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【序盤戦を終えての現在地】J2 第14節 栃木SC vs アビスパ福岡(●0-1)

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 11位

 前節琉球戦は2-2でドロー。二度のリードは生かせなかったが、負けなしを6試合に伸ばした。スタメンの変更は6人。沖縄遠征に帯同しなかった溝渕、瀬川はスタメン。前節得点の榊と韓勇太はベンチスタートとなった。

 

アビスパ福岡 [4-4-2] 16位

 前々節、前節ともに終了間際に失点を許している福岡。3連敗中、5試合勝ちなしと正念場である。スタメンの変更は6人。連戦をフル出場していた鈴木惇がベンチスタートとなり、加入したばかりの松本がさっそくスタメンとなった。

 

 

プラス1をつくっていく

 立ち上がりから前線にロングボールを供給し、セカンドボール回収から前進していく両チーム。この構図は90分を通して変わることなく、互いに頭上をボールが行き交い、中盤では激しいバトルが繰り広げられたため、落ち着かない展開で試合は進んでいった。

 

 そのなかで初めに決定機を作ったのはホームチーム。前半3分、中盤でのセカンドボール争いを制すると中央から右SBの溝渕へ。サイド深い位置から溝渕の入れたクロスに合わせた禹相皓のシュートは、開始早々ながら最大のチャンスであった。

 シュートこそ大きく外れてしまったが、このシーンに見られたボランチの攻撃参加はこの試合における一つのテーマだったと思う。前述の前半3分の場面では、右サイドにボールが渡ったタイミングで禹相皓がゴール前にスプリントしている。禹相皓とマッチアップする相手は田邉だったが、人とボールが大きく動くなかでマークを離してしまい、シュートの局面で禹相皓はフリーになることができていた。

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 決定機には至らなかったが、ボランチの相方の岩間の攻撃参加も目立っていた。セカンドボール争いでプレスバックしていたFWに代わっていち早くペナルティエリア内に侵入したり、後半にはわずかに右に逸れたがミドルシュートも放っている。

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 もちろん守備面では持ち前の激しさを見せ、セカンドボール回収に大きく貢献。フアンマへのロングボールに対してはCBと協力して挟み込むことで自由に競らせなかった。前々節の愛媛戦と比べれば攻守におけるバランスも反応もよく、局面でのプラス1としての役割は十分にこなしていたと思う。ボランチのセット交代は試合前からプランとしてあったと思うが、途中投入の二人に劣らないナイスプレーを表現できた点は非常にポジティブである。

 

 

狙いはブロックができる前

 ボールを持ったら素早くロングボールという形は両チームにとって優先度の高い攻撃手段だったが、フアンマをターゲットに置く福岡はその狙いがより顕著だった。

 得点に繋がった場面もこの形から。福岡陣地でのセカンドボール争いからCB上島が前線にラフなボールを供給。高いライン設定の栃木はGK川田がDF裏のスペースを埋めたものの、続く遠野のシュートを体でブロックした跳ね返りが手に当たってしまった。間髪入れずに遠野がシュートに至っていることから、陣形が整わなくてもロングボールがチャンスになると共有されていることが窺えた。

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 サロモンソンのFKはパーフェクト。内側のポストを叩かれてしまえばGKもノーチャンスだろう。

 

 ビハインドになった栃木はセカンドボール回収やスローインからの展開で攻勢を強めていくが、ゴール前を固める福岡のブロックを崩すことができない。ロングスローをフェイクにして近くの選手に預けてクロスという形もあったが、ターゲットの田代は密着マークにあい、ボールを先に触ることができなかった。

 

 福岡の素早い帰陣に対して攻撃のテンポが上がらない栃木。福岡の守備がセットされてしまえばクロスを上げても全て跳ね返されてしまう。前半アディショナルタイムに田坂監督が山本に対して大きく声を上げるシーンがあったが、おそらくポジショニングについてだったと思う。縦に早く攻める場面でサイドのサポートに回ってしまった点を指摘していたのだろう。

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 前半は福岡がリードして折り返し。

 

 

アタッキングサードでの課題

 互いに手数をかけずに前進を図るという構図は後半も変わらず。ビハインドということもあり敵陣でのプレータイムが長かったのは栃木だったと思うが、なかなか効果的にシュートに繋げることができない。セカンドボールを拾えてもその後のプレー精度が伴わず、自ら攻撃の芽を潰してしまった感があった。

 一方福岡もフアンマがロングボールの競り合いにうまく勝利できず、フラストレーションが溜まりファールする場面も見られた。右SHの増山が個人技で抜け出したり、ワンツーの壁になったりと攻撃にアクセントをつけていたものの、断片的だった印象である。

 

 3人同時の交代を行ってからの栃木は、途中出場の西谷優希を中心に左右にボールを捌き、高い位置を取ったSBからクロスを供給していく。ピッチ幅を大きく使ったサイドチェンジやトランジションからのカウンターではシュートシーンを作ることはできていたが、ゴールを脅かすまでに至らず。とりわけ左サイドからはフィニッシュに至ることが多く、瀬川や森のカットインからのシュートが枠を捉えられなかった点は向上に期待したいところである。

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 逃げ切りを図るべく三國を投入した福岡に対して、栃木は焦りから自陣で不用意にボールロストしたり、クロスを簡単に跳ね返されたりと、シュートに持ち込むことができない。明本とエスクデロのコンビネーションが見られた際は右サイドを崩してクロスというシーンも見られたが、そもそもゴール前でプレーしてほしい二人がサイドでチャンスメイクせざるを得ない状況はもったいないといえる。

 

 最終盤には柳を投入してパワープレーを仕掛けるも一点が遠く、0-1で試合終了。栃木は7試合ぶりの敗戦。福岡は連敗をストップし、6試合ぶりの勝利となった。

 

 

最後に

 鏡で映したように似ているスタイル、同じフォーメーションのチームどうしの対戦となったが、最終局面でのクオリティの差がそのまま試合を分けたといえるだろう。ゴールに迫るものの、脅かすまでには至らなかった。

 少しでも得点に繋げるための近道として前からのプレッシングを磨いている最中だが、ボールを放すことを厭わない福岡に対してはそもそもそのようなシチュエーションを作ることができなかった。自分たちの土俵で戦うことができなかった栃木にとってはかなりもどかしい試合となっただろう。

 

 この試合でちょうどリーグ戦3分の1を終えたことになるが、現時点での出来ることと課題が少しずつ見えてきているところだろうか。ノンストップで進んでいくリーグ戦のなかで、一週間のインターバルは自分たちを見つめ直すことができる数少ないチャンスである。中盤戦に入っていくにあたってチームがどのような成長曲線を描いていくか。5連戦を戦い抜き、序盤戦を終えたこのタイミングが良い転機になってくれることを願いたい。

 

 

試合結果

栃木SC 0-1 アビスパ福岡

得点 17’エミル サロモンソン(福岡)

主審 榎本一慶

観客 1,875人

会場 栃木県グリーンスタジアム

 

 

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