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【記録を刻んだ初陣】J2 第41節 栃木SC vs ジェフユナイテッド千葉(〇1-0)

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はじめに

 前節金沢戦は立ち上がりに失点を許したものの、直後に田代のヘディング弾で追い付き1-1のドロー。苦しい展開を耐え抜き、負けなしを5試合に伸ばした。今節迎えるのはジェフユナイテッド千葉。新たなホームスタジアムの初陣を飾れるか、大事な一戦である。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-2] 11位

 ホームの栃木は前節から2人変更。契約上出場不可の溝渕に変わって左SBには大島、出場停止の佐藤に変わってボランチには明本、最前線にはエスクデロが起用された。来季の加入が内定しているユース所属の小堀は初のベンチ入り。

 

ジェフユナイテッド千葉 [4-4-2] 13位

 アウェイの千葉は前節から7人変更。前節スタメンのうち出場停止の田口や船山ら計5人がベンチからも外れた。川又とコンビを組む工藤は今季2試合目の先発となった。

 

 

前半

明本のポジションによる変化

 待ちに待ったカンセキスタジアムとちぎでの初ゲームである。当初は5月に開催を予定していたリーグ戦だが、中断による延期を余儀なくされ、この日が7ヶ月越しの初開催。2年後の国体に向けて造られた栃木県最大規模のスタジアムは、記録的な寒さを吹き飛ばすような高揚感に包まれたなかで試合が開催された。

 

 立ち上がりから試合はどちらのペースとも言い切れない一進一退の展開で進んでいく。

 前半4分、千葉が押し込んだ流れから新井一のクロスに川又が競り、こぼれ球を工藤がシュート。

 前半5分、栃木の後方からのロングボールを矢野が落としてセカンドボールを拾った森が直線的にドリブル突破。

 前半7分、千葉が左サイドでボールを回収後、川又のポストプレーを交えながら栃木のミスを誘うと、為田がドリブル突破。

 いずれのシーンにも共通していたのが、まず初めに最前線の長身FWに長いボールを当てることであり、敵陣へ素早く攻め込もうという形である。よって中盤では激しいセカンドボール争いが自ずと頻発することとなり、試合は落ち着かない展開に。栃木がサイドやスペースに動き出す矢野に合わせたボールが多かったのに対し、千葉は川又がゴールに背を向けて競ることが多く、細かなラインコントロールから前向きに弾き返す田代や柳とのエアバトルは終始見応えのあるものだった。

 

 本職のボランチとしては初先発となった明本。いつもは受け手として抜群の引き出し役を担うが、この試合では出し手として積極的にプレー。左SBの大島とのパス交換で流れを落ち着かせたり、自身が最終ラインに下りて大島を押し上げたりと、左サイドでは普段の組み合わせと異なるボールの握り方を見せた。エスクデロの負傷交代により最前線に戻ることとなったが、もう少し見てみたかったのが正直なところである。

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 ただ、最前線でも十分な働きを見せるのが明本のポテンシャルである。前半28分には、森のシュートをそのままトラップして左側に持ち出してシュート。前半29分には、右サイドで繋いで自らカットインしてシュート。DFにブロックされたこぼれ球に反応した大島のミドルシュートはわずかに右に外れている。明本を最前線に移してからはその前への推進力を生かして栃木がペースを掴んでいく。

 

 依然ボールを握る時間は長いものの、意図的に動かすというよりはプレッシングから逃げるような消極的なポゼッションが増える千葉。ジリジリと下げさせられてからでは、栃木の嫌がる背後へのロングボールを送り込むことができない。トップ下気味にプレーする工藤はより自由度の高い役割が与えられていたと思うが、空中戦の応酬では存在感を出せず、押し込んだ展開でもブロックのなかで消えてしまった。

 

 前半45分には、これまでロングボールで栃木のプレスを回避していたCB鳥海がボランチの高橋に繋ぐと、そこに岩間が強襲。明本とともに挟み込んでボールを回収すると最後は矢野がミドルシュート。プレッシングを回避され疲労の溜まる前半終盤であってもショートカウンターを完結させる徹底さにはスタイルへの自信を窺える。

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 試合は0-0のスコアレスでハーフタイムを迎える。

 

 

後半

均衡を破ったのは持ってる男

 ロングボールの蹴り合いとそこからのセカンドボール争いは後半も継続。矢野の周りに陣取る明本やSHの距離感が良くなった栃木は、セカンドボールを回収した流れからそのままフィニッシュに繋げられる回数が増えていく。トランジションの意識も高く、後半12分に矢野が相手DFの後ろから強引にシュートに持ち込んだシーンも素早い守備切り替えからの再攻撃だった。

 

 一方の千葉は、後半立ち上がりから何度か川又を栃木の最終ライン背後に抜けさせるようなロングボールを供給。裏のスペースは初めから狙いにしていたと思うが、前半と比べてより徹底された印象である。田代がスクリーンをかけて柳が弾き返すなど工夫して対応できていた場面や、弾き返しが小さくなりセカンドボールを回収される場面など局面の勝負は五分五分。かろうじて二枚目のイエローは免れた田代だったが、ここの判定はかなりシビアだったように思う。

 

 この時間以降はこれ以上ファールできない田代がカバー役を、代わりに柳が弾き返し役を担うことが多くなっていく栃木。一方千葉は、田代サイドに川又を立たせてファールを誘っていく。駆け引きの状況によっては難しい時間を強いられ兼ねない栃木だったが、それだけに主導権を明け渡さずに掴んだ先制点は会心であった。「自分が思っているよりも良いクロスを上げることができた」西谷のクロスに合わせた柳はCBながら今季6ゴール目となった。

 

 ビハインドを背負った千葉は3枚替え。工藤や為田らを下げ、長身の山下やアランピニェイロらを投入し、攻勢を強めていく。

 3枚替えの狙いは後半30分のシーンのように、右からのクロスに川又、山下、アランピニェイロの3人が飛び込んでいく形だろう。右SHには左利きの矢田に変わり右利きのクロッサー米倉が途中出場していることからも窺える。プレスを控えめにブロックを築く栃木に対して、今度は佐藤寿人を立て続けに投入。高さ、強さのなかに駆け引きや動き出しに長けた選手を加えて打開を図る。

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 千葉の攻勢を受けて栃木は5バックに変更。柳、田代、高杉が並ぶ3CBで外からのクロスを弾き返していく。終盤はほとんどボールは握る場面こそなかったが、コンパクトな5-4のブロックで中央を封鎖。千葉のポゼッションをU字回しに限定し、最後の局面で体を張ることで集中を切らすことはなかった。

 

 後半ATには有馬と小堀を投入。プロデビューとなった小堀は少ない時間でも相手を追い回す積極性を披露。

 

 試合は1-0で終了。逃げ切りに成功した栃木はこれで6試合負けなし。千葉は4試合ぶりの敗戦となった。

 

 

最後に

 90分を通じて激しい肉弾戦が繰り広げられたなかで、徹底したロングボールやこぼれ球への反応、回避されてもなお走り続けたプレッシングとその運動量など、全てにおいて同系統の千葉を僅差で上回ることができたといえるだろう。一点勝負の様相が色濃くなるなか試合を決定づけたのが今季何度もチームを救ってきた柳だったというのも、今季のチームの集大成を示しているように思う。

 カンセキスタジアムとちぎ初陣での勝利、田坂監督100勝目、ユース所属小堀のJリーグデビュー。記念すべきこの日の勝利が栃木のサッカーにおける新たな1ページを刻んだことは間違いない。

 

 

試合結果

栃木SC 1-0 ジェフユナイテッド千葉

得点 67分 柳育崇(栃木)

主審 岡宏道

観客 4,486人

会場 カンセキスタジアムとちぎ

 

 

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