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【良い時間帯をものにする力】J2 第31節 栃木SC vs 松本山雅FC(△0-0)

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はじめに

 前節は甲府と対戦しスコアレスドロー。守備の堅さはいつもどおりながら攻撃面での迫力を欠き、初の3連勝を飾ることはできなかった。5連戦の2試合目は松本山雅との対戦となる。順位こそ下位に沈んでいるが、北九州、山口に連勝し調子は上向きの印象。栃木としては終盤戦の足がかりにしたい一戦だ。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 10位

 アウェイに乗り込む栃木は前節から4人変更。怪我の状態が心配された明本は脅威の回復で2試合ぶりに復帰。前節途中出場から流れを変えたエスクデロと最前線でコンビを組む。2試合連続無失点の守備陣に変更はなかった。

 

松本山雅 FC [3-4-2-1] 19位

 ホーム連戦となる松本は前節山口戦から4人変更。一週間前の10/26まで栃木に在籍したハンヨンテは復帰後初先発を果たした。前回対戦でゴールを決めた乾はベンチからのスタートとなっている。

 

 

存在感を見せたツートップ

 前半2分、自陣からのロングボールのセカンドボールをエスクデロが収め、横パスを受けた岩間のミドルシュート

 前半5分と前半10分には、マイボールになるや明本を松本最終ラインの背後に抜け出させるロングボール供給。

 前節甲府戦はなかなかゴール前でチャンスを作れずシュート6本で終わった栃木だが、今節は前半だけで11本のシュートを記録。独特の間合いでプレーするエスクデロと積極的なランニングを繰り返す明本がそれぞれボールを収め引き出すことで、栃木は立ち上がりから攻撃に迫力をもたらすことができていた。

 

 対する松本も攻撃に転じたときのファーストチョイスは栃木同様にロングボール。繋ぐ場面もあったが、それほど無理しないスタンスだった。ハンヨンテ、塚川、アウグストの3トップはいずれも長身でフィジカルに優れており、ロングボールからのセカンド争いは非常に激しく繰り広げられた。古巣対戦に燃えるハンヨンテは激しさのあまり早くも前半14分には繰り返しのファールでイエローを貰うほどであり、山本が足を痛めて倒れる場面もあった。

 

 頻繁にボールが空中を行き交うなかで、チームに落ち着きを与えていたのがトップ下のエスクデロ。簡単に当たり負けしない体の強さとボールの持ち方の上手さはチーム随一である。前半35分には、エスクデロの意表を突いたロブパスから明本が抜け出してシュートに至るなど、攻撃にアクセントをもたらす存在として異彩を放った。

 抜群のキープ力で時間を作ることができれば、周りの味方も安心してポジションを押し上げられる。SBや逆SHが参加してのサイドでの細かいパスワークは前節見られなかった形であり、全員の距離感が良いためボールロスト後の囲い込みにも難なく移行することができていた。

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手前サイドでの攻防

 最前線の明本をスイッチに超攻撃的プレッシングを見せる栃木。この日は栃木の右サイド(=松本の左サイド)での攻防がより多く見られ、手前サイドでの勝敗が次の展開を左右する大きなポイントになっていた。

 

 とりわけ熾烈だったのが中美から前方に出されるボールへの対応。右利きの中美は左サイドに入ることによりプレスを背中で感じつつ体を内向きにしたままボールを蹴り出すことができる。このときアウグストは黒崎の背後に動き出しており、受け手となるハンヨンテvs柳のバトルは頻繁に見られた。

 前半26分には、中美からハンヨンテへのパスを柳が対応し切れずにアウグストに展開されると、その流れで与えたスローインからボランチ中心にタッチ数細かく自陣でボールを動かされる流れに。

 一方前半34分には、柳が体を投げ出してボールをカット。ピッチ中央でボールを持ったエスクデロが右サイドを駆け上がる黒崎にロブパスを送ると、一気にCKを得るまでに至った。

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 アウグストが左に張ったときには内側に潜り込んでくるなど、栃木にとって中美の存在は厄介だったように思う。西谷優希はカットインに対して何度かファールで止めることになったり、黒崎は自身のプレスで奪い取れるシーンは少なかった。

 

 それでも危険なエリアにボールを入れられる回数自体は少なく、栃木としてはボールの行方を見失わずにスライドすれば問題ないとの判断だったと思う。前半はこのままスコアレスで終了。

 

 

どこで勝負を仕掛けていくか

 後半に入ると栃木は左サイドから攻勢を強めていく。ハーフタイムの交代策で右WBに移ったアウグストが不慣れなポジションに苦しんでいるのを尻目に、左SH森がドリブル強襲。サイドの深い位置まで侵入しクロスからゴールに迫ることで、あとは合わせられればというシーンを何度か演出することができた。

 今振り返ってみれば、この時間帯が最も安定して相手陣地でプレーできていただけに、得点を奪うためのひと押しが足りなかったように思う。たらればにはなってしまうが、良い流れを切らす前に明本をより左サイドに流れさせたり、瀬川を早めに投入したりなど、クロスをスムーズに入れられる左利きのプレーヤーを充てることができれば効果を生み出せたかもしれない。

 攻守のバランスを考慮した駆け引きのため仕方ない部分だが、松本がアウグストに変えて浦田を投入することで応急処置を図ってからは、左サイドでチャンスを作ることができなくなっていった。

 

 立ち上がりの劣勢を凌いだ松本は交代選手を中心に流れを引き寄せていく。後半18分の攻撃はその効果が顕著に現れたシーン。左サイドから杉本が対角線上にロングフィードを送ると、浦田がファーサイドで折り返し。栃木がクリアをし切れずに塚川にボールがこぼれると、最後はゴール前に飛び込んだ前が至近距離からシュートを放った。栃木としてはこの日最も肝を冷やしたシーンだった。

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 栃木のディフェンスの隙間で巧みにボールを受ける杉本を中心に、松本はその後も好機を演出。前半は中美から前方に出るボールが攻撃の始点になっていたが、後半はそこに杉本も加わった印象である。栃木のラインを押し下げることができればCB常田もオーバーラップすることで攻撃に厚みをもたらしていた。

 

 最終盤には再び栃木が主導権を握る展開に。瀬川と佐藤を投入した後半39分以降は特に左サイドが活性化。瀬川は連続してクロスを供給することで、短い出場時間ながら一定の存在感を見せた

 再三のクロスとセットプレーを得ながらも合わせたヘディングシュートは枠を捉えられず。GKの弾いたこぼれ球をプッシュした榊は惜しくもラッキーボーイにはなれなかった。試合はスコアレスで終了。栃木は5試合負けなし、松本は4試合負けなしとなった。

 

 

最後に

 結果こそスコアレスドローに終わったものの、前節と比べればはるかに攻撃の迫力を出すことができたと思う。クロスやセットプレーからゴール前にボールを送る回数を確保できているだけに、監督がよく言うようにあとは出し手と受け手が息をいかに合わせられるかである。4得点をあげた琉球戦のようにハマるときはとことんハマる空気感は攻撃回数を見れば十分漂っているといえる。とにかく根気強くトライすることで道を切り開いていくことに期待したい。

 

 

試合結果

栃木SC 0-0 松本山雅FC

主審 岡宏道

観客 3,296人

会場 サンプロアルウィン

 

 

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