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【体現した全員戦力】J2 第8節 栃木SC vs ザスパクサツ群馬(〇1-0)

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スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 19位

 今季二度目の連敗で順位を19位まで下げた栃木。中2日での連戦ということでスタメンを7人変更。井出はプロデビュー、西谷優希は今季初先発となった。大島、瀬川、佐藤にとっては古巣との対戦。

 

ザスパクサツ群馬 [4-4-2] 22位

 J2復帰初年度は厳しい船出。ここまで1勝6敗と勝ち点を詰むことができずに最下位に沈んでいる。大敗した金沢戦からスタメンを4人変更。白石、小島、松原は今季初先発となった。

 

 

栃木のプレッシング

 キックオフからボールを繋いでいこうとする群馬に対して、栃木は高い位置から枚数を合わせてプレッシングを敢行。中盤でのセカンドボール争いは激しく、5年ぶりの対戦はダービーらしいインテンシティの高い試合展開となった。まずは栃木のプレッシングについて見ていく。

 

 栃木のプレッシングは2トップが群馬のボランチをケアしたところからスタートするのが特徴。プレスのスイッチを入れる役割は2トップが担当するときもあればSHが担当するときもあった。いずれも共通するのが群馬のボランチへのコースを切ること。パスワークの中心になるボランチを消すことでボールを中央に入れさせず、サイドで刈り取ることを狙いとしていた。

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 もちろん、無理に中央に通したボールに対してはFWのプレスバック&ボランチの挟み込みで対応。

 群馬のCBはSBからリターンパスを受けると栃木のFWのプレッシングをまともに受けてしまい、隣のCBに預けようとしてもすでに栃木のSHのプレッシャーを受けている状態。上手く繋げたとしても少ないタッチ数でのボールさばきを強いられるため、細かいミスや準備できていない受け手が栃木のプレッシングに晒される場面がよく見られた。

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ゴールシーン

 前半22分、相手のクリアによる競り合いにCB井出が勝利し、ボールは瀬川のもとへ。瀬川は近くの優希に預けると、優希は反転して相手をかわし狭いエリアに縦パスを供給。複数の選手が細かいパスワークでボールを繋いでいくと、前向きでボールを受けた大﨑がダイレクトで右足シュート。ボールはゴールポストを叩きネットを揺らした。

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 特筆すべきは、佐藤を除くボランチより前の選手全員がパスワークに絡んでいるということ。井出から瀬川に渡ったボールを1本目のパスとしたとき、大﨑のシュートに至るまでのパスは合計8本(井出→瀬川→優希→大﨑→優希→明本→エスクデロ→有馬→大﨑シュート)。逆SHの明本もボールサイドに寄り、チームが狙いとする「中央を攻める」をまさに体現したゴールだった。栃木はロングボールだけではない!ということを印象づけるには十分なゴールになったと言えるだろう。

 

 中央を意識した攻撃は前半40分のシーンにも見られた。群馬のビルドアップを引っ掛けてからのカウンターの場面だが、このときゴール前には2トップに加えて両SHも集合。さながら[4-2-2-2]の形から、サイドを独占する右SB大島のクロスを明本が頭で合わせ、枠ギリギリのシュートを放った。

 

 中央を優先的に使い、締められたらサイドを経由して再び中央へ。ベーシックだが理にかなった戦術である。ゴールシーンのコンビネーションも含め、ゴールから逆算した攻撃パターンが少しずつ形になっている点は非常にポジティブである。

 

 

群馬の繋ぎ

 栃木のプレッシングに手を焼いていた群馬だったが、ようやく準備していたビルドアップを行えるようになったのが、失点以降の前半30分あたりから。ボランチの1枚がCBの間に下りて、栃木の前線に対して数的優位を作ると、内側に絞ったSHや大前がスペースで受け手になることで、栃木の守備の隙間から攻撃を組み立てていく。

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 前半38分にはこのビルドアップの形から中盤の守備を掻い潜り、フリーの左SB小島がクロスを上げるシーンを作り出している。また、後半にも栃木の[4-2-4]プレッシングにより空くボランチ脇のスペースに大前やSHが顔を出して起点を作る場面があった。

 ただ、スペースで起点を作った後にどうゴール前に迫るかという部分でアイデアに乏しかった印象のある群馬。中盤で引っ掛けられてカウンターに持ち込まれたり、簡単にクロスを入れて弾き返されたりと、ビルドアップで得た優位性を生かすことができなかった。

 最終ラインからのロングボールを林がポストプレーで落とし、大前との連携やサイドに振ってからクロスに合わせる形の方が、ゴールに迫る期待値が高かったという点は切なかった。群馬の前線のキャラクター的にも、栃木としてはシンプルに攻撃される方が怖かったかもしれない。

 

 

退場と割り切り

 ボールを繋ぐ群馬に対してプレッシングをかける栃木という構図は後半も変わらず。互いにチャンスが少なく均衡状態のなか試合が動いたのは後半22分。セカンドボール争いのなかでハードタックルを仕掛けたエスクデロの一発退場である。

 一人少なくなった栃木はプレッシングを諦めて[4-4-1]にセットすると、群馬は矢野の脇のスペースからボールを前線へ供給。次々とエリア内にクロスを入れることでゴールに迫っていく。

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 前線が矢野一人になってしまってはボールを収めるのも難しい栃木。カウンターの手立てがなくなり、ひたすらクロスを弾き続ける厳しい終盤となったが耐える展開はお手のもの。DF4人とMF4人で堅固なブロックを構えることで中央への侵入をシャットアウト。ポストも味方に付け、最後まで群馬の再三のクロス攻撃を耐え切った。

 

 1-0。栃木はダービー初戦を勝利し連敗をストップ。対する群馬は無得点での3連敗となった。

 

 

最後に

 大幅にメンバーを入れ替えても、戦い方が一貫していた栃木。プレッシングで相手をコントロールし、中央を意識した攻撃からゴールを決めるなど、ここまでの試合で最もチームとしての狙いを表現できていたかもしれない。一人少なくなってからの試合展開は神経がすり減る思いだったが、ここを耐え切れる守備力には多いに自信を持てる。CB井出は今後の活躍を予感させるようなプロデビュー戦だった。

 

 次節は中3日での新潟戦。圧倒的な攻撃力に対してどこまで我慢することができるか。そしてカウンターを刺すことができるか。上位進出に向けて総合力が試される一戦となるだろう。

 

 

試合結果

栃木SC 1-0 ザスパクサツ群馬

得点 24’大﨑(栃木)

主審 清水 勇人

観客 593人

会場 正田醤油スタジアム群馬

 

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