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【順当な力負け】J2 第37節 栃木SC vs ブラウブリッツ秋田

スターティングメンバー

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栃木SC [3-4-2-1] 16位

 前節はアウェイで熊本に敗れ、千葉戦に続いて連敗を喫した栃木。その間得点を挙げることができず、町田戦もオウンゴールによる1得点に終わっており、ここにきて得点力不足が深刻な状況である。

 前節からの変更は3人。最終ラインの岡崎は5試合ぶり、西谷と宮崎は2試合ぶりの先発となった。前節に引き続きベンチには植田が入り、小堀と高嶋は久々のメンバー入りとなった。

 

ブラウブリッツ秋田 [4-4-2] 18位

 ここ9試合勝利がなく、18位まで下降した秋田。とはいえどの試合も秋田らしいロースコアなゲームは展開できており、上位相手にも勝ち点を奪えていることはポジティブな要素である。勝ち点3を積むことで安心する位置に浮上したいところだろう。

 前節からの変更は1人。3試合ぶりに齋藤が2トップの一角に入り、代わって丹羽はベンチスタートとなった。右SH畑は古巣対戦となる。

 

 

狙いどおりに先制点を奪う

 互いに堅い守備を持ち味としていることから、試合前には先制点の重要さを強調した時崎監督。その意味では一進一退の展開のなかで、前半早いうちに先制点を挙げられたことは、これ以上ない理想的な幕開けになったと言えるだろう。ここ2試合は先制点のチャンスを逸したことでペースを失い、敗戦に追い込まれたことを考えれば、この日は最初のミッションをスムーズにクリアすることができた。

 得点に至る過程も対秋田を踏まえた準備の成果が窺えるものだった。左サイドのスローインの流れから神戸がクロスを上げると、それが右サイドに流れて今度は石田がクロスを供給。ゴール前ではイスマイラが最終ラインを押し下げたことで秋田の守備陣に隙間が生まれ、そこに留まった大島がワンタッチで合わせることができた。

 秋田の守備の特徴は極端な同サイド圧縮である。得点シーンはクロスが逆サイドに流れる偶発的な状況だったとはいえ、チームとしてその狙いが共有されていたからこそ、逆サイドに流れたボールを素早く完結させることができたと言えるだろう。

 得点シーン以外にも前半は広いサイドを活用してゴールに迫る場面を多く作ることができていた。そのなかで存在感を示していたのはボランチの神戸。秋田のボールサイドへの厳しい寄せに対して矢印を外すようにボールを左右に振り分け、サイドからの攻撃を促していく。秋田の土俵に乗って長いボールで応戦するのではなくマイボールに判断を伴わせることで、特に右サイドから石田を中心としたサイド攻撃を繰り返し作ることができていた。

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 秋田に目を向ければ、ロングボールと球際バトルを徹底したスタイルは秋田らしいお馴染みの戦い方であり、分かっていても止められない強度の高さがあった。栃木の左サイドに対して選手とボールを次々と送り込み、スモールフィールドのなかでフィジカルの強さと予測、判断の速さを最大限に発揮する。秋田はこれを90分間徹底してきた。

 この日の栃木は左CBに普段の大森ではなく岡崎を起用したことからも、そうした秋田の力強い戦い方を踏まえた人選だった。守備力とリーダーシップを兼ね備えた岡崎の起用によって、守備からしっかりコントロールしたい意図が窺えた。

 しかし、試合を通してみれば、秋田の徹底的なパワー攻勢を前に岡崎は苦戦を強いられてしまう。容赦ない空中戦の連続に押し負けたり、ファールが増えるなど対応に手を焼いた。特に栃木がリードを奪ってからは秋田は当然のごとく強度を引き上げ、ワンサイドアタックを軸にそこで得たスローインやFKなどのセットプレーから次々と栃木のゴールを脅かしていった。

 強度全開の秋田に対して栃木は後手を踏む場面が増えていくが、それでも前述のとおりマイボールにしたときのプレー判断が良く、劣勢のなかでも一定のチャンスを作り続けることはできていた。それだけにサイドに渡ってからの攻撃精度が不足していたのはもったいなく、得点シーン以外で秋田を慌てさせるようなクロスを挙げられたシーンはなかった。

 それでも全体的にはやや押されながらも要所を押さえ、狙いの先制点を奪った上でリードして折り返す。総じて見れば、前半の戦い方はそれなりに納得のいく展開だったと言えるだろう。

 

 

秋田の徹底に屈する

 秋田はハーフタイムに齋藤に代えて青木を投入。その後も早い時間に吉田と中村を投入することで右サイドの人選を次々と入れ替えていくと、栃木はこのサイドでの攻防から劣勢を強いられるように。秋田の攻め筋は前半とほぼほぼ同様ながら、その迫力は前半以上だった。

 後半の入りの勢いで秋田に上回られた栃木はここから防戦一方に。秋田のパワー攻勢を前にファールが増え、被セットプレーの回数が増加。栃木はその都度全員が自陣にセットせざるを得ず、低い位置から跳ね返して攻撃に転じるにはハードルが高く、秋田の猛攻からなかなか抜け出すことができなかった。

 今思えば前節の熊本戦も劣勢の時間帯はそうだった。ファールを連発することで攻撃に転じることができず、防戦一方になり最終ラインに負荷がかかり続ける。

 前半はそれなりに上手くいっていた広いサイドへの展開も後半はさっぱり見られず。秋田のパワー攻勢に対して主体的にアプローチすることができず、いざ攻撃に転じても逆サイドを見る余裕がなかった。完全に秋田の術中にハマってしまった印象だった。

 そうして劣勢のまま迎えた66分に同点を許し、立て直す間もなく直後の71分には逆転を許してしまう。失点シーンはいずれも同じような形から。ペナルティエリア内に次々と放り込まれるボールに対して後手を踏み、セカンドチャンスから押し切られてしまった。

 

 栃木が劣勢を押し返そうと動きを見せたのは、逆転を許した後の72分。この日最初の交代カードを切り、ようやくサイドからWBが切り込んでいくような仕掛ける姿勢を見せていく。しかし、リードしたことでブロックを組んだ秋田に対して保持から効果的に前進することができない。

 とりわけ多かったのは、追い込まれてロングボールを蹴らされてしまうシチュエーションだった。栃木の繋ぎは左右CB→WBなどの外→外のパス回しが多く、WBがプレスを受けて縦を切られると、前線にアバウトにボールを入れてロストする場面が増加。余裕をもってハーフラインを跨げたシーンは数える程度だった。

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 途中から出場した選手もこうした状況のなかでは存在感を示すことはできず。途中から右シャドーに入った矢野は相手のSBの背後に流れてボールを引き出すなど一定の貢献は見せたが、小堀と植田は試合勘が乏しくほとんどボールに絡めず、高萩は後ろからロングボールを入れる出し手にしかなれなかった。栃木がボールを握りながらも、試合をコントロールしていたのは秋田の方だった。

 最終盤はセットプレーから何度か秋田ゴールに迫るも、秋田の集中した守備を前に先に触れた場面は少なく、試合はこのまま1-2で終了。栃木はこれで今季ワーストの3連敗となり、19位に転落。秋田は10試合ぶりの勝利となった。

 

 

最後に

 非常にダメージの残る敗戦となった。自分たちのスタイルを徹底する秋田に対して準備してきた形を見せられたシーンもあったが、総じて見れば秋田の圧力に屈した印象が色濃く残ってしまった。交代カードで秋田が勢いを増したのは間違いないが、それ以前の問題として栃木の覇気のなさ、消極的で受け身な姿勢は残念に映った。自分たちのやるべきことを迷いなくやり切った秋田が勝利を掴む順当な敗戦だったと言えるだろう。

 

 

試合結果・ハイライト

栃木SC 1-2 ブラウブリッツ秋田

得点 17分 大島康樹(栃木)

   66分 河野貴志(秋田)

   71分 諸岡裕人(秋田)

主審 佐藤誠

観客 4144人

会場 栃木県グリーンスタジアム