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【虎の子の一点を死守した意味】J2 第32節 栃木SC vs 京都サンガF.C.(〇1-0)

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はじめに

 前節、前々節とスコアレスドローが続いている栃木。ここ5試合をわずか2失点に抑えるなど守備面の好調が際立つだけに、勝ち点をもたらすゴールに期待したいところ。今節の対戦相手は京都。今季最多の3失点&唯一逆転負けを喫した前回対戦のリベンジをかけた一戦となる。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 9位

 ホームの栃木は前節から2人変更。ボランチには岩間に変わって佐藤、右SHには山本に変わって4試合ぶりに大島が入った。堅守をキープするDFラインは6試合連続で同じ先発メンバーとなった。

 

京都サンガF.C. [3-4-2-1] 7位

 アウェイの京都は中3日の前節からスタメン変わらず。現在2連勝中であり、好調のチームはいじらないという鉄則を守っている印象。実際に、前々節が出場停止だった飯田を除いた10人は継続起用されている。曽根田には3試合連続ゴールの期待がかかる。

 

 

前半

■ラインコントロールに潜む罠

 いつものように立ち上がりからハイプレスをかけていく栃木。縦関係のツートップは明本がバイスに寄せていき、エスクデロはボールサイドのボランチを見る役割。縦を切られた京都がサイドにボールを回せば、サイドの選手が列を上げて連動することで京都のバックラインにパスを繋ぐ余裕を与えない。押し込んだ状態からクリアさせたボールを回収して二次攻撃に繋げるなど、立ち上がりの10分間はほとんどの時間を敵陣で過ごすことができていた。

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 この日の栃木において、1.5列目に入るエスクデロは攻守における最重要ポイントだった。攻撃の起点になる高いボールキープ力もさることながら、前述したボールサイドのボランチを消す守備は京都の攻撃を塞ぐうえで欠かせない要素になっていた。とりわけリーグ屈指の司令塔である庄司に自由を与えてしまえばピンチに陥るのは明らかで、エスクデロがここのスライドを卒なくこなせていた点は地味ながら大きかったと思う。

 

 ハイプレスと要所を押さえた守備からリズムを掴んだ栃木は立ち上がりから次々にショートカウンターを繰り出していく。

 前半10分には、ハーフウェーライン付近で西谷が鋭い寄せから相手のミスを誘うと、大島、明本と繋いで左サイドを上がってきた森へ。森はスピードを落とさずにドリブル突破し、左足で放ったシュートは枠の右に外れていった。

 続く前半16分にもビッグチャンス。敵陣深い位置で連動してプレスをかけていき佐藤がインターセプト。そのまま持ち運んでペナルティエリア内に侵入すると大島へ横パス。絶好の場面だったが、バイスがわずかに触れたことでボールが流れ、決定機を生かすことはできなかった。

 

 決定機をものに出来ないでいると次第に京都が攻撃を組み立てる展開になっていく。その始点となっていたのがCBバイス。自陣から繰り出す高精度のロングフィードで栃木のハイラインの背後を狙っていく。これに対して栃木は頑なにハイラインを崩さない姿勢で対抗。バイスからボールが出た瞬間に最終ラインがバックステップを踏みながらラインコントロールすることで決定的な裏抜けを未然に防ぐことができていた。

 

 ただ、少し気になったのがMFラインの部分。DFラインはロングフィードに対して下がるものの、ハイプレスの意識が高いMF陣は戻り切れず。帰陣するまでのわずかな時間で京都にセカンドボールを拾われ、特にボランチの脇のスペースを使われるシーンが目立った。前半33分の曽根田のシュートはその典型である。

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 京都としては背後を取れればそのままチャンスに、背後を取れなくても押し下げたラインの手前のスペースを使うことができていた。最前線のウタカはロングフィードの受け手として、アタッキングサードでは細かい連携での出し手として、動きの量こそ少ないものの栃木の脅威になっていた。

 

 押し込まれてからの挽回に苦しんでいた栃木。前半28分のようにロングカウンターから明本のロングパスに森がヘディングで合わせるシーンもあったが、前線が孤立していることでボールを収められずに攻撃が単発になる場面が多かった。

 それでも前からプレスをかけ続けることで完全に主導権を明け渡すことはなく、自陣では体を投げ出してシュートブロックするなど集中した守備を維持。ボール支配を強める京都に粘り強く対応し、試合は0-0で折り返しとなった。

 

 

後半

■きっかけはハイプレス

 後半も栃木がハイプレスを仕掛ける展開でスタート。最前線の明本はバイス、そしてGK若原へ寄せた勢いのまま左右CBにまで寄せるシーンもあり、前半同様立ち上がりから栃木が敵陣でプレータイムを増やしていく。左SB溝渕が上がってきてのコンビネーションやプレスを受けた安藤のパスミスなど左サイドからチャンスを演出することが多かった。

 余談だが、ここ最近の試合では前半序盤は右サイド、後半序盤は左サイドで攻守に良いシーンを出せることが多い気がする。監督、スタッフの控えるベンチサイドの影響が大きいのだろうか。

 

 後半の京都が狙いどころにしていたのはプレスをかけてきた栃木のSB裏のスペース。もちろん前半も狙っていたとは思うが、このエリアで収める回数は後半の方が断然多かった。シャドーまたは流れてきたウタカがサイドの奥に起点を作ると、上がってきた味方とともに細かいパスワークから栃木のブロック崩しにかかる。クロスからではなくペナルティエリアの幅で崩したい京都と人海戦術でゴール前を固める栃木の構図は意地と意地のぶつかり合いのようなものを感じた。

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 京都が押し込む時間帯で先制点をあげたのはホームの栃木だった。相手スローインにプレスをかけて敵陣でボールを回収すると、一度は攻撃が引っかかり後方の溝渕へ。右利きの溝渕は内側にボールを運んでからゴール前に鋭い縦パスを供給。1分前に投入されたばかりの榊がワンタッチで明本に預けると、明本は利き足とは逆の右足でゴールネットを揺らすことに成功した。

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 京都のSB裏狙いに最も肝を冷やしたのが後半26分のシーン。本多のロングパスに対して黒崎は完全に裏を取られ、カバー役の柳はボールを後逸。抜け出した黒木のシュートはGK川田が間一髪で防いだものの、再三作られた形からあわや失点という場面だった。今思える、ピンチを救った川田にとっては試合終盤にかけて乗っていくトリガーになったシーンといえるかもしれない。

 

 両チームとも選手を大幅に入れ替えてからは、ビハインドの京都がひたすら押し込む展開に。中盤の構成を2ボランチから1アンカー&2IHにしたことでピッチ中央を完全に支配。アンカーの庄司を消すことはできても、無闇にポジションを離れられない栃木のボランチは京都のIHに対応し切れなかった。

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 試合終盤、京都は野田を投入し、バイスを攻撃参加させることで何がなんでも得点を奪う気概を見せる。丁寧なビルドアップや裏狙いの攻撃などいくつかのパターンで攻撃を行ってきたが、結局のところパワープレーが最も迫力があった。GK川田が決定的なシュートを全てストップすると、試合はこのまま1-0で終了。栃木は6試合負けなし&4試合連続クリーンシートを達成。京都は3試合ぶりの黒星となった。

 

 

最後に

 決定機の回数を考えれば1得点は少ないかもしれないが、喉から手が出る思いで掴んだ得点を勝ち点3に繋げられたという意味では非常に価値のある勝利だった。京都の重量感ある猛攻にも耐え、取り組んでいる中央突破から一瞬の隙を突くこともできた。難敵京都から得た勝ち点3は終盤戦に向けて大きな自信に繋がるはずだ。

 

 中2日で迎える次節はアウェイで徳島と対戦。なんでホームの徳島は中3日なんだ!ってのは堪えつつ、万全の体制で首位に挑戦できる期待感は非常に大きい。悔しい負け方を喫した前回対戦から守備の堅さもプレスの鋭さも磨いてきた栃木にとって、絶好のタイミングで迎えるリベンジマッチと言えるだろう。

 次に勝つのは兄貴のチームだ。

 

 

試合結果

栃木SC 1-0 京都サンガF.C.

得点 66分 明本考浩

主審 鶴岡将樹

観客 2,548人

会場 栃木県グリーンスタジアム

 

 

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