スターティングメンバー
栃木SC [4-4-2] 10位
前節愛媛戦はスコアレスドローとなったものの、負けなしを5試合に伸ばした栃木。中2日で迎える今節はスタメンを7人変更。アカデミー出身の黒崎はプロデビュー、韓勇太は7試合ぶりのメンバー入りとなった。
FC琉球 [4-2-3-1] 18位
苦しい台所事情ながらここ4試合で3勝と調子が上向いている琉球。最前線に入る阿部は4試合連続でゴールを決めており、結果でチームを牽引している。スタメンを3人入れ替えた今節はホームでの初勝利を目指す。
カウンターのための守備
真夏の5連戦の4試合目、中2日、アウェイ琉球と厳しい状況での一戦。それを考慮したかのように、栃木はいつもと比べてプレッシングを控え気味にしつつ、ボールを支配する琉球に対してブロック守備で応戦しようというプランだったように見えた。
琉球のビルドアップはボランチの上里が下りて3バックを形成したところからスタートする。両SBが幅を取り、SHは内側へスライド。栃木の2トップ脇からボールを配給し、ライン間に顔を出す前線の選手、もしくはSBから前進しようという狙いだった。元々攻撃的なプレーヤーの右SBの田中は初めから高い位置を取ることが多く、タッチライン際を仕掛けるのが特徴の選手。一方左SBの沼田はバランスを取るように低い位置からビルドアップに関与し、SHとの連携から上がっていく場面がよく見られた。
立ち上がりこそ琉球の最終ラインに対して栃木はSHを上げて同数プレスをかけることもあったが、基本的にはステイの方針。狙い目になりそうな横パスやバックパスを除いて、2トップはボランチのケアを優先しており、積極的にCBに強くプレッシャーをかけるシーンは少なかった。その分栃木はSHがプレスのスイッチを入れることが多く、琉球のCB→SBのパスに対して全体がボールサイドにスライドすることで、前進させない守備を連動して行うことができていた。
最終ラインでのボール保持を許容しつつ、連動した横スライドで前進を許さない栃木。前半12分には、縦パスを引っ掛けた西谷優希がボールを回収すると、有馬がドリブル突破。CBを引き付けながら持ち運びラストパスを送ると、榊は利き足とは逆の右足でゴールネットを揺らした。
直後の前半15分にも似た形から榊がエリア内に持ち込んでシュートを放っているが、ともに共通しているのが攻撃参加した琉球のSB裏を突いているという点。前述したように、琉球は攻撃時にSBが高い位置に進出するため背後のスペースは空く傾向がある。栃木は高い位置から追いかけるのではなく守備ブロックをベースにすることで、カウンターに持ち込むためのスペースを作り、そのうちの一つを得点に繋げることができた。
ライン間を使い始める琉球
最終ラインに上里が下りたり、左SBが留まって右SBをオーバーラップさせたりと、3バックをベースにビルドアップする琉球。栃木は[4-4-2]のブロックを維持したまま、無闇にプレスをかけることはなく、集中したスライドとコンパクトな陣形で琉球の攻撃を凌いでいく。
ライン間で受けようとするトップ下の富所や内側に入る両SHに対しても厳しく寄せることで前を向かせなかったが、1トップの阿部がCBから離れて受ける動きに対しては苦戦しているように見えた。
前半25分には、上里から阿部にくさびのパスが入ると、最後は沼田に預けてクロス。前半39分にはサイドを変えながら中央の阿部を経由して逆サイドの田中へパス。リターンパスを受けた阿部は、後方に落とすことで鳥養にシュートを打たせるシーンがあった。直後のシーンではCB福井からの縦パスをギャップで受けた河合がカットインしてシュートを放っており、阿部のプレーをきっかけに後半へのヒントを得た印象の琉球であった。
前半は1-0。アウェイの栃木がリードして折り返し。
選手交代でピースを埋めていく
ボールを支配してブロックの隙間を窺う琉球に対して、集中したスライドと守備ブロックで耐える栃木という構図は後半も変わらず。そのなかで選手交代から徐々に試合の主導権を握っていったのはホームチームだった。
キーとなったのは上里に代わってボランチに投入された小泉。最終ラインに下りてビルドアップに安定感をもたらす役割は上里と同様だったが、パスを出してからの縦へのランニングやボールサイドに関わる回数は小泉の方が多かった。ピッチを自由に動きながらビルドアップの潤滑油になることで、前半に比べてテンポよくパスが回るようになると、左右に揺さぶってから縦にパスを刺す回数も増加。栃木はスライドが間に合わずジワジワと自陣に撤退することが増えていった。
ライン間やボランチ脇に顔を出す前線の選手も琉球のビルドアップの安定化に貢献していた。とりわけ、SHの河合や途中出場の風間宏矢はボランチと同じ高さまで下りてボールを受けることが多く、そこからSBに開いたり、中央突破の起点になったりと、栃木にとって捕まえにくい動きを繰り返した。
早い時間帯での選手交代や、選手の配置替えから打開策を模索するものの防戦一方の栃木。ハーフタイムに投入した明本を普段とは逆の左SHで起用し、途中にFWでプレーさせる時間もありながら、最後は右SHに移動させた采配には、押し込まれる展開に対する監督の苦悩を見て取れた。
飲水タイム後に[5-4-1]に変更した栃木は、横へのスライドと中央の守備を強化し、残り20分を逃げ切ろうとしたが、一瞬の隙を突かれて失点。それまでの展開とは脈絡のない形で生まれた失点だった。一方、韓勇太の得点により再びリードした後に喫した2失点目は、ひたすら押し込まれた攻撃パターンがついに結実したシーンと言えるだろう。いずれにしても、この試合の琉球におけるラストピースは上原慎也だった。
試合はこのまま2-2で終了。好調なチームどうしの対戦は勝ち点1ずつを分け合う結果になった。
最後に
結果だけ見れば2度のリードを追い付かれてのドロー。勝ちきれなかった印象が強いかもしれないが、それでも厳しいコンディションのなかで勝ち点を持ち帰ることができた点はポジティブな要素である。プレッシングとブロック守備のパワーバランスは絶妙だったし、カウンターをシュートに結びつけるシーンも多かった。これまで出場機会の少なかった選手たちがそれを表現できた意味は非常に大きいと思う。今後も経験していく連戦に対して総力戦で挑むべく、勝ち点を取りながら着実にチーム力を強化しているところである。
次節はアビスパ福岡とのホームゲーム。昨季は2試合ともに勝ち点を得ることができなかった相手である。堅い展開になることが予想されるが、良い形で最初の5連戦を締めくくれるよう期待したい。
試合結果
得点 11’榊翔太(栃木)、75’上原慎也(琉球)、81’韓勇太(栃木)、87’上原慎也(琉球)
主審 西村雄一
観客 0人(リモートマッチ)
会場 タピック県総ひやごんスタジアム