栃木SCのことをより考えるブログ

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【表裏一体】J2 第21節 栃木SC vs 京都サンガF.C.(●2-3)

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はじめに

 前節磐田戦は二度のビハインドを追い付き、またしても柳の逆転弾で勝利をおさめた栃木。アウェイ連戦となる今節は、4試合連続でクリーンシート中の京都に挑む。アウェイでの勝負強さが際立つ栃木と未だホーム無敗の京都。互いに好調を維持したままシーズンを折り返したい一戦となる。

 

 

スターティングメンバー

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栃木SC [4-4-1-1] 7位

 アウェイの栃木は前節から2人変更。左SHには森に変わって大島、FWには矢野に変わってエスクデロが入った。エスクデロにとっては3年半在籍した古巣との対戦。スーパーサブ柳は今節もベンチから出場機会をうかがう。

 

京都サンガF.C. [3-5-2] 6位

 ホームの京都は前節甲府戦から4人変更。得点ランクトップのウタカの相方は荒木ではなく今節は野田。IH(インサイドハーフ)には18歳の谷内田と20歳の福岡の若手コンビが起用された。

 

 

ミスマッチを埋めて生かすプラン

 プレッシングをかけ続けることで主導権を握りたい栃木にとって、フォーメーションのミスマッチは判断を鈍らせる要素の一つである。判断が鈍ればプレッシングの切れが悪くなり、逆にブロックの間にパスを刺し込まれて一気にピンチに陥ってしまう。栃木にとっては、自分たちの準備してきた判断基準で素早くプレッシャーをかけてミスマッチを埋めつつ、相手からプレー判断する時間を奪うことでペースを握ろうとした。

 

 この日の栃木はほとんどの時間で明本とエスクデロが縦関係になっており、攻守の役割を考えれば[4-4-1-1]と表記した方が近かったと思う。エスクデロは司令塔のアンカー庄司を徹底マーク。ハイプレスをかけるときは、SHが京都の左右のCBへ行き、SBが続いてWBにプレス。ボランチはIHを見るようにしていた。

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 栃木にとって、ハイプレス時に気になったのが京都のツートップの存在。ともに強さとしなやかさに優れ、フィジカル自慢の田代も特にウタカの対応には苦戦していたように見えた。ウタカは前線でタメを作ってからのリリースも的確で、栃木のボランチのプレスバックを受ける前に味方に渡すことで、前進を助ける場面がよく見られた。

 

 京都のツートップに対して、初めからボランチがケアする意識が強いと、逆にIHをフリーにしてしまう。前半10分には福岡の下りる動きを起点に、ゴール前に侵入される場面があり、試合を通じて栃木のボランチはデリケートな判断を求められていた。

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 一方、攻撃面では、相手とのミスマッチを生かしつつ、出場選手のキャラクターに沿った攻撃を展開した。

 京都は守備に転じたときに前からプレスをかけることはほとんどなく、自陣に素早く[5-3-2]のブロックを敷く。したがって、栃木は後方の選手が余裕をもってボールを持つことができ、加えて構造上空いてくる相手MFの脇のスペースを攻撃の入口にしているように見えた。

 多かったのがSBからエスクデロへ斜めに刺し込むパス。エスクデロはライン間で前を向ければアタッカー4人での細かいパスワークから中央突破を図り、中央が難しければサイドに散らす。一度中央に相手の目線が集まるためSBには時間ができるが、瀬川のクロスが引っかかった前半18分のように、前傾姿勢になった背後を突かれ決定的なカウンターのピンチを招く場面もあった。

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ボランチ脇からの前進を図る京都

 前半20分を過ぎたあたりから、徐々に栃木のプレッシングに慣れてきた京都がゴールに迫っていく。

 攻めの起点にしたのが栃木のボランチ脇のエリア。サイドでのパスワークなどからIHが受け手になると、FWへのスルーパスや高い位置に張ったWBへパスを供給。クロスのこぼれ球に反応した谷内田がミドルシュートを打つなど、徐々に自分たちのリズムでボールを持てるようになっていった。

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 飲水タイム後には、後方からのビルドアップの修正に着手。バイスと庄司の縦関係を入れ替えたり、横並びにすることで、栃木の2トップのプレスをぼかしていく。

 ちなみに、明本の決めた栃木の先制点は、ちょうどバイスと庄司が入れ替わったタイミングでのカウンターからであり、京都にとってはミスパスも含めてアンラッキーな失点だった。

 

 失点後もビルドアップの修正を図る京都だが、本多を左SBの位置にズラした左肩上がりの形になったときが最も安定感があった。バイスと上夷の間に庄司が下りてバランスを取りつつ、バイスの縦パスや飯田への対角フィードからチャンスを演出する場面が増えていった。

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 前半43分にウタカのゴールで京都が同点に追い付く。GK川田の判断が早かったかもしれないが、パスに抜け出す前向きの野田vs後ろ向きからスタートする高杉という一対一の状況を作られた時点で危険な要素は揃っていた。

 

 前半は1-1で終了。

 

 

相手の弱みを突き切れたのは

 後半も前半同様に、ハイプレスをかける栃木に対して、京都はウタカのポストプレーを軸に対抗、という構図で進んでいく。ここでウタカからボールを奪えれば、ボランチも攻撃参加しての地上戦から積極的にシュートを打つことでプレーを完結させる。ウタカがポストプレーを制すれば、上がってきた味方に預けてフィニッシュシーンを演出していくシーンの多い後半立ち上がりであった。

 

 早めの交代策で矢野と有馬を投入すると、ロングボールも交えての攻撃を開始する栃木。バイスを中心に弾き返す京都守備陣に対して制空権こそ握れなかったものの、セカンドボールやこぼれ球への意識はともに高く、中央を固める京都とのつぶし合いは非常に激しかった。

 

 どちらのペースともいえない展開のなかで次の一点を手に入れたのはホームチームだった。前半にも栃木を押し込んだときに狙っていたボランチ脇のスペースを谷内田がドリブルで侵入。佐藤がマークを剥がされると、栃木はブロックの間にうまく縫って入られたことで誰も捕まえることができなかった。最後に田代が寄せたタイミングで中央にクロスを送ると、待っていた福岡がニアでシュート。GK川田の手をすり抜け、京都が逆転に成功した。

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 立て直したい栃木にとって、3失点目は痛恨だった。オフサイドポジションにいた荒木が気になったかもしれないが、ウタカのパワーとスピードが勝ったのは事実であり、GK川田のプレーも致し方なかったと思う。筋肉系のトラブルで負傷交代を余儀なくされた高杉の状態が心配である。

 

 パワープレーから途中出場の柳がまたしても少ない時間で得点を決めて一矢報いたものの、同点弾が遠く、2-3で試合終了。栃木は今季初の3失点で連勝ならず。京都は負けなしを5試合に伸ばした。

 

 

最後に

 ミスマッチへの対応策や球際勝負では十分戦えていたが、徐々にパスの出し手への対応で後手にまわったことで、京都の前線のパワーに振り切られてしまった印象である。だからといってウタカだけに気を取られてしまえば、周りの選手が起点となって得点を奪うこともできるわけで、どこでアドバンテージを握れるか各選手が判断できるのが、今の京都の好調の要因なのかもしれない。

 

 同点まで追いつけなかったものの、最後まで走り続ける姿勢は素晴らしかった。2得点目をあげることで最後まで試合を可能性のあるものにしたし、やられたままでは終わらせなかった。

 リーグでも特異なスタイルで勝ち点を稼いできたことで研究されての失点は増えてきている。ただ、監督コメントにもあるとおり、このスタイルのメリットとデメリットは表裏一体。今後調子を維持し続け、上位に食い込むことができるか。今の栃木は大きなターニングポイントを迎えているといえるだろう。

 

 

試合結果

栃木SC 2-3 京都サンガF.C.

得点 31分 明本考浩(栃木)

   43分 ピーター ウタカ(京都)

   76分 福岡慎平(京都)

   80分 ピーター ウタカ(京都)

   89分 柳育崇(栃木)

主審 西村雄一

観客 1,797人

会場 サンガスタジアム by KYOCERA

 

 

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