栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【一歩踏み出す】J2 第27節 栃木SC vs 愛媛FC

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-1-1] 19位

 前節は群馬との北関東ダービーに敗れた栃木。ミッドウィーク開催のため中3日、そして遠方アウェイという厳しいコンディションで迎える今節だが、引き続き落とせない試合が続く。スタメン変更は3人。有馬は11試合ぶり、乾は13試合ぶりに先発となった。

 

愛媛FC [3-1-4-2] 18位

 こちらも残留争い直接対決が続いている愛媛。前節は敵地で松本を撃破し、暫定ながら降格圏を脱出することに成功した。中6日で迎える今節はスタメンを2人変更。夏に加入した栗山は4試合連続、高木は初先発となり、前節決勝点の川村はベンチからも外れた。

 

 

息つく間もない立ち上がり

 最終ラインを強気に上げられるか、全体をコンパクトにして息を合わせたプレッシングから相手を飲み込むことができるか。栃木のベーシックにある部分を全員が体現できるかがこれまでの試合のなかでも最もフォーカスされたと言えるだろう。

 立ち上がりこそバタついたが、このピンチを凌げたことが大きかった。オビの至近距離セーブにCB陣の身体を投げ出したシュートブロック。前半1分台に招いた二つのピンチを踏ん張り切れたことで、かえって自信と勢いをもたらすきっかけになったように思う。

 

 序盤はロングボールの応酬で試合が進んでいく。愛媛は栃木の最終ライン背後を狙うことが多く、CBを押し下げてライン間を広げさせようという取組は対栃木においてよく行われるものだった。ライン間を広げてそこで前向きの選手を作る、もしくはロングボールから抜け切れば一点ものである。それに対する栃木はその狙いを踏まえたうえで、初期位置高めの最終ラインを細かく微調整するラインコントロールで応戦。久々の出場でも卒なくこなす乾の安定感はベテランそのものだった。

 頻発する中盤でのセカンドボール争いではボランチが躍動。とりわけ西谷が小さな体を相手の懐に潜り込ませるアプローチで簡単にボールを収めさせない。栃木の得意とする展開がこの試合におけるスタンダードになっていくと、試合が動いたのは前半9分。ペナルティエリア内での愛媛DFのハンドで得たPKを畑が決め、栃木が先制に成功。実に7試合ぶりの先制点となった。

 

 

主導権を握れた背景

 先制以降は愛媛がボールを握り、栃木がプレッシャーをかける構図に。そして次々に栃木がボールを引っ掛けてショートカウンターへ繋げる展開となっていく。栃木が主導権を握れたのはプレス強度や全体のコンパクトさによるものがもちろん大きいが、愛媛側の事情がそうさせたようにも見えた。

 

 愛媛のフォーメーションは[3-1-4-2]。2トップと2シャドーのそれぞれが元の位地から前後左右に動くことで、相手の守備ブロックを乱していくのが前線4枚の特徴である。

 それに対して栃木はトップ下の有馬が田中にぴったり張り付く[4-2-3-1]でセット。トップの豊田は正面の栗山を睨みながら背後の田中を隠す。ここ数試合は相手のボランチ2枚のうち縦関係の2トップでは隠し切れない一方のボランチから前進を許してしまっていたが、愛媛が中盤中央の枚数が少ないシステムを採用していたことで、そこへの負担が軽減。中央へのパスコースを遮られた愛媛の最終ラインはサイドにボールを預けるしかなく、栃木のSHとSBは狙いをもってプレスをかけることができた。

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 この時点でプレッシャーをかけられた愛媛のWBに与えられた選択肢は、中央に入れるか前線に放り込むかの二択。中央で受け手になる選手には栃木の選手がほぼマンツーマンで付いており、前線に放り込もうにもCBに弾き返されるかオフサイドにかかるシーンが多かった。

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 おそらく愛媛はWBがプレッシングにさらされることを想定していたと思う。右WBに左利きの高木、後半からは左WBに右利きの忽那を配置したことがその表れ。タッチラインに背中を向けやすい展開で、栃木の寄せから遠い位地にボールを置き、パスを出しやすくする意図があったと思う。

 ただ、その狙いも上手く生かせず。栗山から大谷を飛ばして高木に入れるパスで溝渕のプレスを遅らせたり、藤本のポストプレーを起点に逆サイドの内田に広げたりといくつかのパターンは用意していたようだが、序盤のような決定機を生み出すには至らなかった。

 

 一方栃木は自分たちで意図して入れたロングボールの回収率はここ数試合で最も高かったように思う。そもそも豊田の勝率も高かったのだが、そこに関わる有馬や畑の距離感も非常に良かった。前半35分には、愛媛の1アンカー脇で数的優位を作って回収すると、インサイドに入ってきた溝渕に押し出されるようにボランチの西谷が前線へ。フリーでパスを受けた西谷がCKを獲得するなど、厚みのある攻撃からゴールに迫ることができた。

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受け手を増やした愛媛

 試合の潮目が変わったのは後半6分。愛媛の後ろからのビルドアップを止め切れず、サイドを変えられて押し込まれたシーンである。ここでのピンチは何とか免れたが、後半トップに移った石井の存在に手を焼くこととなった。

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 前半の栃木は愛媛の2トップと2シャドーに対してCBとボランチがマンツーマン気味に対応することで高い位置で前進を抑えることができていた。しかし後半愛媛が石井のポジションを一列上げ、下りる動きを多用するようになると栃木のボランチは対応すべき相手が増加。背後にパスの受け手を作られることで前線の選手も徐々に足が止まり、愛媛のCBはノープレッシャーでボールをさばけるようになった。

 

 有馬、谷内田に変わって森、矢野が入ってからも愛媛ペースは変わらず。投入された2人はプレスを活性化させる役割を十分にこなしていたが、チームとして一度受け身に回った最終ラインを押し上げられず、かえって中央を空けてしまう場面が目立った。ここ数試合序盤に見られていた現象だった。

 

 ここからは栃木の防戦一方。前からのプレッシングも守備の距離感が遠いため奪い切れた回数は限定的だった。愛媛は中盤でマークの浮いた選手を使いながら中央とサイドをバランスよく使い分けていた印象である。石井が前線から下りてくるためのスペースを提供する山瀬の立ち位置も絶妙だった。

 試合の主導権を握る愛媛は、最終盤にかけてさらに攻勢を強めていく。後半39分には乾との勝負を制した唐山のシュートが枠のわずか左へ。後半44分にはパワープレーで前線に上がった栗山のシュートがポストを直撃。後半48分にはCKの流れから絶好の場面を迎えた唐山のシュートがわずか左へ逸れていった。栃木にとってはどの場面も失点を覚悟する大ピンチだったが、愛媛の精度に助けられることとなった。

 試合は1-0で終了。栃木は約3ヶ月、12試合ぶりの勝利を飾るとともに、順位も再び残留圏内となる17位に浮上した。

 

 

最後に

 ピンチの数やゲームの締め方など改善すべき点はいくつもあるが、何はともあれまずは勝利である。ようやく長いトンネルを抜け出して一歩前へ踏み出すことができた。この試合をターニングポイントと評価するにはさすがに早いとは思うが、不格好でも得ることのできた勝ち点3はチームにポジティブな影響をもたらすだろう。前向きな雰囲気をより高めていくためにも、次の試合の振る舞いが非常に重要となってくるはずだ。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-0 愛媛FC

得点 9分 畑潤基(栃木)

主審 田中玲匡

観客 1770人

会場 ニンジニアスタジアム