結果はおろか内容面でも収穫は乏しかったと言わざるを得ない。ビハインドになってからギアが入るようでは遅い。正直なところそのギアにも群馬を上回るほどの力強さが見られなかったのは残念であった。
スコア以上に差をつけられるショッキングな試合となってしまったが、連戦の最中にある今は切り替えるしかない。これからの直接対決のなかでチームが浮上の兆しを見つけられることを願うばかりだ。
試合結果・ハイライト
得点 13分 北川柊斗(群馬)
主審 山岡良介
観客 900人
会場 栃木県グリーンスタジアム