スターティングメンバー
栃木SC [4-4-2] 15位
前節金沢戦は0-1の敗戦。クロス対応の一瞬の隙を突かれ、3試合ぶりの黒星を喫した。スタメンの変更は4人。溝渕とベンチ入りの大﨑は負傷から復帰。有馬は開幕戦以来のメンバー入りとなった。
FC町田ゼルビア [4-4-2] 17位
前節は水戸に4失点の大敗。堅守が売りの町田にとってここ2試合で計7失点は「らしくない」が、守備陣の変更はなし。アタッカーの晴山に変えてマソビッチを起用し、栃木戦初勝利を目指す。
町田のロングボール
試合前から予想されていたとおり、敵陣にロングボールを放り込み、セカンドボール回収から再び前進していくことで、なるべく高い位置でプレーしようとする両チーム。
似たもの同士の対戦は、前へ前へという縦志向が非常に強く、終始ボールの落ち着かない試合展開となった。
町田のロングボールで徹底されていたのが、栃木のCBにとって競りにくいボールを供給すること。前へ弾き返すパワーのあるCBを避けることで栃木陣内でのプレーを増やしたいという狙いだろうか。
ロングボールの供給先は、栃木のCBとSBの間やSBの後ろのスペース。平戸が受け手になることが多く、中央から外へのランニングでボールを引き出したり、栃木の前プレで間延びした中盤に留まって受けるなど、スペースを意識した立ち位置をとっていた。
前半8分には、平戸が斜めのランニングから右SB小田のロングボールを引き出し、落としを背後の吉尾へ。ボランチの禹相皓は瀬川の空けたスペースを埋めようと低めのポジションをとっており、それにより中盤中央にぽっかり空いたスペースを吉尾がカットインして侵入するシーンがあった。
栃木の前からのプレッシングをダイレクトパスでかわしながら縦に入れるパスもサイド奥を意識していたように思う。サイドの高い位置で起点を作ることができれば得意のセットプレーを得ることに繋がる。前半43分には、小田のロングパスに対して安藤が栃木のCB間から右サイドに流れて起点を作ってCKを獲得。このCKから決定的な2点目が生まれた。
失点シーン
この試合の2失点は全く同じ形からのものであり、リプレイを見ているようだった。失点シーンの分析はsanconさんのマッチレビューをご覧ください!
⚽#0726栃木 戦 プレイバック⚽
— FC町田ゼルビア 公式 #0729松本 戦 (@FcMachidaZelvia) 2020年7月27日
ショートコーナーを受けた #吉尾海夏 選手のクロスを #マソビッチ 選手が身体で押し込む‼️#J初ゴール を決めたマソビッチ選手に目が離せません😲#0729松本 戦でもゴールを期待せずにはいられない❗️#FC町田ゼルビア #zelvia#Jリーグ #サッカー pic.twitter.com/IPMZsSq1mE
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— FC町田ゼルビア 公式 #0729松本 戦 (@FcMachidaZelvia) 2020年7月27日
この日の1点目と同じようなショートコーナーから #小田逸稀 選手の打点の髙い技ありヘディングシュート❗️
次節の #松本山雅FC 戦でも攻守に渡る活躍お願いします👍#FC町田ゼルビア #zelvia#Jリーグ #サッカー #0729松本 pic.twitter.com/8M8BG1EDVr
栃木のCK時の守備はゾーンベースで、自分の担当ゾーンに相手がいる間はマンツーマンで対応しているように見えた。ゾーンの中で相手に付きつつも、ゾーンを越える動きには着いていかずに隣のゾーンの味方に任せるイメージ。
前半23分の失点シーンは、高杉が自身のゾーンに入ってきたマソビッチにマンツーマンで対応するも、相手の体の強さに負けて失点したもの。前半45分の失点シーンは、ゾーンの外でマークのいない小田が巧みに合わせて枠内に押し込んだものだった。
相手がショートコーナーをやってきたときのキッカーのマーク、それともう少しラインを上げないといけないと感じています。相手がショートコーナーをやってきたときにラインが深く、1点目は相手に当たって入ってしまっているし、2点目もラインを上げていればもう少し対応が違ったのかなと思います。(試合後の田坂監督のコメント)
失点シーンを振り返れば確かに最終ラインはかなり深くなっていた。そこを押し上げられれば事故的な1失点目も、ゾーンの外で合わせた小田の2失点目にも対応できたかもしれないが、いずれのシーンも吉尾のクロスはハイクオリティだった。ピンポイントクロスに合わせるヘディングに対してGK塩田はノーチャンスである。
ショートCKで栃木ディフェンスの視野を変えるだけでなく、右利きの平戸から左利きでゴールに向かうインスイングのクロスを入れられる吉尾がクロッサーにスイッチにしたのも、栃木を混乱させるのに貢献しただろう。
栃木としては自分たちの守備を研究された上で、町田の準備していた策に嵌った格好となってしまった。
少しずつトライしていること
ロングボールが飛び交う試合展開のなか、栃木にとって明るい兆しが見られたのが地上戦での繋ぎの部分。
CBがボールを持っているときにボランチの禹相皓や佐藤が最終ラインに下りることで、後ろからのビルドアップをサポート。前半30分以降はその動きが顕著であり、数的優位になった最終ラインから攻撃のスイッチとなるパスを入れる役割は高杉が多かった。
前半31分には中央に下りた禹相皓が右側の高杉に預けると、そのまま持ち上がってライン間の榊にくさびのパス。榊の落としを受けた佐藤は左サイドに張る瀬川にロブパスを供給。瀬川は縦に仕掛けることで深い位置でスローインを獲得した。
3人を同時に交代した後半23分以降は、エスクデロとボランチにポジションを移した明本がパスワークの中心となりビルドアップを敢行。明本は最終ラインへのサポートのタイミングが良く、ボールサイドにエスクデロが絡むときに薄くなりがちなゴール前にはSHがポジションをとるなど、ボール保持時の一連の流れはこれまでの試合のなかでも好印象だった。
鋭いプレッシングと堅いブロックを使い分けながらの守備は少ない失点数という結果に表れてきている。今度は攻撃面。ロングボール戦術に加えて地上戦を上手く使い分ける柔軟性を身に付けることが次なる課題だろうか。プレッシングによる高い運動量と集中力を保つためにも、自分たちの休む時間としてのポゼッションを身に付けたいところである。
最後に
競り合いの勝率やセカンドボールの回収率など、似たスタイルのチーム同士の対戦ということもあって内容はほとんど互角だったように思うが、セットプレーの二発が重かった。こういう試合で勝負を分けるのは大概セットプレーである。ここまで栃木はセットプレーの回数で上回る試合がほとんどだが今だに得点がゼロという点を考えれば、町田の質の高いセットプレーには見習う点が多くあるだろう。
中2日で迎える次節はアウェイでの群馬戦。北関東ダービー初戦で連敗を止め、勢いをつけることができるような試合になることを期待したい。
試合結果
得点 23’マソビッチ(町田)、45’小田 逸稀(町田)
主審 窪田 陽輔
観客 721人
会場 町田GIONスタジアム
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