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【似た者どうしの真っ向勝負】J2 第23節 栃木SC vs アビスパ福岡(●0-1)

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はじめに

 前節町田戦は2-0で今季初の2点差勝利をおさめた栃木。7試合ぶりにクリーンシートを達成するなど会心の勝利といえる試合だった。今節の対戦相手は福岡。現在7連勝と最も好調なチームに対して前半戦のリベンジを果たせるか。アウェイに乗り込んでの試合となる。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 7位

 アウェイの栃木は前節から4人変更。FWエスクデロ、MF佐藤、DF瀬川は2試合ぶり、MF有馬は第13節琉球戦(△2-2)以来の先発起用となった。DF柳には4試合連続ゴールの期待がかかる。

 

アビスパ福岡 [4-4-2] 4位

 近隣アウェイとなった前節長崎戦から9人を変更。GK村上とDF上島以外は全入れ替えとなった。DF桑原はJリーグデビュー戦。ここまで7得点をあげている遠野はベンチスタートとなった。

 

 

激しい肉弾戦

 ボールを持つことに拘らないチームどうしの対戦とあって、手数をかけずに縦に早くボールを進める両チーム。空中戦ではCBが強さを見せるため、中盤でのセカンドボール争いや球際勝負が頻発する激しい展開で試合は進んでいく。

 

 イーブンなボールの回収率はほぼ互角。ただ、マイボールにしてからのプレー選択ではホームの福岡の方が相手を動かそうという狙いが窺えた。

 多かったのが右から左へのサイドチェンジ。逆足起用のため視野をより確保できるボランチの鈴木が出し手となりボールを供給。受け手となる左SH菊池と左SB桑原はともにタッチライン際での勝負に強みを見せるタイプであり、栃木は立ち上がりから右サイドを押し込まれることが多かった。連鎖的に中盤のラインが下がったことで、ボランチの田邉にフリーでクロスを上げられる場面があった。

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 一方、攻撃面ではメンバー構成を見るかぎり、セカンドボール回収などから前線に起点を作れた際は地上戦での勝負を狙いにしていたと思う。このとき司令塔の役割を期待されるのがエスクデロや西谷優希なのだが、福岡の素早い寄せに対してボールを持つ余裕が与えられなかった印象。なかなか前を向けず、らしくないミスが多かった。窮屈なエリアでのパスワークに固執したことで、福岡の選手にとってはボール奪取の狙いを定めやすかっただろう。

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 それでも、セカンドボールを回収してサイドに素早く散らせたときはゴール前にボールを送り込むことができていた。SBからのクロスがグラウンダーだったり、スピードのあるボールだったりというのはフィニッシャーの事情を踏まえてのものだろう。

 

 守備に強みのあるチームどうしが組み合ったことで、シュートシーンに至ったシーンはわずか。ともにボールへの反応が非常に早く、相手にシュートを打たせる一つ前のプレーで守備を完結させていた。激しい寄せがファールの判定になることも多かったが、セットプレーは守備陣が完封。栃木はトリックプレーも用意していたが、ミスでチャンスをふいにしてしまった点は勿体なかった。

 

 前半は両者決定機なく、スコアレスで終了。

 

 

手前サイドでの攻防

 後半も前半同様に落ち着かない展開で進んでいく。後半栃木が狙いとしていたのが福岡の左SB桑原の背後のスペース。カウンターに転じた際はスペースに流れる明本にシンプルに預けるか、中央でエスクデロを経由してから黒崎の上がりを促すという二つのパターンを見ることができた。

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 桑原の背後をカバーするのがCB三國。栃木としては、桑原も含めて経験値の決して多くない選手サイドからゴールに迫ろうという狙いがあったと思うが、思った以上に三國の壁を破ることができなかった。長いリーチと身体能力の高さを生かした守備に対して時間をかけてしまえばボランチや桑原のプレスバックにあってしまう。栃木としてはサポートの速さと距離感で、福岡の固い守備を上回りたかったところである。

 

 選手交代を経ても落ち着かない試合展開は変わらず。前、遠野、フアンマが途中から出てくるのは反則である。前述のように栃木の右サイドと福岡の左サイドは最も激戦のエリア。福岡ベンチ前での輪湖に対する山本の遅れ気味のタックルは、場所が場所なだけに一触即発な雰囲気が漂っていたが、当事者どうしは落ち着いていたし、イケメンだった。

 

 攻撃のギアをもう一段階上げたい栃木はエスクデロに変えて矢野を投入するも、この日の矢野は主審との相性がとことん悪かった。手や腕を使ったプレーに対しては厳しいレフェリングだったと思うが、もう少しアジャストしてほしかったところ。チームとして冷静さを失いかけていたなかで与えてしまったFKからの失点は、展開からしても痛恨だった。

 

 ビハインドを背負った栃木はすぐさま交代カードを切るものの、切れるカードが中盤から後ろの選手なのはもどかしかった。

 最終的にはパワープレー要員として柳を上げるものの、福岡はフアンマをCBに据える割り切った采配を披露。勝利への執念を見せた両チームだったが、福岡が虎の子の一点を守りきって試合終了。福岡はチーム記録となる8連勝を達成した。

 

 

最後に

 シュート数は福岡の5本に対して栃木は4本。失点の少なさで上位に絡んでくることも納得の試合展開であり、それでも勝ち切る福岡の勝負強さが際立った試合となった。

 フリーキック1発での敗戦は前回対戦と全く同じものだが、オープンプレーから決定機をほとんど作らせなかった点はポジティブである。ロングボールに対する最終ライン裏のケアも徹底されており、課題への修正はひとまず良好といえるだろう。

 一方、浮き彫りとなったのがプレッシングの刺さらない相手に対する打開策。攻撃時のボールリリースと守備ブロックの形成がともに早いチームに対しては今後も苦戦を強いられそうな予感である。

 次節はホームに戻っての長崎戦。5連戦の最終戦である。ここまで勝利できていない上位との対戦となるが、連戦を勝ち越せるかどうかの重要な一戦であることには違いない。ぜひ開幕戦のリベンジを果たしてほしいところだ。

 

 

試合結果

栃木SC 0-1 アビスパ福岡

得点 82分 福満隆貴(福岡)

主審 西山貴生

観客 1,878人

会場 ベスト電器スタジアム

 

 

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