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【勝ち点1の捉え方】J2 第40節 栃木SC vs ツエーゲン金沢(△1-1)

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はじめに

 前節群馬戦は2-2のドロー。前々節の新潟戦に続き、2試合連続で終了間際の失点により白星を逃す悔しい結果となった。今節の対戦相手はツエーゲン金沢。栃木にとっては未だに勝利したことのない難敵なだけに、初勝利を飾りたい一戦となる。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 11位

 アウェイの栃木は前節から3人変更。GKには川田に変わって塩田が2試合ぶり、FWには矢野が7試合ぶりに先発となった。今季限りでの引退を発表した菅はメンバーから外れた。

 

ツエーゲン金沢 [4-4-2] 14位

 ホームの金沢は前節から1人変更。前節ゴールをあげた杉浦恭平に変わってFWには山根が入った。最前線でコンビを組む加藤は大卒ルーキーながら13得点を記録。右SH島津は8得点を記録するなど攻撃に持ち味のある選手が先発に名を連ねた。

 

 

前半

対栃木への対応

 立ち上がりの失点を免れたとしても栃木にとっては厳しい幕開けになったといえるだろう。栃木が良くなかったというよりは金沢の対栃木を意識したボール回しに想像以上に苦しんだ序盤戦となった。

 

 金沢の基本システムは栃木と同じ[4-4-2]。栃木の対戦相手の多くはボランチを最終ラインに下ろしたり、GKをビルドアップに組み込むなど栃木のツートップに対して数的優位を作ろうとするが、金沢は2CBと2ボランチの2列の関係性を崩そうという気配があまり見られなかった。

 

 大きな理由としては、最終ラインを4枚に保つことで栃木のプレスをあえて引き出すためだろう。3枚の最終ラインであればSBを攻撃的に押し上げるきっかけになるが、4枚だと容易に上げることはできない。その結果SBは最終ラインに留まることになるのだが、高い位置から食い付いてくる栃木のSB裏へ縦パスを通すことができていたためスムーズに敵陣に入り込むことに成功していた。

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 このとき重要なのがSBに対してSBを食い付かせること。上図は金沢の左SB渡邊に対して栃木の右SB黒崎が食い付いたのを利用できたシーン。この場面では、SB裏を埋める岩間が間に合わずホドルフォがクロスを供給している。金沢の最終ラインでのボール回しはこのシチュエーションを作るためであり、縦パスを受けるSHも内側から外側への動き出しに合わせてパスをもらっていたので、栃木としては思うように捕まえられない時間が続いてしまった。

 

 サイドの深い位置を取ってからはクロスがメインだったため栃木としては危なげなく弾き返すことはできていた。ただ、どうしてもプレーエリアが低くなってしまえば敵陣に挽回するだけのパワーと精度を押し出すことができない。ここ最近のクロスからの失点を考えればこのままの展開が続くのを避けたいところである。

 

 それだけに飲水タイムを経ての修正はある程度効果を発揮したといえるだろう。栃木はSBが相手SBからの縦のパスコースを徹底的に切ると同時に、ボランチが相手SHへの監視を強めることで序盤のように簡単にSBの背後を取られる回数は減少。大外のパスコースを切られた金沢のSBは空いたFWに斜めにパスを差し込むようになるが、ここは栃木のCBが前に出て対応することでより前目の位置で奪えるようになっていった。金沢の序盤の勢いが落ち着いたという側面も考慮する必要はあるが、前進のスピード感が落ちているのは明らかだった。

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 前向きにボールを回収してからはサイドを駆け出すFWに預けることでカウンターを開始。前半33分には、金沢の縦パスを回収して佐藤が前を向いた瞬間にはツートップがサイドに動き出しており、カウンター時の狙いが顕著に表れていたといえる。FWがサイドに流れる分、SHは直線的にゴール前に走り込むことで攻撃に厚みをもたらすことはできていた。

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 互いにゴール前の守備への集中力は高く、中央突破を許したシーンは皆無。わずかに枠を外れた矢野のヘディングシュートや、金沢のボランチの大橋が上げたクロスからゴール前混戦をGK塩田が何とか抑えるなど、攻撃のほとんどはクロスからであった。

 

 試合は1-1でハーフタイムを迎える。

 

 

後半

主導権のシーソーゲーム

 ハーフタイムに廣井に変えてCBに作田を投入した金沢。後半に先駆けてのこの交代策はこれで4試合連続となるが、出場時間のシェア的なものなのだろうか。

 

 前半同様サイドに流れる明本を起点にチャンスを作っていく栃木。最前線に矢野がいる分明本の動きの自由度は高く、相手を押し込んでからのサイドでの関わりや自ら切り込んでいく仕掛けなど、やはりセカンドトップとしての役割の方がプレースタイルには似合うかなと。ロングカウンター時のボールの引き出し方が抜群に上手いので、その流れからサイドでの崩しに関われる今の役割がベストのように思う。

 

 後半立ち上がりにチャンスメイクに成功していたのは栃木だったが、それ以降は金沢が主導権を握る展開に。前線の選手がタイミングよくボールサイドに顔を出すことで栃木はなかなかボールを奪うことができず、ブロックを組めば前を向いたボランチに逆サイドや背後へボールを供給されることで耐える時間が増えていく。最も苦しんだこの時間帯はセカンドボールの回収でも金沢に上回られてしまい、首の皮を何度も繋ぎ止めたGK塩田の好セーブがなければ勝ち点を持ち帰ることはできなかっただろう。

 

 金沢の猛攻を耐え抜けば今度は栃木のターンに。金沢ほどゴールまであと一歩に迫るような攻撃とはならなかったものの、ボールを奪い取るや多くの選手がゴール前に上がっていくロングカウンターには十分迫力はあった。ゴール前にSBの黒崎が入っていくのもお馴染みの光景になりつつある。

 

 ここ数試合は途中出場の続いていた矢野のコンディションレベルも高水準に上がってきているだろうか。後半終盤でも相手GKまでプレスをかける献身性は圧巻。後半アディショナルタイムのロングカウンターも矢野のポストプレーから。矢野→有馬→瀬川と渡り最後に大島が決め切れれば交代采配的中となったが、フリーでのシュートは枠の右へ。

 

 一進一退の攻防が繰り広げられた試合は1-1で終了。栃木は3試合連続のドロー。金沢は3試合負けなしとなった。

 

 

最後に

 普段はボール保持型のチームではない金沢だが、対栃木を意識したボール回しには一週間しっかり準備してきた足跡が伺えた。応急処置を施してからもなかなかプレスがハマらず、ロングカウンターに望みを託す格好となったが、そのなかにも工夫が見られたのは明るい材料である。前節や前々節と違って、耐えた末に持ち帰ってきた勝ち点1に後ろ向きになる必要はないだろう。

 リーグ戦は残すところあと2試合。奇跡の残留を成し遂げた昨季を踏まえれば、クラブ最高順位の更新の可能性を残している現状は誰が見ても及第点以上である。新たなホームスタジアムの力も借りて、チームの歴史に新たな一歩を刻めるようなラスト2試合に期待したい。

 

 

試合結果

栃木SC 1-1 ツエーゲン金沢

得点 1分 山根永遠(金沢)

   5分 田代雅也(栃木)

主審 松本大

観客 2,237人

会場 石川県西部緑地公園陸上競技場

 

 

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