栃木SCのことをより考えるブログ

主に栃木SCの試合分析(レビュー)をします。

【充実の内容で101分の激闘を制する】J2 第11節 栃木SC vs いわきFC

スターティングメンバー

栃木SC [3-4-2-1] 19位

 前節は甲府に敗れて3試合ぶりに黒星を喫した栃木。押し込む時間帯もそれなりに作れた試合だったが、終盤に与えたセットプレーから一瞬の隙を突かれた。3連戦が終了し、一週間の準備期間を経て今節を迎える。

 スタメンの変更は2人。右WBは黒﨑に代わって前々節負傷交代した森が復帰。前線は安田が外れ、矢野が5試合ぶりに先発となった。ベンチには面矢が相模原から復帰後初めてメンバー入りし、宮崎も6試合ぶりに名を連ねた。

 

いわきFC [4-4-2] 16位

 前節は好調群馬を破り、5試合ぶりに勝利をあげたいわき。フィジカルを前面に押し出したスタイルはJ2でも健在で、とりわけ谷村と有田の2トップは互いに得点とアシストでチームを牽引している印象だ。

 スタメンの変更は1人。嵯峨が負傷から3試合ぶりに復帰し、河村に代わって左SBに入った。元栃木の有馬は負傷により長期離脱中。

 

 

 

縦と横の両立

 試合は開始早々の得点で幕が開けた。キックオフから最初のロングボールを競った根本がファールを受けると、さっそく栃木にセットプレーのチャンス。いわきの横一列に並ぶゾーンディフェンスに対して、矢野の背後から段差をつけて飛び込んだ福島がドンピシャで合わせた。得点後のベンチの様子を見ると狙い通りの形からの得点だったのだろう。開幕戦以来となるセットプレーからの得点で栃木が先制に成功した。

 

 いわきに一度もボールに触れさせることなくリードを奪った栃木は、この勢いのまま追加点を取りにいく姿勢を見せる。

 この日良かったのは、リードを奪ったことで安牌なパス回しに終始するのではなく、今季取り組んでいる攻撃の形からシュートを量産できたことだ。縦に早い攻撃に加えて、ピッチ幅を広く使って前進する形に取り組んでいるのは栃木ウォッチャーならご存知のとおり。これがボールサイドに圧縮して守備をするいわきにピタリとハマった。

 繋ぎを意識すると弱まりがちな前へのベクトルも、前線に明確なターゲットを置くことで解消。前線の根本・矢野の高さを生かしてまずは縦にボールをつけることが多かった。甲府戦のハーフタイムに施した修正策のように、人選で前への意識付けを高めた格好である。

 その後はボールをサイドに展開し、狙いとするいわきの選手がいないスペースから前進を図っていく。少しでも判断が遅れればいわきの圧縮守備にあう状況下でそれを越えるスムーズさを見せられたのは準備の成果だろう。苦しい体勢でスローインを受けた根本が半ば決め打ちで逆サイドの森へ展開したシーンはこの試合を象徴するものだった。

 

 そうして時間とスペースを得た逆サイドのWBは、追随してきた左右CBとともにサイドからいわき陣地に迫っていく。ここ2試合はチーム状況から中央CBを務めていた福島だが、本来の持ち味である積極的な攻撃参加を発揮できていた。

 この日右サイドでタッグを組んだのは森だったが、福島との連携や左足からクロスやシュートを狙えるのを見ると、現状黒﨑と組むよりもサイド攻撃にバリエーションをもたらしそうな雰囲気がある。7分には森がフワリとしたクロスを入れると、矢野と競り合った相手GKがファンブルし、これに反応した根本と山田が立て続けにシュート。上記した根本が強引にサイドを変えたシーンでは切り返しから対面の相手を剥がし、シュートに持ち込んだ。怪我の影響はほとんどなさそうだ。

 

 いわきは前評判のとおり強度を押し出してくる非常にアグレッシブなスタイルだった。マイボールにすればすぐさま最前線を見やり、背後へ走り出す2トップへロングボールを供給していく。狭いエリアでセカンドボールを回収し、2次攻撃、3次攻撃と攻め立て、ペナルティエリア内に次々とボールを送り込む攻撃は迫力があった。相馬監督時代の町田で右腕を務めた村主監督が率いているだけあり、徹底したワンサイドアタックだった。

 ただ、実際に栃木ゴールを脅かしたシーンはわずかだった。アディショナルタイムに突入した直後に混戦から谷村のシュートをGK川田がセーブしたシーンくらいだろうか。この日初めて最終ラインの真ん中に入った平松を中心に落ち着いて跳ね返し、ボランチ勢は反応早くセカンドボールを掌握することができていた。サイド対応で粘り勝ちした大森が気合いを表していたのも印象的だった。

 そしてその後は前線のターゲットがしっかりボールを収めて、落としたボールをサイドへ展開する。いわきとの球際勝負に一歩も引かずに受けて立ち、攻撃に転じればボールを大事にして着実に敵陣に攻め入る。好循環を体現した前半はほぼワンサイドゲームだったと言えるだろう。

 

 

流れを切らさなかった試合運び

 後半も縦に速い攻撃と横幅を使った攻撃をバランス良く繰り出していく栃木。西谷のルーズボール回収から右サイドに展開し、福島や森のクロスに山田が飛び込んでいくなど、前半の勢いを上手く継続できた立ち上がりだった。

 対するいわきもハーフタイムに投入した永井を中心に左サイドから盛り返しを図る。自らドリブル突破を図っていくほか、自身にマークが集中したことでフリーになった選手が際どいクロスを入れていくなど、これまで縦縦だった攻撃にアクセントが加わったことで、前半と比べてより危険なエリアに入り込むことができていた。

 それでも栃木は、耐えるべきところは耐え、ボールを奪えばサイドを上手く活用することで、防戦一方に陥ることはなかったと言えるだろう。追い込まれたかに見えた大森が右サイドの森へダイナミックに展開したり、宮崎がポスト受けから強引に前進するなど、攻撃の時間をしっかり確保できたのが大きかった。

 また、いわきに流れを持っていかれなかった要因として、有田の負傷により坂本が入った影響も大きかったように思う。高さのある坂本を生かそうといわきがロングボールの比重を高めたため、弾き返してセカンドボールを回収するというサイクルに回帰することができた。永井の個を生かした攻撃も、後半立ち上がりと比べれば徐々に見られなくなっていった。

 

 課題としている終盤の試合運びも、被弾を恐れて後ろに重くなるのではなく、最後まで前への姿勢を示すことができていた。

 80分のシーンは、まさにその代表的なプレーである。猛攻を仕掛けるいわきに対して宮崎が最前線から二度追いすると、永井へ差し込んだパスを森が出足良く回収。一度下げて福島がロングボールを供給すると、セカンドボールを拾った西谷が左サイドの福森へ大きく展開した。その後は外側を駆け上がる大森に預け、最後はハーフスペースに抜け出した根本がボールを引き出してコーナーキックを獲得した。力の出しどころを共有し、理想的な展開から前で一息つくセットプレーを得られたシーンだった。

 後半もアディショナルタイムは長かったが、いわきのパワープレーとロングスローに対して全員守備で対応。最も体力的にキツい時間帯に西谷が三度追い、四度追いで猛然と迫っていく姿は勝利への執念を感じさせるものだった。

 試合は虎の子の1点を守りきった栃木が1-0で勝利。今季2度目のクリーンシートでホーム連勝を飾った。

 

 

最後に

 互いに前半のうちに負傷者を出し、ピッチには担架隊が何度も入るなど、とにかく強度が高く激しい試合だった。ボールが止まる時間が長かったため、前後半のアディショナルタイム合計が11分ではもの足りない気がしなくもないが、ウノゼロというスコア以上に見応えのあるナイスゲームだった。

 栃木としては自分たちの狙いとする攻撃の形が結果として現れてきている現状に自信を高めているところだろう。確かに決定力はもう一つ求めたいところだが、今のように再現性ある攻撃を続けていければ全体のケミストリーは上がっていくはずだ。ホーム連勝を達成した今、次は初連勝をかけてアウェイ清水戦に真っ向勝負といきたい。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-0 いわきFC

得点 2分 福島隼斗(栃木)

主審 野堀桂佑

観客 5169人

会場 カンセキスタジアムとちぎ