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【悔しいがこれも醍醐味】J2 第35節 栃木SC vs ジェフユナイテッド千葉

スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 12位

 前節は首位町田にオウンゴールで挙げた1点を守り切った栃木。これで5試合負けなしとなり、待望の今季初の連勝を達成した。目線をさらに上に向けるべく一昨季ぶりの3連勝を目指す試合となる。

 スタメン、サブともに変更なく、これで3試合連続で同じ18人を起用。GK藤田はこの試合の後から代表活動のため離脱となる。

 

ジェフユナイテッド千葉 [4-2-3-1] 8位

 前節は秋田に競り勝ち、対秋田初勝利を飾った千葉。連勝を4に伸ばし、プレーオフ圏内との勝ち点差を1ポイントにするなど、後半戦の主役として一気に上位争いに食い込んできた。

 この試合ではここまで得点でチームを牽引してきた小森飛絢がメンバー外。代わって最前線には呉屋が10試合ぶりに先発入り。夏加入後8戦4発と新たな得点源になっているドゥドゥは栃木にとって注意したい選手となる。

 

 

攻勢から一転して苦しむ前半に

 連勝で迎えた好調同士の一戦は、ホームチームがアグレッシブにゴールを強襲する展開で幕が開けた。

 4分、西谷のスルーパスにイスマイラがオフサイドラインギリギリで抜け出すと、そのままゴール前に持ち込んでシュート。13分には大森のクロスに合わせた宮崎のヘディングシュートがポストを直撃した。相手のブロックの跳ね返りに対しては石田も積極的にミドルを狙うなど、立ち上がりから次々とシュートを放っていった。千葉も序盤は長いボールから直線的にゴールに向かっていくが、物理的なパワーでは栃木に一日の長があった。

 立ち上がりの攻防が終わると、試合は千葉がボールを握る展開に移行する。ここ最近は先制点を取れていることも影響してか、その後は守備に回る時間が長く、押し返すのに苦戦している栃木。主力選手の怪我や退団によってこの3トップになって以降、守備から攻撃への繋がりが課題となっているが、この日はそれを払拭するように積極的な守備を見せていた。

 千葉の保持時の配置は[4-3-3]。中盤は田口がアンカーに入り、ボランチの見木とトップ下の風間がIHとして栃木のボランチ脇を主戦場とする。それに対して栃木はイスマイラがアンカーをケアし、シャドーがCBにプレスをかけるのを合図に全体が連動するような仕組みになっていた。

 栃木は[5-2-3]の配置のうち、特に前線は3トップの形を維持しようという意識が高かった。宮崎と大島は背後をケアするイスマイラより一歩前に立つことも多く、横パスやバックパスをスイッチに相手CBに圧力をかけていく。この辺りはイスマイラがトップに起用されてから調整してきたバランスで、シャドーに前向きのベクトルを持たせることで[5-4-1]にならないような狙いだったように思う。

 

 しかし、そんな栃木の出方を見るや、千葉は長短織り交ぜたパスから最終的にサイドの背後を突くような攻撃を繰り出していく。サイドを押し上げる栃木に対してそれをひっくり返すことで素早く前進する狙いだった。

 試合を通じてよく見られたのが、栃木のシャドーの脇に立つSBを使いながら前進する形。中央に3トップを組む栃木に対して千葉はSBがフリーになりやすい。WBが長い距離をスライドしてくる前にその背後を使うという狙いだった。

 背後に届ける方法は様々。SBがシンプルに縦にボールを入れることもあれば、下りてきた呉屋が受け手となってフリックやその落としからWGやIHに前を向かせる形もあり。迎撃意識の高い栃木は平松が最終ラインから釣り出され、ボールサイドの左右CBもサイドのカバーに回るため、瞬間的にWGやIHには収められやすい状況ができていた。

 この繋ぎから直接崩されることはなかったが、それでも左サイドのドゥドゥは栃木にとって脅威になり続けた。瞬発力と身体の強さを生かして何度も仕掛け、栃木はファールでしか止められないような状況だった。改めてなぜJ3にいたのか分からない存在感だった。

 

 栃木はこれを受けて30分あたりからシャドーがプレスを抑えるように。プレスのスタート位置を下げて[5-4-1]でブロックを構えると、序盤ほど自陣を割られる場面は減少。有効な攻め手だったサイド攻撃にフタをされた千葉も後ろでのパス交換が多くなり、試合は膠着気味になっていった。

 こうした全体を押し上げられない展開で栃木にとって生命線となるのがイスマイラのポストプレーなのだが、この日はめっぽう苦しんだ。千葉はCB強く、ボランチとのダブルチームで対応してくるためボール収めることができない。ならばと地上戦にシフトしても、今度は千葉の前からのプレスを受けてしまい、安定してボールを前に届けることができなかった。

 立ち上がりのシュート攻勢からは一転、その後は千葉の保持に背後を突かれ、守備に軸足を置くことで展開を制御する。栃木にとっては難しい前半を過ごすこととなったが、なんとかスコアレスでハーフタイムを迎えた。

 

 

試合を分けたのは徹底の差

 後半はプレスを再開した栃木に対して千葉がサイドの背後を突く攻撃から開始する。ここでも栃木が手を焼いたのはドゥドゥ。51分には背後に抜け出したドゥドゥが石田との1vs1からペナルティエリア内で倒れるもノーファール。リプレイ映像を見る限り、VARがあれば間違いなく笛が吹かれるようなシーンだったが、間一髪でピンチを乗り切った。

 後半も栃木はロングボール中心の攻撃。前半は千葉のダブルチームによる対応に苦しんだが、後半は前線の立ち位置を整理したことで前で起点を作れるように。イスマイラが前半よりも手前で競りつつ、同時にシャドーが2人ともゴール方向に抜け出す動きをすることで、相手DFがイスマイラに競りに行きにくいような状況を作り出すことができていた。

 

 ドゥドゥを前線に置いてからの千葉は、ダイレクトに長いボールを2トップに入れたり、早めにサイドの背後にWGを走らせる攻撃にシフト。中盤での繋ぎから栃木を引き出してサイドの背後を使うというよりは、より縦に速くなった印象だった。

 千葉の変化とともに栃木もボランチ脇にポジションを取っていたIHがいなくなったことで中盤の選手が前向きに守備ができるように。西谷が見木に入れ替わられてしまうシーンはあったものの、高萩、佐藤祥が入ってからはボランチの前向きのベクトルが強くなっていたように見えた。

 一方でこうしたピッチ内のバランスの変化によって徐々に生じてきたのが中盤のスペース。両チームとも中盤を省略して縦に速く攻めるため全体が間延びするようになり、ボールが落ち着かず、行ったり来たりの展開になっていく。

 そうした展開をモノにしたのはホームの栃木だった。千葉の前からのプレスに後ろが連動していないのを見るや、GK藤田は中盤の佐藤祥へ長いボールを供給。佐藤祥はさらに前線の矢野へロブパス送ると、これが相手守備陣の連携ミスを誘い、CB鈴木大輔の決定機阻止による一発退場&PK獲得へと繋がった。後半も深い時間に入っていく絶好の時間帯であり、決めれば優勢に試合を進められる局面だったが、このビッグチャンスはイスマイラが防がれてしまった。

 

 選手数に差が生まれた状態でより徹底して戦うことができていのは千葉だったように思う。

 千葉は数的不利になってからはCB佐々木を投入して[5-3-1]を形成。最終ラインと中央に人数を割き、前線は高木や福満のハードワークに懸ける。スペースに彼らを走らせることで栃木の嫌なところを突いていく、確実性というよりは事故を狙った攻撃を徹底してきた。

 一方栃木は大島に変えてレアンドロペレイラを投入することで前線のターゲットを追加。この状況で相手にとって嫌なのはペナルティエリア内にアバウトなボールを放り込まれることだったと思うが、サイドでの作りに時間をかけてしまうシーンが散見。ロングスローを除いてようやくクロスを上げたのはペレイラを投入してから6分後の91分のことだった。

 そして、結末は周知のとおり。上記した千葉の徹底した攻撃からCKを与えると、ニアで合わされたヘディングをGK藤田が一度は防いだものの、いち早く反応した見木を抑えることができず。試合はこのまま終了し、栃木は痛恨の敗戦で6試合ぶりに黒星を喫することとなった。

 

 

最後に

 ショッキングな結果ばかりに目が行きがちだが、後半の試合運びはここ最近のなかでもベストな方だったように思う。前半苦しんだ千葉の保持に対して後半はロングボールから逆に苦しめることができたし、守備では引かずに攻撃的な姿勢を貫くことができた。何より後半戦絶好調の千葉に対してあと一歩で黒星を付けられるまでに追い込むことができた。ここ最近の好調さをぶつけることができたナイスゲームだったと思うし、この日はツイていなかったと切り替えるしかないだろう。

 オウンゴールで挙げた虎の子の1点を守り切った前節町田戦のような試合もあれば、この日のように圧倒的有利な状況から最終盤に捲られる試合もある。サッカーの面白さと怖さの両側面を思い知らされるここ2試合になったと言えるだろう。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 0-1 ジェフユナイテッド千葉

得点 90+5分 見木友哉(千葉)

主審 野堀桂佑

観客 5966人

会場 栃木県グリーンスタジアム