栃木SCのことをより考えるブログ

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【時間と状況に応じたメリハリ】J2 第15節 栃木SC vs ヴァンフォーレ甲府(〇1-0)

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 11位

 前節福岡戦は0-1で敗れ、7試合ぶりの敗戦となった栃木。仕切り直しとなる今節はスタメンを3人変更。エスクデロは7試合ぶりのスタメン、矢野貴章は5試合ぶりのメンバー入りとなった。GKオビは加入後初のベンチ入り。

 

ヴァンフォーレ甲府 [3-4-2-1] 6位

 前節は山形に1-3で敗戦。スタメンを6人変更し、負けなしのホームでこちらも仕切り直しを図る。ドゥドゥ、バホスが不在の前線にはベテランのラファエルを起用。試合ごとにセットで入れ替わるボランチは中村、山田の若手コンビが先発となった。

 

 

15分間の奇襲

 ともにセカンドトップ気質の明本とエスクデロが2トップを組むということで、どんな形から攻撃していくのか注目していたが、ロングボール主体という意味では普段と変わらなかった印象の栃木。どちらかといえば明本が前目のポジションで味方からのロングボールに食い付いていく役割だった。自分で競り勝つというよりは相手にとって嫌な動きを続けて十分にクリアさせず、エスクデロを中心としたセカンド回収隊にボールを渡らせることが狙いのように見えた。

 

 マイボールになったらすぐにロングボール。跳ね返されても間髪入れずにロングボール。きっぱりと割り切った戦い方で再三敵陣にボールを送り込んでいたため、前半15分までの自陣でのプレータイムはかなり少なかったと思う。開始数十秒でロングボールから高い位置で起点を作り、瀬川のクロスから大島がさっそくヘディングで合わせようというシーンもあり、文字通り奇襲という言葉が合うような立ち上がりになった。

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 栃木の圧力に対して自陣に押し込まれる甲府はロングボールで回避しようにもラファエル一人では収めることができない。サポートしようとするシャドーとの距離感も遠く、かえってシャドーとボランチの間にできた段差に対して、栃木が縦パスを通していきエスクデロのシュートに繋げるなど、どう攻撃に出るか苦しんでいる様子だった。栃木にとってグラウンダーでの崩しはこのシーンくらいだったが、ここまでのハイテンションな奇襲により甲府がコンパクトさを失っていたのは明らかだった。

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乱れないスライド

 激しい立ち上がりを経ると、徐々に甲府が落ち着いてボールを持てるターンに。甲府の変化というよりは、栃木がFWのプレスのスタート位置をハーフライン手前のボランチ付近に下げたことが要因だと思った。さすがにあのプレッシャーを90分間かけ続けるのは難しい。甲府の左右のCBに出たところをスイッチにサイドの選手が縦にスライドしていく形は、対3バック相手に栃木が取り組んでいるものである。特に右WB小林が後ろ向きでのコントロールを余儀なくされ、左足でラファエルに入れたボールを田代が強く弾き返すシーンは何度も見られた。

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 SBの背後に甲府のシャドーが流れた場合はボランチが斜めにスライド。自陣深く押し込まれたときも、まず初めにボールサイドのプレーを遅らせることでSHのプレスバックやボランチの穴埋めまでの時間を稼いでブロックを形成するなど、スライドの連動性はかなり高かったと思う。ボランチがどうしても最終ラインに吸収されやすい仕組みだったため、中央を埋めていたという意味でエスクデロの守備への貢献も非常に大きかった。

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 甲府にボールを持たせることができれば栃木にとってはプレッシングのチャンス到来。中盤で引っ掛けてからショートカウンターを発動できれば、立ち上がりに見せた奇襲に比べて相手ディフェンスが少ない状態を作ることができる。実際に左サイドで森がエリア内に侵入する形は多く作れていた。あとはフィニッシュの精度である。

 

 前半はスコア動かず、0-0で折り返し。

 

 

奇襲再び

 後半立ち上がりは改めて奇襲からスタート。高い位置に人を集めて二次攻撃、三次攻撃に繋げていくと、後半6分に試合が動いた。

 セットプレー崩れから右サイドで密集を作り、ボールサイドに絡んできたエスクデロがボールをキープ。外側を回った溝渕に預けると、ワンタッチで上げたクロスにボランチの位置から西谷優希が飛び込んでいきゴールイン。ここまで前線の脅威になっていた明本の動き出しに甲府DFが釣られ、ヘディングの瞬間フリーになることができた。西谷にとっては在籍3年目でようやくJ初ゴール。栃木は自分たちに流れが傾いている時間帯に幸先良く得点を上げることに成功した。

 

 

ビハインドがもたらした甲府の変化

 ビハインドを負った甲府は金園と宮崎を投入。攻撃時に中央のCB新井を一列上げる[4-3-3]に変更して攻撃のギアを一段階上げていく。

 一方栃木はエスクデロがアクシデントで矢野と交代。

 

 CBと中盤、時折SBもボールに関与することで落ち着いてビルドアップできるようになってきた甲府。狙いは栃木のMF-DFライン間のアタッカーにボールを入れること。したがって、まずはここのスペースを作るべく甲府は最終ラインの選手が栃木のボランチを誘い出すように、中盤の中村や山田とパス交換を行っていく。

 対する栃木も甲府の狙いを把握した上で、SHやセカンドトップの明本がボールサイドに寄せることで、ボランチをなるべく動かさないように牽制していった。

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 栃木は前半同様にロングボールが攻撃の軸となるが、ターゲットが明確になったこと、サポートの距離感が徐々に遠くなったことから、セカンドボールを拾えず高い位置でマイボールにすることができない展開に。それでも敵陣へのロングボールをひたすら続けていくことで、少なくとも甲府から時間的余裕を奪っていくことには成功していた。

 

 後半40分を過ぎると甲府は今津を最前線に上げてパワープレーを開始するが、浅い位置からのシンプルなロングボールが多く効果的にチャンスを得ることができない。ゴール前を固める栃木にとってはサイドの深い位置まで侵入されることはなく、ターゲットとボールを同一視野に入れた上でクリアできていたため落ち着いて対応できていた。長身のハーフナーマイクが不在だったのも大きかったと思う。

 

 最後には最終ライン前の門番として柳を投入して1-0でゲームクローズ。栃木は4試合ぶりの勝利で7位に浮上。甲府は2連敗となった。

 

 

最後に

 時間帯と状況に応じていくつかの顔を見せた栃木だったが、どのシチュエーションにおいても自分たちからチャンスを作り出すことができ、また甲府に決定機を与えることはなかった。

 後半はリードを奪ったこと、矢野が最前線に入ったこと、甲府がシステムを変えながら栃木のボランチを揺さぶろうとしたことなど、いくつかの要因から受け身になることもあったが、中央を締めて弾き返す守備も心得ている栃木にとっては決して苦しい時間帯ではなかったと思う。

 

 中2日で迎える次節はホームでの北九州戦。本当に昇格組なのかと疑うほどの力強さを見せており、スタイルのはっきりしたチームどうしの対戦は、リーグ全体で見ても次節の注目カードになるはずである。ストップ・ザ・北九州を達成し、飛躍の足がかりにしたい重要な一戦となる。

 

 

試合結果

栃木SC 1-0 ヴァンフォーレ甲府

得点 51’西谷優希(栃木)

主審 柿沼亨

観客 2,188人

会場 山梨中銀スタジアム

 

 

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