栃木SCのことをより考えるブログ

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【逆転弾への下地】J2 第20節 栃木SC vs ジュビロ磐田(〇3-2)

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スターティングメンバー

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栃木SC 11位 [4-4-2]

 前節松本戦は1-1でドロー。山本廉のJ初ゴールで先制するも直後に追いつかれ、勝ち点1ずつを分け合った。今節は矢野が4試合ぶりに先発復帰。大島は7試合ぶりにベンチスタートとなった。

 

ジュビロ磐田 7位 [4-4-2]

 前節、前々節はともにスコアレスドロー。ここ最近は引き分けが多く、勝ちきれない試合が続いている。今節はスタメンを2人変更。世代別代表常連の小川航基は3試合ぶりにスタメンとなった。

 

 

直線的なプレーを選択した磐田

 パス数やボール支配率でリーグ上位につけている磐田。中継ではクロス数がリーグ1位と紹介されており、基本的なスタイルとしては、丁寧なビルドアップでサイドを攻略し、クロスから長身FWを生かすというところだろうか。論理的な戦い方はいかにもバルセロナ出身監督といった印象だが、この試合でははじめからシンプルにFWに当てるボールを選択することが多く、磐田の2トップvs栃木の2CBのバトルが試合を通じて頻繁に見られた。

 前への意識が早くも結果として現れたのが磐田の先制点のシーン。栃木のロングボールを弾き返し、中盤で収めた小川航基は左サイドに走り出したルキアンへロブパス。ルキアンはそのまま左サイドを独走し、右足で落ちついてゴールを決めた。

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 狙いは栃木の最終ラインの背後。攻撃時やプレッシング時にハイラインをとる栃木は、背後にスペースが生じやすい。スコアが動く前の前半7分にも素早い切り替えから背後を狙う形があり、ここは田代のハンドで通らなかったものの、チームとしての狙いを窺わせるシーンだった。

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攻撃的プレッシング

 一方栃木もシンプルにFWに当ててからセカンドボールや球際勝負という部分は、今季のテーマとして大きく掲げているところ。立ち上がりこそ陣形をひっくり返されてピンチを招いたが、徐々に慣れてくるに連れて、鋭いプレッシングからリズムを取り戻していった。

 

 栃木のプレッシングの特徴は、前の選手がひとたびスイッチを入れれば後ろの選手がどこまでも連動していくことである。磐田のサイドチェンジの流れでCB大井に対してSH山本がプレスをかけると、SB溝渕はそのまま縦にスライドして磐田のSB伊藤を捕まえる。溝渕の空けたスペースをSH大森が使おうとすればボランチの佐藤が、FWルキアンが流れればCB高杉がそれぞれついていく仕組みである。

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 サイドで詰まった磐田がバックパスを選択すれば2トップの攻撃的なプレッシングが開始される。とりわけ明本のチェイスは非常に効果的だった。前半19分には、GKにクリアを強いることでボールを回収すると、スルーパスに抜け出した矢野がエリア内に侵入しクロス。前半30分には、GKの処理ミスを明本が直接拾い、ゴール前フリーで森がヘディングシュートを打つシーンがあった。

 

 栃木のプレッシングに対して後手を踏む磐田だったが、左SHの大森が右サイドに流れた際はチャンスが生まれそうな気配はあった。前半35分過ぎから何度か見られた右サイドでの細かいパスワークから最終的に3列目のムサエフや上原に抜け出されると、栃木も遅れての対応を強いられることとなった。

 大森のポジショニングが即興的なものなのかは分からないが、このとき左サイドに流れるルキアンを生かせないのは多少もったいなく感じた。右サイドでのパスワークから一度左SBの伊藤にボールが渡った際、伊藤のプレー方向はルキアンのいる縦方向ではなく内側であり、押し込んだ展開で左サイドに流れたルキアンと伊藤が絡むシーンはほとんどなかったように思う。

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 やはり栃木にとって脅威だったのは、ハイラインの背後を抜け出されること。前半42分の高杉のゴールカバーは試合展開を考えれば、超が付くほどのビッグプレーだった。

 

 ホームの磐田が1-0のリードして前半終了。

 

 

狙いどおりの同点弾と痛恨の二失点目

 後半に入ってからも前半同様のプレッシングを継続した栃木。相手に蹴り出させたボールを田代が大きく弾き返すと、一歩早く抜け出した明本がエリア内で倒されPK獲得。第11節岡山戦でも見られた形だが、試合後コメントを見ると明本と田代のなかで狙いが共有されていることが窺える。キッカーの矢野が中央高めに蹴り込み、栃木が同点に追い付いた。

 

 今季取り組んでいる形から得点を取れたことで、栃木は前からのプレッシングをより強めていく。磐田はボランチの上原を最終ラインに落としてビルドアップを安定させようとしていたが、思うように前進できずGKへのバックパスから栃木のプレッシングを加速させることがあった。

 それだけに栃木にとって痛恨だったのが二失点目に至るシーン。プレッシングの流れのなかで大島と明本がポジションを交換していたせいか、前傾姿勢になった一列目の背後をケアできなかった。ムサエフがドリブルで持ち運び、左サイドのルキアンへ預けるとカットイン。ペナルティエリア内の混戦から大森を倒してしまいPKを献上してしまった。

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 栃木のプレッシングの隙を突いた磐田は次々と決定機を作っていく。セカンドボール回収の出足が良くなり、サイドを抉ってのクロスや、ルキアンを抜け出させるロングボールなど攻勢を強めていくが、最後の部分で何とか踏ん張る栃木。FKから至近距離のシュートを二度もセーブしたGK川田の活躍は、今季一番のファインプレーだったのではないだろうか。

 

 

パワーアップをもたらした交代選手

 [4-4-2]で構える守備ブロックは互いに堅い両者。ゴールに迫るシーンは自ずとカウンターやセットプレーになっていくが、フィニッシュの精度やGKの好セーブによりゴールネットを揺らせない時間が続いていった。

 そのなかで早めに交代カードを切った栃木は、途中出場のエスクデロや榊らがボールサイドに多く絡むことで攻撃を活性化させていく。エスクデロ体幹を生かした重心の低いドリブルでカウンターの推進力を上げ、榊は要所でフィニッシュの局面に顔を出していた。

 栃木の二点目に繋がったPK獲得シーンも途中出場の榊と大島がチャンスメイク。明本のシュートが相手のハンドを誘うと、今度は明本自身がPKを決めきった。

 

 対する磐田も交代選手を中心にセットプレーからゴールに迫っていく。ルリーニャのファーストプレーや山本康裕のFKは栃木にとって脅威だったが、GK川田やDF陣の好プレーで跳ね返していった。

 

 そして、五人目に投入された柳である。パワープレー要員でピッチに入り、しっかりとその役割を遂行してみせた。ここまで決めた3得点全てが、終盤に出場してから勝利を呼び込む逆転弾。短時間で大仕事をし、ヒーローインタビューを持っていくのはお馴染みになりつつある。新潟さんちょっとお話があるのですが。。

 

 試合は栃木が3-2で逆転勝利。栃木は3試合ぶりに白星、磐田は8試合ぶりの黒星となった。

 

 

最後に

 劇的な幕切れがどうしてもフイーチャーされる試合展開となったが、チームとして二度のビハインドに屈せずに食らいついていった姿勢は素晴らしかった。焦らず、それでいて相手にプレッシャーをかけていく積極性には、自分たちがここまで取り組んでいるスタイルへの自信が窺える。スリリングなシーソーゲームが展開されるなか、勝負強さの際立つ柳が短い時間で輝くための下地はすでに整っていたといえるだろう。

 今季初の3得点をあげた一方で、失点が増えてきているのも事実。ここ5試合で7失点。クリーンシートからも遠ざかっており、ついにリーグ最小失点の座は明け渡した。今節のように追加点をあげることで勝ち切れれば良いが、もちろん失点は少ない方が良い。自分たちの出方を逆手に取るチームが増えていくなか、そこを上回る策を見せられるかどうか。後半戦に向けての田坂監督の手腕に注目したい。

 

 

試合結果

栃木SC 3-2 ジュビロ磐田

得点 10’ルキアン(磐田)

   50’矢野貴章(栃木)

   55’ルキアン(磐田)

   82’明本考浩(栃木)

   90+3’柳育崇(栃木)

主審 松本大

観客 3,354人

会場 ヤマハスタジアム

 

 

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